第42話:「双牙の反撃」
夜の廃墟
崩れかけたビルの屋上に、アキトとカムイは立っていた。
「ずいぶんと静かだな……。」
アキトは周囲の気配を探りながら呟く。
カムイは黙ったまま、軽く頷いた。
セリカに頼まれて2人はファントム達を追ってここに辿り着いていた。
周囲の人はフロントコードの働きにより警察が避難させており、これから激しい戦いが予想されていた。
アキトはこれからの戦いの事を考えていた。
仲間が傷つき、みんなが志久間やファントム達を倒そうと必死になっている。
なのにアキトはどこか落ち着いている。S級クラスの奴と戦える事を楽しもうとも思ってる。
(今後自分が強くなる事は必要となる。世の中の為に、仲間のために強くなろうと思ってたけど、そうなろうと思う自分がいるだけで何か違う気がする。)
アキトがそう耽っていると、カムイが背後に意識を向けた。
「――ふふ、隠れていてもしょうがないな。」
霧のように現れたのは、黒いコートを纏ったファントム。
アキトもゆっくりと振り返った。
「お前らみたいな強者が来るとは、嬉しい限りだ。」
ファントムの周囲には、無数の黒い分身が現れ始める。
「だが、こっちも手加減する気はない。」
2本の刀が双竜が憑依され、さらにアキト自身にも纏わせた。
「……カムイ、ここは1人でやらせてくれるか?」
アキトはほんの少しだけイラついていた。
「....いいだろう。」
(アキト.....こいつの力を見ておくのも悪くない。)
シュバッ!!!
鋭い刃が黒い影を切り裂くが、すぐに霧のように形を取り戻す。
「無駄だ。」
ファントムが指を鳴らすと、黒い影の群れがアキトとカムイに襲いかかる。
アキトは双竜を旋回させ、近づく影をなぎ払う。
「……違うな。」
影は消えず、瞬時に再生する。
「ただの分身じゃないな。全部、実体を持っているのか。」
ファントムの笑い声が響く。
「俺の幻影、ただの飾りじゃないんだよ。」
次の瞬間、影がアキトの後方から突き出される。
「......!」
アキトは瞬時に双竜で防御するが、黒い手が腕を絡め取る。
「拘束か。」
「そのまま沈め――」
ファントムが囁いた瞬間――
「双龍・真迅斬斬」
轟音とともにアキトの姿が消え、次の瞬間、斬撃が黒い影達を吹き飛ばす。
「何だ?!この力は?」
余裕があったファントムだが、アキトの力が聞いてた話しと違う事に気づいた。
(志久間の話しと違う。龍の力がこんなに強いとは聞いてないぞ。)
アキトは全身に双龍を憑依させて、再び戦闘態勢を取る。
「……こんなものか。ストレス発散にもならないな。」
アキトはいつも双龍の使い方とは違っていた。双龍を刀を含めて全身に憑依させて威力、精度を格段に上げていたのだ。
(もう余裕ぶるのはやめだ。)
アキトは双竜を構え直し、ファントムの動きを観察する。
ファントムは焦り、奥の手を出そうとするが遅かった。
「双龍・全迅撃」
アキトはその場を動かず、斬撃だけがファントムの周りを一瞬で刃の嵐が降り注いだ。
「グッ....」
ファントムは叫ぶ間もなく体が吹き飛び、そのまま力つきた。
「……終わりだ。」
アキトは刀を納め、カムイと視線を交わす。
「セリカの言っていた能力とファントムの能力が違う。」
「そうだな。違和感を感じる。」
「一旦基地に戻ろう。」
アキトとカムイは、腑に落ちない感じを抱きつつも、夜の街を後にした。




