第40話:「裏で操る影」
廃墟となったビルの最上階。
夜の闇に包まれたその場所で、二つの影が向かい合っていた。
「この勢いのまま進めば、俺たちの時代が来るな。」
黒いコートを羽織った男、グリードが満足げに笑う。
彼の手の中で、小石が黄金へと変化していく。
「能力者の力を正しく使えば、俺たちは何にでもなれる……そう思わないか?」
「興味はない。」
静かに答えたのはもう一人の男──ファントム。
長身の影が闇に溶け込むように立ち、虚ろな目で外を見つめていた。
「俺にとって、力はただの道具にすぎない。」
「冷めてるな……まあいい。結果を出せば、何も問題はない。」
グリードが肩をすくめる。
「さて、次の標的は決まったか?」
「決まっている。」
ファントムが静かに指を動かすと、空間が揺れ、壁のモニターに情報が映し出された。
そこには、フロントコードに所属する能力者たちの顔が並んでいた。
「この中から、まずはA級を数人潰す。」
「手始めにレオか?」
「ああ、S級は今は避けるべきだ。まずは、フロントコードの仕切り屋を狙う。」
「ふむ……面白い。」
グリードが口元を歪める。
「なら、試してみるか。」
そのとき、二人の背後で足音が響いた。
「計画は順調そうだな。」
低く、不気味な声。
ファントムとグリードが振り向くと、そこには黒い白衣の用なコートに身を包んだ70代の白髪の男が立っていた。
男の名は志久間武史。
かつてセリカと能力者を研究していたが、今は裏で暗躍する存在。
「志久間……てめえの指図は受けねえぞ。」
グリードが不快そうに言う。
「指図するつもりはないさ。俺はただ、君たちの”可能性”を見ているだけだよ。」
志久間は笑う。
「君達は前の実験体とは比べものにならない力を手にした。なんせセリカのマザーの能力に加えてヴァイドソウルの核の力が上乗せならされているのだからね。」
「俺たちに何をしろと?」
ファントムが冷静に尋ねる。
「簡単なことだ。フロントコードが動き出す前に、情報網を潰せ。」
志久間が指を弾くと、テーブルの上に書類が落ちた。
「これは……?」
「フロントコードの主要な情報員たちのリストだ。」
ファントムがじっと書類を見つめる。
「……これを消せば、フロントコードの動きは鈍るか。」
「そういうことだ。」
志久間が微笑む。
「戦いは情報戦。何も、正面からぶつかるだけが策ではない。」
その夜。
フロントコードのイリスとカナデが何者かによって襲撃された。
その場に残されたのは、物質が変化した痕跡と、空間に残る念動の歪み。
事件の裏に、新たな脅威の影が動き出していた。




