第36話「予想外の依頼」
フロントコードの依頼掲示板には、今日もさまざまな仕事が並んでいた。
その中から、カナデ、レンジの2人が引き受けたのは、「とある町の警備強化」。
「なんだ、平和そうな依頼じゃねぇか。」
短髪のツンツン頭のレンジが腕を組みながら気楽そうに言う。
「うん。でも最近、周辺で小さな騒ぎが増えてるみたいだね。」
ピンクの髪のギャル風なカナデがスマホを見ながら頷いている。
「ふむふむ……まあ、私の頭脳があればどんなトラブルでも解決できるわ。」
2人は軽い気持ちで現場へ向かった。
一方別のモニター室で、セリカと迅は2人の会話を聞きながら話していた。
「やっと会えたわね。ジン。」
脳のついた杖を持ちながら座る白衣姿のセリカは笑顔でジンに話していた。
「久しぶりです。博士。ちょっと忙しくて。基地に来るのが遅くなって申し訳ないです。」
鏡月迅、こちらも白衣を着ており、20代前半の爽やかな青年。フロントコードの数少ないS級の一人だ。
普段は医者として病院にいるが前からセリカの呼ばれており、やっと落ち着いたので3ヶ月ぶりに基地に戻っていたのだった。
「いいのよ。医師としての仕事もフロントコードの仕事の内よ。でも最近こっちの状況が危なくなってきた。一度ジンとは今後の事で話しておきたかったのよ。」
セリカはモニターのカナデ、レンジの様子を見ながら今後状況を説明し始めた。
町についたカナデ、レンジはまず巡回を開始。
住民たちは穏やかで、特に目立った異常はなかった。
「ほらな、やっぱり楽な仕事だろ?」
レンジが気を抜いた瞬間──
ドォンッ!!
突如、建物が爆発し、黒い煙が立ち込めた。
「……おいおい、話が違うぞ。」
レンジはナイフを構えながら煙の中を見つめる。
煙の奥から現れたのは、黒装束の集団。
奴らはヴォイドハウルが強化された「ハウンド」と呼ばれる存在だった。
最近発見された奴らは人、もしくはアビリティーパーソンの力を吸い、より強くなった存在。それが5匹も現れた。
「おい、ただの見回りの調査依頼だよな?なんでこんなところに“ハウンド”がいるんだ?しかも5匹なんて。」
レンジは構えながらも焦ってカナデに聞いた。
「こんなはずじゃない。簡単な依頼のはずなのに!」
焦り顔でスマホをいじりながらカナデは言った。
本来カナデは基地での情報収集に優れた能力。現代のパソコン、スマホの端末を自分の脳から直接扱える能力のC級のアビリティーパーソンズだ。
戦闘の経験もないカナデは人手不足のためレンジのオマケで現場にきたにすぎない。
ハウンドは意識はないが人型がヴォイドハウルよりはっきり形どっている。1匹の強さはA級とされている。
そこにカナデの能力を使いスマホから通信が入る。
「状況はこっちでも見ているわ。レンジ、時間を稼いで!」
モニター室で映像を見ていたセリカが投げかける。
「時間稼げってか?!もって3分だぞ。」
A級とはいえ、レンジには荷が重かった。1匹相手ならなんとか倒せても5匹だと話しにならない。3分も持つかも怪しいとレンジは思っていた。
「応援を呼ぶ。それまで死なないで。」
セリカはすぐに調べ始めた。今空いてるA級以上のアビリティパーソンズの予定を別のモニターで探していた。
「こんな時に誰も空いていない?!」
迅も隣でモニターを見ていた。
「今後はこうゆう事が頻繁に起きるって事?」
悔しい顔で拳を握りセリカに言った。
「僕を現場に送って、博士。戦闘はできないけど即死でなきゃどんな怪我でも治してみせる!」
セリカは振り返らずアビリティーパーソンズを探していた。
「ダメよ。あなたが現場で怪我したら誰も治せない!」
(こんなにハウンドがまとまる事なんてなかった。これ志久間が絡んでる?)
色んな事を思うセリカだが....
そうしている間にレンジとハウンドは戦闘態勢に入っていた。
ハウンドの連中は思った通りに手強かった。
レンジの刃が飛び交うが、敵の防御が硬いうえ、数も多い。
カナデは後ろで震えて立っていた。現場経験も乏しくスマホのサポートもセリカとの通信くらいだ。
セリカも人員が見込めず焦っていた。それをただ見ているだけで何もできない迅もまた苛立っていた。
「くそっ……」
レンジは無数の傷をおい吹っ飛ばされた。瓦礫に埋もれ意識をかろうじて取れていたレンジは思った。
「これで3分はもったかな。」
シュバッ!
黒い影が空を裂くように現れた。
「休みなのに、やっぱり来ることになったか……。」
その声に、全員がハッとする。
葛城アキト、登場──。
「おいおい、遅ぇよ.....アキト。」
レンジは意識を失い直前に笑いながら言ったが、そこまま力尽きた。




