第35話:ゼロの受難!?
フロントコードの基地。戦闘や作戦会議が繰り広げられるこの場所には、いつも緊張感が漂っている。だが、今日は違った。
「やめろおおおお!! アキト! 貴様、俺様をどうする気だ!!」
ゼロの悲鳴が基地中に響き渡る。
「いいから大人しくしろって。」
アキトはゼロを片手で掴み、ぐいっと持ち上げていた。ゼロは小さな黒い龍の姿で、必死にバタバタともがいている。
その先には……なんと、ユウマが持つバスタブのような巨大な水槽が!
「お前、この前の戦いで砂まみれだったろ。風呂入れ。」
本来、どこからとまなく自由に出入りできるゼロは汚くなんてならない。たとえ汚れたとしてもアキトか生み出されるゼロは出てくる時には綺麗になっているのだ。
だがアキトはいつもゼロに罵られる事が多いため少し嫌がらせをしたいだけなのだ。
「俺様は龍だぞ! 龍は風呂になど入らん! 自然の流れのままに生きるのが——」
バシャーン!!
「はい、入浴完了。」
アキトは一瞬でゼロを水槽に投げ入れた。ゼロは水の中でジタバタと暴れる。
「ば、ばか者ーーー!! 俺様を濡らしやがったな!!」
「お前、普段アキトの肩に乗ってるんだから、臭くなったら俺が困るんだよ。」
実際普段から匂いなど微塵もしない。
ゼロが泡まみれになりながら暴れているのを見て、レンジが爆笑した。
「くくっ、ゼロのやつ、マジで犬みてぇだな。」
ユウマも苦笑いしながら、泡だらけのゼロをスポンジでゴシゴシ洗う。
「おい、やめろ! 泡立てるな! くそ、アキトのバカ!! 俺様は偉大なる龍だぞ!!」
ゼロは普段からアキトの意識に関係なく消えたり出たりできる唯一の龍だ。だがアキトが本気で意識すれば消える事はできない。今回初めて本気でゼロを消えさせない用に意識していた。
ゼロの必死の抗議を無視し、アキトはさらに追い打ちをかけるようにシャンプーを取り出した。
「せっかくだし、いい匂いにしてやるか。」
「ちょっと待て! その匂いは……ラベンダー!? やめろおおお!! 俺様はそんな可愛い匂いでいいわけがない!!」
「まあまあ、龍でも清潔感は大事だぞ?」
「くそっ、覚えてろよお前ら……俺様は復讐する……絶対に復讐する!!」
***
30分後──
ゼロはすっかりフワフワになっていた。
毛並み(?)はつやつやで、ほのかにラベンダーの香りがする。
「……。」
ゼロはアキトの肩に乗りながら、明らかに不機嫌な顔をしている。
「ゼロ、なんか可愛くなったな。」
レンジが笑いながら言うと、ゼロはギロリと睨んだ。
「この屈辱……忘れんぞ……!」
「そんなこと言って、気持ちよかったんじゃないか?」
「ふん! そんなわけあるか! 俺様は風呂なんて嫌いだ!」
ゼロはプイッとそっぽを向いたが、そのしっぽはどこか満足そうに揺れていた。
こうして、ゼロの屈辱(?)の一日が幕を閉じた。




