第30話:静寂の中で
夜が更け、フロントコードの基地は静まり返っていた。戦いが一つ落ち着いて仲間たちは、それぞれの部屋で休息をとっている。
しかし、アキトは眠れなかった。
彼は基地の屋上に出て、冷たい夜風を感じながら、街の明かりをぼんやりと見つめる。
セリカの言葉が頭の中で反響する。自分の内の正の力。それ自体は悪いことではない。だが、それだけではない。
負の力。その力もアキトは自分の中に感じていた。
「また、暴走するかもしれないな……。」
そう呟くと、勝手にゼロが出てきて小さく尻尾を揺らした。
「ま、そうなるかもしれねぇな。でも、気にしすぎてもしょうがねぇだろ?」
「気にするさ。」アキトはため息混じりに答える。「また俺の力が暴走したら、お前もどうなるか。」
フロントコードに入る前、一人で強くなろうとした時、一度暴走仕掛けていた事を思い出す。
ゼロは一瞬黙った後、フッと笑う。
「馬鹿か。俺はお前の一部だろ? そんな心配する暇があるなら、制御する方法でも考えたらどうだ?」
「……まー、そうなんだけどね。」
アキトは夜空を仰いだ。
双竜を体に取り入れて、慣らしてから確かに数段強くなった。
でも、同時に、新たな力を使う怖さもあった。
「……俺は一体、何なんだろうな。」
ゼロがピクリと耳を動かす。
「何って、お前はお前だろ。」
「そうかもな。でも……ゼロ、お前は本当に俺の一部なのか?」
ゼロは一瞬だけ黙り込む。
「……そうだろ?」
どこか曖昧な口調だった。
アキトは目を細め、ゼロを見つめた。
「お前、何か隠してることがあるんじゃないか?」
ゼロは目を逸らすようにふわりと宙に浮く。
「さぁな。お前が知るべき時が来たら、わかるかもしれねぇよ。」
アキトは深く息を吐き出し、目を閉じた。
「結局、お前もはぐらかすんだな。」
「お前こそ、悩んでばっかで前に進めるのかよ?」
「……進むさ。」
アキトは自分の手を見つめた。
この力は、まだ完全に制御できているわけじゃない。だが、それでも進まなければならない。
戦う理由は、もう見つけている。
「俺は俺のやり方で進むしかない。」
ゼロはそれを聞いて、小さく頷いた。
「なら、それでいいんじゃねぇの?」
アキトは無言で夜空を見上げる。
どこまでも広がる暗闇の中で、自分の答えを探すように。




