第29話:敵の思惑
廃墟を後にした志久間武史は、地下の隠された研究施設へと足を運ぶ。施設内は無数のモニターや試験管が並び、壁には「次世代進化計画」の文字が掲げられている。
志久間は一人で歩きながら独白を続ける。
「セリカ……君は私の考えを“暴走”だと言ったが、人間が進化しなければ滅びるという事実を受け入れなかったのは君の弱さだ。」
彼は立ち止まり、巨大なタンクの中に漂う黒い影に目を向ける。その影はゆらゆらと不気味に揺れ、タンク越しにし志久間を見つめ返すかのようだ。
「この“核”が完成すれば、世界は新しい秩序に包まれ……彼はその引き金となるだろう。」
志久間が端末を操作すると、タンク内の影が急激に活性化する。その正体は、人間ではない何か――ヴォイドハウルの核心たる存在だ。
「進化のサンプルが必要だ。彼らがこちらに近づくまで、もう少し時間がある……。」
志久間は冷ややかに微笑み、別の端末を通じて部下に指令を出した。
「準備を始めろ。“エクリプス・シード”を動かす。」
アキトは先ほどの装置の暴走を止めた影響で、意識を失っていた。フロントコードの基地で目を覚ました彼は、体中に残る痛みを感じつつも起き上がる。
セリカが心配そうにモニター越しに話しかける。
「無理はしないで。あなたは核からの負のエネルギーを直接触った。その影響で、正と負がせめぎ合ってる状態ね。」
「せめぎ合ってる?」
アキトが尋ねると、セリカは少し躊躇しながら続ける。
「心配ないわ。いずれ収まる。負のエネルギーはアキトの正の力に負けないわ。しばらく休んでなさい。」
その時、ゼロがアキトの肩に飛び乗り、不満げに声を上げる。
「あんまり俺を振り回すなよな。お前が暴走したら、俺まで巻き込まれるんだから。」
アキトはゼロを軽く撫でながら微笑む。
「今回はおまえも頑張ったもんな。」
ゼロは少し照れた様子でそっぽをむいてそ黙った。
一方フロントコートの別室。
その取調べ室の様な部屋には一人の男が捕まっていた。
先日レオと戦ったリーダー格の男だ。イリスのゲートで情報を引き出すため連れてこられていた。
男は手錠を後で掛けられており、部屋には負のエネルギーを中和する装置も隠されているので能力も封じられていた。
隣の部屋にはレオとセリカがマジックミラーごしに立ち、尋問をしている。
レオは淡々とマイクで男に言った。
「もう一度聞く。おまえはそれ以外何も知らないんだな?」
男は睨みながら答えた。
「そうだ。奴とはたまたま会って誘いにのった。人間の進化のため協力しろと。最強の力で暴れらるぞってな。」
「どうやら、ただの捨て駒ね。彼は何も知らないわ。」
セリカはマイクを通さずレオに言った。
「この強さでただの捨て駒だと。これが量産される可能性があるのか。」
レオは少しセリカを睨める様に強く言った。
「あの装置がまだあれば可能よ。あれはヴァイドハウルの力を人間に宿す装置。私の作ったマザーとは違うアビリティパーソンズを作れる装置よ。」
セリカは暗い顔でさらに続けた。
「それだけじゃない。しかもあれはまだ未完成。完成させればもっと強い能力が生まれるわ。」
レオはため息をつきながら部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
「もっと戦力がいるな。」
そう言い捨てるとレオは振り返らず部屋を出だ。
何かを決意した表情である場所に向かった。
残ったセリカはマイクを使いきつい言い方で彼に話しかけた。
「あなたの体はもっと調べさせてもらうわよ。覚悟しなさい。」
男は堂々としていたが諦めた表情でため息をついた。




