第21話「影に沈む牙」
アルバの拳がレンジを弾き飛ばし、瓦礫の上に倒れ込む音が響いた。
「くそ…!」レンジが咳き込みながら立ち上がる。
「強ぇ…」ユウマが額の汗を拭いながら、水を刃の形に変えて構える。
アルバは無傷のまま佇み、拳を軽く鳴らしてこちらを見下ろす。
「お前らじゃ退屈すぎる。次はどうする?」
「随分余裕そうだな。」アキトが前に出る。
「お前か。さっきの竜の使い手。」アルバはアキトを見据え、僅かに笑みを浮かべる。「面白い力だった。もっと見せてくれ。」
「言われなくてもな。」
アキトは双竜を握り直し、足元の瓦礫を蹴り上げると同時にアルバへ向かって突進する。
──ガキンッ!
刀と拳が激突し、強烈な衝撃が周囲に響き渡った。
「……っ!」アキトの足が後ろに滑る。アルバの拳の重さが直接身体に響く。
「遅い。」アルバがそう呟くと同時に、別の拳がアキトの腹に突き刺さる。
「ぐはっ…!」アキトの身体が吹き飛び、レンジの隣に転がった。
「アキト!」ユウマが叫び、すぐにアルバへ水の槍を放つ。だがアルバはそれを片手で受け止め、砕く。
「お前も弱い。」
アルバはユウマに向かって歩みを進める。
「っ…!」ユウマは身構えるが、冷や汗が止まらない。
その時、レンジがボロボロの身体で立ち上がり、アルバを睨んだ。
「…お前、ほんと変わらねぇな。」
アルバが足を止める。
「……レンジか。」
レンジは険しい表情を浮かべる。「昔から気に食わなかったんだよ、お前のその態度。」
「気に食わない?……違うな。」アルバは軽く肩をすくめる。「お前はただ弱かった。それだけの話だ。」
「ふざけんなよ……!」
レンジが刃を操りアルバに向かって振るうが、アルバはわずかに体をずらして避ける。
「いい加減にしろ。」
そこに低い声が割って入った。
レオが前に出て、アルバと向き合う。
「……レオか。」
アルバの目が僅かに細まる。
「俺が相手だ。」レオが険しい表情で問う。
「そっちこそ、フロントコードなんてつまらん組織に何年もいりびたって……。」アルバは少し皮肉げに言葉を返す。「変わらないな、レオ。昔と同じだ。」
「変わらないのはお前の方だ。」レオは静かに言った。「戦いが好きで、強さだけを追い求める。そのために仲間を捨てた。」
「仲間?」アルバが鼻で笑う。「俺に仲間なんて必要ない。強い相手がいればそれでいい。」
「それが、お前が消えた理由か。」
アキトが立ち上がり、レオの隣に並ぶ。
レオはしばらく沈黙した後、小さく頷いた。
「昔、フロントコードの一員だった。だが、強さを求めるあまり組織を抜けた。それ以来だ。」
「へぇ……そんな奴がいたのか。」アキトが双竜を握り直す。「なら、俺が....」
「無理だ。」レオが冷静に言う。「今のお前じゃ、アルバには勝てない。」
「……!」
レオはアルバに目を戻した。
「この場は引け、アルバ。」
「引くかどうかは俺が決める。」アルバが不敵に笑う。「まだ、こいつの力を見ていないからな。」
そう言って、アルバはアキトをじっと見つめた。
「お前の力……どこまで引き出せるのか、楽しみだ。」
アキトはゼロの方をちらりと見た。
ゼロは口を開かず、じっとアルバを睨んでいる。
「次は……もっと面白い戦いをしよう。」アルバはそう言ってアキトの方を見る。
「……本当に、化け物みたいな奴だな。」レンジが息を吐く。
「レンジ、ユウマ、2人は防御に徹しろ。」
レオが鋭く言う。
「……ここからは少し本気を出すよ。」
アキトが静かに呟いた。




