第20話:「深淵の咆哮」
廃都市「ノクス」。
太陽が傾き、無人の街に冷たい風が吹き抜ける。
アキト、レオ、レンジ、ユウマはある任務にあたっていた。
「妙に静かだな。」
レンジがコートの下のナイフに触れながら、崩れた建物を見上げた。
「人の気配がまるでない。」
ユウマが軽く伸びをしながら、アキトの後ろをついていく。
「何か気配を感じる。いやな感じだ。」
アキトは双竜を腰に収めたまま、瓦礫の道を歩く。
「ナイトメアの気配に似てる」
アキトがボソリと呟く。
「油断するな。」
レオが冷静に警告した。
「ノクスには“化け物”がいる。」
「化け物?」
アキトがレオに視線を向けると、レオは少し目を細める。
「アルバ。元S級のアビリティパーソンズだ。」
「……元S級?」
「お前は知らないだろうな。」
レオは淡々と続ける。
「任務中に行方不明になったが、奴はまだここにいる。」
「S級が逃亡?何が目的だい?」
アキトはうすら笑う。何か楽しげな予感がした。
「気を抜かない方がいいぜ。」
ゼロがふわりとアキトの肩に乗る。
レオが説明を続ける。
「アルバは純粋な肉体の強さだけでS級になった男だ。」
「能力は?」
「単純な肉体強化だ。」
「……は?」
「アイツは能力を使い肉体の強化のみで化け物級の強さを持ってる。」
レオの言葉にアキトはさらに笑顔になった。
「そんな奴が実在するのか?」
「そういう奴もいるってことだ。」
レオが双剣を腰から外し、静かに構える。
「来るぞ。」
ユウマの背後、崩れた瓦礫の影が不自然に揺れた。
「!!」
ユウマが反射的に跳ぶ。
次の瞬間――瓦礫が粉砕された。
「何だ、今の…!」
飛び散った瓦礫の先に、筋肉質な男が立っていた。
「やはりか。」
レオが低く呟く。
「レオ。あれがアルバって奴か?」
「ああ。」
「確かに化け物って感じだな。」
アキトは双竜に手をかけるが、アルバは一切の言葉を発しなかった。
ただ――獣のような眼光でこちらを見据える。
「ユウマ、レンジ、後ろに下がれ。」
レオがじりじりと前に出る。
「お前らが前に出る相手じゃない。」
「マジかよ…。」
ユウマが少し気圧され、距離を取る。
「まあ、どんな化け物でも斬れるなら問題ないが。」
アキトが前に進み出る。
「……アキト、後ろにいろ。」
「いや、戦えるよ。」
「お前じゃ無理だ。」
レオの静かな一言に、アキトは少し不満げに目を細める。
「力試しってわけじゃないけど、試してみる価値はあるだろ。」
「勝手にしろ。」
次の瞬間、アルバが動いた。
その速さは視認できないレベルだった。
「っ…!」
アキトが双竜を抜いて振り下ろすが、アルバは拳ひとつで双竜を受け止める。
「こいつ…!!」
衝撃でアキトの腕が痺れ、地面にひざをついた。
「これは強い――」
「大丈夫かよ」
ゼロが苦笑しながらアキトの肩で揺れる。
「このままじゃ、アイツには勝てねぇよ。」
「そうだな…!」
アキトは再び立ち上がり、双竜を構えるが――
アルバの拳がアキトに向かって振り下ろされる。
「!!」
瞬間、レオが割り込んだ。
「下がれアキト。」
レオの双剣がアルバの拳を受け止め、火花が散る。
「まだお前が出る幕じゃない。」
アキトはまだどこか余裕げがある。
瓦礫が崩れ、アルバは再び距離を詰めてくる。
アキトはその背中を見つめながら、自分の中で何かが軋むのを感じていた。
(次の…龍が必要だな。)
その思いが胸の奥でわずかに疼き始める。




