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第19話「白衣の異能者」


とある総合病院――夜


夜の病院は静かだった。消毒液の香りが漂い、規則的なモニター音だけが響いている。


緊急搬送された患者が運び込まれ、手術室のランプが灯る。


「先生、患者の容態が急変しています!」


「落ち着いて。俺が担当する」


白衣を翻しながら現れた青年が、手術室に足を踏み入れた。

彼の名は――鏡月きょうづき じん

20歳の若き医師であり、“アビリティパーソンズ”でもある。


迅の能力は**「想像再生」**。

脳内で描いたイメージ通りに、あらゆる傷や病を癒す力。

その治癒能力の高さから、S級に認定されていた。


「では、始めようか」


手袋をはめ、迅は患者に手をかざした。


奇跡の治療


迅の手から柔らかな光が溢れる。


「……大丈夫。痛くはしないから」


光が患者の体に染み渡るように広がり、傷や内出血が次々と癒えていく。


「まるで魔法みたい……」

看護師が息を呑んで言った。


「これは医術だよ」迅は笑う。「ただ、俺は少し“特別”なだけさ」


数分後、患者の容態は安定し、手術は無事に終わった。

ベッドで眠る患者を見届け、迅はゆっくりと手術室を出る。


「お疲れ様です、先生」


「ありがとう。今日はもう帰っていいよ」


静かな病院の廊下を歩きながら、迅は窓の外に視線を向けた。


(……医者として、人を救うことが俺の役目だ)


月明かりが彼の横顔を照らしていた。


一般診察の傍らで


翌日。迅は病院の外来で一般患者の診察をしていた。


「次の方、どうぞー」


「先生、最近ずっと肩が痛くて……」


「じゃあ、診てみましょうか」


迅は丁寧に診察しつつ、能力は使わず通常の医術で対応する。


(“異能”を使わなくても、人を救えるならそれでいい)


そう思いながらも、時には能力が必要となる場面も多かった。


診察が終わるころ、一人の子供が診察室に入ってきた。

少女は青白い顔で、抱えた人形を強く握りしめている。


「……こんにちは、お嬢ちゃん。体調が悪いのかな?」


「おなかが……痛いの」


迅は微笑み、少女の額に手を置いた。


「よし、ちょっとだけ我慢してね」


光が淡く灯り、少女の顔に赤みが戻っていく。


「……治った?」


「うん。たぶんね」


少女は静かに微笑んだ。


「ありがと……お医者さん」


「どういたしまして」


少女が人形を抱えたまま母親のもとへ戻るのを見送り、迅は机の上に視線を落とした。


「少しは、役に立てたかな」


医師としての使命


その日の夜、病院の屋上で迅は一人、夜風に当たっていた。


「……やっぱり、こうして人を救うのが一番だな」


戦うアビリティパーソンズもいる。

だが、迅は治すことで役目を果たす道を選んでいた。


(たとえ戦わずとも、人を救えるのが俺の“力”だ)


静かな夜空に向けて、迅はそっとつぶやいた。


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