第18話「虚ろなる影」
深夜の街を覆う濃霧の中、フロントコードのメンバーたちは静かに歩みを進めていた。
市民が突如として消える怪事件――。警察からの依頼を受け、アキトたちは調査に向かっていた。
「イリス、頼む」
アキトが声をかけると、イリスは無表情で頷き、小さな手をモニターにかざした。
「ゲート、開く」
青白い光がモニターから放たれ、円形のゲートが形成される。アキト、ミナ、ディノ、レオが次々にその中へと飛び込んだ。
霧に包まれた街角
ゲートの先にあったのは、白い霧に沈む閑静な街角だった。
「視界が悪すぎる……こんな霧、普通じゃねぇな」
ディノが周囲を見渡しながら警戒を強める。
「気をつけて。なんか嫌な感じがする」
ミナが電気を纏った槍を片手に持ちながら背中をディノに預ける。
「この感覚……」
アキトは霧の奥に微かな“気配”を感じていた。ゼロがアキトの肩に小さく座り、目を細める。
「アキト、来るぞ」
その瞬間、霧の中から足音が響いた。
現れたのは、黒いロングコートを纏った青年だった。
「よく来たな。」
「……また会ったね。」
青年は唇の端を歪め、名乗る。
「“ナイトメア”だ。そう名乗る事にした。」
対峙する影
ナイトメアの足元から黒い影が広がり、霧が一層濃くなる。
「これが原因か」
レオが冷静に状況を分析する。
「おい、さっさと片付けるぞ」
ディノが前に出ようとした瞬間、ナイトメアが指を軽く振ると、霧が触手のように変化して地面から這い出した。
「そう簡単にはいかねぇさ」
「くそっ、幻覚か!?」
ディノが能力「重圧の領域」を発動し、触手を押さえ込む。しかし、影は霧に溶けるように消えていった。
「……違う、これは幻覚じゃない。こいつ自身の力だ」
アキトが冷静に状況を見極める。
「ほう、お前は見えているようだな」
ナイトメアは興味深げにアキトを見つめる。
「お前も俺と同じだろう?」
「何の話だい?」
「“自分が何者か分からない”。それがお前の正体だ」
アキトは息をのむ。心の奥に沈んでいた不安が、わずかに揺らぐ。
(こいつは……何を知っている?)
ゼロの声
「気にするな、アキト」
心の中にゼロの声が響く。
「こいつはお前を惑わせようとしてるだけだ」
「でも、あいつは俺と似てるのか?」
「違う。こいつは影に囚われた存在だ。お前は光を掴める」
ゼロの言葉に、アキトの迷いが少しだけ晴れる。
戦闘開始
「アキト、どうする?」
レオが背後で指示を待つ。
「……こいつは俺がやる」
ナイトメアが面白そうに口元を緩める。
「いいだろう。お前と“遊ぶ”のも悪くない」
ナイトメアが影を操り、霧の中から無数の黒い触手を繰り出す。アキトは双竜を抜き放ち、触手を次々と切り裂いた。
「おぉ、やるじゃねぇか」
ディノが感心したように言うが、影は次々と湧いてくる。
「霧が濃くなってる……!」
ミナが警戒しつつ槍に電流を纏わせる。
「ナイトメアの力が本格的になってきたな」
レオは表情を崩さず、静かに警戒を強める。
「ゼロ、離れてろ!」
ゼロが肩から飛びたって離れた。
「行くぞ。」
アキトが双竜を振るうと、刀身が黒く輝き、霧を切り裂いた。ナイトメアは驚いたように後退する。
「なるほど、これは厄介だ」
ナイトメアは影を引き、霧の奥へと消えようとする。
「今日はこの辺で退くとしよう」
「待て!」
アキトが追いかけようとするが、ナイトメアの姿は霧と共に消えてしまった。
「また会おう。次はもっと深く、お前を“知る”としよう」
事件解決後
霧が晴れ、静けさが街を包む。
「まったく、厄介な奴だったな」
ディノが頭をかきながらため息をつく。
「消えるの早すぎでしょ……」
ミナも不満げだ。
「だが、また現れるはずだ。気を引き締めろ」
レオが冷静に釘を刺す。
アキトは無言で夜空を見上げる。
(ナイトメア……あいつは一体)
ゼロが静かに肩に戻り、アキトは双竜を収めた。
「これで終わりじゃない。まだ、何かが始まる気がする……」
アキトは深刻な顔をするが、どこか楽しげな用に呟いた。




