第16話:夜の街に潜む影
冷え切った夜の空気が街を包んでいた。
アキト、ミナ、ディノは北区の事件解決を終え、イリスのゲートを通じてフロントコードの拠点へ帰還していた。
「子供の失踪事件、終わったわけじゃないのよね。」
ミナが受付で報告書をまとめながら言う。
「今日のやつはただの模倣犯だろう。」
ディノが腕を組みながら壁にもたれかかる。
「じゃあ本当の犯人はどこにいるんだ?」
アキトが窓際で外を見つめる。
ゼロが彼の肩に乗り、ふわりと尻尾を揺らした。
「まぁ、ヴォイドハウルの仕業じゃないなら楽な仕事だろ。」
「楽なら警察がやってるわ。」
ミナがゼロを睨みつけるが、ゼロは悪びれた様子もない。
「いなくなった子供が戻らないのは気味が悪い。」
ディノが低く呟く。
「問題はそこ。戻らない──それは普通じゃない。」
アキトは壁から背を離し、ゼロを撫でながら答える。
──その時、拠点の扉が重々しく開かれた。
「アキト。」
真剣な声が響く。
入ってきたのはレオだった。
レオは短く刈り込まれた黒髪に鋭い目つきの青年で、フロントコードの中でも指揮官的存在だ。
「何かあったのか?」
アキトが振り向くと、レオは無言で書類を差し出した。
「北区第15防衛線周辺で、“黒い影”の目撃情報が増えている。」
「黒い影?」
ミナとディノが書類を覗き込む。
「失踪事件の子供たちが最後に目撃された場所にも、この影がいたらしい。」
「ヴォイドハウルか?」
「いや、連中の痕跡はない。」
レオは静かに首を振る。
「影って、幽霊じゃあるまいし。」
ゼロが面倒くさそうに呟くが、レオの視線が鋭く突き刺さる。
「冗談を言っている場合か。これは放っておけば確実に拡大する。アキト、お前も動け。」
「……了解だ。」
アキトはゼロを肩に乗せながら立ち上がる。
「ミナ、ディノもついていけ。」
レオが付け足した用に言う。
「また出動?」
ミナが槍を肩に担ぎ直し、苦笑する。
「まぁ、今のうちに稼いどくさ。」
ディノが軽口を叩きつつ、すぐに身支度を整えた。
「結局私達はおまけみたいなものね」
ミナがボソッと呟く。
──夜、北区
イリスのゲートによって、アキトたちは目撃情報のあった路地裏に降り立った。
イリスは少し距離を置いて人形を抱え、ゲートの維持に専念している。
「やっぱり嫌な気配ね。」
ミナが静かに槍を握る。
「妙に静かだな。」
ディノが辺りを見渡しながら重圧の領域をわずかに展開する。
「アキト、どうする?」
アキトは言葉を返さず、ゆっくりと双竜の柄を握った。
「……感じるか?」
ゼロが小さく囁く。
「……ああ。」
アキトの視線の先、路地の暗闇が揺らいだ。
「いるな。」
「影が動いてる……。」
ミナが槍を構える。
その瞬間、暗闇から静かに人影が浮かび上がった。
「……誰だ?」
アキトが警戒を強める中、その“影”はじっと彼らを見つめていた。
「ディノ。」
「任せろ。」
ディノが一歩前に出て、重圧の領域を一気に広げる。
「ぐっ……!」
影がかすかに歪む。確かにそこに存在していた。
「ただの影じゃない──。」
ディノが歯を食いしばる。
「引き裂くぞ。」
アキトが双竜を抜き放った。
──闇に蠢く正体不明の敵。
彼らの前に立ちはだかる“影”の正体とは。




