第15話:龍の爪痕(後編)
冷たい風が吹き抜ける北区第15防衛線。
アキト、ミナ、ディノは人気のない通りを静かに進んでいた。
「この辺り、人が消えるって噂があるのよね。」
ミナが槍を肩に乗せ、周囲を見渡す。
「けど、敵の気配は感じないな。」
ディノが重力のフィールドを微かに展開しつつ、慎重に進む。
「ヴォイドハウルの関与はないらしいね。だから普通の事件なんでしょ。」
アキトは双竜を軽く握りながら冷静に答える。
「普通の事件なら、私たちが呼ばれるの変じゃない?」
ミナが疑問を投げかける。
「確かにな。」
ディノがうなずくと、ゼロがふわふわと宙を舞いながら二人の間に割り込んだ。
「いや、単純に警察がビビってるだけだろ?」
ゼロがニヤリと笑う。
「お前、警察に喧嘩売るなよ。」
アキトがゼロを睨む。
「チッ、堅いなアキトは。」
ゼロがため息をついた。
──その時、通りの奥から微かな悲鳴が響いた。
「今の……!」
ミナが槍を構え、一気に駆け出す。
「おい、待てって!」
ディノが慌てて追いかけるが、ミナの足は速い。
「いつもこれだ。」
アキトが小さく苦笑しながらも後を追う。
路地裏
ミナがたどり着いた先には、小さな少年が怯えた表情で壁際に座り込んでいた。
彼の前には、筋肉質の男が立ちはだかっている。
「子供相手に何してんの?」
ミナが槍を向ける。
男はゆっくりと振り返り、目つきを鋭くする。
「邪魔するな。」
「そっちこそ、その子から離れなさい。」
ミナが前へ踏み出した瞬間、男が拳を構えた。
「来るぞ!」
ディノが重圧の領域を展開し、ミナの前方に防壁のような重力場を作る。
「ふん。」
男が殴りかかろうとした瞬間、突然彼の体がその場で沈み込んだ。
「な、なんだこれは……!」
「俺の能力、『重圧の領域』だ。」
ディノが自信ありげに口角を上げる。
「ナイス、ディノ!」
「油断するなよ。」
そのままミナが槍を振りかざし、電流を槍に流し込む。
雷が走り、男の足元に火花が散った。
「くっ……!」
男は体勢を崩し、ついに膝をついた。
「決まりね。」
ミナが槍の先端を男の喉元に突きつけた瞬間──
「待て。」
アキトが静かに歩み寄り、ミナを制止する。
「あんたは何者だ?」
アキトが問いかけると、男は悔しげに顔を上げた。
「俺はただの親だ。」
「親?」
男は少年のほうを一瞬見つめると、小さく頷いた。
「このガキは俺の息子だ。」
「……どういうこと?」
ミナが槍を下ろし、アキトが少年に近づいた。
「話を聞かせてもらおうか。」
──数分後
男は事件の経緯を話し始めた。
消えていたのは彼の息子で、町の不良たちに連れ去られたらしい。
男は独自に息子を探し回り、ついに見つけたが──
その際、不良たちが逃げた後に残された少年を守るため、通報もせず自分で解決しようとしていたのだ。
「なるほどね。」
アキトは事情を理解し、双竜を鞘に収めた。
「お父さんが少し過剰防衛になっただけね。」
ミナが笑みを浮かべる。
「まぁ、無事ならいいんじゃねぇの。」
ゼロがあくびをしながら肩をすくめる。
「けど、他にもこの辺りで消えた子供はいるらしい。」
ディノが男の話に耳を傾ける。
「じゃあ、この件はまだ終わってないってことか。」
アキトが表情を引き締める。
「次の手がかりを探さないとね。」
その言葉に全員がうなずいた。
事件は解決したかに見えたが、これがさらに大きな陰謀の入り口であることに、まだ彼らは気づいていなかった──。




