第14話:龍の爪痕(前編)
──フロントコード本部。
アキトは壁にもたれかかり、ゼロを肩に乗せていた。
ミナとディノが目の前で口論している。
「だから、私の槍のほうが速いって言ってるでしょ?」
ミナが自慢げに槍を回す。
「速くても範囲が狭いんだよ。俺の重力は全体を抑えるんだ。」
ディノは腕を組み、得意げにミナを見下ろす。
「その重力が遅いから、私が先に敵を倒してるでしょ。」
「いや、先に動いたのは俺だろ?」
「仲わるいのかな?」
アキトがボソリと呟いた。
「まぁまぁ。」
ゼロがアキトの肩でくつろぎながら小声で囁く。
「どっちも可愛いじゃねぇか。特にミナちゃんはな。」
「お前、ミナにちょっかい出そうとしてるのか?」
「バレたか?」
ゼロが悪戯っぽく笑う。
「当たり前だろ。」
そんなやりとりをしていると、神城イリスがひっそりと部屋に入ってきた。
彼女は大きなモニタを抱えたまま、静かに近づいてくる。
「……着いた。」
「イリスか。」
ミナが声をかけるが、イリスは黙ってうなずくだけだった。
アキトはイリスの背後からモニタを覗き込む。
「どこへ飛ぶ?」
「北区第15防衛線。」
イリスがボソリと答える。
ディノが眉をひそめる。
「防衛線ってことは、何か事件か?」
「人の消失事件が起きてるらしい。」
ディノが説明する。
「国の警察じゃ対応できないから、俺たちに依頼が回ってきた。」
ミナが槍を肩にかけて笑う。
「ま、私たちにかかればそんなのすぐ解決でしょ。」
「お前が先走るから、面倒になるんだよ。」
「え?そうだった?」
ミナが悪びれずに首を傾げるのを見て、アキトは苦笑する。
「じゃあお願いしまーす。」
ディノがイリスに言った。
イリスは無言でモニタに触れた。
──瞬間、ゲートが目の前に開く。
「便利だよな、その能力。」
ディノが感心するように呟く。
「A級だしね。」
アキトがゲートをくぐると、ディノとミナも続いて中へ入った。
ゼロはミナの肩に飛び移る。
「お、近いな。」
ゼロがミナの耳元で小さく囁く。
「今度、一緒に散歩でもどう?」
「嫌。」
ミナは即答してゼロを無造作に払いのけた。
「ちょっ、冷てぇな!」
ゼロがふわふわと浮きながら苦笑する。
「ゼロ、あんまり絡むな。」
アキトが釘を刺す。
「分かってるって。」
ゲートを抜けると、冷たい風がアキトたちを迎えた。
目の前には人気のない通りが広がっている。
「さて……事件の匂いがプンプンするな。」
アキトは双竜を握りしめ、周囲を警戒した。
「どっちが先に見つけるか、勝負ね!」
ミナが槍を構える。
「またかよ。」
ディノが溜息をつくが、すでに手をかざして重圧の領域を展開している。
「アキトっていったよね?今回は私たちについてきて。力見たいから。」
ミナがアキトに言う。
「わかったよ。援護する。」
アキトは静かに双竜を構え、彼らの後ろからついていく。
この事件が、自分をフロントコードの仲間に認めさせるきっかけになることを信じて──




