第11話:理由
瓦礫の散らばる薄暗い路地に、アキトとレオが立っていた。
目の前には黒い霧のような残骸──再生し続けるヴォイドハウルの影が漂っている。
「……しつこいな。」
アキトが双竜を握りしめ、苛立ちを抑えながら睨む。
「まだ動きそうだ。」
レオは冷静に刀を構えた。
「こっちが休む暇もねぇ。」
アキトの肩に乗ったゼロが欠伸混じりに言った。
「アキト、お前の龍、そろそろ呼び出して楽にしようぜ。」
「……今はまだ出さないよ。」
アキトは双竜を見つめながら小さく答える。
──感じている。
自身の中に眠る“もう一匹の龍”の存在を。
しかし、それは呼ぼうとしても応えない。
「まだ力が足らないか……。」
レオがその様子をじっと見つめた。
「何か隠しているな。」
「気のせいだろ。」
「まぁいい。」
レオは再び影に目を向けた。
「だが、今のままじゃヴォイドハウルは片付かない。」
アキトが何か返そうとしたその時、背後から軽やかな足音が響く。
「二人とも、こんなところで油を売っていていいのかしら?」
白衣を翻して現れたのは、綾峰セリカだった。
「セリカ……。」
「遅かったな。」
レオが軽く顎をしゃくると、セリカは肩をすくめてみせた。
「私は戦う役じゃないからね。」
セリカはそのまま二人の横を通り過ぎ、ヴォイドハウルの影を見下ろした。
「何度も再生してるわね。面倒な相手だけど……あなたたちなら何とかできるでしょう?」
「そりゃどうも。」
アキトは苦笑しながら、再び双竜を構える。
「でも、こっちにも限界があってね。」
「限界ねぇ。」
セリカが興味深げにアキトを見つめた。
「その言葉、本気かしら?」
「どういう意味かな?」
セリカは目を細め、杖をゆっくりと突き出す。
「ねぇ、アキト。強さを求めてるんでしょう?」
「……。」
「それなら素直にフロントコードに入りなさい。」
アキトは目を伏せる。
「興味はあるが……。」
「迷ってるの?」
セリカの声が少し柔らかくなる。
「あなたが求めているのは“強さ”だけじゃないでしょう?」
アキトは答えず、双竜を握る手に力を込めた。
──強さを求める理由は単純ではなかった。
まだ呼び出せない“龍”の存在が心を揺らしている。
それだけじゃない。
「ヴォイドハウルの正体を知りたいんだ。」
「正体?」
レオが横目でアキトを見る。
「……何か感じてるのか?」
「あぁ。」
アキトは静かに答えた。
「ヴォイドハウルはただの敵じゃない。俺たちと、何か繋がっている気がする。」
セリカの目が少しだけ鋭くなった。
「面白いわね。」
「セリカ、何か知ってるのか?」
「さぁ?」
セリカは笑みを浮かべ、はぐらかした。
「でも、知りたいならフロントコードに入るのが近道よ。」
「……。」
「あなたがフロントコードに入れば、私たちも色々と動きやすくなるの。」
「そんなに期待されても困る。」
「期待してるわけじゃないわ。ただ……あなたの力が必要だってこと。」
アキトは深く息を吐いた。
「わかった。少し考えてみる。」
「少しじゃなくて、しっかり考えてちょうだい。」
セリカは微笑みながら背を向けた。
「まぁ、あなたはどうせこっちに来るって思ってるけど。」
「……なんでそんなことがわかる。」
「人の心を読むのは得意なのよ。」
アキトは苦笑しながら、再びヴォイドハウルに向き直った。
「さぁ、片付けるぞ。」
レオと共に双竜を振るい、再び影との戦いが始まり、
ヴァイドハウルを一掃した。




