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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界義賊漫遊記

短編2作目です。

今回は連載に発展出来そうな作品として、冒険譚風に書いてみました。評価が前作より大きかったら、連載にしようと考えています。

評価やコメントを頂ければ幸いです。

俺の名はラッツ.コワルスキー。コワルスキー伯爵家の庶子だ。母は夢みがちな女だったらしく、現伯爵の種で俺を上手く当てたのをいいことに妾になろうとしたようだが、産後に体調を崩してそのままだったらしい。そんな俺は執事見習いという名目で下男として伯爵家に雇われている。(と言っても給金なんて貰ったことなど無いのだが。)


「ラッツ!!いつまで掃除してるんだ!早くしろ!」


「はい、ただいま。」(あんたがこぼしたワインを片付けろって命じたんだろうが。1分も経って無いってのに。)


「はっ!あの女の子供らしく鈍くて卑しいことね!どうせ今日の儀式でも碌な職業を受け取るはずがないわ!」


「全くだね!こんなのが兄だなんて反吐が出るよ!」


この世界の子供は、10歳の時に儀式を受けて職業を受け取ることが通例となっており、俺と嫡子である異母弟のビートも今日儀式を受ける。しかし、今年は事情が異なっていた。「異世界の偉人の名を冠する職業を授かった者はその国の命運を左右するほどの才覚に恵まれる。」そう女神様からのお告げが全世界に下ったのだ。


「ビート、お前なら偉人の名を冠することができるだろう!期待しているぞ!」


「はい!父上!」


(いつも通り、目をかけるのは異母弟のビートだけか。まぁ、今更あんな男に期待されたくも無いが…)


無駄に華美な装飾を纏った3人の5歩後ろを侍従服を着た黒髪の俺が着いていく。いつもの体制だ。そうして3人は馬車の中へ、俺は御者台に乗って馬を操り教会へ赴く。


「ラッツ!馬車を停めたらすぐに来いよ!庶子のお前にも儀式を受けさせてやるだけありがたいと思え!」


「はい、感謝しています。」


馬を繋いで中に入ると、すでに儀式が始まろうとしていた。


「それでは一人ずつ名前を呼びますので、順番に水晶に手を置いてください。」


大司教がそう言って一人ずつ名前を読み上げていく。そうしてる内にビートの番となり、奴が手を置いた水晶からステータス画面が出る。


「ビート.コワルスキー

職業:浅井長政・スキル:槍術レベル5、剣術レベル6、軍隊指揮レベル4」


「おお!素晴らしいぞビート!名前持ちの職業を受け取るとは!さらに我が家にふさわしい将軍向けのスキルとは、本当にすごいぞ!」


「ありがとうございます!父上!」


ちなみに、スキルにあるレベルとはその人が到達できる技術力の上限のことで最大値は10である。つまり今回のビートのスキルレベルは平均前後ということなのだが、名前持ちということで有頂天になってるようだ。


そうこうしてる間に今回最後の俺の番が来たようだ。壇上に上がって水晶に手をかざす。


「ラッツ.コワルスキー

職業:鼠小僧・スキル:スナッチ、???、暗器術レベル10、闇魔法レベル10、?????」


「文字化けスキルだと!しかもスナッチとは盗みということではないか!ふざけるなよ、ラッツ!」


文字化けスキルは解放条件が成立すれば強大な力を得られるが、その解放条件が分からないまま老いて死ぬことが多いため、一般的にはハズレと思われているのだ。


「こ、コワルスキー伯爵。落ち着かれよ。それに彼も名前持ちではないですか。」


「ええい、黙れ!こんな盗人など子でもなんでもないわ!」


伯爵はキレ散らかしていたが、俺はそれどころではなかった。


(俺、転生してんじゃん!)


水晶にかざした時に、ハッキリとそのことに気がついたのだ。なんとなくこの世界と違う別の世界の記憶があるのは感じていたけど、こんな形で前世を思い出すとは…とはいえ、まずは。


「ご不快にさせてしまい申し訳ございません、旦那様。」


「そうだ!お前はただの使用人だ!下男だ!それを弁えろ!」


「あなた、もう必要なことは済んだのだし、帰りましょう。」


「そうだな。おいラッツ!入り口に馬車を回しておけ!」


「かしこまりました。」


恭しく返事をするが、内心ではどうやって家を出るか算段を考えるラッツ。


そしてその帰り道、馬車の中ではビートの職業やスキルのことを皮切りに、奴の婚約者を選定することが会話の話題となっていた。


「そういえば先程、同じく名前持ちの職業を授かった侯爵家の長男がいたな。確かジェイス.グリードだったか、そこの2歳下の妹を婚約者にできないか打診してみよう。」


「あのイケ好かない女ですか?あんなのと結婚しなければならないのですか?」


「そう言うな。名前持ち同士の縁は繋いでおくに越したことはない。特に今年の儀式に王族の子はいなかったから、我が家と同盟を組めば貴族派の力が更に増すぞ!」


そんな皮算用をする伯爵に内心呆れ果てる。そもそも侯爵家は国王派の忠臣で、貴族派を毛嫌いしてるというのに。


(しかし、浅井長政って同盟を組んだ織田信長の妹と結婚したのに、それを裏切った事で自害した上に家も没落させた武将じゃなかったっけ。まぁ、考えても仕方のないことか…多分、俺はこの後…)


馬車を停めたらすぐに執務室に来るように伯爵に言われたラッツは、言われた通りにする。そして部屋に入るなり、


「ラッツ!貴様のような泥棒をこの家に置いておくことなどできん!即刻出ていけ!」


そう言い渡された。


「旦那様、お話が見えないのですが…確かに、先程授かったスキルはそのように見えるかもしれませんが、私はこの屋敷で後ろ暗いことはしておりません。」


「まだシラを切るか!侍女長から備品や食料が時々減っているとの報告は受けていたが、貴様がスキルを使って盗んでおったのだな!」


「やはり泥棒猫の子も泥棒なのね!さっさと出て行ってちょうだい!」


取り付く島もないとはこのことか…伯爵の後ろでニヤついてる執事長と侍女長もどうせグルなのだろう。そもそも、スキルは先ほどの儀式で言い渡されない限り絶対使えないというのに。まぁ、俺としてもいずれこの家を出ようとしてたから、遅いか早いかか。


「かしこまりました。早急に荷物を纏めます。」


「何を言ってる!お前の持ち物など無いではないか!やはり盗んでいたのだな!それらは全て没収だ!この分なら未払いの給金も渡さなくて良いな!」


(初めからこれが狙いか…)


「分かりました。では、これにて屋敷を辞させていただきます。失礼します。」


「ふん!初めからそうすれば良いのだ!2度と私達に顔を見せるなよ!」


その言葉を尻目に俺は屋敷を出た。


「さて、まずはスキルの確認だな。」


王都の広場で一息ついた俺は、ステータスボードを開いてスキルを確認する。文字化けスキルは触っても反応しない。やはり解放条件が必要なのか。闇魔法と暗器術は特訓する他無いな。スナッチは制限こそあるものの、現状でもなんでも盗めるようだ。


(確認してみたいな。何かいい相手は…)


「いやー!ひったくりよ!誰か捕まえて!」


声のした方を見ると男が財布を手にして走ってくるではないか。


(ちょうどいいな。)


ラッツはその男にタックルをかましてこけさせる。しかし、男は素早く立ち上がり、再び逃げ出した。しかし、


「君、大丈夫かい。」


「えぇ、まぁ。」


「騎士さん!いいから早く財布を取り返してよ!」


「あぁ、財布ってこれですか?」


「えっ!?どうして!?」


「さっきぶつかった表紙に男が落としたみたいですね。」


勿論、そんなことはない。これはスナッチのスキルを使って奪い返したものだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


スキル:スナッチ


自分の視界にいる人間から物を盗む。ただし、悪人からしか盗むことは出来ない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


念のためにあの男しか見えないくらい近づいてから発動してよかった。それに、財布をスナッチすると意識してたから、あいつの財布も一緒に奪えたのはラッキーだった。これを軍資金にしよう。


「はい、どうぞ。」(ピロン♪)


「ありがとうございます!助かりました。」


「ご協力感謝します。」


「いえいえ。では、俺は急ぐのでここで。それじゃ」


俺は急いで路地裏に入り込み、さっきの音の正体を探る。どうやら先ほどの行動で文字化けスキルのうちの一つが解放されたらしい。


「こんなに簡単なのか?まぁいいや。とにかくスキル内容を…ほう、なるほど。」


文字化けスキルを確認していると…


「…っぐ!」


突然背中に激痛を感じる。どうやら刺されたようだ。


「っは!まさか目標の方から出てきてくれるとはな!探す手間が省けたぜ。」


うつ伏せに倒れてるせいで顔は見れないが、声からして男だろう。


「このナイフには麻痺の状態異常が付与されててな、刺した奴は動けないままジワジワ死んでいくって寸法よ。おっと、自己紹介くらいしとくか。俺はキラー。この辺じゃ知られてる殺人鬼だ。」


「…!」


「恨むんなら依頼人のコワルスキー伯爵を恨みな。こっちも生活がかかってるからさ。ま、遊びを兼ねた仕事だから、俺としちゃあ大満足なんだけどよ。ハハハ!」


(くそっ!どこまでも腐った奴らだ!こうなったら…)


「じゃあな。そこでのたれ死んでろ…がはっ!」


キラーは突然血反吐を吐き、その場にうつ伏せで倒れ伏した。


「ふぅ、上手くいったか。」


「な、なんでテメェは動けるんだ…」


「さっき獲得した文字化けスキルのおかげだよ。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


スキル:???→ギフト


自分が所持しているもの(状態異常を含む)を相手に譲渡することができる。


解放条件:悪人からスナッチしたものを善人へ譲渡すること。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(状態異常も譲渡できるから、それを含んだ傷ももしかしたらと賭けてみたが、当たりだったようだ。そしてこの解放条件、どうやら鼠小僧特有のスキルらしいな。)


「文字化け…スキルだと…くそ、誰か、」


「おっと、そうはさせない。」


その間に俺は奴の声と連絡手段の道具をスナッチする。そして、それを起動すると…


「あー、あー。こちらキラー、目標の排除に成功。以上だ。」


「…!!」


「どうだ?自分の声を生で聞いた感想は?」


「〜〜〜!!」


「これであんたは助けも呼べなくなった。けど安心しろ。すぐに警邏隊を呼んできてやるから。指名手配犯として大人しく牢屋生活でも送っとけ。」


そう言ってラッツは詰所へと慌てた風を装って走り出した。


そして翌日、新聞には昨日の職業授与式について大々的に報道してあったが、その片隅に一人の指名手配犯が確保されたことが載っていた。ラッツはそれを昨日の内に乗り込んだ乗り合い馬車で読んでいた。


(またいつ追っ手が来るかわからない。力をつけなくちゃな。)


そう考えたラッツは悪政を敷く人間が多い西側に向かう馬車に乗っていたのだ。


(悪銭身につかずってことを証明してやろう。その金で身の周りを守ってくれる奴隷なんかを購入したいな。)


そう物思いに耽りながら、馬車に揺られて旅に出るのだった。

いかがでしたでしょうか?

連載になったらクーデレ猫獣人や、のじゃエルフなどをヒロインとして考えています。

是非ともよろしくお願いします。

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