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なっちゃんさん、回復

 翌日、なっちゃんさんは大分良くなっていた。熱は平熱になっていたし、咳もなかったし、声も枯れていなかった。どこか挙動不審な、というか落ち着きがないような様子だったのは、

「私、変なこと言ってないよね」

 記憶がない部分があったようだ。言いすぎでなければ、殺気立ってさえいるようにも感じられた。となれば、僕の記憶は明晰だったのだが、

「言ってませんよ」

 安心させるのが先決だ。

「本当に?」

 ここまで疑り深いと言うか執拗に反芻するのは珍しい。

「本当ですよ、何か心配なことでも?」

「……悪、変な夢見たような気がするだけ」

 言いにくそうだった。非常に歯切れが悪い様子。

「僕も風邪ひいたときには悪夢みたいなもん見ますよ。なっちゃんさんはただ食べたいものを教えてくれただけですよ」

「……そう。手間をかけさせたね」

 確信はしていないだろうが、一応は受け入れてくれたとみていい。

 昼食の時、

「あのさ、君、部屋の、なんかいろいろ見た?」

 ご飯を食べる姿勢で顔を上げないままおもむろになっちゃんが訊いてきた。

「いえ、特には。僕も部屋の中見られたらと思うと恥ずかしいので」

 なっちゃんはそれを聞くと、やはりまだ体調不良が残っているのか頬が少し赤くなって、

「そうだよね、あまり気にするのもだよね」

 早口に言って、それから黙って食べ続けた。

 その食事が終わる時である。僕は小さな咳をした。


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