3.舞姫として
この先も日ノ本の破滅を望み、実行し続けなければならない
そう決めたあの日から私は姉上様の御屋敷で舞の稽古をした
何度も何度も悲劇から逃げようとするように忘れるように舞を踊り続けた
「桜、まず娯楽として貴族のお屋敷に入り込み、舞で楽しませるのじゃ。そこから名を上げ、各地を転々としながら最終…この国の大元を潰す…分かったな?」
「はい…」
この国はあの平安の時代から少し経ち、今は武家の時代がやってきたようだった
そう考えると…今の日ノ本を操っている武家を潰すことが出来れば、この国は崩壊するということなのだろう
数日後、姉上様の御屋敷から歩いて一刻ほどの場所にある一条家へと訪れた
一条家の扉の前で待っていると、中にいる人が気づいたのか声をかけてきた
「お客様でしょうか?すみません…来客の伝えがなかったもので…」
姉上様はその言葉に笑顔で答えた
「いえ…先触れをせず申し訳ございません…わたくし達は舞を売りにしているものでして、1日余興にわたくし達を買って頂けないでしょうか?」
姉上様の言葉に相手は少し焦った表情をし、確認を取りに中へと走って行った
「このまま上手くいくのでしょうか…」
「ここで駄目なら次にいけば良いことじゃ」
姉上様の言っていることは分かるけれど…
本当にこのままで良いのでしょうか…
そう私の中で悩んでいると、先程の一条家の使いの方が走って戻ってきた
「お待たせしました…旦那様は余興を楽しみにしているとのことで…豪華ではありませんが、客間の方へご案内致します」
使いの方は旦那様に言われたとおり、私達を客間に案内して「余興の時間になったら、お部屋の方にご案内いたします」と告げ、部屋を後にした
「なんとかなりましたね…あとは余興ですが…」
「それもなんとかなる。妾達の舞は使命以外にも使うことが出来るのじゃよ…願えば、なんでも叶うこの扇ならば…」
姉上様はこの舞と扇で皆を魅了するように願うようだった
その日の夜、使いの者に呼ばれ屋敷の広間へ案内された
一条家の旦那様はお酒を嗜みながら、私達を交互に見つめ余興を楽しみなようだった
私は扇に願いを込め、扇の形を神楽笛に変化させた
「わたくし達の与太話をどうぞお聞きください」
「ほう…どんな話じゃ?」
旦那様は頬を薄く赤らめ、程よい酔いを醸しながら面白いもの見たさを顔に表した
「わたくし達の顔…とても似ていますでしょう?有り得ぬ現象に不気味に思われるでしょうけれど…昔、わたくし達が生まれて間もない頃、わたくしの父上様がこう言ったのでございます。神からの授かりものかもしれぬと…その父上様のお言葉からわたくし達は神から認められるよう人身御供の舞を踊ることになったのです。今からその舞をお見せします」
旦那様は静かに話を聞き、舞が始まるのを待っていた
私は姉上様の話が終わり、数秒待った後、神楽笛に息を吹きかけた
浄化されそうな綺麗な音が鳴り響き、姉上様が音に合わせて舞をする
姉上様が軽やかに扇を振ると、全体に癒しの力が放出されているようだった
その様子を見ていた旦那様は段々と姉上様に釘付けになっていき、少し経つとパタリと気を失われ、余興がお開きとなった