表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

性別はなぜ2つなのか。

作者: 行世長旅

 人間や多くの動物は性別が2つに別れている。

 オスとメス、異なる性別の個体が繁殖行為を行うと子孫が生まれる。

 この仕組みは非合理的だと思った経験はないだろうか。

 性別の異なる者が出合わなければ繁殖ができない。これは子孫繫栄を第一目的とする生物にとって、致命的な欠陥と言える。

 例えば、性別が複数種類あれば異なる組み合わせを作れるため、繁殖パートナーを見つけ出せる確率が上昇するだろう。

 今回は、生物がなぜそのように進化しなかったのかを解説していきます。



 まず初めに前提を覆してしまいますが、性別が複数種存在する生物はいます。

 ある種のゾウリムシは48種の性(接合型)があるとされています。

 けれど、その話は後に回します。


 それと、無性生殖についても触れておきましょう。

 生物が増える方法は2種類あり、1つは人間などが行う有性生殖と、もう1つは細菌などが行う無性生殖です。

 無性生殖は分裂して増えます。分裂にかかる時間も短いものが多く、繁殖速度では有性生殖など比べ物にもなりません。

 しかし欠点も抱えています。まず、この方法は身体の構造が単純な生物にしかできません。多くの動物はそもそも、無性生殖をする選択肢が始めからありません。

 そして、分裂して増えるということは基本的に遺伝子情報が同じなため、弱点も同じになります。暑いのが苦手な者がいくら増えようとも、暑い時代がくれば全滅します。

 しかしこちらは、突然変異によって回避することが可能です。

 繁殖速度が速い分、エラーを起こして元と異なる遺伝子情報を持つ個体が生まれる可能性の高くなります。そういったさまざまな個性を持った個体が増えると、突然の環境変化にも対応できる個体が生まれる可能性も高くなります。


 そして有性生殖を行う生物達は細菌などの変化速度に対抗するなどの理由から、遺伝子を混ぜて子孫を作って変化に対応させていく方針をとったのではないかとも言われています。



 ここからは有性生殖についての話をしますが、まずは2つの欠点を書きます。


 1つは、性の2倍のコスト、です。

 無性生殖ならば1個体で増殖できるのに対し、有性生殖はオスとメスの2個体必要とします。相手がいなければ繁殖できないというのは、凄まじく効率が悪いです。


 もう1つは、半分ずつしか遺伝しない、です。

 とても優れた個体が生まれたとしても、子に引き継げるのは半分だけです。もう片方は違う遺伝子が混ざるのに加え、合わさった時にどんな特徴が現れるのかは未知数です。

 仮に完璧な生命なるものが生まれたとしても、その遺伝子配列を維持するのは不可能なのです。



 この2つの欠点は大きなものです。

 しかし遺伝子を混ぜるというのは進化の可能性を追求するものでもあるため、単純に多く増えるよりも、優れた個体が繁栄するように目指した結果なのではないかとも言われています。変化し続ける環境に対応するためには、こちらも変化し続けなければなりません。


 ちなみに有性生殖にはもう1つの利点があるとされています。

 それは、遺伝子修復です。

 仮説の域を出ていませんが、生物の遺伝子にはいくつもの破損部分があり、子を作る時に受け継がれるその破損がもう片方の親の遺伝子によって修復されるのではと言われています。

 繁殖の度に修復されて遺伝子がどんどん回復していけば、より良い個体が生まれる。そんな目的があるのではないかという説です。



 さて、ここまでの話で、人間やその他多くの動物が有性生殖を行っている理由や説はわかってもらえましたでしょうか。

 ではここからは、性別が2つしかない場合が多い理由を書いていきます。


 冒頭にもある通り、性別はなにも2つでなくとも複数種あってもいいはずです。aとbの性別しかなければ組み合わせはa-bの1通りですが、1つ増えてaとbとcになればa-b、b-c、a-cの3通りに増えます。性別が増えるほどに組み合わせが増えます。

 異性と巡り会う確率が高いほど、繁殖には有利です。


 先ほど少しだけ触れましたが、ゾウリムシなどで複数の性を持つ生物は存在します。

 しかしそれは、生息箇所が限定されていたりしてそもそも同種と巡り会う確率が低い生物に見られる特徴です。

 同種と巡り会う確率がさほど低くない生物には、必要の無い特徴なのです。


 けれどやはり、どうせなら持っていた方がいい特徴だとは思いませんか?

 思いつつも、持たないように進化したとされる推測があります。


 ゾウリムシのような微生物ならともかくとして、動物はある程度大きくなると体の構造が複雑になってきます。さらに、オスとメスにも差が生まれる。

 体の作りに差が生まれるということは、必ず優劣も発生します。オスとメスのどちらが優れているのかなどという話はここではしませんが。

 仮にここで、性には3種類が存在していたとします。

 aとbとcが存在していて、前述の通り3パターンの組み合わせで子孫を作れる。

 ここで生物が大きく気にするのが、優劣です。

 劣った組み合わせで子孫を作るより、優れた組み合わせで子孫を作った方が繁殖を成功させやすくなります。aとbの組み合わせが最も優れていたとする場合、cはそもそも繁殖に参加できない可能性が高くなります。

 そのうちにcの特徴は消えていき、aとbだけが残る。


 このため、オスとメス以外の性は存在したとしても自然淘汰されてなくなってしまうとされています。



 種が繁栄するために必要な要素は、繁殖数を増やす、優秀な子孫を作っていくこと。

 両立をできるなら最高だがなかなかそうもいかないため、どちらかに特化していたり半分ずつ叶えたりと種によって選択が異なっている。

 そこで優秀な子孫を作っていくと選んだ種は、性の種類を増やすという手段を選ばなかっただけなのである。


 この進化が最善だと先人達は信じたのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ