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行方知れずを望んだ王子と、その結末 〜王子、なぜ溺愛をするのですか!?〜  作者: 長岡更紗


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25/39

25.十四日目。デートをする私と王子様

ブクマ111件、ありがとうございます!

 なんてこと。



 ……なんてこと!!




 カーテンから漏れる朝の光が、微笑むイライジャ様を照らしている。

 昨夜は……なんてこと。

 私の鉄の意志は、一体どこへ行ってしまったというのか。


「クラリス」

「見ないでくださいませ……」

「昨夜のそなたは、とても可愛かった」

「言わないでくださいましーー!!」


 ああ、もう!!

 恥ずかしくて消えてなくなりたいのですが!?


「クラリスの初めてをもらえて、俺は嬉しい」


 ですから言わないでくださいませ……このとろけるような甘いお顔がいけないのです。

 私の鉄の意志は、木っ端微塵に砕かれました。

 あああ、本当になんということを……側仕えにあるまじき行為をしてしまうとは……!


「大丈夫だ、なにも心配することはない。そなたが俺のそばで能力を遺憾なく発揮してくれれば、誰も文句など言わぬだろう」


 王子は私のことを買い被り過ぎなのです!

 私にそんな能力などないし、イライジャ様に合う素晴らしい女性は他にいくらでもいるのだから。

 しかしだからこそ、これは本当に私のことを好いてくれているのだとわかる。

 恋は盲目とはよく言ったもので……王子は今、私と結ばれた幸せから、周りがなにも見えなくなっているのだ。

 ああ、鉄の意志が砕かれてしまったことが悔やまれる……

 月下の踊り子は、男性だけでなく女性にも効果があったのだろう。ええ、きっとそうに違いない。

 私が、あんなに、乱れ……あああああああああああああ!!!!


「クラリス、もう一泊していこう」

「はい!? なにをおっしゃっているのですか?!」

「早く帰らねばならぬこともあるまい」

「それは……そうですが」


 畑は全滅してしまっていて世話はいらないし、建国際はまだ先のこと。

 確かにもう一泊しても、なんら問題はないのだけれど……


「ジョージ様と同じ生活を味わおうとしていらっしゃったのでは」

「どれだけ大変なのかはもうわかったからな。こうしてゆっくりとプライベートを過ごすことなどないのだから、たまには良いだろう?」


 そう言われると、なにも言えなくなってしまうではありませんか。

 イライジャ様は王族としてずっと政務をこなし続け、個人的な旅行などなさったことがない。

 せっかくできた自由な時間だというのに、過酷な生活ばかり続けるのはお可哀想だ。楽しく過ごしてもらえる方が、私としても嬉しい。


「そうでございますね。あまり派手には動き回れませんが、それもよろしいかと」

「よし、決まったな。では少し出かけるか。そなたの体が大丈夫そうなら、ではあるが」

「だ、大丈夫でございますっ」

「それなら良かった」


 もう、嬉しそうなお顔で笑うのですから!


 私たちは村の外に出ると、散歩をしながら土産物屋を覗いてまわった。

 イライジャ様は終始笑顔のまま、幸せそうで。

 そのお顔を見ると、私は罪悪感に襲われてしまう。


 どうしてイライジャ様は、私などを好きになってしまったのか。

 男性は、年上の女性に憧れを持つと聞いたことがあるし、おそらくそれなのだろうけれど。

 憧れを好きと勘違いしているのは仕方ない。しかし関係を持ってしまった今、建国祭を境に私が消えてしまえば……きっとイライジャ様はショックを受けるに違いないのだ。


 困った。


 手を恋人繋ぎするイライジャ様も、ブドウを買って私に食べさせてくるイライジャも、ペアリングを買おうとしているイライジャ様も、ことあるごとに「愛している」と言うイライジャ様も、立ち止まってはすぐにキスをしてくるイライジャ様にも、すべてのイライジャ様に困っているのですが!?

 嬉しそうな顔が止まらないイライジャ様に、心底どうしていいのかわからないのですがー!!


「クラリス、そなたも楽しそうでなによりだ」


 そして私、困っていたはずなのにどうして楽しそうな顔をしているというのか!!


 ああ。そうか。

 私は──楽しいのだ。


 こんな風に、一般の男女のようなデートをしていることが。

 イライジャ様と、恋人同士のようにいられることが。


 なんてこと。


 私は、イライジャ様を、愛してしまっているのだ。

 息子のようにではない。一人の男性として。


「どうした、クラリス。顔が赤いぞ」

「今日は暑いからでございますっ」

「そうだな、今日は日差しが強い。大丈夫か、気分が悪くなったりはしていないか」


 イライジャ様、お優しすぎます……

 どうすれば……ますます好きだと自覚してしまうではないですか!!


「体調は問題ございません」

「なら良かった。昨夜は無理をさせてしまったからな」

「昨夜のことは持ち出さないでくださいまし!?」

「はははっ!」


 まったく、この王子様はもう!

 ああ、しかし私のこの気持ちを知られないようにしなければ。

 あくまで私は息子のように思っているのだと……そう思わせておくべきだ。

 でないと、このままでは離れ離れになった後、イライジャ様はいつまでも私を待ってしまいかねない。


「愛している、クラリス」


 私は道端で何度目かのキスを受け。

 あまりの溺愛っぷりにくらくらしてしまいそうになりながら、なんとか意志を保つ。


 そして宿に戻り夜になると、私はイライジャ様に月下の踊り子をつけられ。なぜかご自身もつけられていて。


 私たちはかすかな月明かりを感じながら、夜を過ごした。



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ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
この国の王が結婚した、その時には……
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政略ではあったが、二人はお互いを愛しみあって成長する。
しかし、ユリアーナの父親が謎の死を遂げ、横領の罪を着せられてしまった。
犯罪者の娘にされたユリアーナ。
王族に犯罪者の身内を迎え入れるわけにはいかず、ディートフリートは婚約破棄せねばならなくなったのだった。

王都を追放されたユリアーナは、『待っていてほしい』というディートフリートの言葉を胸に、国境沿いで働き続けるのだった。

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
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ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
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▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
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ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
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ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
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気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
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▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

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行方知れずを望んだ王子とその結末
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「イライジャ様ッ?!!」

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第五王子
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婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
うちは貧乏領地ですが、本気ですか?
私の婚約者で第五王子のブライアン様が、別の女と子どもをなしていたですって?
そんな方はこちらから願い下げです!
でも、やっぱり幼い頃からずっと結婚すると思っていた人に裏切られたのは、ショックだわ……。
急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
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▼決して貴方を見捨てない!! ▼

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たとえ貴方が地に落ちようと
大事な人との、約束だから……!
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当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

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神盾列伝
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 しかし彼はひとつの所に留まれず、アリシアの元を去ってしまう。
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 彼は筆頭大将となったアリシアの直属の部下で、弟のような存在でもあった。
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― 新着の感想 ―
[良い点] 朝チュンきたコレ!!(๑ÒωÓ๑ 三 ๑ÒωÓ๑) やっとだよーっ 王子のデレがすごすぎてクラリスが面白くなってる(笑) いやあ、王子も楽しそう(*´艸`*) 良かった!
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