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行方知れずを望んだ王子と、その結末 〜王子、なぜ溺愛をするのですか!?〜  作者: 長岡更紗


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17.九日目。マットの上の王子様

ブクマ104件、ポイントも500到達しました!

ありがとうございます!


 ベッドの上でなぜか抱き合っているイライジャ様と私。

 ほんのちょっぴりつけただけの“月下の踊り子”が、悩ましい色香を漂わせている。

 というか私よりも、よっぽどイライジャ様の色香の方が増し増しなのですが?

 なんだか呼吸がおかしくなりそうです!


「その様子だと、効果も知っていそうだな?」


 うっすらと微笑まれたそのお顔。脳が溶けてしまうかもしれない。


「……はい、存じ上げております」

「男を誘う香りだと聞いた。そなたの認識と合っているか?」

「合っております」


 正直に答えると、私の左手はイライジャ様に捕えられた。そのまま王子の顔の前まで移動させられる。

 ああ、手のひらにイライジャ様の鼻梁の当たる感触が……!


「官能的な香りだ」

「これを選ばれたのは、イライジャ様でございましょう……っ」

「ああ、そうだが?」


 まったく悪びれた様子もなく、視線を向けてくれる。

 そのまま吸い込まれるように、私たちはこつんと額を重ねていた。


 もう目が離せないのですが……

 いけない、このままでは流されてしまいそうです!!


「い、イライジャ様ッ」

「なんだ? 今、良いところなんだが」

「良いところなわけないではないですか!!」

「俺は今日、そのつもりだった。そのためにマットを買ったのだしな」

「動機が不純でございます、王子!」

「男など、そんなものであろう」


 男……男!

 確かに、イライジャ様も王子である前に一人の男性でございました。

 当然そういうお気持ちも起こるとわかってはいる。


「だめか?」

「感心はいたしません」


 私の言葉に、イライジャ様の眉根が寄った。

 もちろん、イライジャ様が強く望まれるのであればやぶさかではない。それも私の役目として受け止めましょう。

 しかし、これはあくまで最終手段。たかだか残り十二日でこの生活は終わるのだから、我慢できるものであれば、我慢していただかなくては。

 こんな身分の低い者に手を出したとあらば、王子の品位が問われます。

 万が一お子でも宿したとあらば……考えるだけで恐ろしい。


「……そなたは、好いている男でもいるのか?」

「いいえ、おりませんが」


 即答すると、イライジャ様はホッとしたような残念なような、複雑な顔をしている。

 どうしてそんな顔をされているというのか。


「そういうイライジャ様こそ、想いを寄せる方はおられないのですか?」


 イライジャ様は、二十三歳になられている現在も、婚約者はおられない。

 しかし、何人かは候補に上がっていたはずだ。イライジャ様の意向を無視した、政略のための相手だったけれども。

 だからイライジャ様は頑として首を縦に振らず、未だ婚約者のいない独身であらせられるのだが。


「想いなら常に寄せている」


 なんと! そんな方がいらっしゃったのですね。初めて知りました。

 そうですか、イライジャ様にそのような想い人がいらっしゃったとは……。

 ああ、なぜか胸がぎゅうぎゅうと締め付けられている。

 僭越ながら、飛び立つ我が子を見送る母鳥のような気持ちになってしまったようです。


 お可哀想なイライジャ様。


 きっと陛下やその家臣たちに反対されるお相手なのでしょう。

 国王陛下は己の利のためにイライジャ様を利用されるお方。陛下が用意した令嬢以外と結婚させてはもらえないのは、火を見るより明らかだ。


 しかし、そのご令嬢と結ばれないからと言って、手近な私に手を出すのは下策というもの。

 イライジャ様はきっと、近々政権を握る方になる。

 そうなってからその想い人と一緒になっても遅くはないはずなのだから。

 こんなところでやけを起こしてはいけない。


「ではイライジャ様、そのままずっと想いを寄せておくべきです」

「いいのか?」

「もちろんですとも」


 王子だからと、叶わぬ恋だと諦めてしまうだなんてもったいない。

 いつか叶う日が来るかもしれないのだから。

 お相手の気持ちもあるため、必ず叶うだなんて無責任なことは言えませんが。


「その方への想いを大切にしてほしい……私はそう思います」

「当然だ。俺はこの気持ちを大切にしている」

「ならば、一時の気の迷いで欲望を満たそうとする行為はおやめくださいませ。失礼でございます」


 その方にも、私にも。

 それまで我慢しろというのも、男性には酷な話かもしれませんけれども。

 イライジャ様に想い人がいると知り、それでも身を捧げられるほど、私の心は広くないのです。自分の狭量さに嫌になるけれど。

 あまりの情けなさで、さっきからずっと胸がジクジクと痛んでいる。


「想いはそのままに、欲望は満たすなと言うのか。クラリス」


 怒りと悲しみが入り混じったようなイライジャ様のお顔を見ていられず、私はそっと視線を外す。

 イライジャ様からすれば、私の要求など身勝手でしかないのかもしれない。

 いつの間にか私は、イライジャ様を聖人君子のように見てしまっていたのだろう。

 不誠実なことなど、決してなさるお方ではないと。

 イライジャ様も、ただの男の方だというのに。私の理想を勝手に押し付けてしまっている。

 なんというおこがましさ。イライジャ様がお怒りになるのも当然だ。


「申し訳ありません……王子」

「いや……同意してくれるものとばかり思っていた、俺が悪かった。そなたが良いと言うまでは、手は出さない」

「イライジャ様……」


 やはり、イライジャ様はイライジャ様だ。

 聖人君子ではなくとも、不道徳なことはなさらない。

 そういうところが、私は──


「だが、抱き締めるくらいなら許してもらえるか?」


 私はすでにイライジャ様の胸の中なのですが。もう今さらなので、断る理由もなく首肯してみせる。


「良かった」


 背中に回された手に力が込められて、私はベッドの上でさらに引き寄せられた。

 こんなに密着すると、心臓の音が聞こえてしまわないかと恥ずかしい。


 イライジャ様は今、どなたを思って私を抱きしめていらっしゃるのか。

 代わりにされているのはわかっている。わかっているのに、どうして虚しいなどと思ってしまうのか。


「だが俺は……」


 頭上から出された声に、私は耳を澄ます。


「ここにいる間に、クラリスをその気にさせてみせる。こんなチャンスはもう二度とない」


 イライジャ様……わかっておられない!

 結局男の方というのは、そういうものなのでしょうか!


「私などをその気にさせてどうするのです! 相手が間違っているでしょう」

「相手? いや、間違っていないが」

「はい?」


 私は緩められた腕の中から、イライジャ様を見上げた。

 間違って、いない……とは?


「わかっていなかったのか?」

「なにがでしょう」


 腕の中で首を傾げると、イライジャ様は笑みを溢れさせた。


「俺の想い人とは、クラリス。そなただ」


 ──え?


 わ……私だったのですか──!?


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ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
この国の王が結婚した、その時には……
侯爵令嬢のユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
政略ではあったが、二人はお互いを愛しみあって成長する。
しかし、ユリアーナの父親が謎の死を遂げ、横領の罪を着せられてしまった。
犯罪者の娘にされたユリアーナ。
王族に犯罪者の身内を迎え入れるわけにはいかず、ディートフリートは婚約破棄せねばならなくなったのだった。

王都を追放されたユリアーナは、『待っていてほしい』というディートフリートの言葉を胸に、国境沿いで働き続けるのだった。

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
イラスト/遥彼方さん
ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
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▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
イラスト/堺むてっぽうさん
ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
私だけ生き残っても、あなたたちがいないのならば……!
聖女ルナリーが結界を張る旅から戻ると、王都は魔女の瘴気が蔓延していた。

国を魔女から取り戻そうと奮闘するも、その途中で護衛騎士の二人が死んでしまう。
ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
「俺たちが死ぬたび、ルナリーの寿命が減っちまう……!」

気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
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最後に訪れるのは最高の幸せか、それとも……?!
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
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▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

行方知れず王子
イラスト/雨音AKIRAさん
行方知れずを望んだ王子とその結末
なぜキスをするのですか!
双子が不吉だと言われる国で、王家に双子が生まれた。 兄であるイライジャは〝光の子〟として不自由なく暮らし、弟であるジョージは〝闇の子〟として荒地で暮らしていた。
弟をどうにか助けたいと思ったイライジャ。

「俺は行方不明になろうと思う!」
「イライジャ様ッ?!!」

側仕えのクラリスを巻き込んで、王都から姿を消してしまったのだった!
キーワード: R15 身分差 双子 吉凶 因習 王子 駆け落ち(偽装) ハッピーエンド 両片思い じれじれ いちゃいちゃ ラブラブ いちゃらぶ
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異世界恋愛 日間4位作品
▼頑張る人にはご褒美があるものです▼

第五王子
イラスト/こたかんさん
婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
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私の婚約者で第五王子のブライアン様が、別の女と子どもをなしていたですって?
そんな方はこちらから願い下げです!
でも、やっぱり幼い頃からずっと結婚すると思っていた人に裏切られたのは、ショックだわ……。
急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
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▼決して貴方を見捨てない!! ▼

たとえ
イラスト/遥彼方さん
たとえ貴方が地に落ちようと
大事な人との、約束だから……!
貴族の屋敷で働くサビーナは、兄の無茶振りによって人生が変わっていく。
当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

サビーナは、自己犠牲愛を……彼に捧げる。
キーワード: R15 身分差 NTR要素あり 微エロ表現あり 貴族 騎士 切ない 甘酸っぱい 逃避行 すれ違い 長岡お気に入り作品
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▼あなたはまだ本当の切なさを知らない▼

神盾列伝
表紙/楠 結衣さん
あなたを忘れるべきかしら?
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 しかし彼はひとつの所に留まれず、アリシアの元を去ってしまう。
 そのお腹に、ひとつの種を残したままで──。

 ロクロウがいなくなっても気丈に振る舞うアリシアに、一人の男性が惹かれて行く。
 彼は筆頭大将となったアリシアの直属の部下で、弟のような存在でもあった。
 アリシアはある日、己に向けられた彼の熱い想いに気づく。
 彼の視線は優しく、けれどどこか悲しそうに。

「あなたの心はロクロウにあることを知ってて……それでもなお、ずっとあなたを奪いたかった」

 抱き寄せられる体。高鳴る胸。
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 継承争いや国家間の問題が頻発する中で、二人を待ち受けるのは、幸せなのか?
 それとも──

 これは、一人の女性に惚れた二人の男と、アリシアの物語。

 何にも変えられぬ深い愛情と、底なしの切なさを求めるあなたに。
キーワード: R15 残酷な描写あり 魔法 日常 年の差 悲恋 騎士 じれじれ もだもだ 両思い 戦争 継承争い 熟女 生きる指針 メリーバッドエンド


▼恋する気持ちは、戦時中であろうとも▼

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― 新着の感想 ―
[良い点] 言ったーーっ!!(*´艸`*)ぎゃーーっ♡ ここまできてクラリスがまたぐるぐるしてるな〜と思ってたら王子の方が動いた!よし!
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