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行方知れずを望んだ王子と、その結末 〜王子、なぜ溺愛をするのですか!?〜  作者: 長岡更紗


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11.六日目。責任をとる私

ブクマ96件、ありがとうございます!

 ああ、苦しい。

 風邪を引くなど、何年振りだろうか。

 そういえば、私がイライジャ様の側仕えになって間もない頃、熱で倒れてしまったことがある。

 よりにもよってイライジャ様の目の前で倒れてしまい、大変なご心配をおかけしてしまったのだっけ……


 私は優しく降り注ぐ雨の音を聞きながら、当時に思いを馳せた。


 あの頃から、イライジャ様はお優しかったのだ。


 太陽のように輝く金髪とエメラルド色の瞳は、人を魅了する力が宿っている。誰もがイライジャ様に夢中となり、さらに光の子ということで熱狂された。

 美しい容姿。

 完璧な立ち居振る舞い。

 聡明で自信家。

 自由奔放で突拍子もないことを言い出したりもするけれど、それでさえイライジャ様の魅力だ。


 多くのご令嬢がイライジャ様に秋波を送り、選ばれようと躍起になっている。

 イライジャ様が誰かをお選びになったことは、今まで一度もないのだけれど。

 もしかしたら、誰にも言えない、心に決められた方がいらっしゃるのかもしれない。


 ……なにを期待してしまっているのか、私は。

 私などが選ばれるわけもないというのに。

 残念だ、なんて思うわけもない。これはそう、母親のような気持ちになっているだけなのだ。

 胸が痛むのは、苦しいのは、きっと風邪のせい。


 イライジャ様は、陛下が政略結婚の話を持ち出すたびに反発されている。

 自分の妻は自分で見つける、と言い切って。

 そもそも、イライジャ様はお父上である国王陛下とうまくいっておられなかった。とにかく陛下を毛嫌いしていらっしゃるのだ。

 それはもちろん、大事な双子の弟を〝闇の子〟として酷い扱いをしていることが許せないからだろう。


『クソ父王め』


 普段は快活で朗らかなイライジャ様が、密かにそう吐き捨てるのを聞いたのは、一度や二度ではない。

 もちろん、聞いているのは私以外にはいなかったけれど。

 そしてイライジャ様のお気持ちは、私にもわかるのだ。

 陛下はいわゆる堅物。古くからのものを変えることをまずなさらない。

 老年ばかりの宮廷官僚が幅を利かせているから、新しい意見が中々取り入れられず、イライジャ様はいつもご苦労されている。

 けれど貴族階級の若者に支持されているのはイライジャ様の方で、彼らを味方につけて少しずつ良い方向へと舵をとっていらっしゃるのだ。


 古くからの因習やしきたりに囚われている国王陛下と、そんな考えを一掃してしまいたいイライジャ様。水と油のようなものである。

 絶対に譲らないという頑固さだけは、父子で似ていると思うのだけれど。こんなことを言うと嫌がるので、口が裂けても言わないけれど。


「なにを考えている? クラリス」


 雨は小屋の屋根を絶え間なくノックしていた。

 今日は畑仕事もできず、イライジャ様はずっと私の眠るベッドに腰掛けてくれている。


「イライジャ様のことを」

「俺の?」


 イライジャ様は少し驚かれたように目を広げたあと、今度は嬉しそうに目を細められた。

 その笑顔は、私にとっての癒しだ。

 ……いや、きっと多くの人にとって癒しとなっているのだろう。

 私一人が独占していい笑顔ではない。


 だけど、今だけは許されるだろうか。

 狭い小屋で二人っきり。

 イライジャ様の瞳には、私しか映っていないのだから。


「クラリス……そのような潤んだ目をして、俺を誘惑しているのか?」


 イライジャ様の指が、私の頬を滑るようになぞっていく。

 ゾク……と体が震えるのは、風邪のせいに他ならない。


「ふふ……イライジャ様、十六歳の時と同じことを言ってらっしゃいます」

「そうだな、覚えている。あの時のクラリスは、艶かしくてドキドキしたからな」


 イライジャ様が、私に対してドキドキなどと。

 若さゆえのものでしょうか。


「あの頃は私も若かったですから、まだ色気も残っていたのかもしれませんね」


 七年前の私は二十歳だ。

 結婚適齢期をとっくに越してしまった今とは違い、少しは青少年を悩ませられるくらいの魅力はあったのかもしれない。

 まだ免疫のないイライジャ様だったから、ドキドキしてくれただけ。

 今のイライジャ様、そして今の私などでは──


「俺は今も胸の高鳴りを感じているが」


 はい!!?

 今、なんと???


「俺は今も胸の高鳴りを感じている」


 なぜか二回繰り返されました!

 さては私の心の声を聞いておられましたね?


「クラリス、そなたが原因に決まっているだろう」


 私、が、原因……

 ああ、私の心臓まで大きく波打ち始めているんですが……

 激しい動悸で息が上手く吸えません!


「どう責任をとってくれる?」

「せ、責任……」


 なんてこと……

 心臓は一生のうちに約三十億回動くと言われている。

 私のせいでイライジャ様の鼓動の回数を早めてしまっては、国の損失となってしまうではありませんか!

 そんなことになってしまっては、どう責任をとってよいものか……! ああ、考えただけで頭がクラクラする……


「申し訳ございません、私の命で賄えるものならいくらでも差し出すのですが……」

「命!? いや待て、俺はなにもそこまで言っているのでは──」


 頭がさらに痛くなって景色が回るように歪んだ。

 けれど責任はとらなければ……でもどうやって……


「私、は……どうすれば……?」

「……では」


 視界が白く霞む。

 お顔はちゃんと見えないけれど、声の調子で引き締められた美しい顔が浮かんだ。


「クラリス。俺のものになってくれ」


 俺のものに。

 経験のない私にも、その意味はわかった。

 イライジャ様は健全な男子であらせられる。

 一人になれない環境で、さぞやおつらかったのだろう。

 そんなことを私に頼むほどに。


「私などで……よろしければ……」

「ほ、本当か!」

「この体、イライジャ様の……ご自由に……」


 だめだ、目を開けていられない。意識が遠のく。

 けれど、その方が都合がいいに違いない。

 イライジャ様も自分のそんな姿を私なんかに見られるのは嫌だろうから。


「クラリス、そなたは……」


 なにかを言っておられたけれど、音が何重にも響くようで聞き取れなかった。

 私はそのまま目を瞑り、意識を闇に沈ませる。


 なぜだか私は、子どものイライジャ様が悔し泣きしている夢を見ていた。


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ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
この国の王が結婚した、その時には……
侯爵令嬢のユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
政略ではあったが、二人はお互いを愛しみあって成長する。
しかし、ユリアーナの父親が謎の死を遂げ、横領の罪を着せられてしまった。
犯罪者の娘にされたユリアーナ。
王族に犯罪者の身内を迎え入れるわけにはいかず、ディートフリートは婚約破棄せねばならなくなったのだった。

王都を追放されたユリアーナは、『待っていてほしい』というディートフリートの言葉を胸に、国境沿いで働き続けるのだった。

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
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ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
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▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
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ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
私だけ生き残っても、あなたたちがいないのならば……!
聖女ルナリーが結界を張る旅から戻ると、王都は魔女の瘴気が蔓延していた。

国を魔女から取り戻そうと奮闘するも、その途中で護衛騎士の二人が死んでしまう。
ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
「俺たちが死ぬたび、ルナリーの寿命が減っちまう……!」

気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
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最後に訪れるのは最高の幸せか、それとも……?!
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
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▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

行方知れず王子
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行方知れずを望んだ王子とその結末
なぜキスをするのですか!
双子が不吉だと言われる国で、王家に双子が生まれた。 兄であるイライジャは〝光の子〟として不自由なく暮らし、弟であるジョージは〝闇の子〟として荒地で暮らしていた。
弟をどうにか助けたいと思ったイライジャ。

「俺は行方不明になろうと思う!」
「イライジャ様ッ?!!」

側仕えのクラリスを巻き込んで、王都から姿を消してしまったのだった!
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異世界恋愛 日間4位作品
▼頑張る人にはご褒美があるものです▼

第五王子
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婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
うちは貧乏領地ですが、本気ですか?
私の婚約者で第五王子のブライアン様が、別の女と子どもをなしていたですって?
そんな方はこちらから願い下げです!
でも、やっぱり幼い頃からずっと結婚すると思っていた人に裏切られたのは、ショックだわ……。
急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
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▼決して貴方を見捨てない!! ▼

たとえ
イラスト/遥彼方さん
たとえ貴方が地に落ちようと
大事な人との、約束だから……!
貴族の屋敷で働くサビーナは、兄の無茶振りによって人生が変わっていく。
当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

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キーワード: R15 身分差 NTR要素あり 微エロ表現あり 貴族 騎士 切ない 甘酸っぱい 逃避行 すれ違い 長岡お気に入り作品
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▼あなたはまだ本当の切なさを知らない▼

神盾列伝
表紙/楠 結衣さん
あなたを忘れるべきかしら?
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 しかし彼はひとつの所に留まれず、アリシアの元を去ってしまう。
 そのお腹に、ひとつの種を残したままで──。

 ロクロウがいなくなっても気丈に振る舞うアリシアに、一人の男性が惹かれて行く。
 彼は筆頭大将となったアリシアの直属の部下で、弟のような存在でもあった。
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キーワード: R15 残酷な描写あり 魔法 日常 年の差 悲恋 騎士 じれじれ もだもだ 両思い 戦争 継承争い 熟女 生きる指針 メリーバッドエンド


▼恋する気持ちは、戦時中であろうとも▼

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