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行方知れずを望んだ王子と、その結末 〜王子、なぜ溺愛をするのですか!?〜  作者: 長岡更紗


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10.五日目。風邪をひいてしまった私

ブクマ92件、ありがとうございます!

 夢から覚めてゆっくり瞼を上げると、すぐ目の前にイライジャ様のエメラルド色の瞳が。

 ちょっと、近すぎでは?!!


「イライジャ様、いつからお目覚めに?!」

「ついさっきだ」

「お熱は……」

「もう治った」

「はい?!」


 治るの早すぎですが!?

 イライジャ様は、本当だと言わんばかりに私に顔を寄せてくる。

 何事、と思った瞬間、こつんと額がくっついた。


「な、なにを……」

「ほら、平熱であろう?」

「そ、そうでございますね……」

「クラリス、そなたの方が熱いが」

「これは、違いますっ」


 まったく、そんなに近づいては、顔が煮えたぎりそうになるのですが!!

 しかし、たった一日で本当に治ってしまうとは、さすが光の子……いえ、若さですね。


 病み上がりなのだからと言ったけれど、イライジャさまは気にせず外に出て行かれた。

 曇天を見て、雨が降る前にと畑で働いていらっしゃる。

 ぶり返したらどうなさるのかと、私の方がヒヤヒヤでございますが!


 ヒヤヒヤして、ヒヤヒヤして……おや? これは、ゾクゾク……?


「クラリス。そなた、顔色が──」

「え?」


 振り返った瞬間、目の前が白くなって足元が崩れる。

 そんな私をイライジャ様は素早く抱き止めてくださった。


「大丈夫か、クラリス!」

「……私……も、申し訳ありません!」

「そなた、体が熱いではないか!」


 イライジャ様はそう言ったかと思うと、私をひょいと抱き上げてしまった。止める暇もないのですが!


「あの、イライジャ様……歩けますから」

「俺がうつしてしまったのだ。大人しく俺に抱かれてくれ」


 その言い方……!

 誰かが聞いていたら誤解を招きかねませんよ?!

 まぁここには私とイライジャ様しかいませんけれども!


「大丈夫か、クラリス……すまない」


 そう言いながらイライジャ様は小屋の中へと入り、私をベッドの上に横たえてくださった。


「イライジャ様がお謝りになることなど、なにもございません。どうかそんなお顔をなさらないでくださいまし」


 ショックを受けた子どものようなイライジャ様のお顔。

 私は手を伸ばしてそのお顔に触れる寸前、ハッと気づいてその手を下げようとした。


「クラリス」


 けれど、イライジャ様は私の手をパシッと掴むと、そのままご自分の頬に当てられた。

 イライジャ様のきめ細やかなお肌が、私の手のひらに吸い付いてくる。

 最近、距離が近くなりすぎて麻痺しているのだ。

 イライジャ様は、私などが気軽に触れて良い方ではないというのに。


 だけど、イライジャ様のお手を振り解くことなんてできない。

 私の顔は、熱のせいでさらに熱くなった。


「あの、もう、手を……」

「こうしていてはいけないか? 俺はクラリスに触れていたい」


 そう言うとイライジャ様は、私の手を唇に持っていって……


 ちゅ、と音が鳴った。


 私の頭は一段と爆発したように熱くなり、目の前がくらくらする。


「早く治るよう、まじないだ」


 逆に熱が上がりそうなんですが?!


「一晩中、そなたの看病をさせてくれ」


 優しく目を細められると、嫌とは言えなくなる。

 お優しすぎます、イライジャ様……。


「ありがとうございます……でも決して無理はなさらぬよう」

「わかっている、大丈夫だ」


 イライジャ様はそう言うと、本当に甲斐甲斐しく世話を焼いてくださった。


「簡単だがスープを作ったぞ。ふー、ふー」

「あの、自分で食べられますから!」

「ほら、口を開けて」

「んくっ」


 目の前にスプーンを寄せられて仕方なく飲むと、イライジャ様の顔は笑みで満たされる。

 王子にふーふーして食べさせてもらう贅沢な経験をしたのは、私くらいではないでしょうか。


「美味しいか?」

「はい、もちろんでございます」

「なら良かった」


 そんな、子どものような無邪気さで笑わないでくださいまし!

 心臓が変な動悸を打ち始めたではありませんか!


「どうした、クラリス! 胸が苦しいのか?!」


 私が胸を押さえて「ふぐう」と変な声を上げてしまったせいで、イライジャ様にいらぬ心配をおかけしてしまった。

 イライジャ様は慌てて私の胸に手を伸ばして──


「きゃあ?!」

「っは! す、すまない!」


 イライジャ様が、ご自分でもびっくりした様子で手を下げられた。

 ああ、ちょっと触られたくらいで『きゃあ』などと、小娘のような声を上げてしまうとは情けない!

 なにがあっても冷静に対処しなければならないと、常に自分を律しているというのに。

 それにしてもイライジャ様は普段、間違っても女子の胸を触るようなお方ではない。どうしてそんなに狼狽しておいでなのか。


「本当にすまない……心配過ぎて、つい……」

「私などをご心配くださりありがとうございます。気に病まないでくださいませ、私はなにをされても平気でございますから」

「なにをされても?」


 さっきまでの子どものような顔は、一体どこに消えてしまったのか。

 イライジャ様の目はギラリと光り、急に大人の男の人になる。

 ど、動悸が……!


「ふ、ふぐぅぅ」

「だ、大丈夫か、クラリス!」


 私を支えようとしてくださるイライジャ様。いつの間に、こんなに男らしくなってしまわれたのか……

 きっとこれは母親のような心境なのでしょう。子が大きくなると、寂しさを覚えると聞いたことがございますから。

 胸が、苦しくなるものなのですね……。


「申し訳ございません、イライジャ様……もう眠ってもよろしいでしょうか」

「ああ、そうするといい」


 私はゆっくりと横になる。

 って、イライジャ様も入ってきましたが??


「イライジャ様……?」

「寒いだろう。眠るまでこうしている」


 ……お優しい。

 私はイライジャ様に包まれて、体温を感じながら眠りについた。


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ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
この国の王が結婚した、その時には……
侯爵令嬢のユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
政略ではあったが、二人はお互いを愛しみあって成長する。
しかし、ユリアーナの父親が謎の死を遂げ、横領の罪を着せられてしまった。
犯罪者の娘にされたユリアーナ。
王族に犯罪者の身内を迎え入れるわけにはいかず、ディートフリートは婚約破棄せねばならなくなったのだった。

王都を追放されたユリアーナは、『待っていてほしい』というディートフリートの言葉を胸に、国境沿いで働き続けるのだった。

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
イラスト/遥彼方さん
ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
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▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
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ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
私だけ生き残っても、あなたたちがいないのならば……!
聖女ルナリーが結界を張る旅から戻ると、王都は魔女の瘴気が蔓延していた。

国を魔女から取り戻そうと奮闘するも、その途中で護衛騎士の二人が死んでしまう。
ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
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気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
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▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

行方知れず王子
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行方知れずを望んだ王子とその結末
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弟をどうにか助けたいと思ったイライジャ。

「俺は行方不明になろうと思う!」
「イライジャ様ッ?!!」

側仕えのクラリスを巻き込んで、王都から姿を消してしまったのだった!
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第五王子
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急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
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▼決して貴方を見捨てない!! ▼

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当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

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