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憎しみの果てに  作者:
7/34

着々と

まずはヘアサロンからか。

メイク、思ったよりちゃんと出来てるな。

有紗は帰った後、早速メイクをやってみて、

何度かやったらナチュラルメイクくらいはできるようになった。

なので、今日はメイクをして出かける。

更に買った服も着ると、それなりの女性になったように思えた。

初のスカートも違和感ない。

やっぱり相原に選んでもらって正解だったな。

そして一番驚いたのは胸が小さく見えるブラを付けたことだ。

本当に前より小さく見える…それに前より揺れないから動きやすい。

ちょっとだけウキウキしながらヒールのあるパンプスを履く。

歩きづらいけど慣れるしかないな…

そんなことを考えながら家を出てヘアサロンに向かった。

「いらっしゃいませ」

「あの、予約していた鈴木ですけど…」

「お待ちしてました。お掛けになってお待ちください」

椅子に座り、カルテを書く。。

有紗も男の頃からヘアサロンでカットしていたので、さすがに緊張はない。

それに普通に接客されているから、メイクなどもおかしくないのだろう。

名前は鈴木有紗と書いておいた。

まだ戸籍は変えてないが、明日変える予定なので問題ないだろう。

何気に初めてこの名前書いたな…

少しすると髪の長い女性がやってきてカット台へ案内された。

「どんな感じにしますか?」

「どんな感じがいいですかね?」

どういう風にしたいというのがないので、聞き返してしまった。

すると美容師の関谷が「うーん」と少し考えてからカタログを見せてきた。

「このような感じのナチュラルボブはどうですか?前髪ありにして」

「あ、それでいいです。似合えば問題ないんで」

「わかりました。カラーはどうします?」

カラーか…

考えてみたら、聖菜も栞も美穂も髪を染めていた。

「カラーもお願いします」

「わかりました。ではカラーからやっていきますね」

色を選び、カラー剤を付けながら関谷が話しかけてくる。

「服とかすごくオシャレなのに髪型とかは興味ないんですか?」

「ああこれ、自分で選んだんじゃないんで…」

「そうだったんですね。自分で選ぶ服はどういうのが多いんですか?」

自分で選んだレディースはないんだよ…

なんて言おうか迷ったが、事実を話したほうが早そうだ。

「あの…実は身体女性化病になったんです。だから服とかまったく…」

関谷は一瞬だけ手を止めてから、すぐに再開した。

「そうだったんですね。でもお名前は女性の名前でしたよね?」

「はい、明日戸籍を変えます」

「じゃあ女性として生きていくのを選んだんですね」

「そういうことになりますね」

「女性は楽しいことがいっぱいですよ。次くるときはどんな髪型にしたいとか言えるといいですね」

聖菜にしても関谷にしても昨日のコスメの店員もみんな「女性は楽しい」と言っている。

けど、俺は楽しさなんて求めていない。

こうやっているのも、すべて復讐のためだ。

このあといろいろ話をしながらカットまで終わった。

「どうですか?」

「すごく自然です…」

それが率直な感想だった。

もうどこにでもいる女性にしか見えない。

「せっかくなので軽く巻きますね」

コテで緩く巻き、より今どきっぽい女性になることができた。

「これからもっと素敵な女性になってくださいね」

「あ…頑張ります。ありがとうございました」

お礼を言って、お店を後にする。

次はネイルサロンだ。

その途中、ガラスに自分の姿が映ったので足を止めた。

俺もこんな風に変わるんだ…なんかやれそうな気がしてきた!

ネイルサロンは、聖菜も利用しているプライベートサロンだった。

「いらっしゃい、お待ちしてました」

出迎えてくれたのは30半ばくらいの女性だ。

「有紗ちゃんだよね?聖菜ちゃんから聞いてます。あ、ネイリストの川合です。よろしくね」

プライベートサロンだからか、とても気さくな感じの女性だな。

でもこういう雰囲気は嫌いじゃないかも。

ゆったりとしたソファーに座らされ、川合がデザインについて話をしてくる。

「こないだまで男性だったんだよね。なんかそんな感じしないね。あ、でも座るときの股は閉じないとダメだよ」

笑ながら注意されてハッとなった。

そうか、こういうところも直していかないといけないのか。

慌てて股を閉じて苦笑いを浮かべた。

どうやら聖菜が事情をすべて話しておいてくれたらしい。

おかげでスムーズに進んでいく。

「オフィスのことを考えてこういうデザインがいいかなって思うんだけどどうかな?」

見せてきたカタログには、ピンクのネイルにラメのグラデーションがほどこされていた。

そして控えめなストーンも付いている。

「お任せします」

「じゃあ任せられちゃう。手を出してくれる?」

手を出すと、最初に爪のケアをされ、甘皮処理や磨いたりしてから、ジェルを塗られていく。

なんか新鮮だな…こんな経験するとは。

「有紗ちゃんは聖菜ちゃんと仲いいの?」

「仲がいいというか…同期で今は同じ部署にいます」

「そっかぁ、あの子女子力高いからいろいろ教えてもらいな」

「そのつもりで頼ってます」

そういうと「それ正解」といって川合は笑っていた。

そのあと乾かしてからラメを塗り、ストーンを付け、最後にコーティングをして完成した。

有紗は自分のネイルをまじまじと眺めてしまった。

「なんか自分の指じゃないみたい…」

「そう?正真正銘、有紗ちゃんの指だよ。せっかくだからフットもやらない?気分上がるよ」

「つまり足の爪ですよね?まぁ…せっかくだしやろうかな。気分が上がるかはわかんないけど」

「きっと上がるから。デザインはどうしよっか?同色系に合わせたほうがいいかな。手が薄いピンクベースだからこっちは濃いピンクにして」

「それでいいです」

「もう、他人事みたいに…じゃあ足を伸ばしてくれる?」

という感じでフットネイルまでしてしまった。

「また来てね」

「あ、はい…ありがとうございました」

お礼を言って、軽く会釈をしてからネイルサロンを後にした。

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