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憎しみの果てに  作者:
26/34

誘惑する女

家を出る前に、鏡でもう一度姿をチェック。

タイトなスーツで、丈は膝より少し上。

ヒップラインがハッキリわかる。

ブラウス越しでも大きな胸が強調されていて、その上にジャケットを羽織っている。

メイクも完璧だ。

「よし、行こう」

バッグを持ち、ハイヒールを履いて家を出た。

移動中、いろんな男がチラチラと見ているのがわかる。

男って本当に単純。

わざとお尻を振りながら歩き、オフィスへ入った。

中で資料の確認をしていたら、ノックされたあとにドアが開く。

「おはようございます」

声を掛けられ、立ち上がって笑顔でお辞儀をする。

「おはようございます。社長」

「1時間後に打ち合わせがあるから、それまでに資料をまとめといてくれる?」

「かしこまりました」

ニコッとすると、社長の三ツ屋亮は慌てて社長室へ入っていった。

本当…男って単純。

有紗は心の底で笑いを堪えていた。

資料を整理したので、社長室へ入る。

「社長、打ち合わせの資料です」

そういいながら、少し身体を近づける。

「あ、ありがとう」

三ツ屋の顔が少し赤くなっているのを、有紗は見逃さなかった。

ちょっとだけ前かがみになり、胸を強調しながら三ツ屋に確認する。

「打ち合わせは、わたしも同行しますか?」

「い、いや、この打ち合わせは大丈夫。その代わり午後の打ち合わせは同行してほしい」

「わかりました。午後の打ち合わせは外ですよね?お昼はどうします?」

「お弁当かなにかを頼んでおいてもらえる?」

「わかりました。おいしいお弁当を頼んでおきますね」

そういって、笑顔のままお辞儀をしてから秘書室へ戻る。

有紗は、三ツ屋が社長を務めるリアルコミュニケーションズの秘書になった。

HPで秘書を募集していたからだ。

採用されて3か月が過ぎていた。

不慣れだった秘書の仕事も、1か月ほどで慣れ、そこからは悠々自適に仕事をしている。

というのも、三ツ屋が有紗にあまり仕事を頼まないから。

いや、頼めないが正しいだろう。

それは、有紗がボディラインを強調する服を着ていて、誘惑しているように感じるから。

しかし、それは事実だ。

有紗は三ツ屋を誘惑している。

そんな三ツ屋は、あまり有紗と親密になると過ちを犯してしまうかもしれないと思い、

なるべく接触しないように心掛けているため、あまり仕事を頼めなかった。

秘書室に戻り、ホームページでお弁当を探す。

三ツ屋は必ずお弁当を頼む。

意図的に有紗と食事に行くのを避けているのもわかっている。

「それだけ意識してるってことだもんね」

ニヤリとしてから、ある案が思いついた。


「ただいま」

そういいながら玄関のドアを開ける。

すると、リビングからやってきた真子が「おかえりなさい」と笑顔で出迎えてくれた。

この笑顔を見ると少しホッとする。

「今日もおつかれさま」

靴を脱ぎながら「ありがとう」と返した。

部屋着に着替えてからリビングへ行くと、カレーのいい匂いがした。

「お、カレーか。いいね」

「カレー大好きだもんね」

「ちょっと違う。真子が作るカレーが好きなんだ」

「ありがとう」

真子は笑顔だ。

結婚して1年が経ったが、いまだに新婚のような関係でいる。

それくらい、三ツ屋は真子のことを愛していた。

「お腹、大きくなってきたね」

「もう、毎日それ言ってるから」

真子は妊娠5か月だった。

毎日言うくらい、三ツ屋は真子の妊娠が嬉しかった。

カレーを食べ、お風呂に入ってから、真子とたわいのない会話をする。

ここまでは三ツ屋の普段の日常だ。

今までなら、これで満足して寝るだけだろう。

ところが、今の三ツ屋は違った。

ベッドに入り、寝ようと思っても寝付けない。

理由は性欲だ。

会社で毎日、有紗を見ているせいで性欲を抑えきれないでいた。

普通なら、そういう状態でも真子を抱くことで解消できただろう。

ところが、今の真子は妊娠中だ。

そんな真子に無理はさせられない。

いつか、この性欲が爆発しなければいいが…

不安になりながら眠りについた。

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