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憎しみの果てに  作者:
17/34

女としての

本当によかったのだろうか。

有紗は素直に俺の家までついてきた。

食事の途中から何か隠しているとは思ったが、身体女性化病だったとは思わなかった。

だが、それを差し引いても有紗は俺にとって魅力的な女性だった。

こんなに女性に惹かれたことは一度もなかったし、

一緒にいればいるほど離れたくなかった。

元男だとしても、今は立派な女性だし、有紗のすべてを知りたかった。

まだ2回しか会っていないのに、

付き合ってもいないのに有紗が愛おしくてしかたなかった。

だから失いたくない一心で、勢いで思わず「抱く」と言ってしまった。

先に言っておくが、こんな短期間でこういうシチュエーションになったのは初めてだ。

俺は遊び人ではないので、軽々しく女性とセックスはしない。

今まで付き合った女性も、ちゃんと何度かデートを重ねて、正式に付き合ってからしている。

それなのに…

有紗はベッドに座って俯いている。

本当にいいんだろうか…でもこれで抱かなかったら、やっぱり「わたしは男だったから」と言って、二度と触れることができなくなる気がした。

もう後戻りはできない。

両手を有紗の肩に乗せ、優しく抱き寄せる。

有紗はそのまま長谷川の胸にもたれるように身をゆだねてきた。

そのまま包み込むように抱きしめると、有紗もそっと腰に手をまわしてきた。

柔らかい身体の心地よさと温もりが伝わってきて、ますます愛おしくなる。

キスしたい。

目をつぶりながら有紗の唇に近づいていく。

有紗も察したのか、目をつぶって顎を斜めに上げてきた。

唇と唇が重なる。

数秒して一度離れてから目を開けると、有紗もほぼ同タイミングで目を開け、

視線が合ってしまった。

それが恥ずかしかったのか、有紗は下を向いてしまった。

もっとキスしたい。

有紗の顎に手を当て、上に向かせてから再びキスをした。

そのままゆっくりと押し倒し、ベッドの上で横になる。

唇が離れ、ジッと見つめていたら有紗が視線を横に外した。

「恥ずかしいよ…」

その表情は女そのものだった。

やっぱり有紗は女だ、元男なんて関係ない。

そう思った瞬間、長谷川の中で有紗を支配したいという欲望が沸き上がってきた。

「恥ずかしいことなんて何もないよ」

キスをしながらゆっくりと服を脱がしていく。

ブラの中には大きな胸が少し窮屈そうに収まっている。

ホックを外し、ブラを取ると乳房がプルンと揺れながら胸が姿を現した。

ちょっと動くだけでプルプル揺れて、それだけで柔らかいのがわかる。

その胸にそっと手を当てて、優しく揉むと「んっ」と有紗の声が漏れた。

もっと声を出させたい。

乳首を摘まむとビクンと少し身体が動くと同時に「あっ」と声が聞こえてきた。

丹念に乳首を責め、途中から舌を這わして舐めていく。

「んんっ…あっ…ん」

しばらく乳首を責めた後、一度キスをしてから今度は全身を愛撫していく、

脇、腰、背中、お腹、いろんな個所を責めていく。

左脇を責めると声が少し大きくなる。

そしておへその下を責めると声が高くなる。

どうやら脇とお腹が感じるらしい。

けど、まだだ。

今度はスカートを脱がし、ショーツもゆっくりと脱がしていく。

そのショーツを有紗は掴んで脱がさないようにしてきた。

「大丈夫」

優しく声をかけ、その手をそっとどかしてからショーツも脱がした。

おそらく相当濡れているだろう。

だが、あえて無視をして今度は太ももを舐めまわす。

右の内ももにビクンと反応した。

ここか。

有紗の性感帯は左脇、おへその下、右内もも。

ゆっくりと目をつぶり、イメージする。

イメージは指揮者だ。

タクトを振るうと、両手と舌が演奏のように動き、有紗の性感帯をリズミカルに責めていく。

「あっああ…ダメっ!んんんっ」

有紗が乱れだした。

もっとだ、もっと声を上げろ。ボーカルは有紗だ。

長谷川は完全に有紗を支配した。

そうなると、もう次は決まっている。

次の曲でラストだ。盛大なフィナーレを迎えよう。

有紗の股を開くと、頭の中で思いっきりタクトを振った。

有紗が乱れ、喘ぎ、女をさらけ出す。

どんどんフィナーレが近づいてくる。

そして最後にタクトを思いっきり振り下げる。

やりきった…

全身の力が抜け、気が付くと有紗の上に倒れこんでいた。

身体が密着していて、有紗の温もりを全体で感じることができる。

目が合うと、少し恥ずかしそうにはにかんでいた。

それを見て、あらためて思った。

やっぱり…有紗は俺にとって最高の女だ。


有紗は長谷川の腕に裸で抱かれていた。

落ち着く…ずっとこうされていたい。

頭を近づけて抱きつくと、長谷川がギュっと抱きしめてくれた。

「俺が言った通り有紗は女だったろ」

そう、英明に抱かれたわたしは、正真正銘の女だ。

ずっとこの人に愛されたい。

ずっとこの人を愛したい。

もし運命の赤い糸があるとしたら、わたしは間違いなくこの人と繋がっている。

じゃなければここまでお互いが短期間で惹かれあうなんて考えられない。

抱き合いながら気持ちが通じている幸せに浸った。

だが、ずっとこのままでいるわけには行かない。

長谷川から離れて、ゆっくりと起き上がる。

「トイレ?」

「ううん、帰るの」

「泊って行けよ」

本当は泊っていきたい。

「そういうわけにはいかないよ。明日仕事だから同じ服で出勤するわけにいかないよ」

「それもそうか」と長谷川も納得していた。

「でも電車ないだろ」

時計は深夜の1時を指している。

「タクシーで帰るよ」

「だったら俺が車で送ってくよ」

起き上がって着替えようとしたので、有紗はそれを制した。

「だってお酒飲んでるでしょ」

「あっ…」

すべてが完璧に見える長谷川のうっかりした姿が可愛く見え、クスクスと笑ってしまった。

「ありがとう。その気持ちだけで嬉しい」

服を着ていると長谷川も服を着ていた。

「着替えなくていいのに」

「タクシー乗るところまでは見送るよ」

こういう発言を聞くと大事にされていることを実感する。

一緒に下まで行き、長谷川が走ってるタクシーを止めた。

「連絡する」

「うん。わたしも」

「気をつけてな。おやすみ」

「うん。おやすみ」

本当はもう一度キスをしたかったが、タクシーの運転手がいるので我慢する。

乗り込んでから手を振ってからタクシーが走り出した。

20分ほどで家に着き、裸になってベッドに倒れこむ。

わたしは英明に抱かれた。

女になった。

嬉しさと恥ずかしさがこみ上げてくる。

きっとわたしは英明と出会うために女になったんだ。

そう考えればすべてが納得いく。

もう英明のことしか考えられない…

その気持ちを噛みしめながら目を閉じた。

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