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憎しみの果てに  作者:
16/34

デート

完成していたのに2年以上も放置して本当にすみませんでした。

パソコンがポンコツすぎて立ち上げる気にならなくなり、、、

という言い訳をしても仕方ないですよね。

また再開するので、今度こそちゃんと最後まで投稿するので

お付き合いしていただけたら嬉しいです。

よろしくお願いいたします。


聖菜にだけは話しておいたほうがいい。

でもどのタイミングで話そうか…

職場だと栞とかもいるので話せない。

もし聞かれでもしたら面倒くさいことになりそうだし、

キャバクラでバイトしていることもバレてしまう。

ヨガの帰りかな。


今日のヨガは有紗と一緒に受けた。

7時からのレッスンだったので8時に終わり、今は更衣室で着替えている。

すると隣にいる有紗がボソッと言ってくる。

「ねえ、今日泊ってもいい?」

「ん、いいよ。でも有紗ちゃんから言ってくるなんて珍しい」

「ちょっと相談、というか話があって」

「さては恋愛だな」

言っていて、それはないと心の中で即答した。

最近の有紗は、本当にキレイになったと思う。

スタイルもヨガを真面目にやっているおかげで細くなったし、

ファッションやコスメも最新のものをチェックして、

有紗から聖菜に勧めてくる場合もある。

そしてキャバクラでバイトしているのも影響があったみたいで、

どうすれば自分がかわいく見えるかがわかってきたのか、

男が興奮する絶妙な距離を保ったり、上目遣いを使ったり、

大きな胸も武器として最大限利用している。

おかげで指名もよくつくようになって、週2回しか出ていないのに人気もあった。

わかりやすく言えば、今の有紗はコケティッシュだ。

その有紗が、「恋愛」という言葉を否定してこなかった。

「あれ…まさか本当に恋愛なの?」

有紗は顔を赤くしてコクンと頷いた。

え?マジで??

一気に興味が湧いてくる。

「相手は誰なの?わたしの知ってる人?」

「だから、そういう話をするために泊まりにいくんだよ」

そっか、あまりにも唐突すぎたので焦っちゃった。

はやる気持ちを抑え、有紗と一緒に家に帰った。

でもまだ聞けない。

お風呂に入り、スキンケアをしてからやっと話せるようになった。

「で、相手は誰なのかな?」

「土曜に来たお客さん…」

なんだ、と思った。

カッコいい客がくると一目ぼれしてしまう子も中にはいる。

ん?でも有紗ちゃんってそういうタイプじゃないよね。

元男だから恋愛には興味ないって言ってたし…

「なんでそうなったの?」

有紗は恥ずかしそうに長谷川英明という男の話をしてくれた。

やたら引き寄せられたとか、運命、という言葉を使っている。

正直、聖菜にはわからなかった。

なぜなら、そういうのを感じるような男性に出会ったことがないから。

それに長谷川のような客にも出会ったことがない。

でもきっと、有紗がそういうのならそうなんだろう。

人の気持ちまではいくらなんでも100%の理解も共感もできないし、

考え方や感性は人それぞれ。

「まだ完全に信用できないけど、食事するのはいいと思う。身体目的じゃない感じなんでしょ?」

「うん。今までそういう客が何人もいたけど、英明は違ったから」

「だったら安心して会っていいんじゃないかな」

「だよね!」

どうやら同意してほしかったらしい。

有紗の目はキラキラ輝いていた。

この目は、恋する女の目だ。

それを見ることができた聖菜は純粋に嬉しかった。

理由は2つある。

あんなバカな復讐をするなんて反対だったので、

ちゃんと彼氏ができれば復讐なんて考えなくなるはず。

それともう一つは、自分に恋の相談を頼ってくれたこと。

「有紗ちゃん、めっちゃ女子!かわいい」

「そりゃそうだよ。身体女性化病で女になったんだから」

「そうじゃなくて、その恋してる目が。そういう目をした友達何人もいたもん」

「そ、そんな目はしてない!」

そう言いながらも顔が真っ赤になっているのが本当にかわいい。

「別に隠さなくていいのに。だって自分から恋愛の相談してきてるんだよ」

「うっ…」

なんか学生時代に戻った気分。

きっと有紗ちゃんの場合、男性に恋したのが初めてだから

初々しい中学とか高校の頃に恋した友達と同じような感じなんだろうな。

是が非でも成功してもらわないと!

「会うのは木曜かぁ…ってことは仕事帰りだね」

「うん…何着ていけばいいかな?」

話からすると、OLの有紗を見てみたいと言っていた。

変に気取った格好をする必要なないと思う。

けど、相手は社長らしいので、それなりのところに連れていくだろう。

「ブラウスにフレアのスカートなんかがいいんじゃないかな。あまり気取りすぎず、オフィスでも着ている中でかわいいと思うのを選ぶほうがいいと思う」

「そうだよねー。色はどうしよっかなぁ」

いろいろ考えている有紗は楽しそうだった。

その様子を聖菜は微笑ましく眺めていた。


定時になり、有紗は誰よりも早くバッグを持って席を立った。

「お疲れさまでした」

速足で職場を出ていく。

「有紗さん急いでたけど何かあるんですかね?」

「んー、友達と会うとかじゃない?」

聖菜は理由を知っているが、それを話すわけにはいかないので

はぐらかしておいた。

頑張ってね!


トイレで一度メイクを直してから会社の出口に向かうと、

「鈴木さーん」と呼ぶ男の声が聞こえた。

面倒くさいやつに見つかったな…

無視するわけにもいかないので振り返る。

「ああ、お疲れさま」

乾が軽い足取りで近づいてくる。

「なんか前よりも女らしくなりましたね」

「それ、セクハラだよ。それより何?」

「いや、久しぶりに見かけたから声かけただけっス」

相変わらずの口調で、こいつは変わらないなと思った。

ただ、乾の相手をしている暇はない。

「そう、じゃあ急ぐから」

「あ、予定あるんですか。暇なら飲みにでも行かないかと思ったんですけど」

暇じゃなくても今は2人で飲みにはいかないだろう。

もし誰かに見られて変な噂が立ったら面倒だ。

背を向けて軽く手を振ってから今度こそ会社を出て待ち合わせ場所に向かった。

有名なホテルのレストラン。

こういうところで食事するなんて何年ぶりだろう…

今から3年前、真子にプロポーズしたとき以来だ。

真子…そうだ、わたしはこんなことをしていていいのだろうか?

復讐が目的のはず…


すると後ろから肩を叩かれたので、ビクッとなってから振り返った。

「やっぱり有紗か。入り口で止まってどうした?」

長谷川だった。

その顔を見た瞬間にドキドキしてきて復讐のことは消えていた。

「あ、ううん…こういうお店、あんまり慣れてなくて…」

「そっか。もっと気楽なお店のほうがよかったかな。なんとなく気合入れちゃってさ」

照れ臭そうに頭をかいている。

その姿が妙にかわいくて親近感が湧いていた。

「ううん、大丈夫だよ。入ろう」

2人でレストランに入り、予約してあった席に腰を下ろした。

メニューはコース、ワインは長谷川が決めていた。

やることが実にスマートで、紳士のようにふるまっている。

いや、実際に紳士なのかもしれない。

エスコートされるのって、こういう感じなんだ。

「OLの有紗はそんな感じなんだね。イメージ通り」

「そう?ならよかった。英明はこないだと同じような感じだね」

今日も高そうなジャケットを羽織っている。

「ああ、あの日も仕事帰りだったから」

「じゃあ普段着はどんな感じなの?」

「もうちょっとだけラフな感じだけど、ベースはそんなに変わらないかも。なるべくカジュアルな格好で仕事しようとしてるから」

いかにも若い社長だなと思ったが、似合っていて自然なのでいい。

そこでワインがきて、乾杯をした。

あまり高いワインなど飲まないので、いつもよりおいしく感じる。

「有紗は仕事終わったとあとは、普段何してるのかな?」

「基本的に平日は毎日ホットヨガに行ってるの」

「ほー、それも美容のため?」

「一応ね。少しは痩せてきたし」

「成果が出てるならいいね。でも平日いつも行ってるってことは、本当は今日もホットヨガだった?」

「あ、気にしないで。たまには休むよ。予定がない日がほとんどだから毎日行ってるだけ」

そう、こういう日はさすがに行かない。

「あまり友達とかと会ったりしないんだ?」

マズい…不自然すぎたかもしれない。

女になってから過去の友達とは連絡を取っていない。

そうなると友達という友達はいなくて、唯一の友達は同僚の聖菜だけだ。

「もともと、友達少ないから。それにさ、仕事しているとあまり会わなくなるでしょ」

うん、これなら自然だ。

「まあ、それはわかる。俺も昔ほどは会わなくなったしな。仕事も結構忙しいし」

「社長って忙しそうだもんね。今日は大丈夫だったの?」

「忙しいって言っても365日忙しいわけじゃないよ。それに今日はメチャクチャ楽しみにしていたから」

「わたしも…楽しみにしてたよ」

言っていて恥ずかしくなった。

でもなぜか長谷川の前では素直に言ってしまう。

照れ臭そうに微笑むと、長谷川もニコッとしていた。

だが、試練はこのあとにすぐにやってきた。

食事をしながら、長谷川は有紗の過去について聞きいてきた。

「子供の頃の有紗ってどんな感じの子だったの?」

「あっ…えーと、普通に友達と遊んだり…かな」

「そっか。中学は?部活とか何やってたの?」

「中学は…」

テニス部だ。テニス部なら問題ないな。

「テニスやってたよ」

これ以上質問攻めにあうとボロが出てくる。

逆に質問しよう。

「英明は何の部活やってたの?」

「俺はね、サッカー部だったよ。うまくなかったけどね」

自虐的に言って笑っている。

このあとお互いに質問しあい、マズいと思ったものは適当に濁しておいた。

ひょっとしたら不振がってるかもしれない。

というか、元男だということを隠していていいものだろうか。

急に罪悪感にかられ、気分が落ち込んでしまった。

「どうした?おいしくない??」

「ううん!そんなことないよ!」

落ち込んでいるのを気づかれそうになったので、

無理に笑顔で返しておいた。

「ならいいけど。はい、じゃあ次は大学の頃の有紗」

「大学は…」

遊んでバイトして、3年のときに真子と付き合いはじめて…

「結構バイトばかり…だったかな」

「へー、なんかいっぱい遊んだりしてそうな感じだったのに。あ、遊び人とかっていう意味じゃなくて、オシャレな友達とカフェ行ったり、買い物とかしてそうなイメージって意味だから」

「そんなことないよ…ホント普通の学生だったし」

「そうなのかなぁ、服とかはどんな感じだった?」

「服は…」

必死に当時の真子の格好を思い出す。

スカート履いてる日もあれば、パンツだったり…どんなデザインまでかは思い出せない。

「デニムとか…カジュアルな感じ…」

もう無理だ、やっぱり嘘をつき続けてもいずれボロが出る。

それに、隠すことなんてできない。

意を決して長谷川の目を見つめた。

「食事終わったら少し歩かない?大事な話があるの…」

「ここじゃ話しづらいことなんだね。いいよ」

今までの質問の答えで、やはり長谷川も疑問に思うことがあったのだろう。

素直に応じてくれた。

ただ、本当に話すとなると恐ろしくなる。

どういう反応をするんだろうか?

ひょっとしたら怒って、始まってもいないのに終わるかもしれない。

それを考えると食事が永遠に終わらなければいい、とさえ思ってしまった。

食べ終わるまで、長谷川は気を使って過去の話はしてこなかった。

その優しさが余計に響く。

そして食事も終わり、一息ついたところで長谷川が言ってくる。

「そろそろ行こうか」

「うん…」

言わなければいけない時間が刻々と迫ってくる。

「ごちそうさまでした」とお礼を言ってから歩き始めた。

時間は夜の9時半。

それなりに人もいるが、長谷川はまわりなど気にしていない雰囲気だった。

「有紗が話したくなったときでいいよ。それが今日じゃなくても構わない」

今日じゃなくてもいい…でも、今日言わなかったら永遠に言い出せない気がする。

これは隠しておいたらダメだ!

一度深呼吸をしてから足を止めて、長谷川に向き合った。

「わたしね、5か月前まで男だったの」

少し驚いた顔をしたが、長谷川はなるべく表情を崩さずに答えた。

「身体女性化病…」

有紗はコクンの頷いた。

「だから学生時代は男だった。結婚も…してた。もう離婚してるけどね」

長谷川は何も言わず、ジッと有紗の顔だけを見ている。

話を続けることにした。

「騙すつもりはなかったの。もう戸籍も女だし名前も変えたし…でもやっぱり言っておかないといけないって思った。英明に嘘や隠し事はしたくなかったから」

それでも長谷川はなにも言ってこない。

やっぱりダメだったか…

これは夢だったんだ。

夢なら早く覚めたほうがいい。

「素敵な夜をありがとう。期待に応えられなくてごめんなさい」

有紗は長谷川に背を向け歩き出そうとした。

そう、これでいいんだ。

わたしの目的は恋をすることじゃない。

自分に言い聞かせて右足を前に出そうとした瞬間だった。

いきなり腕を掴まれる。

とても力強く。

「待てよ!まだ俺は何も言ってないだろ」

有紗は振り向かずに答える。

「何も言わなかったじゃない」

「頭を整理してたんだ。いきなり言われたんだ、それくらいの時間はくれたっていいだろ」

「でもどうせダメでしょ、だってわたし男だったんだから!」

「有紗は女だ!過去のことを聞いたのは謝る。有紗のことをいっぱい知りたかったんだ。でも大事なのは今なのに。すまない」

「違う、わたしは本当の女なんかじゃない!もう放っておいてよ」

こういわれても、素直になれない。

男だったと告白したことで、自分の中のリミッターが外れて自暴自棄になっていた。

長谷川は両手を使って無理やり振り向かせてくる。

それでも有紗は顔を上げなかった。

涙が溢れていたから。

なぜ泣いているのか自分でもわからない。

それでも涙は勝手に流れていた。

「だったら…俺が有紗は女だってことを証明する」

「どうやって…」

「有紗を…抱く」

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