第1話 宿 【2分で読める671文字】
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ようこそ『身体住宅』へ。
ここより良い宿なんてありはしないでしょう。
多彩な住人が集うこの宿は退屈を嫌い、癒しと交流を求める仲間たちが豊富に揃う、華やぎと賑わいに満ちた場所。
時に大迫力の眺望を愉しみながら、時にゆったりと寛げる……。
大開口パノラマウインドウが生む豊かな開放感、心安らぐ落ち着いた白色とエレガントな朱色を基調とした設えが格別なひとときを演出します。
雨に強く。風にも強い。景色は格段の美しさ。
充実した利便性と確かな将来性に恵まれた、価値あるこの場所が、快適で楽しい贅沢な生活様式を叶えてくれることでしょう。
ある住人は言いました。
「今まで周りにいた奴らがこれまた無口でよぉ! 退屈してたが、ココにはたくさんの住人が居るから話相手には困らないぜ。相棒には感謝しないとなぁ」
ある住人は言いました。
「最初は御国に帰るまでって約束だったけど、今じゃそれもご破算。相棒には悪いが楽させてもらってるよ。それにしても相棒は本当に木に登るのが好きなんだなぁ」
ある住人は言いました。
「家賃は高いかって? あぁ…… それは『経験と知識』ってやつさ」
ある住人は言いました。
「オイラは話すのが大好きなんだ」
さあ、どうぞ。ここが夢の宿。
『目』を見張る眺望が。
『耳』から入る自然の息吹が。
『鼻』をくすぐる森の香りが。
『口』ずさみたくなるような動物たちの歌が。
『手』にしたら絶対に離したくなくなる住み心地が。
『足』を広げたくなる解放感が。
『首』を長くして待っている。
来ればあなたもきっと住みたくなる。
みなさんの快適な暮らしを死んでも保証いたします。