第百二十五話 この星の歴史
お疲れ様です。
連休中の深夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。
目の前に恐ろしい生物が突如として出現すれば恐怖が生まれ、愛している女性が身を寄せて愛を囁けば温かな感情が芽生える。
人の心は環境や人物によって左右されると言っても過言でなく、更に人という生物は五感から情報を取り入れる事に突出しているのだなぁっと。目の前に広がる大きな闇を捉えて素直に感じてしまった。
砂と風が舞い踊る山から遺跡内部に足を踏み入れると今まで足の裏を捉えていた砂の感覚が薄れてその代わりに大変硬くて乾いた感触を捉え続けていた。
地面に敷き詰められた古ぼけた石畳みはずぅっと奥まで続き、山肌を削って作られた遺跡内部の側面にも石板が嵌め込まれており確実に人の手が加わってこの遺跡は構築されたのだと推測出来る。
暗闇が蔓延る遺跡内は閉塞感を覚えるかと思いきや、背の高い天井及び横幅の広い通路が奥へと続いている為不思議と狭さは感じ無かった。
地面だけならまだしも何故側面に石を敷き詰める必要があったのだろう??
まぁそれは恐らく、此処が特別な場所である事を強調したかったのだろうさ。
特別な場所には特別な力が宿る。
この通説から察すると遺跡の最奥には超特別な力を持ったナニかが潜んでいるのだと、余り宜しく無い答えに行き着いてしまった。
「へぇ――。中はこんな風になっていたのかよ」
隊の先頭を行くシュレンが浮かべる光球に照らされた遺跡内部をフウタが捉えると素直な感想を漏らす。
「建てられてからかなりの年数が経過しているな。ほら、遺跡入り口から吹き込んで来る風の力によって所々の石畳が削られているだろ??」
何気無く周囲を見渡して風の力でかなり擦り減ってしまった箇所を見渡す。
ボロボロに崩れた側面の石板や、鋭く縦に削られた石畳。
目に見えぬ風は人が確知出来ない速度で硬化質である岩をそして石を少しずつ削って行き、途方も無い年月が経過する事により人はその力を改めて知る事となるのだ。
「風に含まれた塵や砂の作用も働いているのだろう。チュル、貴様の主人は何処で倒れていたのだ」
ハンナが己の右肩に留まる小鳥へ問う。
「もう少しで見えて来るわ。ほら……、あそこ!!」
青き鳥が右の翼を件の位置に向けると、確かにそこには人が居たであろうと推測出来る痕跡が残されていた。
入り口から吹き込んで来る風によって運ばれて来た砂が辺り一面の石畳の上に堆積されているのだが……。
ティスロが倒れていた場所だけ砂が払われており、更に彼女が此処に残していった荷物の欠片が推理に拍車を掛けた。
「なぁんで荷物を残して奥に向かって行ったんだ??」
彼女の所有物の一つである何の変哲もない布切れを掴み上げ、遺跡の奥へと向かって行く砂の上に刻まれた女性らしい足跡に視線を送る。
ここで大人しくしていれば俺達の救出任務はこれにて終了!! と。
暗闇の中へ突入する事も無く、速攻で踵を返して王都に帰れたってのによ……。余計な問題ばかり起こす困った要救助者ちゃんだぜ。
「歩幅からして急を要した感じでは無いな」
「あぁ、恐らく貴様を探して奥に向かったのだろう」
フウタとハンナが尤もらしい推理を話す。
「チュル、ティスロの魔力は探れるか??」
布切れを地面の上に放り捨てて手に付着した砂を払いつつ問う。
「まだ探れる位置にまで接近していないわ。奥に向かえば探れると思うけど……」
「奥、ねぇ……」
何かが潜んでいるかも知れない危険な遺跡内部に突入せざるを得ない状況下なのだが……。
肌に纏わり付くこの違和感が俺達をこの場に踏み留めてしまう。
これがチュルの言っていたマナの濃度か。
ルクトの静謐漂う清らかな場所と違い、ここのマナの感想は気持ち悪いと素直に言える感覚だ。
肌では無く体内の五臓六腑に絡みつき動きを拘束してしまう。そんな有り得ない妄想を駆り立ててしまう程に粘着質な空気が遺跡内部を漂う。
「此処で考えていても問題は解決しない。遺跡内部へと向かいティスロを探すぞ」
「了解。相棒、気を付けて向かおうぜ」
グルーガーさんが誰よりも先に行動を開始すると俺達は彼の力強い歩みに続いて闇が蔓延る遺跡内部へと再度進行を始めた。
背の高い天井と横幅の広い通路は奥に進むに連れて徐々に狭まり、それに合わせる様に隊列の感覚も狭まって行く。
七名の乾いた足音が遺跡内に乱反射してこだまして、もう見えなくなってしまった出入口から相も変わらず吹く風の甲高い音が俺達の緊張感を増して行く。
「「……」」
いつもは誰かが口を開いて話題を提供していたのだが、周囲に蔓延る闇の所為か将又隊全体を包み込むこの嫌な空気の所為か。
誰しもが口を閉じてその時に備えて咄嗟に動き出せるような身の熟しで奥へと進んで行くと俺達の目の前に壁が出現した。
「行き止まりか??」
シュレンが照らす光球が道の終わりを照らしたので至極単純な感想を述べる。
「いや、右側に続く道があるぞ」
ハンナの声につられてそちら方向に視線を動かすと、この闇はまだまだ続きますよと奥へ続く通路が声高らかに宣言してくれた。
「ティスロの足跡もそっちに続いているな」
入り口付近から此処まで続いていた女性らしい歩幅の足跡は一旦此処で止まろうかと考えたのか、分岐点付近でそこかしこへと動き。
意を決した彼女は此処へ来た時と変わらぬ歩調でこの先へと向かって行った様だ。
「先へ進むぞ」
此処にも危険は無いと判断したグルーガーさんが誰よりも先に、微かに左方向に湾曲する通路の先に向かって歩み始めた。
「っと。この先はちょっと狭いな」
横幅凡そ五、六メートル程度だろうか。
壮大な遺跡出入口の通路は既に普遍的な広さへと変わり、俺達は互いの存在を確実に感じ取れる距離感を維持して進んで行く。
「狭いって言っても余裕で通れる道じゃねぇか」
フウタが前方を見据えつつ普段通りの口調で話す。
「まぁそうだけどさ。出入口付近が広過ぎたからやけに狭く感じ……。ん?? 何か壁面に描かれているぞ……」
隊の先頭を行くシュレンの光球が照らした左側面の壁画を捉えると思わず歩みを止めてしまった。
何を模写したのか判断に迷うが、九体の魔物らしき姿が広大な大地の上に描かれ。その九体は輪を描き仲睦まじく手を取り合っていたが……。
その隣には九体の魔物達が手を放して互いに距離を置き、個別の道へと進んで行く様が描かれていた。
「何だろう、この壁画は……」
「その九体の魔物は恐らく、九祖であろう」
ハンナが俺と同じ壁画を捉えて口を開く。
「あぁ、この世の始まりを作ったべらぼうな力を持つ魔物だろ?? そいつらが何でこんな辺鄙な場所の壁画に描かれているのか。不思議じゃね??」
「もしかするとこの遺跡は九祖に纏わる遺跡なのかもな」
まぁ――、それが妥当な線だろうなぁ。
って事はだよ?? 長い時間を掛けてこの遺跡を築いた古代人達は現代の俺達に何かを伝える為にこの壁画を残したのだろうか。
それとも警告の為に描いたのか……。
「謎は深まるばかりだなっ!!」
「もう少し静かに話せ」
んも――。ここは俺に付き合って驚いてくれてもいいのにっ。
「おい!! ダン!! ハンナ!! こっちに壁画があるぜ!!」
何ですと!?
「今行く――!!」
恋人との待ち合わせに遅れてしまった彼氏と同じ急ぎ足でちょいと先に進んでいる隊に追いつくと新たに現れた壁画に視線を送った。
次に現れた壁画には絶望に打ちひしがれたかの様に、人の姿の魔物が悲しそうに蹲っている姿だ。
それに寄り添うのは……。立派な胴体の背に生えた大きな翼、巨躯を支える立派な四肢に長い尾。
それから想像するに恐らく。
「これって、もしかして龍の姿かな??」
「もしかしてもじゃなくて龍だろ。噂には聞いた事があるけどよ、ガイノス大陸って所に棲んでいるらしいぜ」
アイリス大陸から遥か西へ向かった先にあるとされるあの大陸か。
「ほぉん。この龍は何で人の姿……、確か亜人だっけか。そいつに寄り添っているんだろう」
「さぁな。ひょっとしたら深い関係にあって、慰めているのかもよ」
そういう見方も出来るのか。
そうなると……。この二体はこの星が生まれて初めて出来た恋人同士って事になるな。
原始の星でどんなお出掛けをしたのか多大に気になる所だが、何故亜人とやらは蹲っているのだろう??
この世の始まりを作ってしまうべらぼうな力を持つ個体が悩む理由。
俺達の様な一般人には到底及ばぬ悩みを抱えている事だろうさ。
「ダン!! こっちにもあるよ!!」
「「今行くね――!!!!」」
今度はフウタと共に恋人に名を呼ばれて颯爽とはせ参じる彼氏の台詞を吐いて駆け始めた。
「こっちの壁画は……。んん?? 何だ、これ……」
先程の亜人らしき人物の下には沢山の人と思しき姿が描かれ、その大勢の人達が九祖の下へと歩いて行く姿が描かれている。
そしてその次の壁画には九祖とよく似た姿の魔物の絵が描かれていた。
「ん――、私も良く分からないけどさ。多分、この人達とこの魔物達が交配したんじゃない??」
お――、言われてみれば確かにそう見えるな。
でも何で人の姿の個体と交配する必要があったのだろう?? もしかして種を残す相手が居ないから致し方なく亜人が人と思しき個体を作り、そしてそれを相手にして九祖達はこの世に存在した証を後世に残したのか……。
これは全て俺の憶測だが、そう考えると矛盾はしないよね??
「げぇっ、マジかよ……。龍のドでけぇアレを人間にぶち込んだらそれだけで絶命しちまうだろ」
「うん?? フウタ、そのアレって何??」
おっと、此処から先はもう少し成長してから学ぶ事ですのね!!
「あ――!! 向こうにも壁画があるぞ――!! 次、行ってみよ――!!」
「ちょ、ちょっと!! 引っ張らないで!!」
シテナの右手を手に取ると、ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべているフウタをその場に置き去り次なる壁画の前に到着した。
「こっちの壁画はまたこれまでと違って何だか暗い感じだな」
亜人らしき人物が項垂れながら沢山の人と思しき姿を見つめている姿が描かれており、そしてその隣には龍を除く八体の九祖達が左右に分かれて対峙していると判断出来る壁画が描かれていた。
向かって左側には亜人のみ、右側には龍を除く七体の九祖。
何かがあってコイツ等は敵対したのか?? それもと己の持論を言い合っている姿なのか……。
「ダン、こっちも描かれているぞ」
「「行くね――!!」」
シュレンに呼ばれ、今度は仲の良い友人に向かって放つ台詞をシテナと共に口に出して歩み出した。
シュレンの前に描かれている壁画には亜人の下に強力な圧を纏った五体の人間が集い、何やら相談をしている姿が。
そして……。その隣にはあのクソ野郎と思しき沢山の蛇の頭を持つ原始の滅魔が描かれていた。
沢山の蛇の頭の隣には馬鹿デカイ蚯蚓擬き、その隣には巨大な羽を広げた飛蝗、そしてその隣には何だかゴツゴツした突起物が生える尻尾があり更にその隣に視線を泳がせて行くのだが……。
残念な事に壁画はそこで途絶えてしまっていたので尻尾の先の体を捉える事は叶わなかった。
「う――ん……。この壁画はいよいよ始まる戦いに備えているって感じだな」
「某も同じ考えだ」
「この五人の人間?? は一体誰だろうね??」
「さぁな。でも、この世の始まりを創生した九祖が一体である亜人の下に集う奴等だ。俺達の想像が及ばない力を備えているのは確かだろうよ」
それだけじゃなくてあの五つ首の存在も此処で確認出来る。
亜人は九祖に対抗すべく滅魔を生み出したのだが……。そうなるとこの五体の人間も滅魔なのだろうか??
ほら、キマイラ達も四人で一体の姿を形成したし。それから察するにこの五体も恐らく一体の集合体なのだろう。
でもそうなると隣の五つ首達と同系列で描けばいい事だし……。ちょっとこじつけ感が強いかしらね。
「シテナ、こっちにも描かれているぞ」
「「「はいは――いっ!!!!」」」
遅れてやって来たフウタと合流すると緊張感の欠片も見出せない明るい口調を放ち、グルーガーさんが真剣な眼差しで見つめている壁画へと向かった。
亜人の下に二人の人間が描かれており、その三名は家族の様に仲睦まじく手を取り合っている。
その隣には一人になった亜人が沢山の人間と魔物を従えて龍達、残る八体の九祖と対峙している壁画が描かれていた。
「こっちはいよいよ始まった世界崩壊の序章って感じだな。グルーガーさんは九祖について何か知っている事はあるかい??」
「この世の始まりを生み出した我々の祖先、程度の情報だな」
ふぅむ、俺と何ら変わりない情報量だな。
「この二人は亜人の子供かな??」
シテナが首を傾げながら仲睦まじく手を取り合う三名の壁画を見つめる。
「多分そうだろうさ」
「じゃあ亜人の相手を務めたのはさっきの人間っぽい姿の個体??」
「多分……」
「多分ばっかじゃ分かんない!!」
いやいや、お嬢さん??
数えるのも億劫になる大昔の話について言及されても憶測程度の答えしか返せないのは自明の理なのですよ??
「大昔の出来事を俺に問われてもねぇ……。んっ?? 向こうにもまだ壁画あるみたいだぞ!!」
俺達よりも先行しているリモンさんとシュレンが興味津々といった様子で壁画を見つめているのでそこへ向かって軽い駆け足で向った。
「こっちの壁画はぁ……。おう?? 何だ、コレ……」
八体の九祖が悲しそうな表情を浮かべて地面に横たわる亜人の周りを取り囲んでおり、そしてその隣には三つの物体が他の壁画よりも強烈な線で描かれていた。
一つはおどろおどろしい影を纏った剣、一つは裾野が広い山の上に時計の文字盤が描かれておりその針は十二時を指している。
そして最後に描かれているのは王族がこぞって使用する様な派手さの欠片も見当たらない質素な杯だ。
この三つが意味するのは一体……。
「ふむ……。亜人とやらはこの三つに封印された様だな」
「シュレン。何か知っているのか??」
「某が祖父から聞いた話によると、亜人の持つ強力な力は一つでは収まり切らず。三つの神器によって封印されたそうだ」
何があって九祖達は仲違いをしたのか理解に及ばないが、亜人と魔物と人間達は八体の九祖に戦いを挑みそして敗れた。
復活若しくは復讐を恐れた彼等は亜人の力を封じ込める為に壁に描かれている三つの神器を制作して封印したのか……。
「じゃあ何だ。この三つの神器ってのは今もこの世の何処かに現存している可能性もある訳だよな」
フウタが壁画に近寄り、三つの神器を間近で捉えつつ話す。
「某もその意見に同意する。理解に及ばぬ古の時代に制作された神器は恐らく人が寄り付かない場所、若しくはそれらを守る者達の側にあるだろう」
「人が寄り付かない場所……、ね」
人が到底到達出来ぬ深海、空気が薄れ生存する事さえも困難な山の頂上、危険な生物が跋扈する南海の孤島等々。
この世界には人が足を踏み入れるべきでは無い場所が多く存在する。
そして、俺達が今足を突き立てている場所もその一つの内に数えられるだろう。
俺の視線の意味を理解したのか。
「「「……っ」」」
この場に居る全員が通路の先に待ち構えている暗き闇へと視線を送ってしまった。
「ま、まさかね……」
俺が静かに言葉を漏らすと。
「そ、そうだよ。こぉんな場所にべらぼうにヤベェ奴が封印されている神器なんかありゃしなって」
フウタがその通りだとして小さく頷いた。
「では何故ここにこの星の歴史の真実だと思しき壁画が描かれているのだ」
ハンナが鋭い指摘を俺の背に突き付けて来る。
「し、知らねぇよ!! あれじゃねぇの!? ほ、ほら!! 知識を持っている奴が後世にそれを伝える為に壁画を描いたのさ!!」
これに違いない!! そんな感じで叫ぶ。
「それは矛盾しないが……。人の侵入を防ぐ砂嵐、砂地に生息する砂虫、南の地を守るミツアナグマ一族。これらの条件を加味するとこの場所は神器を封印するのに適した場所だぞ」
「偶々だって!! それに神器が制作されたのは大昔の時代だろ!? 時代の移り変わりで地形も人も変わるんだし!! それこそこじつけ感が強いんじゃね!?」
「時代の移り変わりによってこの遺跡が露呈されてしまった。そう考えるのは??」
こ、この野郎!! どうしてもこの遺跡内部に神器が封印されていると確定付けたい様だな!!
「遥か昔に人が寄り付かない場所にこの遺跡を建築したが、風食、地形の変化によって現代に出現した。ハンナの考えは強ち間違えでは無さそうだぞ」
グルーガーさんが横着な白頭鷲ちゃんの意見を肯定する様に静かに頷く。
「言っておくけどな!! 俺達の目的はティスロを救助する事で!! 神性格を持った超ヤベェ奴を封印した神器を捜索する訳じゃないからね!? 例えそれに繋がる形跡を発見したとしてもここで見た、聞いた、知った事は絶対に他言無用だから!!」
「それは何故だ」
シュレンが不思議そうな瞳で俺の顔を直視する。
「少し考えれば分かるだろう。この世の破滅を願う大馬鹿野郎共が亜人の力を封印してある神器を求めて押し寄せて来るからだよ。そうなればミツアナグマ一族達が一掃されてしまうかも知れないし、不必要な血が流れる恐れもある。だから俺達には守秘義務が課せられるのさ」
この世の破滅を願う奴等だけじゃなく、神器が封印されている遺跡の中に存在するかも知れないお宝を求めてやって来る頭のイカレた冒険者や。神器を売却しようとしてやって来る不届き者も現れるかもしれない。
未確定な情報は人の心を焚き付ける魅力を有しており、情報は時に武力よりも強力になる力を備えているのだ。
軽率な情報の譲渡は禁止すべきだろう。
「俺もダンの意見に賛成だ。此処で入手した情報は我々以外に伝えてはならない。それが例え里の者であったとしてもだ」
グルーガーさんが鼻息荒くそう話す。
「了解了解。まっ、俺様達がここでアレコレと妄想していても所詮は机上の空論って奴さ。ティスロって奴を探すついでに色々見て回って、それでも見つからない様なら即刻帰還すれば良いだろ」
落ち着きを取り戻したフウタがのんびりした口調でそう話すと通路の奥へと進んで行く。
「その通りよ!! 今はその神器って奴よりも私の主人であるティスロを救助する事が最優先事項なんだからね!?」
「それは理解している。もう少し静かに話せ」
ハンナが己の右肩で勢い良く両翼を動かす彼女に苦言を放つ。
「よっしゃ、方向性は決まった事だし。これから先も細心の注意を払って進もうや……」
徐々に光の範囲外へと進んで行くフウタの背に続きながらビビっている訳じゃないけども!! 俺達の周りに渦巻く空気感に沿った口調を放った。
畜生……。遺跡内部にも危険がそこかしこに存在していると考えていたけどよ。俺が考えていた危険なんかメじゃない危険が待ち構えているかも知れないんだよなぁ……。
仮に、この世界を創生した正に神に等しき力を持つ亜人が封印されている神器を発見したとしても一切それに触れず、近寄らずに帰還すべき。
世界崩壊級の危険性を孕む物に触れではいけない。例えそれが歴史的大発見だとしてもだ。
人智が及ばぬ理の外側に存在するモノに関わるとろくな目に遭いませんからね……。それはこの身を以てよぉぉく理解しているから。
まだまだ安全が確保されている場所に居るのにも関わらず喧しく鳴り続ける心臓ちゃんの頭をヨシヨシと静かに撫でて気持ちを落ち着かせると、俺達は遺跡に突入した時よりも更に警戒心を強めて闇の先へと向かって行ったのだった。
お疲れ様でした。
読者様達は連休をどのように過ごしていますか??
私の場合は……。まぁほぼいつも通りといった感じでしょうか。いつもより少し遅く起きて、それから温かなコーヒーをズズっと飲みつつPCを起動。
起動が終わるまでスマホをポチポチといじりながら過ごしてそれからプロット執筆に入ります。
徐々に体調が戻りつつあるので今回の連休は本当に有難いですね。何せ本話でストックが全てきれてしまいましたので……。
今日この後はまぁまぁな深夜まで執筆を続け、明日は黄色い看板が目印のカレー店へ足を運び久々にチキンカツカレーを食す予定です!!
それでは皆様、引き続き連休をお楽しみ下さいませ。