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第十二話 都会と田舎が混在する街

お疲れ様です。本日の投稿になります。


それでは、どうぞ!!




 初夏に相応しい湿気を含んだ風が吹く。


 土埃が混ざったその風は人に不快感を与える物であり、細く暗い道に酷く誂えた物にも感じ取れた。


 経年劣化し汚れた付着物が目立つ家屋の外壁に添えられている、今にも崩れ落ちそうな四人掛けの木製のベンチ。


 そこに周囲の風景と同化する様に座る老婆もこの蒸し暑い風に顰め面を浮かべ、負の感情を含ませた溜息を大きく吐く。



 家屋が強い陽射しを遮り生まれし、影。


 その影の中。老婆はベンチの上に空いている空間を埋める人物を待ち続けている様にも見えた。




「――――――――――。今回の依頼だ」



 一人の男が静かに老婆へと歩み寄り。音も無く隣に腰かけ、一通の便箋を老婆の膝元へ乱暴に投げ置く。



「これはこれは……。いつも御贔屓に……」


「口を開くな。お前は只の仲介役だろ??」


「へぇへぇ。左様で御座います」



 人の神経を悪戯に逆撫でするしゃがれ、枯れた声で苛立ちを募らせる男性の声にそう返す。



「ならば口を閉ざしていろ。いつも通りに頼む、以上だ」



 男が小さく舌打ちをし、ベンチから立ち上がりその場から急いで立ち去ろうとするのだが……。



「要らぬお世話かと思いますが……。今回の依頼はいつも通りに事が運ぶのは難しいかと」



 老婆が便箋の中から一通の紙を男の許可も無く取り出し、紙の面と顔を密着させ。


 文面を貪る様に読み、大きく頷いている姿を男が確認すると。



「貴様……!!」



 彼が激昂し、老婆へと詰め寄り。



「下っ端の貴様が触れて良い内容では無いのだぞ!?」



 激昂を籠めた凶悪な拳を今にも老婆の頭蓋へ叩き込もうと構えた。



「へぇへぇ……。御安心下さい。私の役目はこれを届けるだけで御座います。それ以上でもそれ以下でもない。しかし…………」



 俯きがちであった老婆が面を上げ、男を見上げると。



「っ!!!!」



 男が恐怖の顔を浮かべ、その場から素早く二歩下がった。



「見ての通り、幾百もの修羅場を越えて来たこの体はまだ血に飢えております故。不必要な攻撃は控える様にお薦め致します……」



「気味の悪い婆め!!」



「有難き御言葉で御座います。――――。貴方達と同じく、我々も至る所に『目』 を持っております。それはもぅ……。地平線の彼方の獲物を捕らえるが如く。鋭い鷹の目を」



 老婆が再び地面へと顔を戻し。


 周囲の風景と同化を開始した。




「それがどうしたと言うのだ??」


「鷹の目は何物をも見通す力を持っております。先も申した通り、今回の依頼は実力を行使せざるを得ない状況になると考えられます。それでも……。貴方方は強行されるのですか??」



 これが最終警告だ。


 確認の意味を籠めて、老婆は語尾を強めてしゃがれた声を放つ。



「構わん。金なら幾らでもある。証拠を残さなければ良い」


「へぇへぇ……。では、滞りなく承りましたので。果報をお待ち下さいませ」


「ふんっ!!」



 男が踵を返し、光射す街の大通りへと進んで行く。


 その足取りは恐怖に駆られ、その場から逃げ出す様にも見えた。



「わっ!! あはは!! ごめんね!! お兄さん!!」



 その男とすれ違った少年が活発な脚力を生かして薄暗い道を駆ける。



「おばあちゃん!! 今日もげんきそうだね!!」


「へぇへぇ。お前さんも元気そうで羨ましいよ」


「えへへ!! あ、そうだ!! またあの美味しい御菓子もってきてよ!!」


「時間があれば幾らでも作ってあげるさ」


「ありがとうね!! じゃねぇ――!!」



 柔和な笑みを浮かべ、少年を見送った老婆は周囲に誰も居ないのを確認すると。


 お年を召した体とは思えない速度で立ち上がり、そして。


 先程、逃げ帰る様に踵を返した男よりも数段速い速度で街の闇の中へと姿を消したのだった。































 ◇






 良く晴れた空。


 その青空の中を颯爽と鳥達が飛び行き、一直線に伸びた軌跡を追う様に道を進む。


 こんな日は誰しもが朗らかな気分を胸に抱いて一日を過ごすであろう。


 数日前には疲弊し、泣きぐずっていたこの体も概ね良好な精神状態を保ち、広大な大地を快調に踏み続けていた。



 王都を出発して三日。


 目的地までもう後僅か。



 何だかあっと言う間に到着した感じだな。


 先の任務での移動時間が長時間に及んだ所為か、随分と短く感じてしまっていた。



 背嚢を背負い直し、御者席に着き。



「……」



 横着な初夏の風が藍色の髪を揺らすと、それを嫋やかな所作で抑え付ける彼女へと言葉をかけた。



「もう直ぐ到着だけど。代わろうか??」


「いえ、大丈夫です。街に到着してから交代しましょう」



 無表情に見えるがその実。


 良好な感情の影が見える顔で此方を見下ろす。



 余程、御者席が気に入っているのだろう。


 この三日間ずぅっと座りっぱなしだものね。


 只。



「カエデ!! どうしたのよ!? お尻モジモジさせて!!」


「長時間、振動を受け続け筋肉が驚いているのです。後、マイ。もう少し抑えた声で話して下さい」



 この三日間で御者席の攻撃によって臀部を痛めてしまったみたいで??


 今も時折。



「……っ」



 痛い場所を誤魔化す様にマゴマゴしていた。


 向こうに着いたら座布団を買った方が良いかな?? 時間が在ればお店に寄ってみよう。

 


「はぁ……。ここは桃源郷で御座いますわねぇ……」


「アオイ、そろそろ人の姿に変わりなさい」



 到着に備え、人の姿に変わって欲しいのが本音なのです。


 右胸の上着の内側に潜む黒き甲殻を備える蜘蛛の体を指先で突くのだが……。



「あんっ。もぅ――。レイド様?? 女性の大事な部分を突いては駄目では無いですか」



 御免。


 蜘蛛の姿だと、何処がどの部分か分からないから。


 急かす訳じゃないけど。もう一度同じ個所を突こうとすると……。




「こんにちは!! いい天気ですね!!」


「あ、どうも!! お疲れ様です!!」



 前方から満面の笑みを引っ提げた行商人の方とすれ違う。



 あの笑み。


 そして、積載された物資。



 きっと彼は頭の中でざっくばらんながら商いで得られる金銭を思い描いているのでしょうね。


 お国の経済を発展させる為、商売繁盛を祈っております。



 荷馬車が通り過ぎ。彼の後ろ姿を見送ると。



「…………ちっ」



 一人の女性が大変な苛立ちを募らせている御顔を捉えてしまった。



 初夏にピッタリと似合う深緑の髪を揺らし、馬鹿げた量の荷物を背負い、額に汗を浮かべる姿は流石であると思います。


 ですが……。


 もぅぅ少し、笑みを浮かべては??


 可愛い御顔が台無しですよ。



「――――――。行ったか。よっと!!!!」



 ユウの茶の上着の中から一頭のずんぶりむっくり太った雀が彼女の体の上を這うようにして頭頂部へと移動し。



「よっこいしょっと……。へへ、これこれ……」



 青い空へ向けて仰向けの姿勢で寝っ転がり。


 何処でそんな巨大な物を購入したのかと尋ねたくなる飴を口に含み。



「カラコロ……。んにぃっひ」



 パンパンに膨れ上がった御口の中で器用に転がし始めてしまった。



「んみゃぁい……。これ、人間げんふぁ開発ふぃた最高のふぁつめい品じゃない??」


「マイ。その飴、何処で買ったの??」



 歩みを遅らせ、終始無言を貫くユウの隣に並んで尋ねる。



「ふぉれ?? れいふぉんどの……。南西区画ふぉ――。あれ?? どこふぁっけ、ユウ」



 小さな御手手でユウの頭をペシペシと叩く。



 あ、今は叩かない方が宜しいかと……。


 物凄く不機嫌な顔を浮かべていますので。



「しらね」



 ほら、怖い声。



「ふめた!! まぁいいや。そのふぃせでさ。一日ふぁめってのが売っていてね??」


「一日飴??」



 聞いたことが無い名前の飴だね。



「一日中ふぁめていても溶けないって謳い文句でふぁ――。物は試しとかんふぁて買ったら。だいふぇいかい!!!! 朝からずぅぅっと舐めていてもふぉけなの!!」



 だから、か。



 ユウの頭の上で寝そべり、人が接近すれば服の内側へと隠れ。


 その人物が通り過ぎると再び体の上を、そして顔を這って登る。


 それが数十回も繰り返されれば誰だって憤りを感じるだろうさ。



「その飴、一個幾ら??」


「二百ゴールフォ!!」



 たっか!!


 数十ゴールドかと思いきや、その倍以上とは。


 だが……。


 たった一つでアイツの食欲が抑えられるのなら安い買い物かしら??



「何個買ったの??」


「取り敢えず、十ほね」



 十個、か。


 足りないな。今度機会があれば在庫を補充しておこう。


 奴に大切な食料をむしゃむしゃと食われる訳にはいかぬからね。



 しかし……。


 器用に舐めるよなぁ。



「コロロ……。カラ、コロッ」



 口の中から溢れ出そうな巨大な飴を器用に口内で動かし。



「ジュルリッ!!」



 唾液と砂糖が混ざり合った丁度良い塩梅の液体をゴクンと飲み干す。


 そして、またあの音が始まるのだが……。



「んぅ――――――――。ちゅっ」



 甘さに飽きたのか。


 むぅぅっと唇を尖らせ、その先端に飴を乗せて器用に遊ばせる。


 太った雀は人の頭の上で寝そべっている。


 つまり……。ユウが歩む度に振動が体を伝わって頭頂部に届くのです。



「んぉっ!? ちょっとユウ!! ゆっくり歩かないと駄目じゃない!!」



 唾液塗れの飴がユウの頭の上に転がり。



「ぎぃえ!! 髪にくっついちゃったじゃん!! このぉっ!!」



 小さな御手手で髪の毛に絡まった飴を取り外そうと躍起になり、勢い余って彼女の数本の髪を引き抜いてしまいましたね。



「取れた!! ったく。人の憩いの時間を邪魔して……。これならまだ馬鹿げた乳をブルンブルンと揺らす乳牛の方がもっと上手に歩くわよ」



 再び寝そべり、御口の中へと飴を迎い入れ。鋭い爪が生えたあんよで彼女の頭頂部に上手に歩け!! と喝を入れた。



 そして……。その衝撃が眠れる獅子を起こしてしまった!!!!



「さ、さ、さ、さっきからずぅ――っと我慢していたけど。も――限界だぁぁぁぁあああ!!」


「ぐえっ!?!?」



 右の剛腕で龍の胴体を掴み。



「ふぅ……。ふぅぅぅぅ!!!!」



 猛牛も尻尾を巻いて逃げる面持ちの前に横着者を召喚させた。



「こ、殺す気か!! 放せっ!!」


「人の頭の上でよくもまぁずけずけとぉ!!」



 ユウの右手の筋肉が弾ける音が響くと同時。



「ぎぃぃぃやぁああああああああああああああ!!!!」



 愚かな龍の大絶叫が平和な平原のド真ん中でこだました。



 アイツも馬鹿だよなぁ。


 素直に謝れば、ユウなら許してくれるのに。



「内臓全部、口から零してやらぁああああ!! くたばりやがれぇぇぇええええ!!!!」



 前言撤回。


 あの勢いは絶対許してくれないね。半殺し、いや。七割殺し程度で済ませてくれるでしょう。


 片手から両手に代え。


 さぁ、今から内臓を絞り出してやるぞ!! と。その姿勢を取るが。



「わ、わ、分かった!! ユウの言いたい事は理解したから!!」



 涙目の龍から慌てふためく声が放たれた。



「あぁっ!? 何だ!?」



 ふぅ、ふぅ!! っと。



 鼻息を荒げ、すっと伸びた美しい鼻筋に荒々しい皺を寄せる彼女に対し。









「――――――――――――――っ」


『貴女が食べたかったのは、この飴なんでしょう?? うふふ。さぁ、我慢しないでたぁんと御食べなさい??』 と。




 子供にご飯を与える慈愛に満ちた母親の瞳を浮かべ。


 口の中からベッタベタに汚れきった涎塗れの飴玉を右手で掴み、そっと彼女に提示した。



 何を考えたらあの仕草を取るのだろうか。大変疑問が残りますね。


 そして、心の中でお悔やみ申し上げました。



「ふ、ふざけんなぁああああ!!!! 誰がてめぇの汚ねぇ飴が欲しいって言ったぁああああ!!!!」


「あがばばばがぁぁぁあああああ!!!!」



 ミチミチと肉が捻じれ弾け飛ぶ音。


 そして骨が乾いた音を奏で、それを装飾する。



「カ、カペペ…………」



 口からべぇっと舌をだらしなく投げ出し。鼻と目玉からは透明な液体が零れ出す。


 見るも無残な死体の完成だ。



 う、わぁ…………。



 ユウの激昂に触れると、あんな目に遭うのか……。気を付けよう……。



「ふんっ!!!! 馬車に轢かれちまえ!!!!」



 己の筋力、そして鬱憤が晴れたのか。


 無造作に龍を地面に放り捨て。



「カエデ!! 温かい雨降らして!!」



 涎と飴の液体を洗い流す為、前方へと駆けて行ってしまった。



「ア、ア、アガガ…………」



 白目を剥き、四肢をそして体全体を痙攣させ地面の上に横たわる深紅の龍。


 このまま放置すれば世にも珍しい、永遠に飯を食らい続ける龍として物見小屋に収められてしまいますので。その前に拾いますかね。


 鋭い牙に注意しながら両手で掬い、荷台へと乗せてやった。



「はぁっ!! スッキリした!!」



 雨を浴び、髪に艶を取り戻したユウが話す。



「お疲れ。大変な目に遭ったな??」



「まぁね。ってか放っておけって。直ぐに目を覚まして追っかけて来るから」



 手拭いで頭を拭きつつ、絶賛気絶中の龍を見下ろす。



「まさか。ユウの攻撃を受けて直ぐに目を覚ます訳……」



 うん。


 彼女の言葉が大正解でしたね。



「ンバッ!?」



 痙攣が収まると同時。横たわっていた上体をグンっと起こし。



「…………んぅ??」



 シパシパと瞬きを繰り返し、周囲へと視線を送り。



「わっ!! えへへ!! はむっ!!」



 俺がついでに拾っておいた飴を見付けると、速攻で口の中に入れてしまいましたとさ。



『な?? 言った通りだろ??』



 ユウが若干冷たい目で此方に視線を送る。



「あみゃみゃ……。ちわわせっ……」



 ぽぅっと頬を朱に染め、嬉しそうに嫌々と首を横に振る。



『此方の気も知らずに……』



 呆れにも似た荒い鼻息をその場へと捨て置き、力強い歩みで前方へと進むユウの足跡を辿り。



「あぁ……。馨しい香りですわぁ……。何処かこの香りを閉じ込めておける瓶は御座いませんの?? そうすればずぅっと嗅いでいられますのにぃ」



 いい加減そこから出なさいと忠告を胸元へと送りつつ、彼女に倣って大地の上を進み続けた。





















 ◇









 街の中央、ずぅっと奥まで続く街道の両側に展開された店々。


 その店先では。



「いらっしゃい!! 当店御自慢の野菜を見て行ってよ!!」


「うちのお肉は安い美味い!!!! 今晩の夕食に是非どうぞ!!!!」



 行き交う人々を捕まえ、利益を上げようとする店主達が快活な笑みを上げて躍起になっていた。



 王都レイモンドと比べ僅かに小規模な街、レイテトール。


 小規模といっても人口約二十万人、都会と分類されてもおかしくない街だ。



 田舎出身の身としては肩身が狭い思いを抱かせるのに十分な都会の道を田舎者と悟られぬ様。普段通りの通りの速さで進む。



 レイモンドと比べて歩き易いけどさ。



「おっと。ごめんね!!」


「あ、いえ。お気になさらず」



 それでも人口密度は田舎に比べ、遥かに高い。


 正面から来たお兄さんとぶつかりそうになっちゃったし……。



 今も歩く街の中央通りは石畳で舗装され、大変歩き易いですけど。一本道を外れると地面の土が剝き出しになる。



 何でも??


 目下、道路を舗装中らしく。



「お――い!! こっち仕上げたら向こうに行くぞ!!」


「へい!!」



 大通りを左折した道の上で男らしい汗を流す作業員の方々が作業に没頭していた。


 この道沿いは主に買い物目当てで、居住空間は大通りから一本。若しくは二本入った場所って感じか。


 適度に栄え、適度に田舎が混在する街って感じですね。



 住むのならレイモンドよりもこっちの方が快適かも。


 人々に活気があって良い雰囲気だし。



 店先に並ぶ品々を眺めつつ歩いていると。




『ほぉ!! 中々良い雰囲気じゃない!!』



 ワクワク感を満載した瞳を浮かべ、周囲へと忙しなく視線を送り続けるマイが念話を送った。



「楽しむのは後だ。先ずは、任務先であるアーリースター家の屋敷に向かうぞ??」



『それは理解していますが……。私達は帯同しても構わないのですか??』



 直ぐ後ろ。


 藍色の髪を揺らしながらカエデが此方に問う。



「ん――……。当主であられるベイス上院議員に尋ねてみるよ。大変心強い仲間が居ますが、屋敷に迎い入れても構いませんか?? って」



 指令では単独で向う予定なのだ。


 それが五名もの人数で尋ねて来たら向こうも驚くだろうし。



『分かりました。では、その間。街中で待機しています』


「ん、宜しく。ついでに、カエデ達がえっと……。」



 何だっけ。


 あの症状……。



『心因性失声症です』



 あぁ、そうそう。



「それも伝えておくから」


『その屋敷は何処にあるの??』



 右隣り。


 街の雰囲気が気に入ったのか。随分と機嫌が良くなった表情のユウが話す。



「今、北側から街に入っただろ?? このまま真っ直ぐ進んで街の終着点。左手に見えて来る小高い丘の上にある屋敷……。だってさ」



 手元の指令書に視線を落としつつ話す。



『目立つ場所にあるのなら大丈夫か。おい!! マイ!! そっちじゃないぞ!!』



 ユウが街の大通りから外れようとする横着者に釘を刺す。



『へ?? あ、あぁ……。分かってるわよ。いい匂いがしたからさ……』


『そのまま何処かへと行ってしまえば宜しかったのに』


『聞こえてんぞ!! クソ蜘蛛!!』



「――――。じゃあ俺は先に行くから。あの二人の後始末を宜しく!!!!」



 問題の投げやりじゃあないけど。時間が押しているのは確かだ。


 道端で睨み合う二大巨頭の後始末を押し付け。件の屋敷へと人々の往来の邪魔にならぬ速度で走行を始め、華麗に対象物を避けつつ向かい始めた。




最後まで御覧頂き、有難う御座いました。


この御話から任務開始になります。


新たなる御使いを是非、楽しんで頂ければ幸いです。

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