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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第百五話 戦場の鍵を握る男 その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




「えへっ、ダンとチュウしちゃった」


「ギィィヤアアアア――――!!!! な、何でお前さんは透明になっちゃったんだよ――!?!?」



 多分というか、相棒とシェイムの戦いから想像して確実にそういう事でしょうね!!


 目と鼻の先から突如として生じたモルトラーニの声に対して大絶叫を放つと心臓が止まっても構わない勢いで石柱群の間を駆け始めた。



「イヤァァアア――!!!! 頼むからどっか行ってくれって――!!!!」


「アハハ!! ダン、待ってよ――!! 物理的に食べながら性的にも食べてあげるから安心してね!!」


「安心の意味をもう一度勉強し直して来い!! 俺は野郎に物理的にも性的にも食われる趣味は無いの!!!!」



 ち、畜生!! 只でさえ存在自体が厄介なのにこの上透明になるとかマジで洒落にならないんだけど!?


 人生の中で上から数えた方が早い場所に位置する速度を維持したまま石柱群の合間を我武者羅に駆け続けて行く。



「も、もう!! さっきからちょこまかと!! 追いかける方も大変なんだよ!?」


 被捕食者になるこっちの方がもっと大変なんですぅ!!


「はぁっ!! はぁっ!!!!」



 口の中一杯に広がる鉄の味をした唾をゴクリと飲み込み更に加速しようとするが、逃亡の意思に反する様に体が拒絶反応を起こし始めてしまった。



 こ、これ以上は走れねぇ!! も、もう限界だ!!



「お!? 少しずつ走る速度が遅くなって来たね!! そろそろ限界かな!?」



 御名答!! 体力に自信があるダンちゃんでも限界は訪れるのです!!


 疲れ過ぎて石畳の地面が極上の柔らかさを持つベッドに見えて来たぜ……。だけど、俺が無暗に逃亡していただけだと思うなよ!?



「じゃあ遠慮なく食べちゃおうかな!! いただきま――す!!!!」



 直ぐ後ろに迫ったモルトラーニの喜々とした声が耳に届くと、遂に恋焦がれていた景色を視界が捉えた。



 や、やっと見つけたぞ!! このふざけた逃走劇の終幕が!!


 石柱と石柱の合間。


 一見何も無さそうな空間なのだが……。


 左右の石柱の高い位置からパラパラと零れ落ちる砂埃がそこは危険であり尚且つ勝機を掴み取る最重要箇所であると俺に教えてくれた。



「ふんっ!!」


 懸命に駆け続けながら上半身を咄嗟に屈め、透明な蛇の胴体の下側を潜り抜けてやる。


「ちぃ!! 透明になった僕の胴体が目の前にあったのを気が付いていたんだね!!」



 気が付いていた、だけじゃなくてぇ……。此処にテメェの頭を誘う為に走って来たんだよ!!



「おんどりゃぁぁああああ!!」



 俺の背後にぴったりとくっ付いている蛇の頭を誘導しつつ極太の蛇の胴体の下側を潜り抜け、そして潜り抜けたとほぼ同時に宙へ向かって飛翔した。



 頼むぜぇ……。このままついて来てくれよ!?



「上!? あはっ!! 馬鹿だねぇ!! 態々死地へ飛び立つなんてお馬鹿さんのする事だよ!!」


 おっしゃああああ!! 予想通りっ!!


 直ぐ後ろに迫ったモルトラーニの声を捉えると体の芯を中心に回転を開始。


「くらぇぇええええ――!! 桜嵐脚!!!!」


 体の中に存在する闘志を燃え滾らせ、残り微かになった体力に火を灯すと右足の甲を何も無い宙へ解き放ってやった。


「う、嘘!! 何、その技……。ぐぇっ!?」



 右足の甲に生肉を激しくブッ叩く生々しい感触が広がると同時にモルトラーニの声が遠ざかって行き、そして石畳の上に堆積された砂埃が放射線状に広がった。



 おっしゃあ!! 読み通りっ!!


 後は時間との勝負だ!!



「えっほ!! えっほ!!!!」



 着地と同時に放射線状の中央に横たわっている無色透明の蛇の頭を両腕でがっっちりと保持すると、石柱と石柱の合間に繋がっている蛇の胴体に括り付け。



「これでぇ……。仕上げだぁぁああ――!!!!」



 万力で片方へと引っ張り上げて蛇の知恵の輪の完成っと!!!!



 長い胴体の下側へ頭を誘導して、更にそこから上空へと逃れて輪っかを作る為の距離を稼ぐ。


 俺の方向に伸びて来た頭を蛇の胴体の反対側へと叩き落とし、輪っかの間に蛇の頭を突っ込んで縛り上げれば俺の勝ちって訳さ!!



「あぁ!! 何コレ!? 全然動けないじゃん!!」



 モルトラーニの苦痛な声が響くと石柱から激しい砂埃の量が舞い落ちて来る。



「ハハハ!! どう――だい?? ど――さ!? 俺の超カッコイイ作戦は!?」


 数メートル先で悶え苦しむ透明な蛇に向かって勝ち誇ってやる。


「そのままそこでじっとしていろ!! 俺は向こうの作戦に参加するからな!!」


「あぁ!! そっちに行っちゃ駄目――!! ダンは僕と一つになるんだから!!!!」


 駄目と言われて待つ馬鹿が何処にいるってんだよ!!


「ギャハハ!! あばよう!!!!」



 正義の味方から足早に逃げ去る悪役御用達の台詞を放つと相棒達が戦いを繰り広げている大広間へと向かって駆け始めた。



 さっきの光は恐らくシェイムの幻術が発動した予兆だったのだろう。そうじゃなきゃ本体に繋がっているモルトラーニが透明になる事は有り得ねぇし。


 つまり、ハンナ達は無色透明になった化け物に手を焼いている筈だ。


 心急く思いで大広間の手前まで到達すると、石柱から慎重な所作でハンナ達の方へ向かって身を乗り出した。



「「「……ッ」」」



 おぉ!! 俺の予想通り大苦戦しているではありませんか!!


 互いの死角を打ち消す様に強固な陣形を保持して前後左右から襲い掛かって来る実体無き気配と、気配無き虚像に対抗していた。



「むぅ……。俺が出て行っても余り役に立ちそうにないな」



 寧ろ不必要な増援が向こうの陣形を崩してしまう可能性すらある。しかし、このまま静観を続けていても状況は変わりないし……。


 さて、どうしたものかと考えていると。



「あ――!! もう!! 全然解けないじゃん!!」


「ん??」



 モルトラーニの激昂した声が響くと同時に頭上からパラパラと砂埃が落ちて来た。


 頭上にアイツの胴体が存在して、その振動が伝わって石柱に付着している砂が落ちて来たのか。


 頭の上の砂埃を手に取り何気なく見下ろしていると天才的な閃きが頭の中にピッコ――ンと出現した。



「ぬふふぅ……。どうして俺ってこうも悪い知恵が働くのかしらねぇ!!」



 悪戯心を満載した笑みを浮かべ、右手をスっと上げると蛇の胴体の下腹部を厭らしい手付きで擽ってやった。



「あ、あはは!! ちょ、ちょっとダン止めて!! 僕は擽りに弱いの!!!!」



 ふぅむ……。蛇から伝わる振動は俺から見て左手奥へと向かっているな……。


 擽りを継続させながら振動が伝わる方向を見定め、そして矢筒から黒蠍の甲殻で作成された鏃の矢を取り出すと己の思いを籠めて弦を引く。



 頼む……。突き刺さってくれよ!?


 祈り、懇願、願望。


 様々な想いを乗せた矢が弦から放たれ美しい軌道を描いて進んで行くと何も存在しない位置で矢の飛翔が急停止。



「「「ぐぅっ!?」」」



 そしてその数秒後にあの巨躯が姿を現した。


 よっしゃ!! 命中したぜ!!!! 


 さぁさぁ、攻撃大好きっ子ちゃん達の出番ですよ――!!!!



「そこに居たのか!!」


「ぬっ!?」


 グレイオス隊長が誰よりも先に強固な陣形から前に飛び出してキマイラの右前足に鋭い斬撃を叩き込み。


「こ、このアバスレがぁぁああ――!!!!」


「遅い!!!!」


 ランレルの頭から放射された氷の息よりも早くトニア副長がキマイラノ懐へと侵入して左前足を切り刻むと。


「これが……。鍛え抜かれた戦士の一撃だ!!!!」


「ぐぁぁああああ――――ッ!?!?」


 宙へ舞ったハンナが強烈な一撃を天から繰り出してジェイドの顔面に直撃させた。



 あ、あはは。相手の姿が現れた途端に水を得た魚の様に意気揚々と襲い掛かって……。


 何だか相手が気の毒に見えて来たぞ。



「クソ!!!! 俺の魔力が残る限り幾らでも幻術は使用出来る!!」



 シェイムがそう叫ぶと再び眩い閃光が迸るが……。



「うふふ、だ――めっ。そうは問屋が卸さないゾっ」


「キャハハ!!」



 モルトラーニの下腹部を擽り、振動が伝わる位置を見定めて矢を射ってやった。



「ぬぅぅうう!! ダン!! 邪魔をするな!!」


「邪魔ぁ?? 俺はぁ、ただモルトラーニと戯れているだけだよぉ??」



 特濃の濃霧に隠れた様に、微かに姿を現して鋭い眼光を俺に向かって叩きつけて来た獅子の頭に向かってそう言ってやる。


 ほら、こうして擽るとぉ。テメェ等がコソコソと隠れている位置に振動が伝わっていくし。



「あんっ……。や、やぁ。ダン、そこは駄目ぇ……」


 おっと、御免なさい。


 野郎の淫靡な声をこれ以上聞きたくないのでもう少し手前側を擽りますねっ。


「ダン!! いいぞ!! そのままこちらを援護してくれ!!」


「了解!! 大分弱まって来ているし、後少しの辛抱だぞ――――!! 俺もここから矢で援護するから!!!!」



 巨躯と対峙する三名の強力な戦士へ向かって雄叫びをあげてやった。


 さぁ……。これで戦う条件は五分と五分にまで持ち込んだ。ここからは俺達の根性の見せどころだぞ!!


 彼等の闘志に呼応するべく勢い良く弦を引き、そして苛烈な闘志を籠めた矢を射る。そして奴が姿を消そうとするのなら頭上の蛇の胴体を利用して奴の位置を特定。


「ひゃんっ!! ダ、ダン!! どうせならもっと奥側を触って??」


 奥まった位置から時折悦に入った嬌声が響くものの、それを一切合切無視して俺達はキマイラの巨躯に向かって苛烈な攻撃を与え続けていたのだった。




お疲れ様でした。


本話でも登場した前期型の滅魔の方々は第二部に登場します。これまでの御話では局地的な戦いの数々が行われましたが、彼等との戦いでは広域的な戦いを繰り広げる予定です。まぁ、まだまだ先の御話ですので気長に待って頂ければ幸いかと。


投稿する前にPV並びにユニーク数を確認させて頂いたのですが……。何んとユニーク数が十万名様を越えているではありませんか!! 



更に嬉しい事に!! たくさんのいいね、ブックマーク、そして評価をして頂き有難う御座います!!!!


読者様から一足早いクリスマスプレゼントを頂き、嬉しさの余り思わず拳をグッと握ってしまいましたよ……。



はて……?? クリスマスとは一体??


御安心下さい。クリスマスを良い事にイチャイチャするカップルを尻目に私は執筆をする予定ですので。


地上波で垂れ流すクリスマス特集は勿論シャットアウトして冬に相応しい映画、遊星からの物体Xでも見ながらプロット書きます!!



それでは皆様、お休みなさいませ。

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