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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第百二話 第四の試練 その四

お疲れ様です。


週末の深夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。




 口喧しい男と別れると本当に久し振りの心地良い静寂がこの身を包む。


 生まれ故郷を出てから初めて訪れたかも知れない静けさを享受すると体が素直に喜ぶのだが……。


 心は微かな寂しさをそっと呟いていた。


 決して口に出しては言えないが一日に数度程度なら奴の喧しさを求めている自分が居る事に素直な驚きを覚えてしまうな。


 頼んでもいないのに喧しさと明るさを振り撒く奴に対していつの間にか俺の心は感化されているのかも知れない。


 戦士足る者誇り高くあれ、武の境地に立つ為に研鑽を怠るなかれ。


 戦士の教えに則り育って来た俺の価値観は奴と出会ってからたった数か月で塗り替えられてしまった。俺が積み上げて来た強さや矜持は世界の広さから見れば大海の中の一滴程度の物だと思い知らされた。


 そして俺は密かに奴との出会いに感謝している。


 この世界には俺が知らない不思議が、危険があり。その先には未だ見ぬ強者が待ち構えているのだと奴に教えられたのだから。



「ふむ……。空気に変化が現れたな」



 高濃度のマナの空気が湿気を帯びてより強力に肌に密着する。


 粘度質の空気の中に微かに殺意の塊が紛れているのは恐らくこの先に敵意を剥き出しにした者が存在している事を証明しているのだろう。



 頼れる友が居ない今は……。


 頼れる……?? いや、頼れるというのは些か疑問が残るな。


 居た方がマシな程度の奴が居ない今、頼れるのは己の実力のみ。それを遺憾なく発揮する機会がもう間も無く訪れると考えると戦士の血が騒ぎ歩みを速めてしまう。



 俺の体よ、そう急くな。


 相手も首を長くして俺の到着を待ち侘びているのだから……。



 逸る気持ちと沸々と湧く闘志を懸命に抑えながら暗き通路を進んで行くと、地下深くに居る筈なのに地上の森林が現れた。



 生い茂った密林はそれ相応の湿度を保っており只立っているだけでも肌に薄い汗が滲む。


 数十メートル以上の高さを誇る木々の更に上の位置から降り注ぐ強力な光が緑を照らし、その光を受けた緑は生き生きとした表情を浮かべていた。


 第四の試練とやらはこの密林を抜けて先に進めという事なのだろうか??


 警戒心を高めたまま、ほぼ緑一色に染まった景色を眺めていると男の声色が密林に静かに響いた。



「よく来たな、ハンナよ」


 この声は……。


「俺の相手は貴様か、シェイム」



 第三の試練の時に頭の中に響いた声色に対してそう言ってやる。



「そういう事だ。本当はダンとの戦いを楽しみにしていたが……。まぁ貴様でもある程度楽しめるだろう」


「ある程度、か。もう既に勝利を確信した様な口調だな」


 地面に荷物を置き、左の腰に装備している剣の柄に手を添えて話す。


「ククク……。誤解をするな。足を踏み入れた四名の中で一番の実力者と対峙出来る事に喜びを覚えているのだよ」


「安心しろ。喜ぶ間も無く俺が貴様を屠ってやるから」


「その自信は果たしていつまでもつのか……。楽しみだ」


「能書きはそこまでにしておけ。これから貴様とここで死闘を繰り広げる事に相違は無いな??」



 剣の柄を掴み上げて静かに中段に構える。



「あぁ、その通りだ。さぁ来い、戦士ハンナよ。密林の恐怖をお前に味合わせてやろう……」



 シェイムがそう話すと広大な部屋に漂っていた気配や殺気が瞬く間に消失。


 密林に恐ろしいまでの静けさが広がって行った。



 ほぉ……。気配を殺すのは得意の様だな。


 そして恐らく奴の作戦は密林の死角に紛れて俺の命を奪う算段。


 優秀な狩人は決して動かぬ様に、ここで暫く様子を見ていても奴は決して姿を現さないだろう。



「ふっ、まるで狩人に刈られる獲物の気分を味わっている様だぞ」



 高揚感を隠し切れない口調を放つと足音を消して密林に一歩足を踏み入れた。


 肌に絡みつく湿度の高い空気と緑の中からいつ敵が襲い掛かって来るかも知れないという緊張感が血を滾らせ集中力を否応なしに高めて行く。


 生と死の攻防は命が保証された組手や訓練では決して得られない価値がある。


 これこそ俺が真に求めていた戦いだと自覚すると密林の中で足を止めた。



「ふぅ――……」



 武の道に携わる者なら誰しもが一度は経験した事があるであろう相手が放つ強力な気。


 敵を倒すという明確な意思を持ったのならそれが体外へと零れ、輝かしい生と名誉を得る為に敵を殺そうとするのならその強力な気は空気を伝播して相手に伝わる。


 しかし、どういう訳か奴の声が途絶えてからというものの。強力な殺気処か存在の気配すらも感じられない。


 俺の様子を窺っている訳でも無く、コソコソと隠れている訳でも無い。



 絶妙に上手く気配を隠す者と対峙した事が無い俺はどうするべきか??


 恐らく、気配を掴み取る為にこちらも密林と同化する様に気配を殺して相手の出方を窺うのが正答だろう。



『先に動いた方の負け』



 これが通説なのだが……。


 奴は俺が此処に足を踏み入れた時から此方の存在を確知しており、巧妙に気配を殺しながら密林の何処かから様子を窺っている筈。


 つまり俺に与えられた選択肢は俺の命を断とうとする奴の気配の刹那を捉えるべきなのだ。


「……っ」


 広大な部屋の密林の中でたった一人集中力を高めつつ剣の柄を強く握る。



 さぁ何処にいる。俺はここに居るぞ……。


 試しに強力な殺気を放ってみたが返って来たのは無言の答え。


 どうやら奴は俺の誘いに乗らない賢い選択肢を選んだ…………。



「――――。そこだぁっ!!」



 髪の先端よりも本当に薄くて細い気配を感じると背後へ向かって上段の位置から下段へ鋭く振り下ろしてやった。


 剣の切っ先は生の肉の感覚を捉えるかと思いきや。



「何ッ!?」


 何も無い虚無の空間の空気を撫で斬ったのみ。


「ぐぉっ!?」


 そしてこの隙を待っていたと言わんばかりに背中に強力な衝撃が迸って行った。


「ククク、見事に引っ掛かったな??」


「貴様……。気配の当て身が出来るのか」



 気配の当て身。


 本来気配と存在は同時に存在するのだが、卓越した使い手にもなるとそれを分離させる事が可能になると戦士長殿から聞いた事がある。


 気配を持たぬ者に対してどう抗うべきなのかは教わらなかったが、その存在を知っている事は優位に働くであろう。


 実体と虚無。


 この両者を巧みに操る使い手と相対して死を嘆き絶望するのか、将又成長する機会を得たとして喜々とするのかは己の気持ち次第だ。


 戦士長殿は世界を旅して多くの武を糧に成長を遂げた。ならば俺もこの機会を糧に強さのもう一段上に昇るべき。



「その通りだ。良く知っていたな??」


「武に通ずる者は気配を巧みに操る。今の攻防でそれは看破出来たが貴様は何故俺に致命傷を与えなかった」


「狩人は獲物が弱るまで執拗に追い回し、そして確実に獲物を狩る。ハンナ、貴様はまだ死を実感していない憐れな手負いの獣だ。狩人に刈られる獲物の気分を味わいながら死ぬがいい……」



 シェイムがそう話すと再び気配が消失。


 広大な密林には死の無音が漂い始めた。



 ふっ、死の実感か……。


 生憎だが幾つもの死線を潜り抜けて来た俺はこの程度の恐怖では怯まぬぞ。


 一般人からして見れば気の触れた奴の思考だと言われぬかも知れないが、寧ろこの生のやり取りが心地良いとも感じてしまう。


 痛みを通して生きていると実感し、直ぐそこに迫った死を通して武を磨く。


 これこそ本物の強者になる為に必要な行為なのだ。



「すぅ――……。ふぅぅ……」



 目の前に迫った死に抗う為。


 体内の隅に微かに残る怯え、恐怖、畏怖の念を全て吐き捨てて剣を中段に構える。


 気配と実体が分かれている以上、気配を頼りに攻撃を加えるのは止めた方が賢明だな。



 全てを見通す鷲の目が緑以外の物体を捉えたのなら剣を叩き込む。


 その刹那に己の武を解き放つ……!!



「……」



 只静かに己の魔力を高め剣に乗せて行くと背後から全身の肌が泡立つ強力な殺気が襲い掛かって来た。


 惑わされるな!! これは只の気配に過ぎぬ!!


 案の定、強力な気配は俺の体をすり抜けて森の何処かへと向かって消え去り。続け様に襲い掛かって来た殺気も俺の生を奪う事は無かった。



 さぁ、掛かって来い!! 俺はここに居るぞ!!



 気配に惑わされる事無く集中力を高めて行くと遂に鷲の目が実体を捉えた。


「貰ったぁぁああ――――!!!!」


 勝利を確信した俺は右後方から襲い来る実体へ向かって鋭く剣を突き刺した。





























「――――。残念だな。それも残像だ」


「何ッ!? ぐぁっ!!!!」



 そ、そんな馬鹿な!? 確実に実体を切った筈なのに!!


 背に迸る常軌を逸した熱量が残酷な事実を俺に叩きつけた。



「どうだ?? 俺の生み出した幻術は。上手く出来ているだろう??」


 近くて遠い位置から憎悪に塗れた低い声が鼓膜に届く。


「ふん。俺の命を奪いたいのならもっと腰の入った一撃を見舞え」



 背に焼きごてを直接当てられた様な燃え滾る痛みを懸命に堪えながら喉の奥から声を絞り出して応えてやる。


 ちぃ……。捉えたと思った矢先にこのような無様な醜態を晒すとはな。


 もう一度仕切り直しだ。



「……」



 獲物を狩ろうとして景色に溶け込んでいる狩人。


 コイツを倒す為には幾つもの壁を突破せねばならん。


 先ずは実体無き気配を見極め、次に気配無き虚像を見抜き。最後に気配、実体無き本体を叩き潰す。


 羅列的に条件を並べると赤子の手を捻る様な簡単な図式になるが、それを実践に移すとなると多大なる労力及び気力が必要となる。


 俺は幼い頃から敵の気配を探り敵の姿を捉えて行動に移っていたのだから……。


 体に染み付いた癖、とでも呼ぶべきか。よもやこれが障害になるとは思わなかったぞ。



「どうした?? ハンナ。手が震えているぞ」


 シェイムの言葉を受けて己の両手に視線を落とすと、奴の言った通り剣を掴む両手が微かに震えていた。


「ふふ、そうか。恐怖で怯えているのだな??」


「いや、これは……。貴様の様な強者と出会えて喜んでいるのだ」



 実体無き虚無、気配無き虚像、絶無を纏いし実体。


 素晴らしい技と魔力が生み出した技術に思わず舌を巻いてしまう。


 全く……。奴が言っていた通り本当に世界は広いのだな。


 生まれ故郷であのまま育っていたのならこの身の竦む驚きと圧を知る事が出来なかったのだから。



「痩せ我慢は見るに堪えないな」


「何んとでも好きに捉えるが良い」


「では、次の一撃で貴様の命を奪うと宣言しよう。戦士ハンナ、貴様との戦いは決して忘れないぞ」



 シェイムが一際強力な殺気を放つとその場から気配が消失する。


 そしてその代わりに俺の周囲には夥しい数の気配が同時に出現した。



 何んという気配の数だ……。まるで敵意を剥き出しにした敵勢に囲まれている気分だぞ。



 密林の影に紛れて俺を取り囲む実体無き虚無が刻一刻と包囲網を狭め、遂に絶死の包囲網が完成されてしまった。


 虚無の包囲網の一点を突破しようとすれば気配無き虚像と絶無を纏った本体が俺に襲い掛かって来る。


 この場に踏み止まれば三者が代わる代わる俺に攻撃を加えてくるだろう。



「ふぅ――……。これ程の緊張感は久しいな」



 あの五つ首の死闘と同程度の緊張感が更に俺の感覚を鋭く尖らせていく。


 ここで判断を少しでも見誤ると死という残酷な結果が待ち構えている奈落の底へと落下して行く。


 だが!! 俺の帰りを待ってくれている者が居る限り、俺は絶対に死なん!!!!



「……ッ」



 中段の構えでは無く、乾坤一擲に賭けた上段の構えへと移行。


 恐ろしいまでに荒れ狂った心の水面を鎮める為に深い呼吸を開始した。



「すぅ――……。ふぅぅ……」


「……ッ」



 深く、静かに呼吸を続けていると背後に黒き憎悪を纏った気配が突然と生じた。



 これは……。違う、紛い物だ。


 漆黒の炎を纏った憎悪の気配が手を伸ばせば届く距離に迫るがそれを無視して周囲に鋭い鷲の目を向けていると。



「ッ」



 俺の予想通りに憎悪の気配は俺の体を通り抜け密林の中へ消えてしまった。


 強烈な気配を無視するのは武人としてあるまじき行為だが、この戦いで最も大切なのは相手の絶無を捉える事。



『存在しないモノを捉える』



 翼を持たぬ者が空を飛ぶ、現在から過去や未来へ向かう、巨大な星を拳で穿つ。


 絶無を捉えるとは不可能を可能にする事に等しい事なのかもしれない。だが、それを実行しない限り輝かしい生を掴めないのだ。


 天高く聳え立つ壁を前にしたのだ。ここで泣き言の一つや二つを放ちたくなるが……。



『ギャハハ!! どぉしたよ!? そぉんな泣きそうな顔を浮かべちゃってぇ!!』



 弱気な心のままで泣き言及び愚痴を放ったのならあの馬鹿者に指を差され、笑われてしまうのでな。


 負の感情を正の感情に変換して貴様を……。討つッ!!!!



「ッ!!!!」



 人生の中で一、二を争う集中力を継続させていると左前方及び右後方から同時に気配無き虚像が飛び出して来た。


 気配は無い……。あれは虚像だ。


 虚像が右手に持つ鋭い切れ味の剣が袈裟切りの要領で双肩に襲い掛かるが、俺の読み通り剣は俺の実体を通過。



 そのまま虚像は消え失せるが今度は気配を纏いし虚無と、実体無き虚像が前後左右から襲来して来た。



「ふぅっ!! ふぅぅうう!!!!」



 複数の実体無き虚像、気配を纏った虚無が俺の体を通過して精神を。そして気力を奪い取って行く。



 あれは実体では無い!! 頼むから恐怖に飲まれるなよ!?


 常軌を逸した恐怖が心に湧くがそれを燃え滾る闘志で無理矢理抑え付け、上段の構えを継続させて五感と直感という名の第六感を最大限に発動させた。



 さぁ、何処に居る!? 鍛え抜かれたこの体と心は貴様の幻術では破れないぞ!?


 姿を現して掛かって来い!!!!



「……ッ??」



 もう数えるのも億劫になる程の痛み無き精神攻撃を受け続けていると左の鼓膜が本当に、そう本当に微かな違和感を捉えた。



 人が移動した時に微かに生まれる空気の流れ、とでも呼ぶべきだろうか??



 普通の人間なら決して捉えられない空気の音が俺の闘志を最大極限にまで高めてしまった。


 この一撃で確実に仕留めると判断した体が剣を掴む手に力を与える。


「「「ッ!!!!」」」


 敵を穿つという確固たる闘志の炎が目に宿ると前後左右、そして上空と地下から最強の憎悪を纏った虚像と虚無が襲い掛かって来た!!


 死を想像した体が恐怖で一瞬だけ固まるがそれを刹那に解除。



「――――。貰ったぁぁああああああ――――ッ!!!!!!」



 周囲から襲い掛かって来る恐怖を剣で払い除ける訳でも無く、左後方の絶無へと向かって鋭く剣を振り下ろした。



「何ぃッ!?!? ぐぁっ!!!!」



 手応えありだ!!!!


 シェイムの痛みに歪む声が響くと絶無の空間から深紅の血飛沫が迸り、密林の緑をそして俺の顔を朱に染めた。



「そ、そんな馬鹿な……。俺の幻術が見極められるなんて……」



 絶無の空間が微かに歪み徐々にシェイムの姿が明確に確立されて遂にその姿を現した。



 黒き長髪を後ろに纏めており薄く焼けた肌のその顔は痛みと驚きで歪む。一般成人男性と何ら変わりない体躯と筋力量。


 普遍的な体格が身に纏う黒きシャツは左肩から胸辺りにまで食い込んだ剣によって鋭く切り裂かれ、傷口から零れ出る大量の出血によって朱に染まりつつあった。



「武の道に身を置く者は等しく視覚と気配を読み取る事に長けている。それを逆手に取った幻術は実に見事であった。だが……。小石の欠片程の違和感までは消失出来なかった様だな」


「こ、小石の欠片??」


「あぁ。貴様が移動する時の微かな空気の流れ、空気を震わす心臓の鼓動。実体を持つ者である以上その音までは消失させる事は叶わないからな」


「フ、アハハ。き、貴様は俺の生の鼓動を捉えたとでも言うのか?? 死がそこにある戦場で普通の人間ならそんな些細な音を聞き取れる筈がないというのに……」


「それが出来たからこうして俺は貴様を見下ろしているのだ」



 警戒心を持ったまま力無く跪いているシェイムを鋭い瞳で睨む。



「全く……。常軌を逸した感覚の鋭さに脱帽してしまうぞ」


「最後に何か言い残す事はあるか??」


「グフッ!!!!」



 肉を食み続けていた剣を引き抜き、シェイムの首を刎ねる姿勢を取って問う。



「ぜぇ……。ぜぇ……。フフ、ハンナ。貴様は最終試練に臨む資格を与えられた。この先にある通路の奥へと進むが良い」



 もう間も無くシェイムの生の輝きが失われるかと思いきや彼の体から眩い光が放たれ、その光が収束すると心落ち着く光を放つ光球が宙に漂い始めた。



「俺達は貴様を喜んで迎えよう。戦士ハンナ、恐怖はここで終わると思うなよ??」


 シェイムと思しき光がそう言い放つと、光球が素早い速度で密林の奥へと向かいその光が見えなくなってしまう。


「すぅ――……。はぁっ!!」



 光の軌道を見送り一つ大きく吐息を放つと緑の絨毯の上に思わず片膝を着いてしまった。



 この勝利は偶然なのかもしれない。もしもあの時、この耳が違和感を捉えなければ今頃俺の生の輝きは失われていただろう。


 僥倖の中に掴んだ勝利は果たして勝利と呼べるものだろうか??


 だが、それでも勝利は勝利なのだ。今だけは誇ろう。


「シェイム、礼を言うぞ。貴様のおかげで俺は強くなれたのだから」


 静かに左腰に剣を収めると情けない声を上げている両足に喝を入れ、己の荷物を拾い上げる為に密林の入口へと向かって行ったのだった。


お疲れ様でした。


帰宅時間が遅れてしまい投稿の時間もかなりの深夜になってしまいました。


本来でしたら日曜日の朝に投稿しようかなと考えていたのですが……。どうせなら出来立てホヤホヤを投稿しようと考えこの時間帯に投稿させて頂きました。


一週間の疲労が蓄積され更に風邪を罹患している事もあってか、猛烈な眠気が襲い掛かって来たので今日はこのまま眠ります。


日に日に寒くなって来ていますので風邪を引かない様に気を付けて下さいね。



それでは皆様、おやすみなさいませ。


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