第九十三話 ちょっとした御使い
お疲れ様です。
週末の深夜にそっと投稿を添えさせて頂きます。
人の表情は己の感情と同期する様に顔に表れ、他人はそれを捉えてその人が何かを考え思っているのかを察する。
勿論、職場上若しくはその状況に合わせて感情を押し殺して無表情に努めるのは可能であるが喧噪蠢く大都会ではそれは不要である。
良く晴れた空の下、数えるのも億劫になる王都内の人々は己が内に存在する感情を何の遠慮も無しに外へと表して思い思いの行動を続けていた。
「ふふっ、ついつい買い過ぎちゃった」
嬉しそうな表情を浮かべ両手一杯に荷物を抱えて何処かへと急ぐ女の子。
「うっめぇ!! これ大当たりじゃん!!」
大変腹が減る香りを放つパンを口一杯に頬張って目尻を下げる男性。
「今日も賑わっているねぇ」
「平和なのが一番だよ。ほら、行こう??」
仲睦まじく手を取り合いゆるりとした歩調で街の喧噪を楽しむ老人とその子と思しき女性。
街の中に浮かび上がる表情の一つ一つは、それはもう陽性な感情が含まれており王都は本日も平和であると彼等の姿を捉えれば容易に看破出来てしまう。
この平和を守るのが軍属の者、そして王都守備隊の使命であり。市井の方々は平和で平穏な日々は彼等のお陰でいつまでも続くと考えているのだろう。
しかし、それが今覆されようとしている。
南方に存在する混成獣。
平和な環境の中でぬくぬくと過ごす彼等は奴等が今この時も闇に紛れて恐ろしい爪を研いでいるとはよもや思わないだろう……。俺も少し前までは彼等と同じく何も知らずに平穏な日々を咀嚼していた。
知らない事を幸運だと思うのか将又知っている事を不幸だと呪うのか。
それは決して定かでは無いが少なくとも俺は余計な事までは知らない方が良いと考える。
この平和な王都に狂気の刃が襲い掛かって来ると知っていたらとてもじゃないけど平穏な暮らしは出来ないのだろうから。
「ふぅっ。休息日で久々に外に出たけど……。なぁ――んか平和だよねぇ」
南大通りを大変ゆっくりとした歩調で進みつつ方々へ視線を送りながら何とも無しに口を開いた。
「この温かな笑みを守るのが彼等の、そして我々の使命だ」
俺の言葉を捉えたハンナが正面を捉えたまま静かに話す。
「そうだとしてもさ。人知れず死にに行こうとしている憐れな生贄ちゃんの存在を知っていてもいいんじゃないの――??」
「それが露見されてみろ。大勢の人が王都から脱出し、行政の対応に不満を持つ者共が抗議の声を上げそれに便乗した革命家が重い腰を上げるやも知れぬ。知らない方が幸せな事実もあるのだ」
まぁ、今回の場合はハンナの言い分が正しいな。
闘争に飢えた獣が南方から軍の壁を突破してこの平和と平穏が蔓延る王都に侵入を果たせばどうなるのか。
それは筆舌にし尽くし難い。
血の雨が大地に降り注ぎ、真っ赤に染まった地に積み上がった死体の数々から放たれる異臭。世にも恐ろしい阿鼻叫喚の地獄絵図を想像すると寒気がしやがる。
誰かがそう、誰かがこの平和を守る為に血を流さなければならないのだ……。
「へいへいっと。憐れな子羊ちゃんは生き贄の役割を全うしましょうかね」
本日も元気過ぎる太陽ちゃんの光から逃れる様に心地良い影が広がる裏通りへと進み、素敵な静けさを堪能しつつ一つ目の目的地に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ」
古紙と若干の埃臭さが漂う店内に足を踏み入れると店主の静かな声が俺達を迎えてくれた。
広い室内の壁際には背の高い棚が設置されておりその棚には。
『さぁ、僕達を手に取って御覧??』 と。
整然と整理された沢山の本が俺達の手を取ろうとして柔らかい笑みを浮かべていた。
ちょいと古ぼけた本屋の店内には数名の客が既に本を手に取っており、その中身を確認しながら思い思いの時間を過ごしていた。
「さぁってと……。ルクトちゃんが所望していた本と、大馬鹿野郎共が鼻息荒く求めている本を探しましょうかね」
ハンナの右肩をポンっと叩き、お目当ての品の捜索を開始した。
漸く訪れてくれた休息日を利用して俺の魔力の源と魔力の流れを安定させにこれから生の森の中枢へと赴くので、彼女に以前から頼まれていた本を購入するのは当然なのだが……。
『ダン!! お前、今日は休みで街に出掛けるんだろ!? そ、そ、それなら成人向けの本を買って来てくれ!! 俺達が生唾をゴックンと飲み込んでしまう様な過激な奴ね!!!!』
兵舎から出る時に鼻息荒いラゴス達に呼び止められ、彼に双肩をギュっと掴まれながら懇願されてしまった。
『おいおい、いいのかよ。品行方正な王都守備隊の連中がそんな本を閲覧しても』
『バレなきゃいいんだよ!! 大体!! 俺達は休みでも出掛ける事が出来ないんだぞ?? 少し位のお茶目なら見逃してくれる筈さ』
『そうそう!! もしも見付かったとしても芸術鑑賞として位置付ければ問題ないって!!』
成人向け雑誌を芸術作品に位置付けするのはちょっと無理過ぎない??
品行方正を重んじる隊の規律が乱れてしまう恐れがある本を購入するのはちょいと憚れるが、手ぶらで帰ったら筋骨隆々の大蜥蜴ちゃん達から恐ろしい逆襲が待ち構えていますのでね。
お偉いさん達にはバレない様にそ――っと兵舎に持ち込みましょう。
取り敢えずルクトが気に入りそうな物語が書かれている適当な本を見繕い、彼等用の成人向けの本を探していると彼等が好みそうな一冊の本と出合ってしまった。
「ん――……。これでいいのかな……」
何気無く表紙を一枚捲ると一糸纏わぬ大蜥蜴の絵が中央にドンと描かれており、彼女は大きな口で一輪の美しい花を咥えて誘う様な瞳を俺に向けている。
大蜥蜴の男性よりも全体的に丸みを帯びた輪郭と豊満に膨らんだ胸元。
そして厭らしい立ち姿が大蜥蜴の男性のナニかを刺激する様に描かれていた。
う――ん……。何んと言いますか、他種族の淫靡な姿を見てもグッ!! と性欲が湧いて来ないのは恐らく種族間の差異という奴だろう。
例えこの本に描かれている彼女が世界一の美しさと妖艶さを兼ね備えている大蜥蜴だとしても、俺には微塵も響かない。
これが人間の女性の姿だったらついつい魅入ってしまうんだけどねぇ。
「件の品は見つかったのか??」
「これでいいんじゃね??」
ハンナが物珍し気な瞳を浮かべているのでチラリと見せてやると。
「――――。これで大蜥蜴の連中は発奮するのか?? 俺には一輪の花を咥えた大蜥蜴にしか見えんぞ」
彼は大袈裟に溜息を吐いて素直な感想を述べた。
「その感想に激しく同意するよ。残りは……、あぁこの辺り一帯がそっち系の本か。適当に見繕うべきかしらね」
「ならばさっさと購入しろ。この後はロシナンテへ赴き、キマイラ討伐用の装備を受け取らなければならないのだからな」
へいへいっと、仰せのままに。
彼に急かされる様に成人向けの本を数冊とルクト用のお土産の本を手に取ると受付に足を運び。
「すいません。この本を購入したのですが」
良い感じに経年劣化した机の後ろで静かに椅子に腰かけている大蜥蜴ちゃんに会計をお願いした。
「毎度有難う御座います。えっと……。七冊で……。銀貨七枚になります」
ちょいと痛い出費ですが必要経費ですのでね。喜んで支払わせて頂きますよ。
懐から銀貨七枚を取り出し、お年を召した大蜥蜴ちゃんに手渡すと本を受け取り背嚢の中に仕舞い。
「またのお越しをお待ちしております」
柔らかい笑みを浮かべた彼に一瞥を送るとその足で本屋を出て次の目的地へと向けて静かな裏通りを進んで行った。
「ちゃんと装備が出来ているのかな??」
「さぁな。それを確認しに行くのでは無いか」
「そりゃそうだけど。あの店長、珍しい素材を手にして両目をキラキラと輝かせていたけどさぁ。黒蠍の甲殻を触ると同時に顔が曇っちゃったし……」
生の森から死ぬ思いで持ち運んだ黒蠍の甲殻をロシナンテの店長に手渡すと。
『すげぇな!! これだけ軽くて丈夫な装甲はぁ……。う、うん。凄く手が掛かりそうだ』
沢山の客を目の前にしても一切躊躇する事無くこの仕事は大変難しいものであると表現してくれた。
そして思わず耳を疑いたくなる額を要求して来たのです。
武器防具の制作費の支払い、年末特化価格に吊り上がった王都の物価、そして後先考えずに飲み散らかしたラタトスクちゃん達の宴会。
今回の依頼で幾ら貰えるのか分からないけどそれ相応の額を貰わないとこれからやっていけなくなっちまうぞ……。
あの生の略奪者の甲殻がどういった装備になっているのかを想像するよりも己の懐事情に苛まれて南大通りを横断。
「こらぁぁああ――!!!! そこは横断しちゃ駄目ですよ――!!!!」
「あはは!! 次からは気を付けま――すっ!!」
本日も交通整理に勤しむお姉さんにお叱りの声を頂きつつロシナンテの扉を開いた。
「おぉ!! 待っていたぞ!!」
ロシナンテの店主が俺達の姿を捉えるやいなや満面の笑みを浮かべて手招きをする。
「ちょっと忙しくて受け取りに来るのが遅れちゃったけど……。ちゃんと出来たの??」
「勿論さ!! 持って来るからそこで待っててくれ!!」
野太い尻尾を大袈裟に左右に振りつつ店の奥へと姿を消してその数十秒後。
両手一杯に装備を抱えて舞い戻って来てくれた。
「よっこいしょっと!! これが……。血と汗を流して制作した装備一式さ!!」
「おぉっ!!!! すげぇ!! こんなに作ってくれたのかよ!?」
店主が受付台の上に置いた装備の数々に陽性な声が思わず漏れてしまう。
俺達の体に合う様に作られた鉄よりも薄く軽く作られた胸当てと腕防具。
その一つを試しに手に取ってみるとまるで重さを感じさせない程に軽く、それは腕の筋力が驚きの表情を浮かべてしまう程だ。
それ以外の防具は脛当てに甲殻の湾曲を生かした小盾。
そして武器と思しき物は……、これか。
恐らく鋏の先端を生かした物だとは思うが鋭利な短剣の柄を手に取り、試しに己の指先に切っ先を当てると。
「いつっ」
余りの切れ味の良さに皮膚がスっと縦に切れて矮小な血が滲み出て来た。
すっげぇ切れ味だな……。ちょっと擦っただけで皮膚が切れちまったぞ。
「馬鹿みたいな切れ味だろ?? その短剣は受けるというよりも刺突に特化した物だ。間違っても強力な攻撃を受けようと思うなよ。直ぐに折れちまうから」
「気を付けて使用するよ」
柄の部分は鉄製であり、これから察するに鉄と鋏の甲殻を合わせたんだな。
刃の部分は俺が使用する短剣よりも滑らかに曲がり切っ先は細く鋭く、相手の肉を抉り穿つ構造だ。
相手を殺す為にだけに存在する恐ろしい漆黒の色を放つ短剣を手に取り、様々な角度から眺めていると店主が各装備の説明を開始してくれた。
「胸当て、腕防具、脛当ては普段使用する防具と同じ要領で装備すれば機能するぞ。試しに鉄の矢で胸当て目掛けて穿ったが、鉄製の鏃は表面を微かに傷付ける程度だった。それだけじゃないぞ!? 魔法を使用出来る奴に頼んで火球をぶっ放してみたんだけど……。何んと!! 軽い攻撃魔法程度でも傷付ける事は叶わなかった。対物理、対魔法に特化したすんばらしい逸品だ!!!!」
お、おいおい。マジかよ……。
アイツの装甲からある程度の効用を期待して持ち帰って来たけど、それを容易に超えるとは思いもしなかったぞ。
「まぁ……。これを全部作るのに物凄い労力を要したけどな」
「因みにどうやって作ったの??」
腕防具を腕に身に着け、軽さを確かめる様に腕を上下させながら問う。
「先ずは硬過ぎる甲殻を切り分け易くする為、火でゆっくりと熱した。ほら、丁度鉄を柔らかくする要領さ。各装備の形に合う様に切り分けたらお次は表面の研ぎとお前さん達の体に合う様に細かく大きさを調整した。中でも一番苦労したのは……。その短剣だな」
「これ??」
俺が右手に持つ短剣に店主が鋭い視線を送る。
「あの馬鹿げたデカさの鋏の先端を切り取り鉄でゆっくりと削る。そして鋏の空洞に鉄を流し込んで短剣の形にしようとしたんだけど……。一本目はそこで内側から破裂して壊れちまった。外側はべらぼうに頑丈だけど内側は弱くて鉄の熱が強過ぎたんだな。それから試行錯誤を繰り返して、削り取った鋏の先端に合う様に鉄の剣芯を形成。何度も微調整を繰り返しながら鋏の先端を鉄の剣芯に被せてその形になったんだよ」
内側に弱いのは初耳だな……。
敵を殺す為だけに特化した漆黒の刃の内側に鉄の芯を入れて使用する。
言葉で簡単に説明してくれたけど血の滲む努力の結晶が実を結んだのだ。大切に使用させて頂こう。
「普通の短剣よりも少々重たいかも知れんがその分、威力は保証するぞ」
「有難うね、大切に使用させて貰うよ。所で……。俺は普段短剣使用しているんだけどさ、これで二本目を扱う訳なんだけど。この二本を収める事が出来る物はあるかな??」
状況に合わせて短剣を使用するにも二つ同時に収められる革袋が良いかも。
「おぉ、あるぞ。これなんかどうだ??」
店主が受付台の下から中々使い込まれた跡が確認出来る革袋を取り出して受付台の上に置く。
短剣の剣身部分を谷型に収める様に作られており、状況に合わせて左右の短剣を抜いて対応する形か。
「ベルトに巻いて通して腰から抜剣する形だ。ちょいと前にこれを使っていた奴が向こうの世界に逝っちまってな。処分するのに困っていたし、タダでやるよ」
「えっと……。その御方は一体どういった理由でお亡くなりに??」
まさか不運な事故に巻き込まれたとかじゃないよね?? いわくつきの品とかじゃないよね!?
呪いとか超自然的な現象を信じていない訳じゃないけど、人を死に追いやる呪物を常日頃から装備する度胸は無い。
「安心しろ。寿命で逝っちまったんだよ」
ほっ、それなら喜んで拝借しましょう!!
「有難うね!! じゃあ有難く使用させて貰うわ!!!!」
早速今現在使用している短剣と物々しい姿の短剣を新たなる納剣用の革袋に収め、腰に装備して相棒に披露してやった。
「どうだ!? 似合うだろ!?」
「馬子にも衣裳という奴だな」
「はぁ!? ここは素直に褒める場面でしょう!?」
似合っているぞ――、とか。カッコイイぞ――とか!!!!
仲の良い友人に向けるべき台詞が山程あるってのにコイツときたら!!!!
「店主。これは何だ??」
無視か!?
「あぁ、それは端材で作った矢の鏃だよ。鉄の数十倍の威力を持っているが数に限りがある。ここぞという場面で使用しろ」
「ふむ……。ダン、貴様が半分持っておけ」
「あん?? テメェは普段矢を使用しないじゃないか」
「貴様が無くした時の為だ」
こ、この野郎……。さっきから俺が大人しくしていればいい気になりやがって!!
女の子達に囲まれて右往左往しても絶対助けてやらねぇからな!! ここで交わした言葉を深く後悔しやがれ。
「何から何まで有難うね、世話になったよ」
「仕事だからな。あ、そうそう。頂いた金貨二枚だけじゃ割に合わなかったから追加料金として金貨一枚頂戴するよ」
まぁこれだけ立派な装備の数々を制作してくれたのだから二つ返事で金貨一枚を渡してやりたいけども。
こっちの台所事情は火の海でしてね。
「今手持ちが無いから後で払っても良い?? 担保が必要ならシンフォニアのドナって受付嬢に言ってくれれば立て替えてくれるから」
此処に居ない彼女を当てにするのはお門違いでしょうが、俺達は現在新たなる任務の拘束期間中なのでお金を工面する事は出来ないのです。
「別に必要無いさ。お前さん達には稼がせて貰っているからね。今度来た時にでも払ってくれ」
「了解。何から何まで世話になったな」
「はは、それはお互い様だ。また珍しい物を見付けたら持って来てくれ!!」
「おうよ!! それじゃ!!!!」
職人の魂が籠められた逸品を大切に背嚢の中に仕舞うと、良い商売を出来たと此方に予感させる満足気な笑みを零している店主に素早く右手を上げて店を後にした。
「いやぁ、俺達が瀑布みたいに吐瀉物を巻き散らかした甲斐あってか。物凄く良い物が手に入ったよな!!」
「あぁ、これだけ軽ければ普段通りの動きを可能とし。更に咄嗟の動きの邪魔になる事も無いだろう」
そして鉄よりも軽くて頑丈ときたもんだ。
正に至れり尽くせりの装備を入手して超御機嫌なまま王都の南門へと続く道を全然疲れない速度で進んで行く。
もう間も無く正午に差し掛かろうとする太陽の光は依然強く、俺達の体力を悪戯に削ろうとして燦々と光り輝いている。
本日の予定は残す所、聖樹ちゃんの治療のみ。
生の森まで行くには相棒の馬鹿げた速度でも数時間かかるし、こりゃちょっと急いだ方がいいかも。
「相棒、ちょっと急ごうか。このままじゃ王都に帰って来る頃には日が暮れちまうよ」
「安心しろ。貴様の目玉が後頭部から飛び出る程の速度で飛翔してやるからその心配は無い」
い、いやいや。
安心の意味を間違って使用していますよ??
「そんなふざけた速度で飛んだら荷物も、そして俺もお前さんの背中から落っこちまうって」
「荷物と貴様の体を縄で固定しておけば問題ないだろう」
「あの……。その場合、例えお前さんの背中落ちなくても殺人的加速度で俺の身が危険なんだけど??」
「貴様の抵抗力を鍛えるいい機会では無いか。ほら、急ぐぞ。時間は有限なのだ」
ち、畜生!! 久々に飛べるからって張り切っている感じが体全体から滲み出ていやがる。
だが、相棒の話す事も一理あるので今回だけ。そう今回だけは!! アイツの超危険な飛翔に付き合ってやろう。
「へいへいっと。精々気を失わない様に頑張りましょうかね……」
今からきゃわいい女の子と出掛ける様に軽やかな歩調で進んで行く彼に対し、俺は断頭台へと向かう死刑囚の様に酷く暗い顔を浮かべたまま項垂れ。巨人用に作られた仰々しい大きさの鉄球を括り付けられたみたいに大変重たい足取りで南門へと向かって行ったのだった。
お疲れ様でした。
さて、次の御話を投稿した後。リアルが忙しくなる為来月の中旬頃まで投稿速度が極端に遅くなってしまいます。
楽しみにして頂いている読者様には申し訳ありませんがどうしてもそちらを優先せねばならないので御了承下さいませ。
それでは皆様、良い週末をお過ごし下さいませ。