表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
921/1237

第七十八話 新たなる目覚め

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 混乱。


 自分の身に一体何が起こっているのか理解出来ず、状況判断に迷い意識が支離滅裂な方角へ迷走してしまう現象だ。


 この現象が起こる原因としては突拍子も無い出来事が突如として己の身に起こる、人智の及ばない現象を捉える、人の頭では理解出来ない現象が降りかかる等々。数え上げたら枚挙に暇がない。


 これまで生きて来た中で混乱した事は多々あるが、己の思考が停止してしまう程強烈な混乱は体験した事が無い。


 そりゃそうだろう。俺の人生はあの地図を得るまでは普遍的で退屈な人生だったのだから。


 退屈な日々から脱却して、相棒と出会ってから不思議で危険な出来事を幾つも経験して来た俺にとって混乱を招く様な事象は早々起こり得ないと考えられていたが……。


 どうやらそれは容易く打ち破られてしまいましたね。



「つまり、貴様は俺と同じく魔物としてこれから生きて行く事となったのだ」



 何故か相棒が喜々とした口調で説教っぽく話すも彼の言葉は頭の中には留まらず、右耳から左耳へと抜けて行き。



『ダンさん。貴方の内側には魔力だけではなく私の体の一部の力も宿っております。順に説明して行きますので落ち着いて聞いて下さいね??』



 聖樹ちゃんが大変柔らかい口調で話すも、頭の中では精神の世界で出会った彼女の大変美味しそうな二つの双丘がプルンっと縦に揺れ動いている。



「……??」



 思考が一切合切纏まらないので取り敢えず無言の受け答えとして瞼をパチパチと動かす。



「駄目だな。情報量が多過ぎて混乱しているみたいだぞ」


『そりゃそうですよ。いきなり魔物に生まれ変わってしまったと言われたら誰だって混乱しますからね……。ダンさ――ん!! 聞いていますか――!!』



 聖樹ちゃんが軽快な声を上げると上空から一本の蔦が舞い降りて俺の頬をペシペシと叩く。



「あ、うん。一応聞いていますよ??」



 その刺激を受けて我に返ると訝し気な表情を浮かべているハンナと何となく辟易している様子が見受けられる聖樹ちゃんの樹皮を見つめて首を縦に振った。



「本当か?? では、何処まで理解したのか言ってみろ」



「え、っと……。聖樹ちゃんの顔はすっげぇ可愛くてさ。胸元が横着に開いていたからその谷間に視線を置いていたんだよ。まぁまぁ大きくてね?? 思わず手を伸ばしたくなる……」



 俺好みの大きさでしかも、掴み心地も大変宜しく時間が許す限り揉み続けたいと思えた程ですもの。


 頭の中にフワァっと思い浮かんだ彼女の素晴らしい姿を思い描き、馬鹿正直にそれを答えると。



『ぜっんぜん聞いていないじゃないですか!!!!』


「ウブチッ!?」



 太い蔦が俺の右頬に強烈な張り手をブチかまして来やがった。



「な、何でいきなりブツの!? 俺は怪我人なんだよ!?」


 転んだ拍子に御口ちゃんに侵入して来た矮小な石をプッと吐き出して叫ぶ。


『ひ、人の話を聞かないからです!!』



 い、いやいや。混乱の極みに達している人に対して物事を理解しろってのが無理あるだろ。



「はぁ――……。また一から説明してやるか。いいか、ダン。お前はもう既に人では無く魔物なのだ」


「だから!! 何で魔物に変わったのかそれを説明してくれよ!!」



 結果だけを唐突に言われてもそこにまで至る過程を話してくれなきゃ余計混乱するでしょう!?



「先程話したのだが貴様は窒息寸前の魚みたいに口を無意味に動かしていたからな。オホンッ!! よし、では先ず貴様が倒れてからの話を説明してやる」



 態々混乱している私の為に二度目の説明をして頂き有難う御座います、しかし何故貴方は毎度毎度命令口調なのですか??


 私にはそれが甚だ理解に及びませんっ。



 先輩面を浮かべている白頭鷲ちゃんが得意気に話している内容によると、どうやら俺はあの生の略奪者の毒針によって生死の境を彷徨っていたらしい。


 彼女が俺の窮地を発見して、ハンナがこの野営地から馬鹿みたいに速く駆け出して俺を連れ戻してくれた。


 そして、聖樹ちゃんの治療を受けたのだが……。




『繰り返し行われる毒素による体の破壊、私の魔力による再生を続けてダンさんの体内の毒を中和したのですけど……。体内を流れる血液の様に私の魔力が体の中を循環し続け、その一部が一箇所に留まり始めてしまいます。私の魔力が強過ぎたのかそれともダンさんの体に私の魔力が適合したのか。留まっていた魔力が 『魔力の源』 を形成。私が魔力を流す度にその魔力の源がより強固に固定されてしまい、今となってはそれを取り除く事は叶わなくなってしまいました……。つまり、ダンさんは今日この日から魔物として生きて行く事が義務付けられてしまったのです』



 そう、これが混乱の極みとなる最たる原因だ。



「理解したか??」


 ハンナが静かに問う。


「とんでもねぇビンタで目が覚めたから大分理解出来たけどさ……。その魔力の源があるから俺は魔物として生きて行くのか。それとも毒の破壊と魔力の再生を繰り返して行く内に体を作り変えられたから魔物として生きて行くのか。それを先ず理解したいかな??」



「「……」」



 あぁ、先ずそこから説明しなきゃいけないのか。


 そんな感じの空気を二人が垂れ流す。



「人間、つまり人体には心臓が一つある。俺にも心臓が当然に存在しているのは理解出来るか??」



 ハンナが胸の辺りを右の拳で一つ叩く。



「あぁ、そりゃ理解出来るさ。俺にも付いているし」


「それと同じで魔物にはすべからく魔力の源というモノが存在している。言い換えるのなら……。第二の心臓と呼ぶべきか」



 第二の心臓??



『体内に流れる魔力はその魔力の源が始点となります。魔物が持つ魔力は体力的な意味合いを持っています。そして、その魔力の源が破壊されたり魔力が枯渇すれば絶命に至ります』


「な、成程。つまり心臓と同じ位大切な臓器と位置付けられているのね」



 親切丁寧に説明してくれている二人に頷く。



「その通りだ。聖樹殿も理解出来ぬと言っていたが、貴様の体内に原因不明の事象が生じて魔力の源が形成されてしまい人の体を保ちながら魔力を帯びてしまった。つまり、人の体を形成していながらも貴様は今日から魔物として生きていかなければならない」



『ダンさんの体内に流れる魔力はまだまだ不安定ですので今日から暫くの間、それを安定させる為に治療を継続させて頂きます。分からない事があれば先程の様に精神の世界で説明を順次させて頂きますね』



「魔物に変わってしまった事は理解出来たけど……。俺はハンナの様に魔物の姿に変わる事は出来るのかな??」



 素朴な疑問を二人に問う。



『それは恐らく不可能です。魔物の姿に変われるのはあくまでも両親の血を受け継ぐ先天的なものですからね。ダンさんの場合は後天的な事象によって生じた為ですので』



「そ、そっか。聖樹ちゃんみたいに木の姿に変われる事は出来ないのね。じゃ、じゃあ次の質問です!!」



 威勢よく右手を挙手する。



「何だ」


「人の姿でありながら俺は魔物に変わった訳なんだけどぉ……。寿命はどうなったのかな?? 有り得ない力を受けた結果、人のそれよりも短くなってしまったのか。将又人よりも更に長くなってしまったのか。それが気になるのですよ」



 俺がハンナにそう問うと彼はその答えを持ち合わせて居ないのか。



「……」



 いつもより更に眉を鋭角に尖らせ押し黙り、その答えを求めて聖樹ちゃんに視線を向けた。



『恐らく……。人のそれよりも遥かに長い年月を生きなければならないでしょうね。魔物が人よりも長く生き続けられるのは魔力のお陰なのです。命を持つ生命体の宿命である老化。魔力にはそれを遅延させる効果があると母から教えられましたから。ダンさんの場合、断定は出来ませんが長き時の経過によって老化という現象が体に現れると思いますが、人のそれと違って遅々足るものと映るでしょう』



「ちゅ、ちゅまり……。魔物は千年生きると言われている様に俺もハンナと共に長い年月を過ごさなければならないの??」



『は、はい。不可抗力とはいえダンさんの人としての人生を奪い、更に人間の御友人達を置いていかなければならない苦痛を与えてしまって申し訳ありませんでした……』


 聖樹ちゃんが大変申し訳なさそうな声色で話す。


「や、や……」


「『や??』」



「やったぁぁああああ――――!!!! うひょ――!!!! さっっこうだぜ!!」



 項垂れていた姿勢を解除すると心配そうな瞳を浮かべて俺を見下ろしていたハンナに思いっきり抱き着いてやった。



「止めろ!! 気色悪い!!」


「あはは!! 嫌だね!!!! これからずぅっとお前さんと一緒に過ごせるんだ!! これが嬉しくない訳ないだろう!?」



 人の人生は長くて八十年。魔物は千年生きると言われている。


 人の人生は彼等にとってそれはもう短く、儚く映るであろう。その短い時間軸の中で俺は彼と共に旅を続けて居る。


 いつか、そういつか……。


 俺は彼より先に旅立ち、ハンナはこの世に残って数百年もの長い間を過ごさなければならないのだ。


 この素晴らしい旅路に誘っておいて彼を一人残して先立つのは悔しくて、申し訳無くて、寂しくて……。


 その事をこれから一切考えないでいいと思うと喜びが炸裂してしまうのも致し方ないでしょう!?



「離せと言っている!!」


「い、嫌だね……。今だけはちょっとこのままにしてくれよ……」



 俺の体を受け止めて地面に横たわる彼の腹に己の顔を埋め、両目からジワァっと湧いて来る温かな液体を染み込ませて話す。



「貴様……。泣いているのか??」


「あぁ、そうだよ。泣き顔を見られたくないのさ。だって、だってよぉ……。これから気が遠くなる間、お前さんと一緒に旅が出来ると思うと嬉しくて……」



 親しき人が逝ってしまった悲しみの涙、夢が叶わず咽び泣く悔し涙。


 人の目から零れ落ちる涙には幾つもの意味が籠められているが……。俺が現在流しているのは己の願望が叶った嬉し涙さ。


 頭の中が真っ白になってしまうこの世の不思議、身の毛もよだつ危険が蔓延る大地へ足を踏み入れる、人の頭では想像に及ばない超常現象。


 この世にはまだまだ俺達が経験していない冒険がそこかしこに存在している。


 人の短い人生でそれらを全て経験する事は不可能に近い、しかし魔物として生きて行くのならば可能になるやも知れぬ。


 途方も無い長い時間を共に過ごし、共に世界の不思議を目の当たりにする。


 それが、それが本当に嬉しいんだ……。



「ふ、ふん。泣き虫め……。俺は貴様をそんなやわに鍛えた覚えはないぞ」


「これから強くなってやるさ。お前さんを越える位にな」


「その言葉、努々忘れるなよ??」


「グスッ……。あ、あぁ。絶対に忘れないさ!!」



 ハンナの友を真に想う言葉を受け取ると顔を外し、鼻を啜って彼の顔を直視して言ってやった。



『ふふ、男の友情って奴ですよね。ちょっと感動しちゃいましたよ』


「そりゃどうも。所でさ!! 俺にも魔力が流れているのならハンナみたいに超カッコイイ魔法が使えるって事だよね!?」



 勢い良く立ち上がり聖樹ちゃんを見上げて話す。



『勿論使用出来ますよ?? 御存知かと思いますが魔力には火、水、風、土、光、闇の基本六元素があります。先ずはそれから理解して魔法を使用すべきかと』



 ほほう、こりゃ中々手強そうな感じですなぁ。


 だが!! 俺は相棒の大陸で嫌という程厳しい稽古に耐えて来ましたからね!!


 軍鶏の里やイロン先生の特訓に比べれば魔法の鍛錬なんざ楽なもんだろうさ。



「よっしゃ!! じゃあ先ずハンナみたいに風を纏って素早く動きたいからその魔法を教えてよ!!」


「魔法を使用する者は大きく二つに分かれる。術式を構築して使用する者と、そうでない者の違いだ」



 じゅ、術式?? 何、それ……。


 聞き覚えの無い言葉を放ったハンナに対して首を傾げて問うた。



「よぉ、相棒。その術式って何??」


「烏一族のラジスアータ殿が使用した魔法を覚えているか?? 彼は魔法を使用した時に術式を展開しただろう」



 あぁ、そう言えば体の前に淡い光を放つ魔法陣ってのが浮かび上がりましたね。



「彼は術式を構築して魔法を使用する。しかし、軍鶏一族や火食鳥一族は魔法陣が展開されずとも魔力を使用して身体能力を向上させた」


「えっと、つまり……。術式を構築する魔物と構築せず魔法を使用する魔物が居るって事ね」



 これが恐らく正解でしょう。



「その通りだ」


 良かった、当たっていましたね。


『ダンさんが術式を構築して魔法を使用する魔物なのか、それとも構築せず己の魔力のみで魔法を使用するのかを判断する為には……。洗礼インハリテンスと呼ばれるモノで判断します』



 また聞き覚えの無い単語が出て来たぞ……。



「その洗礼ってのはどうやって受ければいいんだよ」


「洗礼を受けた者はその印が体内に刻まれる。つまり、洗礼を受けた者が受けていない者の体に触れればそれが一目瞭然となる訳だ」


「ハンナ、お前さんは洗礼を受けたの??」 


「勿論だ。魔物としてこの世に生まれ落ちた者の大半は親から洗礼を受けているからな」



 へぇ、そうなんだ。


 洗礼という行事は魔物の家庭アルアルなのかしら??



「ハンナは因みに術式を構築する方の魔物なの??」


「あぁそうだ。俺の場合、術式を構築して体内で使用するぞ。何も全て体外に魔法陣が浮かび上がる事は無いからな。では……、洗礼を始めるぞ」



 ハンナが静かに目を閉じて集中を始めると体全体から淡い白光が明滅し始め、その光が徐々に右手に収束されて行く。



「古より紡がれし力……。この者に福音を齎せ賜え……」



 そして彼の右手が俺の右肩に触れるとほんの僅かだが、体内の温度が上昇する感覚を捉えた。



「――――。何も変化が無いけど……」



 体温の微かな上昇以外の変化が体に生じるかと思いきや……。それ以外に感じる物は無く時間が経過する度に上昇した体温も収まって行く。



『どうやらダンさんは術式を構築する魔物では無さそうですね』


「あぁ、そうだな」


「じゃあ俺は術式を展開出来ず、己自身の魔力を使用する魔物に属される訳??」


「その通りだ」



 そっかぁ……。


 超カッコイイ火球を放ったり、鋭い風の刃で相手を切り刻んだり、土の壁を構築して防御に使用出来ないのね……。


 ちょっと残念な気持ちですよ。



「軍鶏と火食鳥の一族の戦闘方法を見ただろう?? 例え放出系の魔法を詠唱出来なくとも研鑽を積み己の技を極み抜けば自ずと頂に立つ事が出来る」



 確か……。火ノ鳥奥義 『烈火焔月脚』 だっけ。


 ハンナ達が必死の思いで攻撃を続けても傷つく程度であった五つ首の装甲をイロン先生は一撃でぶち抜いたし。


 あの技は本当に格好良かった……。



 一つの事しか出来ないのならその一つに全ての力を注ぎ込み、他の追随を許さぬ圧倒的破壊力を生み出す事が可能となるのか。



「了解。それじゃあ魔力の使用云々の勉強を始めようとしましょうかね!!」


 両頬をパチンと強く叩いてちょっとだけ残念な気持ちを追い出すと気持ちを切り替えた。


「ふっ、では先ず貴様には魔力とは一体何かを教えねばならぬな」


「お、おう!! 宜しく頼むぜ相棒!!」



 魔法、魔力、詠唱等々。


 この目で見た事はあるがそれは一体どういう仕組みで己の体に作用しているのか、人の身では到底理解に及ばなかったのでいざ実践となるとちょっと億劫になってしまいますよ。



「魔力、それは魔力の源から体内に血液と似た形で流転するものだ。これが枯渇したり敵性対象によって破壊されれば絶命に至る。努々それを忘れる事無く研鑽に……」



 彼がちょっと鼻に付く態度で説明開始をすると同時。



『あ、そうでした!! ダンさん!! 言い忘れた事がありましたよ!!』



 聖樹ちゃんからちょいと大き目の声が静かな森に響いた。



「言い忘れた?? もしかして俺の体を隅々まで見たいって依頼なら喜んで……」

『魔力以外にも私からダンさんの体の中に譲渡されてしまったモノが存在しています』



 俺の目論見はものの見事に外れ、至極真面目な口調で聖樹ちゃんが話す。



「それは何だ??」


 ハンナが鋭い瞳を浮かべて樹皮を見つめる。



『私の力の一つである『抵抗力レジスト』 です』



「「抵抗力??」」



 相棒と仲良く同じ方向に首を傾げる。



『例えば……、そうですね。体が毒に対する力を持っていなくても毒を受ければ体内にそれに対する抗体が微かに生まれ、打撃を受け続ければ強力な打撃が被弾しても倒れる事はありません。ですが注意すべき事があり……』



「え!? 何ソレすっごいじゃん!! 相棒!! 試しに一発思いっきりぶん殴ってくれよ!!」



 話の腰を折って申し訳無いがその抵抗力というカッコイイ能力を試したいが為に相棒の肩をポンっと叩く。


 俺は今まで何度もコイツの攻撃を嫌という程に受けて来ましたからね!!


 彼女が話した通りならぜ――んぜん効かない筈だもの!!!!



「あぁ、喜んで受けてやる。歯を食いしばれ!! この大馬鹿者が!!!!」



 巨人の脛を思いっきりぶん殴る様にハンナが右の拳を思いきり振りかぶると一切の遠慮なく左の頬に捻じ込んで来やがった!!



「ドッブゥ!?!?」



 彼の右の拳が頬肉を食んだ刹那にとんでもねぇ痛みが顔全体に広がり、相棒が本来持つ膂力も相俟って俺の体は有り得ない距離を飛翔。



「う、う、う、嘘付きぃ!!!! 滅茶苦茶痛いじゃん!!!!」



 聖樹ちゃんの麓まで転がり続け、痛む頬を抑えながら嘘つきの彼女を涙で濡れた瞳で睨んでやった。



『人の話を最後まで聞かない貴方が悪いのです。例え打撃に強くなったとしても気絶しなかったり、骨折しなかったり。体が頑丈になるという意味合いなのです。人の五感までは鍛えられませんからね』


「それを最初から言いなさいよね!!」



 完璧に余計な痛みじゃんか!!



「ほう……。ならば俺が絶えず貴様に攻撃を与え続ければ痛みに強い強力な体が出来る訳だな……」



 はい、猛烈に嫌な予感がします!!!!



「俺に折檻するのは後で!! い、今は魔法の勉強をさせて下さい!!」



 聖樹ちゃんの麓で先程受けた痛みによって微妙に言う事を聞いてくれない足をキチンと折り畳み、今はその時では無いと告げてあげた。



「ふん、軟弱者め。まぁいい、魔法の指導を終えたら貴様の抵抗力というやらを鍛える為、日が暮れるまで殴り続けてやるからな」


『あはっ、それは良い考えですね。私はダンさんが逃げ出さない様に蔦で体を拘束します』


「御助力感謝する。コイツは逃げ足が速いからな……」



「『ふ、ふふふ……』」



 背後から届く薄ら笑い声と正面から届く悪魔の笑みが背の肌を一斉に泡立たせてしまった。



「ひ、ひぃええっ……」



 だ、誰か助けて下さい……。


 ここに史上最強の悪魔の拷問を越える痛みを与えようとする二つの巨悪が居ます……。


 だがここから逃げようともこの広い森は全て聖樹ちゃんの領域。


 どこに隠れようが、脱兎もビックリ仰天する様な速度で逃げようが瞬き一つの間に発見されてしまい悪魔を越える力を持つ白頭鷲に捕まり引きずり戻されてしまう。


 逃げようが、降参しようが俺に待ち構えているのは地獄の亡者も憐れむ惨たらしい拷問だ。


 二人からの特別授業が始まる前なのに、こんな事なら人として人生を終えれば良かったのじゃないかと早くも新たなる目覚めを後悔し始めてしまったのだった。




お疲れ様でした。


残暑厳しい頃ですが、皆様の体調は如何でしょうか??


この暑さがまだまだ続くかと思うと辟易してしまうのですが、今週末は漸く涼しくなってくるという予報で一先ず安心している次第であります。



さて、本話で多少触れたのですが。この後数話程度の間、彼は厳しい訓練を受ける事となります。


その訓練を終えた後に新しい依頼が始まります。そのプロットの構成を練っているのですが……。これがまた意外と難しくて。


四苦八苦しながら前段階のプロットを執筆しているのが現状ですね。



そしてブックマークをして頂き有難う御座い御座いました!!


残暑でかなり体力を削られている体に嬉しい知らせとなり、執筆活動の励みとなります!!!!



それでは皆様、お休みなさいませ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ