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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第七十五話 唐突な不幸は理不尽に訪れる

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 俺達が暮らす社会で使用される普遍的な言葉の中にこういった謳い文句がある。


『女三人寄ればかしましい』


 読んで字の如く。


 例え物静かな女性でも同性が三名集まれば決して終わりの見えない道の様に永遠と会話が続けられるのだ。


 会話のお題は己の趣味、上下する物価、夫の愚痴、夜の営み等々。例に挙げたら枚挙に暇がない。


 兎角女性という生き物は口から生まれたのでは無いかと錯覚してしまう程に会話という行為が大好物であり。


 それは人の体とは異なる生命体でも差異は無いと俺はこの数日間の間に痛烈に思い知らされた。


 月が眠気眼を擦り長々とした欠伸を放つ深夜でも。



『今日の月は本当に美しいですねぇ……。あ、ダンさん達は木々の枝に遮られて見えないか。月はこの星の引力に多大なる影響を与えているのですよ?? ほら、海の潮の満ち引きが良い例です。あっ!! そうだ!! 潮の満ち引きで思い出したんですけどね?? 干潮時、満潮時には魚の動きが収まって魚が釣れ難くなるらしいのです。釣りという行為をした事が無い私としては余り意味の無い情報ですけども』


『楽しく話している時に申し訳ありませんが……。それは何も眠っている俺を無理矢理起こして宙吊りにしてまで話す内容かしら??』



 毛布の上でスヤスヤと安眠を貪っていた俺を太い蔦で叩き起こして月と星の関係とは全く関係の無い釣りの話を始め。



『この森を守るラタトスクさん達が良く森の中で狩猟をしているのですけど。お肉の味は一体どんな味なのでしょうか?? 勿論、この森の中で交わされた会話の内容からある程度の味は予想出来ますが……』


『今現在料理中ですので会話は食後まで我慢なさい』



 古米と塩っ辛い干し肉を使用したおじやをクツクツと煮込んでいる時にもお構い無しに肉の味を問い。



『あはは!! 大きな欠伸をしましたね?? 沢山食べた後には眠くなる。動物さん達は安心すると眠ろうとする傾向が良く見られます。それは人然り、野生動物然り。私も勿論眠りますがダンさん達と比べてとても短い時間になりますよ?? 睡眠は体力を回復させる為に必要な行為ですのでどうかそのまま眠って下さいね』


『折角眠れそうだったのに……』



 顎が外れる勢いで大欠伸を放ち、素敵な微睡を堪能している時には耳元でいつもより優しい声色で聞いてもいない睡眠についての重要性を説き。



『へ、へぇっ……。人間の雄の生殖器はそういった形なのですねぇ。勉強になりますっ』


『だから覗かないでって言ったよね!?』



 聖樹さんが住む聖域の近くの泉で何も考えずにプカぁっと水面に浮かんでいると美しい木漏れ日に紛れて興味津々といった女性の声が降り注いできた。



 世にも稀な喋る木と知り合い本日で五日。


 俺達は太陽のお早うとおやすみ及び月の挨拶を五回聞く間。何事にも興味津々の木からほぼ絶え間無く口撃を浴び続けていた。



「ふぁ――……。あ゛ぁっ、ねっみぃ……」



 呼吸をするだけでもお金を取れそうな程物凄く澄んだ空気を胸一杯に取り込み、使用済みの空気を体内から放出する。


 この行為を何度も繰り返せばしつこい眠気も幾分か楽になるのですが……。どうやら体は正直なのですね。


 全く眠気が取れやしない。


 体の奥底に手強い眠気がどっしりと腰を据えて居座り、俺の口から何度も欠伸という行為を誘発しようとして躍起になっていた。



『今日も朝から眠そうですねぇ。しっかり睡眠を摂れなかったのですか??』



『あんたの所為で眠れなかったんだよ』

「夜明け間近まで会話していたからなぁ。その所為じゃないの??」



 上唇の裏側まで飛び出て来た本心をグっと堪え、敢えて遠回しに愚痴を零した。



『数時間程度眠れたから良いじゃないですか。私はダンさん達と出会ってから一睡もしていなんですよ??』


「俺達と比べてべらぼうに少なくて済む睡眠時間、食料は清らかな水と空気と太陽の光。体力と空腹という概念がある俺達から見れば全く羨ましい限りさ」



 地面に敷いてある毛布の上にコロンと寝転がり欠伸を噛み殺しながら枝の間隙かんげきから零れ落ちて来る日の光を見上げる。


 俺の視界に映るのは柔らかい橙の光と空一面を覆い尽くす美しい緑のみ。


 王都に到着してからこれまでこなして来た依頼の数々によって積もった疲労と、聖樹さんと出会うまでに消費した体力は豊かな自然のおかげで完全とまではいかないが元気に移動出来るまでに回復出来た。


 このまま彼女と楽し気な会話を繰り返して知識の向上に努めたいのですが俺達の本来の目的は聖樹との邂逅では無く、依頼人であるジュッテちゃんの父親の怪我を癒す為の薬草の採取だ。


 その目的物が手を伸ばせば届く位置にある。



「……」



 頭上を覆う高密度の緑の群れから視線を外して聖樹さんの背中側に生えている薬草群へと視線を送る。


 このまま立ち上がってあの植物を採取して残り微かな食料を頼りに森を脱出すれば目的達成なのだが……。



『便利そうに見えて意外と不便な事ばかりですよ?? 移動したくても足が無いから出来ないですし、物を食べようとしても口が無いから味という感覚は言葉でしか理解出来ないですもの。そうだ!! 味で思い出したんですけど。先日御話してくれた自爆花の味をもう一度教えてくれます!?』



 三度の飯よりも会話が大好物の聖樹ちゃんを一人寂しく残して行く訳にもいかねぇよな。


 それに俺の本心もまだまだ彼女と会話を続けたいと願っているのか、目的物を奪取しようとする感情が爪の垢程も湧いて来ないし。



「前も教えたでしょ?? 七色に変化する甘味だって」



 怠惰な状態を解除。


 随分とゆったりした所作で立ち上がりグゥンっと上体を伸ばす。



『どうしたんですか?? 急に立ち上がって』


「腹ペコ白頭鷲の腹を満たす為に今晩の夕食を頂きに行くのさ」



 空っぽの背嚢と装備一式を身に纏いつつ話す。



 此処で過ごす様になって一番の問題となったのは食料だったのだが、聖樹ちゃんが比較的安全に採取出来る果実の場所を教えてくれた事によりその問題は解決出来た。


 俺達の命を脅かす黒蠍、そして生の略奪者は聖樹本体から放たれる聖なる気が苦手らしく?? 彼女から相当の距離を離れなければ安全に過ごせると聞いた。


 ほぼ安全地帯の中に生える木から採取出来る果実で腹を満たしているのですが……。


 その味は甘くも無く酸っぱくも無く、味という味が無い実であり只腹を満たすだけの代物。


 無いよりもマシな程度の味は一応存在するのだが俺達は命を頂いて生きているのでこれ以上の無い物強請りはしませんよっと。



『瓢箪型のフィランの果実ですか。味がほぼ無い代わりに水分と必要最低限の栄養を摂取出来る果実と言っていましたね。それとハンナさんが見付けて来たあの白濁色の幼虫も一緒に頂けば鬼に金棒じゃないですか』



「いや、アレは要らん」



 数日前に相棒と共にフィランの果実を採取しに行った際。



『ダ、ダン!! 汎用虫と瓜二つの幼虫を見付けて来たぞ!!』


『キャアッ!? そんなもの何処で見付けたの!? 早く戻して来なさい!!』



 虫好きな活発男児が見付けて来た形容し難い虫を捉えてしまった母親の口調で咎めてやった。


 汎用虫が棲む大陸から離れたのにも関わらず何で態々そんなモノを食わなきゃいけないんだよと叫び、それは見付けたお前さんが責任を持って食えと伝えると。



『ふぉむ……。んぅっ!! この体液のトロミと微かな塩気が美味いぞ!!』



 小さな節足をワチャワチャと動かす汎用虫擬きを一切の躊躇なく口へ運び、キッラキラに目を輝かせて咀嚼を開始。



『ダン!! お前も食ってみろ!!』



 彼の前歯で両断された虫の断面からは食欲の低下を大いに招く大変粘度の高い白濁の液がトロォっと零れ落ちており。


 それを目の当たりにした俺はお腹が空いていないので結構ですと断っておいた。


 何事にも前向きに情報を摂取しようとする聖樹ちゃんですらも。



『う――ん……。その虫の味の感想は不要ですね』



 彼が美味そうに咀嚼する様を捉えつつ辟易した口調で御遠慮なさったのだ。



『ハンナさんが美味しそうに召し上がっていたのでダンさんも頂けばいいのに』


「あのねぇ。俺は相棒と違って好き好んで虫を食わないの」


「すぅ……。すぅ……」



 午前の稽古を終え、昼食で腹を満たして幸せな昼寝に興じている相棒の寝顔を指してやる。



『残念、虫を食べて困惑しているダンさんの顔も見たかったのになぁ』


 賢そうに見えて意外と横着者なのかしら。


「それはまたの機会って事で。んじゃ、採取に行って来るからその間に軽く眠りなよ。五日以上眠っていないとお肌に良くないのよ??」


『この体には皮膚がありませんのでその心配はありませんが……。確かに少しの休息は必要そうですね』


「そういう事。それでは行って来ま――す」


『は――い。気を付けて下さいね――』



 仕事に出掛ける夫を見送る妻の声を背に受けると聖樹ちゃんの北側の背の高い草を掻き分けてフィランの実を採取しに出発した。




 俺の背丈程の高さの草に囲まれるとほぼ同時に湿気を含んだむわぁっとした空気が体を包み込み肌からじわりと大きな汗粒が滲んで来る。


 この一帯は安全だと教えられたけどさ、ちょっとでも気を抜けば迷子になっちまいそうだし……。油断は禁物だよね。


 頭上を覆う緑から差し込む光の角度から進むべき方角を見出し、俺達が何度も通って出来た野道を暫く進んで行くと件の木が見えて来た。



「ん――……。手の届く位置に生える実は粗方採取したから残っていないな」



 大人の胴体程度の太さの幹から生える枝の先には寂しい空間が広がっており、その上方に生る実はまだ食に適した大きさでは無い。



「もうちょっと奥の木から採取するか……」



 このフィランの実が生る木は少し空間を開けて群生しており、更に奥まった位置に生えている木には立派な大きさの果実が枝の先に生っていた。



「美味そうに見えて味が無いのが偶に瑕って感じだもんな。まぁ水分が大量に含まれているお陰で何んとか食べられるけど……。ン゛ッ!?」



 群生している木の間を通りつつ、手ごろな大きさの実を探していると何だか御鼻ちゃんがキャァッと喜んでしまうあまぁい香りを捉えた。


 この妙に甘ったるい匂いの出所は何処かしら??


 久々に捉えた甘味の匂いに体が無条件に反応してしまい、その匂いの下を辿る為に嗅覚を最大限にまで高めてあちらこちらへ忙しなく移動を開始。


 気が付けばフィランの実が生える木から随分と離れた北側の位置へと移動していた。


 その甲斐もあってか。



「おっほぅ!! こりゃあ美味そうだな!!」



 寝不足気味の疲れた体が素直に喜びそうな甘い香りを放ち、淡い白桃色の丸みを帯びた果実を捉える事に成功した。



 大変御立派な幹が地面から垂直に立ち俺の背丈よりも高い位置から枝が左右に生えており、その先には大人の拳よりも一回り大きな淡い白桃色の実が生っている。


 背伸びをしつつ頭上に向かって腕を伸ばして果実を掴むと、意外と柔らかい実を崩さぬ様に枝から慎重にもぎ取り手中に収めた。



「おぉ――。美味そうだな……」



 ただ手に取っているだけでも甘い香りが鼻腔に伝わり久方振りの甘味を想像した口内からジャブジャブと厭らしい涎が溢れ出て来る。


 少し力を入れただけでも破けてしまいそうな皮を大事に、そして優しく撫でてあげた。



 ここで勢い良く齧り付いてもいいが……。


 美味そうな見た目とは裏腹に毒を含んでいる可能性もある。


 俺が培ってきた常識はここでは通用しないので慎重に行動せざるを得ないのですよ。



「腹ペコ野郎のお土産としてもう一個取ってから帰ろう……」


 彼の喜ぶ顔を想像しつつ再び背伸びを開始すると……。




「……ッ」




 背中方向から異様な足音が聞こえて来やがった。


 その移動音は大地に鋭利な木の杖を突き立てた軽快な音でありながらも硬度の高い物質同士を擦り合わせた鈍い音が混じり本体の重量が相当なものなのか、足音というよりも存在音として聞こえてしまう。



 こ、この多大なる既視感を覚えてしまう移動音はぁ……。



 森の中で響く異質な音を捉えると刹那に冷たい汗が背に浮かび、一粒の汗が背筋をツツっと伝い落ちて行く。


 大いなる恐怖心とそれを捉え様とする多大なる興味心。


 似て非なる二つの感情を胸に抱き、その姿を捉えようとして勇気を振り絞って振り返った。



「……」



 森の中に生える木々の合間に佇むソレは自分の目を疑いたくなる程に大きく、可能であれば時間を巻き戻して此処に来たしまった事をやり直したいと容易く思わせてしまう程に絶望感を与える。


 森の湿気を吸収して艶を帯びた漆黒の甲殻には大人の拳大程の棘が並び、一階建て平屋と同程度の巨躯を支える節足はこの森に生える木々よりも太く見える。


 俺の体を簡単にプッツリと両断する事を可能とした巨大な二対の鋏、大人の男性の胴体程度の太さを持つ尾の先には鋭い針が備わり、頭部の先端には黒牙が生えており俺の肉の美味さを想像しているのか無意味にゆっくりと上下に動いている。


 平坦な頭部の天辺には二つの眼、側頭部には三つの眼が二対。


 計八つの漆黒の瞳が俺の体を捉えては離さなかった。



「で、で、で、で……。出会っちゃったぁ……」



 恐らくコイツがウォッツ君が話していた生の略奪者ライフイーターであろう。


 外見的特徴がものの見事に一致しているし。



 ってか、ウォッツ君の嘘つきぃ!!!!


 君が話していた姿よりも大きく見えるのは俺がビビっているからでしょうか!?


 想像よりも一回り大きな姿に呆気に取られてしまいますよっと。



「さ、さぁってお目当ての品を入手しましたしぃ。そろそろお暇させて頂きますねっ」



 相手を刺激せぬ様、大変静かな足取りで巨大な黒蠍の真正面から移動するが。



「……」

『貴様。何処へ行く』



 生の略奪者ちゃんは俺の移動に合わせて体を動かし、己の体の真正面で此方を捉え続けた。



 う、うん。奴さんは確実に俺を食おうと画策していますね。今にも逞しい節足を駆使して襲い掛かって来そうですもの……。


 運否天賦に賭けて聖樹ちゃん達の下へ駆け出すか、それともここで絶望の未来しか見えない戦いに興じるか。


 その二者択一に迷っていると。



「ギィッ!!」



 生の略奪者が二つの鋏を天高く掲げ物凄い速さで突貫して来るではありませんか!!



「どわぁっ!?」


 入手した果実を放り捨て、死に物狂いで左方向へ向かって飛び出して突貫を回避。


「て、テメェ!! 無駄にデケェ図体でその移動速度は反則だろう!?」



 咄嗟に立ち上がると戦闘態勢を整えて叫んでやった。



 今の移動速度からしてコイツに背を向けて走り出したら即刻捕まっちまう事が確定した。


 ちゅ、ちゅまり俺にはコイツと戦う選択肢が残されていない訳だ。



「畜生め!! るかられるか……。勝負をしてやるよ!!」



 矢筒から矢を引き抜き、巨大な胴体に照準を絞って叫んだ。



「ギシィッ!!」


 生の略奪者が俺の覇気ある声に呼応するように再び突貫を開始。


「取り敢えず一発食らえや!!」



 有り得ない速度で向って来る巨体に矢を放ち、先程同じ要領で攻撃を回避。


 祈る想いで態勢を整えて矢の様子を確認すると。



「ど、どうだ!? 万力を籠めて放った矢はぁ……」



 まぁ、そうなると思いましたよ。



『む、無念なりっ!!』



 俺が放った矢は大変憤った表情を浮かべて地面の上に横たわっており、直撃した甲殻の箇所にはカスリ傷一つ付いていなかった。



「鉄程度じゃ傷付きもしないか。頑丈過ぎるのも大概にしろよ」



 あの馬鹿げた巨体に矢は通じないのなら遠距離戦はほぼ意味を成さないのか??


 まだまだ元気一杯のアイツに無策で突っ込んで行っても待ち構えているのは死神ちゃんのあつぅい抱擁だし……。


 だが、世の中に完全無敵の生命体は存在しない。此処に至るまでに得た情報をかき集めて勝利への道を模索しろ……。



 混乱に至る一歩手前で踏み止まり、荒ぶる呼吸を整えつつ情報の整理を開始した。



 生の略奪者は小型の蠍が幾年もの長い年月を経て成長した姿だ。


 つまり、小型の蠍の弱点はそのまま継承されている筈。


 小型の蠍と会敵した時の光景を思い出していると奴さんの漆黒の大きなお目目チャンとバッチリ目が合ってしまった。



「ふぅむ……。成程っ」



 俺が取るべき戦闘方法は今し方確定した……、いや確定されてしまいましたね。



 ワンパクな白頭鷲ちゃんと違い、俺は詰んだ盤面をひっくり返せる呆れた威力の攻撃力を持ち合わせていない。


 盤面が詰む前に幾つもの策を講じながら戦う選択肢しか与えられていないのだ。


 奴を向こうの世界へ送り届ける為には唯一の弱点である背の赤い点に剣の切っ先を突き立てねばならぬ。


 類稀なる移動速度を持ち合わせているのなら素早く移動してそこに剣をブッ刺せばそれで状況終了なのだがそれは叶わない。


 相手を疲弊させ、弱らせ、天高い位置からの雷撃を以て奴を殺す。後は相手の覇気ある圧に圧倒されない勇気を胸に秘めて戦うのみ。


 勝利への道筋が朧に見えて来たとほぼ同時。



「シィッ!!!!」



 生の略奪者が己の間合いに俺の体をスッポリと収めると右の鋏をなりふり構わず振り回して来やがった!!



「おせぇ!! そして……。食らえや!!!!」



 死ぬ思いで上体を屈めると繰り出された絶死の攻撃を回避。


 平坦な頭部の側面に生える目玉の一つに矢を射ってやった。


 た、頼む!! 突き刺さってくれ!!



 心急く思いで矢の飛翔を見届けていると俺の願いが気紛れな幸運の女神様に届いたのか。



「ギィィッ!?!?」



 鉄の鏃が大きな目玉を美味そうに食み、深く食い込んだ鏃と漆黒の目玉の隙間から粘度の高い白濁の液体が零れ始めた。



「よっしゃぁぁああ――!! 弱点みぃ――っけ!!」



 無駄に多い目玉を矢で全部ぶっ潰して、それから上空からの雷撃でテメェを死神ちゃんの下へ送り届けてやる!!



「ギシャァァアア!!!!」



 目玉を潰された痛みか将又俺程度の矮小な獲物から手痛いしっぺ返しを食らった憤りなのか。


 生の略奪者が再び天高く二つの鋏を掲げると俺の体に向かって掲げた鋏を我武者羅に振り回して来やがった!!



「あっぶ!! ちょ、ちょっと!? もう少し良く狙って振り回しなさいよね!!」



 肝が大いに冷える空気を切り裂く死音を奏でながら鋏が眼前を、そして髪の毛の上を通過。


 絶対死を免れない間合いからある程度の距離を取ってその一つ一つを丁寧に回避する。


 この程度の攻撃じゃ俺は怯まねぇぞ!! 俺の心を折りたければもっと強い攻撃を見せてみやがれ!!



「ふっ!! せぇい!!」

「ギシッ!?」



 当て気に逸った右の大振りを回避すると同時に矢を穿ち、頭の天辺に生える一つの目玉を奪取。



「はっは――!! こっちこっちぃ!! さぁ襲い掛かって来なさぁい!!」



 痛みに悶える野郎の間合いから脱出して大変分かり易い挑発を行う。



「ギ、ギギィィッ!!」


 そら来たぞ!! 


「馬鹿野郎が!! 容易く挑発に乗るんじゃねぇ!!!!」



 馬鹿の一つ覚えの様に俺に向かって突進して来る巨体を回避。そしてこちらも馬鹿の一つ覚えで側頭部の目玉の一つを潰す。



「ギシャァッ!?」


「ふぅ……、ふぅっ!!」



 全く、非力なのが本当に悔やまれるぜ。


 これから馬鹿げた強さを持つ野郎に体力勝負を仕掛けるってのにもう心が折れそうだ……。


 だが無い物強請りをして嘆いている暇は無い。コイツの前では俺の命は蝋燭の火よりも小さな光だ。


 刹那に隙を見せるだけで俺の体は無残に切り裂かれ、奴の大きなお腹の中に収まってしまうのだから。


 恐怖に飲まれそうになる弱き心を勇気ある行動で奮い立たせて強き心に塗り替え、今にも消えてしまいそうな闘志を地獄の業火も生温い程の強力な炎へと再燃させると。



「さぁ――……。テメェの暴力と俺の体力の根競べの開始と行きましょうか!!」



 ただ生き残るという己に与えられた単純明快な目標に目掛けて突き進んで行った。



お疲れ様でした。


先日の後書きにも記載した通り愛馬に跨って四川ラーメンを食しに行ったのですが……。


久々に食べた所為か物凄く美味しく感じてしまいました!!


食券を購入して店員さんに渡す時、いつも『辛口で』 と一言伝えるとかなり辛口で提供してくれるのが嬉しいですね。


ラーメンが届いたのなら先ずはスープをレンゲで掬い、ズズっと啜り。そこから辛いスープを絡ませた麺を食す。


そしてここからが私なりのこだわりです!!


ラーメンに入っている具材の葱、メンマ、箸で解したチャーシューを白米の上に乗せ。更に!! そこへラーメンのスープを投入してプチおじやとして頂くのです!!


これがまぁ美味いのなんの……。たっぷり辛みを堪能して私なりに休日を満喫して来ました。


その店はかなりのお薦めですので機会があれば是非とも読者様達を誘って連れて行きたい感じですね!!


そんな暇があればさっさと文字を書けという辛辣な読者様達の愛の鞭が光る画面越しに届いたのでプロット執筆作業に戻ります。



そして沢山の応援とブックマークをして頂き有難う御座います!!


まだまだ夏の疲れが色濃く残る体に嬉しい知らせとなり、執筆活動の励みとなりました!!!!



それでは皆様、お休みなさいませ。


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