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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
909/1225

第六十九話 ラタトスク達の里 その二

お待たせしました。


後半部分の投稿になります。




 緊張によって硬度を増した生唾をゴックンと飲み込み、さり気なく俺の尻をチクチク突いて来る槍の切っ先から生じる痛みに我慢していると先程駆けて行った男性が息を切らしながら戻って来た。



「族長の確認が取れました!! その者達を家に連れて来いとの事です!!」


「そうか。おい、ダンとかいったか……。これから族長がお前達に会う。今から里の中へ通すが変な動きを見せるなよ??」


「りょ、了解です。ハンナ、行こうぜ」


「あぁ分かった」



 俺と同じく両手を上げている彼に一言告げると里の者達に続きトゥインの里へお邪魔させて頂いた。



 ふぅん、空の上からだと里の詳細は分からなかったけど……。こうして地に足を着けると色んな情報が飛び込んで来るな。


 里を形成している木造の家屋は所々痛みはしているけど立派な造りでちょっとやそっとの風じゃ倒れやしないだろう。


 生活感溢れる軒先にはこの物々しい様子を確かめようとした住民の方々が顔を覗かせてこちらを見つめている。


 彼等は皆一様に王都で歩く人々と変わらぬ衣服を身に纏い、己に課された役割を一時中断して突発的に起こったよそ者の来訪という出来事を観察していた。


 大都会からかなり離れた場所で住んでいるのに普通の衣服を着用しているのは恐らく、誰かが王都まで出掛けて物資を調達しているのだろう。そうじゃなきゃほぼ未開の大地に住む人達が見慣れた服を着用する訳は無いし。


 人の姿と魔物の姿の割合は均等。


 王都内でラタトスクの姿は見た事はほぼ無いが、ここは彼等の生まれ故郷であるが故に過ごし易い姿で思い思いの時間を過ごしているのだろう。


 物々しい雰囲気を放つ大勢の男達に囲まれながら里の中を進んで行くと住民の方々から沢山の視線を向けられる。



「……」


 ある者はこれから襲い来る嵐を予感した様な心配そうな瞳で、又ある者は好奇の目で。


「……っ」


 そしてある子供は俺達がどういった存在か理解出来ずに小さく手を振ってくたので。


「あはは、どうも――」


 母親と手を繋いだ小さな男児に向かって手を振り返してあげた。


「こら。勝手な行動を取るなと言っただろ」


「あいだっ!!」



 この小さな行為でさえも御法度だとして槍の穂先を尻に突き付けて教えてくれた。


 べ、別に手を振る位いいじゃないの!! 襲い掛かる訳じゃないんだし!!


 と言いますか!! 尻ばっかりに攻撃を加えないでよね!!!!



「彼の言う通りにしろ」


「へいへい。手を振る位いいじゃねぇか」



 直ぐ隣でいつもと変わらぬ表情のまま歩き続けているハンナの忠告を受け、叱られた子犬の様に大人しく歩いて行くと他の家屋よりも大きな家の前で俺達を先導する者が歩みを止めた。



「族長が住む家だ。対応の確認を取って来るからそこで待て」



 下手な動きは沢山の武器に囲まれて出来ませんので大人しく待っていますよ――っと。


 木造の立派な造りの扉を開いて中に進んで行った一人の男性を静かに見送り、何とも無しに周囲へ視線を送っていると。



「――――。おい、確認が取れた。そこの二人、中に入れ」


 中に入った男性が素早く戻って来ると相変わらずの怖い瞳のままで俺達に指示を出した。


「あ、はい。失礼しますね」


「失礼する」



 彼の指示に素早く従い慎ましく頭を下げながら族長がお住まいの家に足を踏み入れた。



 中々立派な造りの家に相応しい広さを持つ玄関から廊下が一直線に奥へと続く。


 美しい木目の木の床は若干湿り男三名が普通に歩いていてもそこまで騒々しい音は鳴らない。


 廊下の壁に立てかけられている立派な長剣、槍、弓は目を見張る物があり。武器大好きっ子である我が相棒は。



「ふむっ、良い武器を飾ってあるな」



 新しい玩具を目の当たりにした頑是ない子供みたいな瞳を浮かべて眺めていた。



「お、おい。絶対に触るなよ」


「ふん。ただ見ているだけだ」



 お前さんの場合目を離した隙に横着を働く可能性がありますからねぇ……。油断は出来ないのですよ。


 立派な武器に睨みを利かされ、廊下の両壁に設置された幾つかの扉を通過して暫く進んで行くと廊下の突き当りに大きな扉が見えて来た。



「あの先に長が居られる。くれぐれも粗相の無いようにな」


「えぇ、分かりました」


 先導役の男性に釘を差されたので一つ頷くと。


「長、件の両名を連れて参りました」



 その彼が扉を静かに三度叩き俺達が到着した事を告げた。



「――――。入って貰え」


 おっ?? 里を纏める者としては随分若い声色ですね。


「はっ。おい、入れ」


「し、失礼しま――っす……」



 親の仇を見付けた様な鋭い瞳を浮かべる先導役の彼に急かされつつ扉を静かに開き、族長が待ち構えている部屋へとお邪魔させて頂いた。



 部屋全体の造りはこの大きな家に相応しい広さであり若干の埃っぽい臭いが漂う。壁際には野生動物の頭蓋が飾られておりその中には飢餓鼠の骨格も確認出来た。


 部屋の奥の窓から陽の光が差し込み奥まった位置で立派な椅子に腰かけている人物とその脇で静かに佇む一人の男性を照らす。


 椅子に腰かけているのが恐らく族長のベベズさんでしょう。


 顔立ちからして人間の年齢に換算すれば三十代後半の立派な男性の面影があり、濃い髭を携えたイカツイ顔は何処か威圧感を覚える。


 それに対し、族長と思しき男性の右手側で静かに立つ男は十代後半の若い顔立ちだ。



「「……」」



 そしてその二人の男性は部屋に入って来た俺達の爪先から頭の天辺まで隈なく品定めする様な真面目な瞳を浮かべていた。



「初めまして、ベベズさん。私の名はダンと申し、彼の名はハンナと申します」


 椅子に腰掛ける男性の前へと進み、警戒心を与えぬ様ある程度の距離を置いて深々と頭を垂れた。


「ようこそ、我が里へ。俺の名はベベズ。この里を統括する者だ」



 椅子に腰かけたまま彼が一つ小さく頷く。



「生の森へ入る許可を与える様にと、リフォルサの手紙には記してあったが……。何故お前達は我々が守る森へと足を踏み入れるのだ?? その理由を聞かせてくれ」



 王都での娘の様子はどうだ?? 最近の街の様子を聞かせてくれ等々。


 世間話から入らずドスの利いた低い声で単刀直入に俺達の真意を問うて来る。



「はい。我々は王都でシンフォニアという斡旋所で依頼を請け負い、そこで報酬を得て生活しています。ある日、依頼人の父親が負傷してしまいその怪我を一日でも早く治療したいと願う少女が斡旋所にやって来たのですが……。依頼を発注出来るのは十八になってからという斡旋所の取り決めによってそれは叶いませんでした。父を想う子の気持ちを無下に出来ないと考えた私は彼女の願いを叶える為に行動を起こしました」



 今回の依頼を請け負った発端の詳細を丁寧に説明していく。


 こういう時は体裁を取り繕ったり、無駄な言葉を付け加えるよりも己自身の感情を籠めた言葉を発した方が相手に伝わるからね。



「斡旋所の受付で働くドナさんや、ベベズさんへ手紙を送ったリフォルサさんには生の森の危険性並びにそこはラタトスク達にとって神聖な場所であると説かれ。俺達よそ者が足を踏み入れるべきでは無いと釘を差されました。己の命が紙屑よりも軽く扱われる危険が跋扈する森に入ろうとする者は余程酔狂に映るでしょう。しかし……。俺は未だ見ぬ不思議と冒険を求めて、彼は愛する者を守れる強さを求めてこちらの大陸に渡って来ました。今回の依頼主である少女の親を想う温かな願い、そして我々の願いを叶える為にもどうか生の森へ足を踏み入れる許可を頂けないでしょうか?? この通りです、お願いします……」



 ベベズさんに己の願いを伝え終えると先程よりも更に頭を深々と下げた。



「ふぅむ……、ダンと申したか。お前達の願いは確と受け取った。リフォルサはこの里と王都の間を密接に繋げる役割を担っている。その彼女からお前達の願いを無下にした場合は覚悟しておけと釘を差されていてな……」



 成程……。リフォルサさんの力によって里の人達は王都内で見かける人達と何ら変わりない衣服を身に纏っていたのか。


 と、言いますか。実の父親を脅すって……。



「実の父親に対して脅迫紛いの手紙を送る。道徳的に考えて決して喜ばしい事では無いが、恐らく娘はお前達にそれだけの期待を寄せているのだろう」


「で、では!!」



 話が良好な方向へ向かい始めたので深々と下げていた頭をパッと上げた。



「そう急くな。まだ私は許可を与えるとは言っていない」


 あ、あらら?? まだお預けですか??


「生の森へ入る許可を与えるのには幾つかの条件を提示する」


「そ、その条件とは??」



 こ、ここでも条件かよ。


 まぁそれを反故した場合、活発受付娘さんから腰が立たなくなるまで殴られその後に法的措置を取られて相棒と仲良く牢屋に入れられちまうし。


 大人しく従いますけども……。足を踏み入れるだけで一体どれだけの条件を守らなきゃいけないんだ。



「一つ、生の森は我々にとって神聖な場所だ。足を踏み入れる者に対して『浄化の儀式』 を受けて貰う事となっているのでその儀式を受ける事。二つ、生の森へ入り中枢に聳え立つ聖樹へ向かうのなら途中までこの者を帯同させる事」


「……っ」



 ベベズさんがそう話すと彼の隣で静かに立っている若い男性が静かに頷いた。



「この者は俺の息子、名はウォッツと申す。息子が途中までお前達を先導する」


「途中、ですか」


「あぁ、そうだ。中枢へ近付けば近付く程危険が増す。息子は安全に引き返せる場所までお前達を先導し、それからは二人で中枢へと向かえ。三つ、生の森へ足を踏み入れた事。入手した情報は一切口外しない事。これが条件だ」



 浄化の儀式、道案内役であるウォッツの帯同、そして口外しない。


 浄化の儀式がどのような物かは伺い知れぬが提示されたものは破格の条件ですね。



「畏まりました。三つの条件、全て飲みましょう」


「宜しい。浄化の儀式の用意は三日を要す。それまで里の敷地内にある空き家を使用するといい。案内は息子が行う」


「ウォッツさん、宜しくお願いしますね??」


「えぇ、こちらこそ」



 彼が年相応の若い声色を放ち俺達に対して頷いてくれた。



「では浄化の儀式までの間、疲れた体を労われ」


「有難う御座います。では、失礼しますね」



 ベベズさんに対して親切丁寧に頭を下げてちょいと重苦しい空気が漂う部屋を退出すると鉛色の空が広がる外に出た。



「ふぅ――……。緊張したぁ……」



 凝り固まった筋力を解す為に上半身をグンっと伸ばす。



「父は里を纏めている者として厳格な姿勢を取っていますが……。僕と一緒に居る時は結構砕けた性格なのですよ??」



 俺の所作を捉えたウォッツ君が軽い笑みを浮かべながら話す。


 砕けた性格ねぇ……。狩人みたいな鋭い瞳を浮かべていた彼が冗談を言う姿を想像出来ませんよ。



「ダンさんとハンナさんが使用する空き家は南の方にあります。ではついて来て下さい」



 彼が微かに口角を上げると俺達が足を踏み入れた方角へと進み出す。



「族長であるベベズさんは凄く若く見えたけど……。他の里の族長も若い者が里の者達を纏めているのかい??」



 彼の背に続きつつ問う。



「僕達が暮らす里の長が数年前に他界しまして……。父は生の森へ何度も足を踏み入れた事のある勇気ある者として里の皆から尊敬されております。族長に名乗り出る者が出なかった為、皆の声に応える為に父が族長の位を継承しました」



 ふぅん。族長の位は世襲制じゃないのか。



「父は今年で齢二百十を迎えました。魔物の寿命は凡そ千年、長きに亘る人生の中で二百という数字は若い部類に入るでしょうね。他の里の長はどちらかと言えばお年を召した方が多いですよ??」


「ベベズ殿は若いが腕は確かだ。時間があれば一度手合わせを願いたいものだな」



 こらこらぁ、そこのワンパクな白頭鷲ちゃん。初対面でいきなり手合わせを願うのはお角違いだからね??



「ふふ、機会があれば父にそう伝えておきます」


「ウォッツ君もかなり若そうに見えるけど……」



 時折見せてくれる無邪気な笑み、そして纏う空気が若者そのものっていう感じだし。



「僕は今年で十八になりました。姉とは五十以上歳が離れている為、彼女が帰郷する度に子供扱いして来てくるので困っているのですよ」



 ほほぅ。リフォルサさんの年齢は少なくとも六十歳以上という事が確定しましたね。


 千年生きる魔物にとって百にも満たない者は若年層に属す。


 つまり、リフォルサさんはまだまだヒヨッコに属する年齢でありながら王都でそれなりの影響力を持つ手腕を備えたのだから相当な努力を要したのだろう。


 一部の者からの差別の目に晒され、時に迫害に近い行為を受け、蔑まれながら行った彼女の血の滲む様な努力に比べたら俺達の努力はまだまだといった所か。


 彼女の様な若い先導者に負けぬ様、これからも精進しましょうかね。



「あはは、それは仕方ないよ。姉にとって弟はいつまでも可愛く映るものだからさ」


「僕はもう立派な大人なんです」


 可愛らしく唇を尖らせて話す。


「それは決めるのは己では無い、周囲の者だ。人から認められたければそれ相応の努力を怠らぬ事だ」


「ハンナさんの言う通りかも知れませんね……。自分では立派に成長したと思っていても大人から見ればまだまだ子供だと決めつけられてしまうのですから」



 大人になろうとする若者の願い、それを頑として撥ね付ける大人達。


 相対的な想いが衝突すると若者は声を大にして反抗して大人達はその姿を見て憤る。


 そして若者は年を経て大人に成長するとその時の事を懐かしみ、大人達は得た経験から学び次世代の育成に入るのだ。


 人間社会の中でも普遍的に行われる行為は魔物達の社会でも普遍的な行為の一種として捉えられている事に対してちょっと嬉しくなってしまった。



「大人達はウォッツ君の行動、地位、仕事振りとか。総合的に見て判断しているのだから決めつけているってのはちょっと違うんじゃない??」


「例えそうだとしても認められないのは歯痒いのですよ」



 うふふ……。プリプリ怒っちゃって。


 それが分からない様ではまだまだ大人の階段に足を踏み入れたとは言えないのですよ??


 いつか自分の子供が出来た時、彼の様に背伸びをするのならこう言ってあげよう。



『酸いも甘いも嚙み分けるのが大人ってもんさ』 と。


『うるせぇ!! クソ親父!! もう大人なんだよ!!』



 自分の子供と胸倉の掴み合いを行っている少し先の未来予想図を思い描いているとウォッツ君が普遍的な家屋の前で歩みを止めた。



「到着しました。ダンさん達はここで三日間過ごして下さい」


 里の南出入口から徒歩数分の位置にある家の扉を開いて話す。


「了解。じゃあ俺達は置いて来た荷物を運んで来るよ」



 到着とほぼ同時に目くじらを立てた男達に取り囲まれたから荷物は置きっぱなしだし。



「あ、そうなのですか。じゃあ僕も……」



 俺達に追随する形でウォッツ君が歩み出そうとした時。



「いたいたぁ!! ちょっと!! 稽古場でずぅっと待っていたのに何で顔を出さないのよ!!」



 どこか既視感を覚えてしまう活発な女性が北側から駆けて来た。



「あ、ごめんね。この人達の案内を父さんから任されていたんだよ」


「おぉ!! さっき里の上空で旋回していた化け物さんだね!!」


「……ッ」



『化け物』



 その単語を捉えたハンナの顔が微かに曇る。



「私の名前はルドニスよ。宜しく!! よそ者さん達!!!!」



 ふぅむ……。とんでもなく強い既視感を覚えてしまうのは恐らく王都の活発受付娘さんと何処となく似ているからでしょう。


 上空に浮かぶ太陽もウンウンと頷いてしまう程に明るく快活な笑み、人に好感を与える活発な雰囲気が良く似ている。


 この里に居る女性のラタトスクは皆一様に快活なのかと考え、里の通りで俺達の様子を窺っている女性達に対してチラっと視線を送るが……。



「「……」」



 どうやら彼女が特異なだけかも知れない。


 通りで足を止めて様子を窺っている女性達は皆警戒心を抱いた硬い表情を浮かべていた。



「こら初対面の人に失礼な口調を利いたら駄目じゃないか」


「ベベズさんに滞在の許可を頂いたんでしょ?? それなら別にいいじゃん。それよりも!! 早く稽古場に行くわよ!!」



 彼女が有無を言わさずにウォッツ君の右手を手に取り北側へと向かおうとするが。



「い、いやいや!! 僕は今ダンさん達の手伝いをしているんだよ!!」



 ちょっと乱暴に彼女の手を振り払ってしまった。



「ちっ、じゃあ私も手伝ってあげるから早く終わらせるわよ!!」



 そう話すと俺達が案内された家の奥へ大股で勝手に入って行く。


 あぁいう所作もドナとそっくりだよな……。彼女の快活な姿を思い浮かべていると何故か体の節々が痛くなるのは気の所為でしょうかね。


 恐らく、体が記憶に深々と刻まれた痛みと苦痛を無意識の内に思い出しているのだろう。



「じゃあ荷物を取りに向かいましょうか」


 えっ!? 呼び戻さないの!?


「い、いやいや。ルドニスさん、だっけ。家の奥に入って行っちゃったけど……」



 スタスタと南の方角へ向かって歩み出すウォッツ君の背に続いてそう話す。



「彼女は昔から自分勝手で我が道を行くって感じの子です。僕が何を言っても聞いてくれなくて何度も辛酸を嘗めて来たんですよ」


「ふぅん。元気過ぎる幼馴染って感じか」


「まぁそんな感じですね」


「所で……。先程の会話に稽古場という単語が出て来たのだが、ラタトスクの者達が己の腕を鍛える場所なのだろうか??」



 体を鍛える事しか頭に入っていない相棒が興味津々っといった感じでウォッツ君の背に言葉を投げる。



「えぇそうですよ。生の森に無許可で入ろうとする者達が万が一出現した場合、僕達自身の力で対処出来るように鍛えています」



 世の中は聖人君子ばかりじゃなく吐き気を催す悪も存在する。ソイツらが邪な考えを持って侵攻して来た時。


 対抗する力が無ければ愛する者が存在するこの里そして生の森は蹂躙されて最悪な結末を迎えてしまう可能性が大いにある。


 転ばぬ先の杖じゃないけども、ある程度の武力を持つ事は理に適った考えだからね。



「ほぅ、そうなのか……」



 はい、物すごぉく嫌な雰囲気ですね!!



「ハ、ハンナ。俺達は出発の時までゆっくり……!!」

「我々が浄化の儀式を受けるまで三日ある。ウォッツさえ良ければ我々もその稽古に参加出来る事は可能か??」



 俺が言葉を言い終える前にウォッツ君に稽古の参加の申し出をしてしまった。



 ほらぁ、嫌な予感がバッチリ当たったじゃん……。



「勿論です!! ハンナさん、ダンさん二人共中々素晴らしい力をお持ちですからね。力有る者からの指導は大歓迎ですよ」


 も、もうっ。褒めても駄目なんだからねっ??


「えへへ、褒められちゃった」



 軽い笑みをニコっと浮かべるといつもと変わらない鋭い眉の角度を浮かべている相棒の横顔へ向かってそう言ってやった。



「では荷物を搬入したら早速参加させて貰おう」


「分かりました!! 宜しくお願いしますね!!」



 ウォッツ君とハンナが男らしい握手を交わしたその時。



「この大馬鹿野郎!! 何で私を置いて行くのよ――――!!!!」



 元気過ぎる事が偶に瑕のルドニスが猛烈な勢いで駆けて来て幼馴染の背を蹴飛ばしてしまった。



「いたっ!!!! 何で蹴るんだよ!!」


「あんたが私の存在を一切合切無視して進むからよ!! あんたは私の言う事を聞いていればいいの!!」


「ハンナさん達を案内する事が最優先だって言ったじゃないか!!」



 里の中を走る通りの上でギャアギャアと騒ぐ二人を見ていると何だか温かい感情が心の中に浮かんでしまう。



「うふふ……。青春って感じよねぇ」


 己の子が幼馴染とじゃれ合う姿を捉えた母親の様に大変朗らかな笑みを浮かべて二人を見つめる。


「まだまだ若いな。男は己の道を進み女に確固たる道を示すべきなのだ。それを分かっていない」


「い、いやいや。偉そうに言っているけどね?? お前さんもクルリちゃんに絡まれたら四苦八苦しているじゃん」



 随分と鼻高々となって彼等の様子を見つめているほぼ童貞の相棒に釘を差す。



「あ、あれはアイツが強引過ぎるからだっ。まだ俺にはそっち方面の耐性が出来ていない。これから経験を積み重ねて近い将来そうなる予定なのだっ」


「はいはい。それは本当に遠い未来になりそうですねっ」



 長ったらしくて嘘くせぇ台詞だよな……。


 まぁほぼ童貞な彼に女性を上手く扱えと言う方が無理があるかしらね。


 顔を向け合ったまま御耳が辟易してしまう言葉を叫び合う男女と、里に残して来た大切な彼女の存在を思い出してほんのりと頬を朱に染める相棒の顔を温かな気持ちに包まれたまま随分と寛いだ姿勢で交互に見つめていた。




お疲れ様でした。


漸く王都を発ち、新たなる地に到着してホっとしております。



さて、先日購入したアーマードコアなのですが……。エンブレム作成、使用する機体のカラーリングに少々時間を掛け過ぎた為に中々ミッションに参加出来ていませんね。


ですが自分好みの機体に仕上げたのでこれからストーリーを進めて行く感じです!!


チュートリアルの後半に出現したヘリに一度敗北した為、ちょっと嫌な予感はしますが……。



それでは皆様、お休みなさいませ。

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