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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第六十三話 野性を上回る武の力

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 土の香りと草の匂いが入り混じる小麦畑の中を懸命に駆けていると。


『貴方は一体何故辛そうなのに駆けているのですか??』


 夜空に浮かぶ星達が不思議そうな顔を浮かべて問いかけて来る。



 俺だって今にもぶっ倒れそうな辛い状態なのに走りたくはないさ。


 世の男性を虜にする美女を己が腕に抱いて極上の柔らかさを提供してくれるベッドの上で何も考えずに眠りに就きたいのが本音だ。


 しかし、それは許されない。


 この世でたった一人の大切な相棒が自らの命を賭して二体の飢餓鼠と戦っているのだから……。


 泣き言はぶっ倒れた後で叫べばいい、恨み辛みは起きてから呟けばいい。


 後悔の二文字をこの世に残さぬ為にも痛みで参っている体に激しい鞭を打って走り続けているのさ。



「いつつ……。止血は出来たけどまだ全然痛みが引かねぇや。俺の願いを叶えてくれるのならこの痛みをどうにかして下さいよっと」



 漆黒の夜空に浮かび素敵な煌めきを見せてくれる星達へ愚痴に近い言葉を届けてやると両足に力を籠めて駆け続けた。



 右足が大地に接地するとその衝撃が太腿を伝わり上半身へ、そして傷口に伝わるとこれは何かの冗談かと首を傾げたくなる痛みが生じる。



 命辛々一体を撃退したとはいえ、勝利の代償としては少々重過ぎる痛手を負っちまったな……。


 命のやり取りに文句は言わねぇけども……。もう少し優しぃく食んで頂けたら幸いでしたのに。


 左肩に右手を添えて走り続けていると正面奥から随分と気合の籠った戦闘の音が俺の耳に届いた。



「んっ!? 近いか!?」



 ハンナが二体の飢餓鼠を追い始めてかなりの時間が経つ。それでもまだ決着に至っていないのは恐らくあの大きな個体の所為であろう。


 横着な白頭鷲ちゃんが手を焼く程の実力を持つ群れの頭領ボス、ね。


 俺が想像している強さよりも数段上であると思い改めた方が良さそうだな。



「よっしゃ!! 待ってろよ!? 相棒!! 今から助太刀に参りますからねぇ――!!」



 気持ちを引き締めていざ熱気溢れる男達の戦場へ向かって駆け出そうとした刹那。



「うぉぉおおっ!?」


 真正面の小麦畑の漆黒の闇の中から何かが飛来。


「おっぶんっ!?」



 妙に生温かく硬い何かが顔面に襲い掛かり、そのまま後方へと吹き飛ばされてしまった。



「――――。ちぃっ……。鼠如きが。調子に乗るなよ!!!!」


 まぁっ、恐らくそんな事だと思いましたよ。


「ファンナ。どふぃて、くるふぃ……」



 俺の顔面に覆い被さっている妙に汗臭くて硬い物体は恐らく彼のお尻ちゃんでしょう。


 作物の匂いが蔓延る大地の上に寝転びつつ、口と鼻を塞がれたままで早く退けと顔面の上に覆い被さる彼に向かって伝えてあげた。



「ダンか。そっちは片付いたのか??」


「ふぁい。ふぉどこおりなく」


「そうか。あの個体相手に勝利を収めるとは……。貴様も多少は強くなった様だな」



 あのね?? 優しい口調で語りかけてくれるのは結構なのですが。早く退いてくれない??


 柔らかくてフニフニの女の子のお尻ちゃんなら大歓迎なんですけども、汗くせぇ男の尻の匂いをいつまでも嗅いではいたくないの。



「しかし、無傷とはいかなかったか。肩の傷は痛むか??」


「いいふぁらどふぇ!! くせふぇんだよ!!」



 右手にぎゅっと力を籠めて硬い拳ちゃんを形成すると顔面に覆い被さる馬鹿野郎に向けて放ってやった。



「遅いぞ。そんな攻撃しか放てないから負傷するのだ」


「ぷはっ!! はぁ――……。もう何でも好きに言ってくれ……」



 新鮮な空気を胸一杯に取り込んで立ち上がると憤り辟易等々。負の感情を籠めた溜息を吐く。



「むっ!? かなりの出血だが大丈夫か!?」


「あぁ、これ?? 安心して。大部分は飢餓鼠の返り血だから」


 俺の服に付着した出血の跡を見付けて大きく目を見開いているハンナに向かってそう話す。


「どのようにしたらそれ程の出血を浴びるのだ」


 俺の武勇伝を聞きたいと!? それなら仕方がありませんね!!


「よぉし、そこの大飯食らいのごくつぶしのほぼ童貞野郎。耳の穴かっぽじってよぉく聞きやがれ。俺が勇猛果敢に飢餓鼠と対峙すると……」



 事の顛末を素晴らしく簡明に纏めて説明してやろうとしたのだが……。どうやらそれはもうちょっと後の方が良さそうだ。



「おい、ハンナ。まだ頭領ボスを仕留めていないな??」



 この体中に纏わり付く嫌な感覚……。


 直ぐそこにでっけぇ大鎌を持った死神ちゃんがそ――っと忍び足で近寄ってきている様な嫌な感覚だぜ。



「奴の実力はそこそこだが……。やたらと頭が切れる」


「お前さんが吹き飛んでくる程だ。実力云々よりも狡猾、って意味で捉えた方がいいか??」


「挟撃された時は絶えず死角に移動。愚直な攻撃よりも機を窺い相手の隙を突く攻撃が好みなのだろう」



 世間一般ではそれを狡猾と呼ぶのです。説明、お疲れ様でした。



「だろうと思った……。近くに潜んでいやがるな??」



 嫌な感覚はヒシヒシと感じるがその姿は夜の闇とうっそうと茂る小麦畑の所為で奴の影すらも掴み取れない。


 奴の姿は見えぬが今は機を窺い続け、隙あらば俺達の命を奪い取ろうとして闇に紛れている。


 成程、ハンナが手こずる訳だ。



「よぉ、相棒。開けた空間目指して移動するかい??」


 左の腰から抜剣すると彼に背を預けたまま口を開く。


「試しに何処かへ向かって駆け出してみろ。即刻襲い掛かって来るぞ」


「でしょうねぇ。背筋が泡立つ感覚が止みませんもの」



 命のやり取りが常である野性の世界では気配を殺す事は必要不可欠な技術といえる。


 力の持たぬ者が気配を駄々漏らして堂々と移動していたら即刻見付かって食われてしまうからね。


 それを敢えて俺達にまざまざと見せつけているのは躍起になって飛び出すのを待ち構えているのだろう。


 死の恐怖から逃れる為に安全地帯を求めて飛び出す、それは最悪な悪手だ。


 ただでさえ視界が悪い上に出鱈目な方向へ向かって駆け出せば……。恐らく死角から殺意に塗れた牙が襲い掛かり容易く命を掻っ攫って行くだろうさ。



 お生憎様だったな。


 俺達はお前さんよりも更に凶悪で強烈な殺意と対峙した事があるんだよ。


 そっちの思惑通りに事が運ぶと思ったら大間違いだぜ??



「「……っ」」



 強烈な警戒態勢を維持しているがそれでも奴は姿を見せる事無く、悪戯に時間だけが経過していった。



「こういう地味ぃ――な消耗戦は得意なんだけどよ。いつになったら奴さんは姿を見せるのだろう??」


「さぁな。無駄口叩く暇があれば索敵を怠るな」


 へいへい、辛辣な事で。


「索敵しようにもそのきっかけさえ掴めないんだけど……」



 闇の先をじぃぃっと見つめるも殺意に塗れた恐ろしい瞳も、岩をも齧り取る強力な威力を備えている前歯も見当たりませんし。



「視覚のみに囚われるな。五感全てを研ぎ済ませろ。さすれば自ずと敵の所在が把握出来る」



 五感、ね……。


 口で言うのは簡単だけどいざ実戦に移すと滅茶苦茶難しいんだからね??



「ふぅ――……、了解。四の五の言わず言われた通りにしてみるよ……」



 剣の柄を握る力を弱めて横着な白頭鷲ちゃんに言われた通り一感覚では無く、五感に身を委ねた。



「……」



 両腕に生える産毛をそっと撫でて何処かへと向かって行く微風が体に籠る熱を逃してくれる。


 鼻腔に届く土の香りと小麦畑特有の乾いた作物の匂いが大自然の中で行動していると教えてくれる。


 満点の星空に浮かぶ怪しい月から降り注ぐ月光が瞳に入ると心を落ち着かせ、小麦畑に風が訪れると小麦同士が擦れ合う小気味良い音が奏でられた。


 そして最後の五感を確かめるべく、無意味に口をパックンパックンと開く。



「ねぇ、ハンナ。空気の味は無味乾燥だよ??」


「貴様……。こんな状況でふざけるな」



 はは、わりぃね。お互いちょっと肩が強張っていたからさ。


 それを和らげる為にお道化てやったんだよ……。



「すぅ――……。ふぅ――……」



 集中力を高める為、一つ大きな深呼吸をすると五感の一つである視覚を遮断。


 味覚以外の三つの感覚で敵の姿を捉えようとしたのだが。



 ん――……。これといって特筆すべき違和感は覚えないな。



 俺の力量が至らないのか、それとも相手が完璧に自然に溶け込んでいるから捉えられないのか。それは定かでは無いが、いずれにせよ気を切るのは得策では無い。


 もっとだ……。もっと集中しろ……。


 死がそこにあるこの恐ろしい状況下で五月蠅く鳴っている心臓を宥め、沸々と燃え滾って行く闘志を鎮火させる為。


 心に美しく清らかな水面を思い浮かべた。


 俺はその水面の中央に一人静かに佇み、一切の凪の無い清らかな水面を揺らす存在は確認出来ない。



「良い集中力だ。そのままもっと感覚を研ぎ済ませ」



 直ぐ後ろのハンナが何か喋った気がするが……。


 それが耳に届かない程に高まっている己の集中力に驚いてしまう。


 それはきっと死がそこにあるという特殊な状況下に身を置き、死から逃れる為に人が備わっている機能の一つが発動した所為なのだろう。



 そして、本当に静かな水面に佇んでいると矮小な揺らめきが何処からともなく訪れて俺の足元を微かに揺らした。



 何だ?? 今の感覚は……。



 巨大な湖に小さな虫が落下して生じた矮小な波程度の違和感。


 それは巨大な湖にとっては些細なものだがその微々たるモノこそが奴の存在だ。


 何処だ……。何処に居やがる……。もっと集中しろ、自分の感覚のみに身を委ねるんだ。


 極限にまで集中力を高め、緊張の糸を張り詰めて水面の面積を広げて行くと……。



 遂に矮小な波の発生源の末端を捉えた。



「――――。来るぞ!!!!」


 ハンナが大声を放った刹那。


「ヂィァァアアアア――――ッ!!!!」



 俺が佇む水面の真正面から巨大な波がうねりとなって押し寄せて来やがった!!



「そこだぁぁああああ――――ッ!!!!」



 両の瞼をカッと素早く開き、渾身の力を籠めて剣を勢い良く振り下ろしてやった。



「ぐっ!?」

「ヂュゥッ!?」



 左肩から体内に迸って行く痛みと引き換えに剣から確かな手応えを掴み取る。


 あ、相打ちか!?



「フゥッ!! フゥゥッ!!!!」


「へ、へへっ。どうだい?? 右目を切り付けられた感覚は??」



 巨大な漆黒の瞳から大量の血を流す飢餓鼠へ向かって胸を張り、堂々と得意気に言ってやる。



「今の斬撃、見事だった。そして……。これで幕引きだ!!!!」


「うおっ!?」


 ハンナが魔力を解放するとパリッと乾いた音が周囲に響いた。


「ふぅぅ……。はぁぁああ……」



 彼の体から静かに淡い緑の魔力が滲み出るとそれが全身へ行き渡って行く。


 そして、ハンナの右手が強烈に発光してそれと共鳴する様に剣が激しく明滅する。



 う、うん……。巻き添えを食らう恐れがありますのでちょっと離れましょう!!


 ハンナの体を中心として吹き荒れる風が渦巻き、小麦が強烈な風に煽られて激しく鳴り響く。



「グッ……。グゥゥウウウ!!!!」



 彼の馬鹿げた圧を目の当たりにしても頭領は臆する事無く、己を鼓舞する様に後ろ足で立ち上がり今にもハンナへ向かって駆け出して行きそうだ。



「我が刃、風の如く……。この一撃は轟雷よりも強く!!!! その身に刻めッ!!」



 相棒……。最後は格好良くキメてくれよ??


 彼の体から吹き荒れた風がピタリと止み、淡い緑の光と眩い閃光が剣に集約された刹那。



「第七の刃!! 雷轟疾風閃らいごうしっぷうせんッ!!!!」


「ヂュァッ!?!?」



 彼がその場から姿を消してその数秒後。


 直ぐ側の大地に落雷したかのような途轍もない衝撃波が生じ、鼓膜の奥を震わせる轟音が地上に轟いた。



「グ、ググッ……」



 目も開けていられない眩い閃光が迸ると同時に飢餓鼠の薄汚れた灰色の毛に一筋の剣筋が深く刻まれ、そこからジワリと深紅の液体が滲み出て来る。


 己の腹に迸った一閃の衝撃は相当なものだったのか。


 飢餓鼠はその場から只の一歩も踏み出せず、踏鞴を踏むばかり。



「貴様には過ぎた技。しかし……。我々に刹那にでも死を予感させたのは天晴だ。手向けとして受け取れ」



 頭領の背後に姿を現したハンナが鞘に剣を収めると。



「グェッ……」



 飢餓鼠の腹が大きく開きそこから五臓六腑が零れ落ちて大地を深紅に染め上げた。



「す、すっげぇ一撃だな……」


 飢餓鼠に敬意の瞳を送っている彼にそう話す。


「体に風を纏い剣に稲妻を宿す技だ。二属性同時の付与魔法を使用する事によって可能となる」


「その二属性同時がどれだけ凄いか分からんが、兎に角これにて一件落着っと!!!!」



 左腰に剣を収めると満点の星空へと向けて疲労を籠めた吐息を放ち、腰から短剣を抜くと今は静かに横たわっている飢餓鼠の頭領の下へと歩む。



「ハンナ、お前さんは向こうで自分が仕留めた一体の血抜き作業をしてくれ」


「飢餓鼠の死体を運搬する為に必要な作業、か」


「そういう事。本当なら肉も食べてあげたいけど美味しくないらしいし。内臓を取り出したらそれをきっちりと埋葬して、んでもって王都に運ぼう」


「それら全て工程を終えると……。日が昇りそうだな」



 彼が東の空へと視線を向ける。



「早くしないと肉が腐ってお前さんの鉤爪を臭くしちまうぞ」


「ふんっ。分かっている……」



 ハンナが疲労を籠めた溜息を吐くと吹き飛ばされて来た方向へと姿を消した。



 はぁ――……。何はともあれ依頼を達成出来て御の字ですよ。


 飢餓鼠の頭領から攻撃を受けた左肩が猛烈に痛むが生の鼓動を受けている事に感謝しよう。



「有難うよ、お前さん達のお陰で俺達はまた一つ強くなれた。静かに眠ってくれ」



 飢餓鼠の死体の前に立つと静かに頭を垂れて一礼を放ち、暫しの黙祷を終えると早速作業に取り掛かった。



 うぅっ……。ギュルズさんが言っていた通り、滅茶苦茶臭いな!!!! この肉の塊!!


 鼻からすぅっと呼吸するだけで胃の中から酸っぱいモノが込み上げて来やがる。


 可能であればこの行程をすっ飛ばして持ち帰りたいが、そうすると相棒の鉤爪を猛烈に臭いモノへと変貌させちまうし……。


 飛翔している最中に彼の文句を聞いて居られる程の体力は残っていない。


 此処は一つ、相棒の口から耳障りな愚痴が放たれるのを防ぐ為にも最後の仕上げとして気合を入れて臨むとしよう。


 呼吸の方法を口呼吸のみに絞るものの。



「ォェェッ、ウップ……」



 短剣の鋭い切っ先をまだ温かい飢餓鼠の死体に突き立てるとまるで視認出来てしまいそうなドス黒い腐敗臭がもわぁぁっと浮かび上がり。口から体内に侵入を果たすと嗚咽感を引き出してしまう。


 死して尚、人に強烈な攻撃を加えるとは恐れいったぜ……。


 きっとコイツ等の肉が臭いのは食っても美味しくありませんよ――っと他の動物に狩る価値が無いと知らしめる為なのでしょう。


 上手く出来た自然の法則なのですが俺達の目的はこの猛烈に臭い肉では無くて飢餓鼠の骨。


 骨の取り出し方を知らぬ俺達は必要最低限の肉を残した状態で嘔吐おうと……。基、王都まで運ばなければならぬ。


 頭では理解しているけども体は完全に拒絶している。


 その証拠が猛烈な吐き気とカタカタと情けなく震える四肢なのだろう。


 言葉では無く手の震えからこれ以上の作業は危険であると教えてくれる体の警告を一切合切無視して震える手を必死に御して腹を切り裂くと……。



 そこからぬるぅぅっと零れ出て来た血液塗れの臓物の悪臭が遂に俺の堪忍袋の緒をブチ切ってしまった。



「うぅっ……。肉も臭ければ体毛も血もくせぇ……。ちゃんと風呂に入っていないからそうなるんだよ!!!!」



 魂の抜け落ちた体を悪戯に傷付けるのは好きでは無いが怒り心頭の状態でそれを堪える事は叶わなかった。


 強烈に強く握り締めた左の拳を飢餓鼠の死体に叩き込んでやると……。


 飢餓鼠の傷口から常軌を逸した悪臭を漂わせる血液と体液が飛び散り、右目ちゃんと御口ちゃんにあつぅい抱擁をブチかまして来やがった!!



「ンギャァァアアアア――――ッ!?」


 針の先で突き刺されたような痛みが右目に迸り。


「ォォブッ!? ウェッ!!!!」



 十日間一切洗っていない使い古された下着の猛烈な臭みが舌の上一杯に広がると喉の奥から大量の液体が外の空気を吸おうとして押し寄せて来る。



「ン゛ッ!! ンンッ!! ン゛ゥゥウウ――――ッ!?!?」



 口の中の異物を吐き出すと右手で右目を抑え、継続する嗚咽感を堪える為に左手で口元を抑えて地面の上を激しく転がり続けた。


 も、もう嫌!!


 こんな臭い肉とはおさらばして、早く帰ってベッドの上で何も考えずにゆっくり過ごしたいぃ!!!!



 月の光を浴び夜風を受けて優しく揺れる小麦達、そして虫達の清らかな歌声との相乗効果によって地上には美しい景色が広がるが。



「ヒィッ……。フゥゥ……。うぶっ!? も、もうダメェェエエ――――ッ!!!!」



 一人の人間の悲壮感に塗れた叫び声と大量に飛び出る水の音がそれを台無しにしてしまった。


 今まで心静かに地上の景色を見下ろしていた星達は皆一様に顔を顰めて地上から視線を逸らしてしまう。



「ウ、ウゥ……。オロォォォッ!!!!」



 兎角人間という生き物は自然の美しき景観を損ねる生物であると理解した彼等は疲労感を籠めた溜息を吐き。


 一向に鎮まる気配を見せない一人の人間の姿を憐憫を籠めた寂しい瞳で見下ろし続けていたのだった。




お疲れ様でした。


本日は台風が本土に上陸して大変な被害を被った地域もあると思われます。台風の進行は遅く、まだまだ油断を許さない状況ですので台風の範囲にお住いの方は引き続き警戒を続けて下さいね。



さて、もう間も無く次の依頼に突入するのですが……。


次の依頼は過去編の主人公に取って一つの転換期となります。詳しくはネタバレになりますのでこれ以上は御話出来ませんが、彼の身に起こる不思議な出来事を楽しんで頂ければ幸いです。


現在その御話のプロットを執筆しているのですけど……。それがまぁ難しくて。


日常生活に支障をきたす程に悩んで執筆している次第であります。



それでは皆様、お休みなさいませ。


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