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第六話 謁見という名の事情聴取 その一

お疲れ様です!! 本日の投稿になります。


それでは、どうぞ!!




 座り心地の宜しく無い椅子にゆっくりと。


 それはもう鳥の羽が舞い落ちる速度よりも遅い速さで、傍から見ればその椅子を労わる様に腰掛けた。



「っ!!」



 臀部と平面が接着するとズキンとした痛みが走り、背骨を通って脳天まで一気に駆け抜けて行く。



 くそう。


 何で尻を労わりながら座らなきゃならんのだ。


 ぎこちない所作で本日の夕食である至宝と呼んでも差し支えないパン達が入った紙袋を開けようとすると、深紅の龍が此方に向かって人の神経を逆撫でする声色で話し掛けて来た。





「どうしたのよ――。出産間近の牝牛みたいな動きで座って」



「あのな?? 誰の所為で負傷したと思ってんだ??」



 ココナッツの看板娘さんと日常会話を繰り広げていただけなのに……。


 何で尻の皮膚を捻じ切られなければならないのだ。


 幸いな事に出血は見られぬものの……。今もひり付く痛みは継続し、その痛みが苛立ちを増長させているのですよ。


 まだまだ書き終えていない報告書も残っているってのに。悪影響を及ぼしたらどうしてくれるのかね?? 君は。


 直接睨むと大変恐ろしい攻撃が飛んでくる恐れがありますので、さり気なく。狂暴な龍に悟られる事の無い様に慎ましく睨む。



「しらねっ。おほっう!! このチーズパンうみゃい!!!!」



 小さな口、されど強力な牙が生えた御口でトロリと溶けたチーズが乗せられているパンに齧り付き。


 舌に感じるチーズ特有の酸味が大変お気に召したのか。



「んふっ。幸せっ」



 溶けたチーズも参りましたと言わんばかりに溶け落ちた目尻で咀嚼を続けましたとさ。


 幸せそうな顔しやがって……。


 羨ましい限りですよ。



「はぁ……。まぁいいや。皆、食事を続けながら聞いてくれ」



 此方の明日の予定。


 特に大切な予定でもある、あの教団との接触について幾つか尋ねておきたい事があったので室内の素敵な夕食の雰囲気を壊さぬ様。柔らかい口調で口を開いた。



「明日の夕刻にイル教のシエル皇聖との謁見があるんだけど……。不帰の森で遭遇したマイ達についてどこまで話していいのか。今の内に尋ねておきたくてね?? 皆の意見を聞かせて欲しいんだ」



 狂暴な龍と出会い、森の優しき怪力無双さんと共にオークを撃退。


 海に抜けてからは賢い海竜さんと出会って、囚われた美しいハーピーの女王様を倒して街に平穏を取り戻した。


 そして、密林の白雪に出会い。淫魔が率いるオークの軍団を退治。



 迷いの平原を抜けてからは淫らな女王様と、そして師匠と出会った。



 彼等には彼等の生活がある。


 それを脅かす情報を提供するのは憚れるのですよっと。



「ふむ……。情報提供の取捨選択ですか」



 両手でクルミパンを持ち、小さな御口でモムモムと咀嚼を続けるカエデがポツリと言葉を漏らす。



「ユウ達の里の情報やら、アレクシアさん達の里の位置、そしてアオイ達の蜘蛛の里。全部の情報を話す訳にはいかないだろう?? 相手は魔物排斥を訴えている教団なんだし」



 此方も彼女に倣い、クルミパンを一口豪快に齧った。


 うんっ!! 美味いっ!!


 小麦の柔らかい甘味がお尻の痛みを、そして疲労感を拭い去ってくれる様だ。



「レイドは達成した任務について、どうやって説明しようとしているの??」



 ベッドの上のユウがちょっとだけお行儀の悪い姿勢でパンを食む。



「えっと……。先ずは不帰の森へと入り、そこから南進。オークと遭遇して数体を撃破。複数の個体を確認出来たのでそれを回避しつつ南海岸線へと到達。そこから西へと移動して、ルミナの街で住民達と協力してハーピーを撃退。彼等は西へと飛び立ち、彼等の以後の詳細は不明……」



「ちょっと!! 私の存在が無い事になってんだけど!?」



 いや、話聞いてた??


 あなた達の存在を明るみに出したく無いから相談しているのですよ??



 心外よ!!


 そう言わんばかりにベッドの上に拳をポスンと叩きつける。



「強力な龍と出会った。何て言ってみろ。どんな特徴だったのか、大きさは、攻撃方法は。事情聴取に引っ掛かって永遠に帰って来れなくなっちまうよ」



 これ以上要らぬ仕事は負いたくないのが本音ですからね。



「むぅ……。龍の強さをこの世に知らしめる絶好の機会だったのに」



 強さ、というよりは。


 傍若無人、って感じですよね。あなたの場合は。



「レイド様ぁ。私の里はどの様にして説明するのですかぁ??」



「蜘蛛の里?? 北へと抜ける際に森中に張り巡らされた蜘蛛の糸を発見し、身の危険を感じたのでそれを迂回。森を抜けた際に濃霧に襲われたので、森と平原の境目を頼りに西へ。霧が晴れた所で北上を開始してファストベースに向かった。そう報告しようと考えているよ」



 ぷっくりと膨らんだお腹に生える、チクチクした毛を指でやんわりと押し返しながら言ってやった。



「うふふ……。蜘蛛の里は危険ですよとお伝え下さいまし」


「蜘蛛の姿を見たと報告したらそれこそ厄介な事になっちゃうでしょ。カエデ、どうだろう。矛盾する点はあるかな??」



 何やら難しい顔を浮かべて思考を纏めている彼女に問う。




「――――――――。良い線ですね。矛盾はしていませんし」



 ほっ。


 良かった。



「ですが」



 まだ胸を撫で下ろすのは早かったな。


 続け様に口を開くので、キチンと姿勢を整えて彼女の方へと視線を送った。



「不帰の森の中は安全、安心であると伝えるのは軽率ですね。レイドが提供した情報を基に人間達が侵入を画策する虞があります」



「げっ。何だよ、あたしの里の近くに人間達が入って来る事??」



 パンを口に加え、余裕綽々といった感じでモフモフと動かしていたが。


 森の中に人々が入って来ると聞いた途端に口から零してしまった。



 お行儀が悪いですよっと。



「私はあくまでも可能性を示唆したまでです。人間達が大挙を成して侵入する事を防ぐ方法は一つ」



 何だろう。


 オークが潜んでいるから危険だと伝えるのかな。



「魔物の存在を示唆すればいいのです。森の中は自然豊かな外見とは裏腹に恐ろしい二者が対立し、群雄割拠の状況だと説明すれば宜しいかと。後、ハーピーの居場所だけは伏せて下さい。彼女達は静かに暮らしたいと考えていますので」



「じゃあ、何。あたし達が恐ろしい姿で徘徊しているって報告するって事なの??」



「その通りです」


「え――。せめてさぁ。優しくて可愛いって付け加えてよ――」



 ベッドにだらぁんと溶け落ちつつ話す。


 その通りですけど、それ目当てに侵入する輩も出て来そうなので却下かな。



「それは蛇足です。――。異形の存在同士が対立している戦況の中に戦力を投下出来る程、人間側に余裕は無い状況ですよね??」



 カエデが此方に視線を送りつつ話す。



「平地の防衛線の維持だけで手一杯って感じかな。今現在、第一次防衛線の南西部だけにしかオークの活動が見られない。後方の防衛線の戦力をそこに集中させ、残存戦力はどう転ぶか未だ分からない状況だな」




 状況次第では不帰の森へと突入させる事も有り得るのか??


 ん――……。


 そんな余裕は無いとは思うけど……。蓋然性は無くても、可能性は残る形だな。




「不帰の森の中に居る魔物達には抗えない戦力差があると報告したら如何です?? 右腕一本で大木を薙ぎ倒し、大地を割る豪拳。果ては、空に浮かぶ雲を霧散させる圧を放つ。そんな恐ろしい魔物が居るので今の状況では抵抗出来ませんよ?? と」



「あはは。それは流石に大袈裟…………。でもないな。全部現実じゃないか」




 フェリスさんの怒りが沸点を越え。


 怒髪冠を衝く勢いで拳を突き出したら雲が霧散したし……。あれは本当に度肝を抜かされた。




「そんな化け物相手に立ち向かおうと考えますか?? 余裕がないこの時期に」


「化け物退治だ――って。向かう程人間も馬鹿じゃないか」



 一つのパンを食べ終え、二つ目のパンを手に取りつつマイが話す。



「確かに……。化け物が潜む森に潜入する程、人間達には体力が残っていない。うんっ!! これなら大丈夫そうだな!!」



 敵の戦力を見誤る程、人間は愚かでは無い。


 寧ろ。


 魔物達の強大な戦力が抑止力になるんじゃないのか?? 



 互いに干渉しなければ傷付く事も、そして魔物がオークを抑え付けていると理解出来ればそれだけ平地に戦力を集中出来る訳だし。



 うん……。


 これでイケルかな??



「じゃあ人では抗えない力を持った化け物が潜んでいて……。それをより現実的な物にする為、化け物の特徴も記載すべきだよな??」


「そうですね。少々大袈裟な化け物の容姿が丁度良いでしょう」



 ふむっ。


 成程。



「じゃあ……。ユウ!! 悪いけど化け物らしく大袈裟にミノタウロスの特徴を書いてもいいかな!?」



 了承を得る為に彼女へと視線を移すと、何やら肩をワナワナと震わせていた。


 何だろう……。


 何か気に入らない事でもあったのかな。



「あのさぁ……。さっきから……。あたしの事、化け物化け物って連呼し過ぎじゃね??」



 お、おぉう……。



 そういう事でしたか。



「い、いや。例えだからね!? 決してそういう視線で見ている訳じゃないよ??」



 猛牛を御す為。


 落ち着いてね――っと。両手で彼女を宥めつつ話す。



 しかし。


 こちらの思惑とは裏腹に、藍色の髪の女性と深紅の龍が要らぬ茶々を入れてしまった。




「巨岩を容易く砕く拳、巨木と肩を並べる身長。一歩踏み出せば地面が揺れ、こめかみから生えた角は神をも恐れを抱くでしょう」




「そしてぇ!! だらしなく垂れ下がったバカ乳からは食いしん坊の赤ん坊も顔を顰める程の量の液体が零れ落ちていましたぁって書きなさい!! ギャハハハハ!!!! これで人類はミノタウロスに恐れをなすこと間違いぬわぁあああい!!」



 太った雀が己の発言に大笑いし、ベッドの上で目に涙を浮かべて転げ回っていると。


 深緑の彼女の頭の中から何やらプチっと切れる音が室内にこだました。



 あ、し――らないっと。


 今纏めた考察を報告書に書くとしますかね。



「ガハハハァ!!!! ヒ――ヒッヒッヒィ!! あ――、わらっ……。ぐぇっ!? 何すんのよ!! ユウ!!」


「あのさぁ……。流石に、酷くね??」



 俯きがちだから良く表情が見えませんけど。


 普段の優しい口調とは掛け離れた恐ろしい声色ですので、相当怒り心頭だろうなぁ。



「さ、さ、流石に言い過ぎたわよね?? 落ち着こ?? はぁ――い。深呼吸しましょうねぇ――」



 アイツも馬鹿だよなぁ。


 ここで素直に謝れば要らぬ攻撃を食らう嵌めにもならないのに。



 さて、羽筆に墨を纏わせて――っと。



「お前さんが嘲笑したバカ乳の中でぇ……。反省してろやぁあああああああああ!!!!」


「ン゛――――――――!!!! だ、だ、だずげっ!!!!」



 大絶叫が室内にこだまするので、何事かと思い。


 横目でチラリとその惨状を確認すると……。



「この野郎!! あたし達の事を散々馬鹿にしやがってぇ!! あたしを怒らせると怖いんだぞ!!!!」


「ン゛っ!?!? ン゛ッン゛――――!?!?」



 上下左右。


 有り得ない動きをする双丘を剛腕で抑え付け、時間経過と共にそれが徐々に収まって行く。



 ユウのアレって……。


 やっぱりちょっとおっかないかも……。



「レイド様っ。私達の事は妖艶な女性と報告するのですか??」


「そんな風に書いたら世の男性が殺到しちゃうからね。姿形は確認出来なかったけど、大変恐ろしい雰囲気が漂う魔境だと報告させて貰うよ」



 蜘蛛の里の皆さんは確かに皆綺麗だったしなぁ。


 アオイの様な凛とした佇まいが似合う人も居れば、シズクさんの様に静々とした人も居たし。



「ま、まぁっ!! レイド様は私の体を求めていると!?」



 何処がどうなったらその考えに辿り着くのだろうか。


 甚だ疑問が残りますよ。



 興奮を隠しきれぬ様子で二本脚をワチャワチャと動かす黒き蜘蛛。


 そして、二つの巨岩が漸く有り得ない動きを止め。


 その中から取り出した、見るも無残な姿に変わり果てた深紅の龍の尻尾を掴み、此方に見せつけるかの如く。



 ぷらぁん、ぷらぁんと揺れ動かす。



 恐らく、アレは。



『あたしを馬鹿にしたらこうなるからな??』



 彼女なりの最終警告なのでしょう。


 大変ぎこちない乾いた笑みを浮かべ、悲惨な光景を振り払う様。我武者羅に筆を走らせ続けた。















 ◇












 夕刻とも、昼間とも呼び難い中途半端な太陽の角度が空に浮かぶ時間。外をのんびりと歩く人々を驚かしては申し訳無いとは思いつつも。


 草臥れた宿屋の室内で喜びを一気苛烈に破裂させた。



「で、で、で、出来たぁ――――!!!!」



 目に見えぬ達成感を大切に握り締める様に拳をぎゅぅっと握り。与えられた仕事を終えた、たった一つの矮小な事実が目に涙を浮かばせた。



 や、やったぞ。


 何んとか間に合った。



 積み上げられた二つの白い山を満足気に見下ろすと同時。疲労感と達成感を重なり合わせた重量が双肩にドっと圧し掛かった。



 はぁ――……。


 今からレフ准尉の下へ上層部宛ての報告書を提出して、返す足でシエル皇聖の下へと向かわなきゃいけないのか……。



 喜ぶのも束の間。



 二日間の徹夜によって体力がほぼ根こそぎ削られている事に気付き、そしてこれからの行動が最も大切であると思い知らされてしまう。


 ねっむ……。


 今から体力を回復させる為に仮眠でも取ろうかな?? 五分、いいや!! 十分程度なら眠れる筈!!



 蜂蜜以上に甘い考えを胸に抱き、己のベッドに移動しようとするが。




「お疲れ様でした。後は提出するだけですね」


「あ、あぁ。うん。そう、だね」



 俺の行動を見越してか。


 そうはさせませんよ?? と言わんばかりに鞄を手に持つカエデが背後に待ち構えていた。



「今、ベッドに向かおうとしましたよね??」



 ほら、やっぱり。



「五分程度なら眠れるかなぁって……」


「駄目です。今眠ったら確実に明日の朝まで眠ってしまいますので。明日から任務ですよね??」


「はい、そうです……」



 相も変わらず手厳しいですよねぇ。


 少し位休んでもいいじゃないか。皆はぐっすり休んで頗る快調な顔色だし。



「そこで、一つ所望しても宜しいでしょうか」


「何??」



 ちょっとだけ冷たい口調で話す。



「――――。私に向かってそんな口調で話しても宜しいのですか??」


「おほんっ!! 何を御所望されるのでしょうか」



 一つ咳払いをしつつ、ぎゅっと眉をしかめた彼女を見上げた。


 年下の、しかも!! こぉんな華奢な女性に逆らえないなんて情けないぞ!! と、罵られようが。


 俺にはこうするしか道は残されていないのですよ。悲しい現実ですよねぇ……。



「ウマ子についてです」


「は?? ウマ子??」



 何だろう。


 餌を変えろとか??



「可能であれば荷馬車を帯同させたいと考えています。天幕、並びに彼女達の荷物を載せて移動させれば一日の最大移動距離も伸びるかと。幸いな事に、ウマ子自身の体力は青天井ですので」



 ふぅむ。


 荷馬車、ね。



「了解。レフ准尉にお願いしてみるよ」



 そう話し。


 早く鞄を受け取って下さいと無言の圧力を掛けて来るので、鞄を受け取り。



 致し方ない。渋々。嫌々。



 人から見れば何をだらしない。そんな風にも受け止められる所作で書類を詰めていく。



「レイド様、お疲れでしたら……。本日はお休みになられては??」


「嬉しい提案だけどさ。そんな事したら除隊処分になっちゃうからね」


「それはそれで構わないのでは?? 私と共に里へと帰り、子孫繁栄の為!! 夜通し肌と肌を重ね合わせ……」



「じゃあ行って来るよ。ユウ、受け取って」



 右肩に留まる蜘蛛のお腹を掴み、彼女へ向かって美しい放物線を描いてやった。



「はぁぁ――ん。辛辣ですわぁ――」


「っと。いってらっしゃい!! お土産は要らないからね!!」


「買う暇もないって。帰りは……。そうだな。シエル皇聖の謁見次第って感じだから。夕食は悪いけど各自で済ませて。じゃあ、行って来ま――す」



 巨大な溜息を吐き、鞄の紐を肩に掛け。部屋を後にした。




 全く……。


 一人に仕事を押し付け過ぎじゃあないのかね。


 歩む度に軋む音を奏でる廊下に厭味ったらしい視線を向けつつ、陽性な感情な声で溢れかえる外の世界へと旅立って行った。







 ――――――――――。




 行ったか。


 牧羊犬に追いかけ回されて草臥れ果てた羊みたいな顔で出て行ったわねぇ……。



 もう少し効率良く仕上げれば良かったものの。馬鹿みたいな体力を武器に振り回せばあぁもなろうさ。



「さて、皆さん。私に一つ提案があります」


「どうしたのよ、カエデ」



 お肉の串焼きを食べ終え、竹串で歯の隙間のお肉ちゃんを掃除しつつ話す。


 このお店のお肉は大当たりね。


 次回もこの店で買おう。



「彼が本日会う予定の人は、魔物排斥を訴える教団の指導者です。その指導者足る人物が彼を何故呼び寄せたのか。大変興味がそそります……」



 努めて無表情を貫いているけども、僅かに眉を上げるそのきゃわいいお顔。多くの時間を共に過ごして来た私には微妙に分かるのだよ。



 ふふん。


 そう言う事か。



「尾行ね!!」


「その通りです。彼の力の痕跡を辿り、シエル皇聖に対し。彼がどの様な反応を見せるのか。将又、私の指示通りに報告出来るのかが大変気になりますので」



 夜まで暇だったし、丁度良い暇潰しになりそうだ!!



「金持ちが住む区画に住んでいるんだろ?? そのシエルって人は」



 ベッドの上でコロンと寝転ぶユウが話す。



「その様ですね」


「じゃあ、屋敷の中に侵入する訳にもいかんじゃん」


「ユウの場合はそうでしょう。我々は幸いなことに体を小さく出来ます。屋根伝い、若しくは侵入経路を探して屋敷の外壁伝いに彼の様子を窺います」


「ず、ずるい!! あたしも見たいじゃん!!!!」



 だらけた姿から一転。


 遊びに置いて行かれてしまう焦りに焦った子供の表情で、ガバっと起き上がった。



「我儘を言わないでください。屋敷周辺でウロウロしていたら怪しまれる可能性もありますので、ユウはお留守番。若しくは大通り沿いで待機して貰います」


「えぇ!?」


「まぁ偶にはお座りしてなさいよ、やんちゃなわんちゃん??」



 にしっと笑みを浮かべてそう話すと。



「誰が犬だ。もう一度埋めるぞ??」



 そ、それは勘弁して下さい!!


 何もしなくても谷間が出来ているのに腕でぎゅむっと破廉恥なアレを寄せて。


 更に上乗せした地上最深の谷間を此方に見せつけた。



 ってか。寄せんな。



「ユウはどうします??」


「ん――……。じゃあ、途中までついて行くよ」



「分かりました。では、皆さん。行動開始です」



 そう話し、カエデが藍色の髪を揺らしつつ静かな足取りで扉へと向かった。




 むっふふ――。


 私達魔物をしばこうとする奴らの首領の顔を窺いに行こうとしましょうかねぇ……。


 向こうの態度次第で……。一戦交えても構わない、のか??



「あ、言い忘れる所でした。暴力沙汰は御法度ですよ??」



 何であんたは私の目を直視するのよ。



「へ――へ――。了解了解。ぜぇったい手は出しませんよ――」



 足は出すかもね。



「足は出すという頓智も駄目ですからね??」



 ちぃっ!!


 私の思考を読むのが上手くなって来たわね。



「野蛮人と行動を共にする此方の気も汲んで欲しいものですわぁ」


「あぁ!? 誰が野蛮人だぁ!! ごらぁ!!」



「「はぁ――……」」



 また始まった。


 藍色の髪の女性と、深緑の髪の女性が共に巨大な溜息を吐き尽くし。喧噪を繰り広げる二人に対して女性らしからぬ視線を向ける。



 藍色が黒を掴み、深緑が深紅を掴み。


 双方、手厳しい言葉を与え。漸く出発に至ったのだった。



最後まで御覧頂き、有難う御座いました。


本来であれば謁見までと、考えていましたが……。大変話が長くなるので区切らせて頂きました。


申し訳ありません。



そして。


ブックマークをして頂き、有難う御座いました!!


本当に嬉しいです!! 執筆活動の励みになります!!

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