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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第五十二話 報酬は素敵な笑みで

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 人の文化の鼓動が一切感じられぬ自然の中から久し振りに文明が跋扈する街に帰って来ると安心という感情よりも辟易という感情が心に生まれてしまう。


 視線を何処に送っても人、若しくは大蜥蜴が視界に入り。本日もそれぞれが文明の一端を担う為の行動を起こしていた。



「ねぇ……。これちょっと高く無い??」


「いやいや!! これが相場だよ!!」


 ある者は貨幣を消費して物を買い。


「……」


 ある者は知識を高める為に本を読み。


「ラララ――ッ。そうさ、俺達は今日という日を大切にして生きて行くのさ――っ」


 またある者は文明を更に昇華させようとして微妙に音程のずれている歌を奏でている。


 知識と感情を持ち合わせた生命体が一堂に会すると何故こうも鼓膜が困惑する轟音を奏でるのだろう??



「ちっ……。鬱陶しいな」



 相棒の機嫌が悪くなってしまいますので、もう少し慎ましい文明行動を心掛けてくれれば幸いで御座います。



「まぁそう言うなって。人が集まる事によって経済と文化は発展して行くんだからさ」


 王都の南門から入り、街の主大通りを北上しつつ大変不機嫌な相棒の機嫌を少しでも良くする為にありふれた理由を述べてやる。


「だとしても限度があるだろ、限度が」


「俺を睨んでも駄目だからね?? あ、ここを曲がりますよ――」



 悪鬼羅刹も慄く目力で俺を睨む彼を宥めて静寂が漂う裏通りへと進む。



「ふんっ。俺としてこっちの道の方が好ましいなっ」



 人口密度が低い場所で生まれ育った彼が満足してくれる静けさの裏通りに入ると途端に恐ろしい目力が喪失。


 いつもの眉と目の角度に戻ってくれた。


 まぁ、それでも十二分に鋭い眼をしていますけどね。



「依頼主に依頼成功の直筆の署名を貰ってシンフォニアに報告するのだったな」


「そ――そ――。その為に裏通りに入ったんじゃないのか」



 成功報酬として金貨二枚、そしてぇ自爆花の種子を渡せば更に金貨二枚も貰える超美味しい仕事だったのです!!


 まぁそれなりに危険な橋を渡りましたけども……。


 失った生活雑貨並びに俺の治療費でどれだけ出費を抑えられるのか、そこは主婦の力の見せ所さっ。


 出費を抑え、浮いた分はこれからの活動費に回そう。


 嫌らしくも必要不可欠な銭勘定を頭の中で浮かべつつ静けさが漂う裏通りを進んで行くと件の家が見えて来た。



「ちわぁ――っす。御届け物を届けに参りました――」



 食料品を届ける出前さん宜しく普段通りの声を上げて扉を叩くと。



「――――。お、お帰りなさい!! 生きていたんですね!?」



 けたたましい足音が聞こえたその数秒後に無言を貫いていた扉が勢い良く開かれ、驚きを隠せないといった顔のギュルズさんが現れた。



「御蔭さんで生き永らえていますよ」


「そ、そうですか!! 御無事で何よりです!! それで!? 自爆花の実は採取出来ましたか!?」


 俺達の様子を労わるのもそこそこに早速本題へと入る。


「えぇ、死ぬ思いをして採取出来ましたよ??」


 今も腰にぶら下げている革袋をちょこんと叩く。


「本当ですか!? それでは中にお入り下さい!!」



 はいはい、そう焦らなくても報酬は逃げませんからねぇ――。


 大好物を目の前にした犬の様にハッハッと荒い息を続ける彼に招かれ、ちょいと埃っぽい香りが漂う家にお邪魔させて頂いた。



「いやぁ――……。自爆花の爆音が轟いた時はもう駄目かと思いましたよ」


 居間へと続く廊下を進みながら彼がそう話す。


「え?? この街にもあの爆音が届いたのですか??」


「そりゃあもう。ズゥゥンっと腹の奥に響く重い音が鳴りましてね?? 申し訳ありませんが依頼は失敗したものとして諦めていたのですよ。あ、お座り下さい」



 珍妙な物がそこかしこに点在する居間に到着すると前回と同じ位置の椅子に腰かけた。



「手順を踏めば爆発しないと言われていたのですが……。ダンさん達は負傷しながらもどうして帰還出来たのですか?? それとやけに早い帰還でしたよね??」



 あ、そっか。ギュルズさんはハンナが飛べるって事を知らなかったのか。



「実は、彼は白頭鷲の魔物でして。自分を背に乗せて飛ぶ事が出来るのですよ」


「ほぉ!! それはまた珍しい魔物ですね!! この場で拝見する事は出来ますか!?」



 しまった。


 彼は珍しい生き物若しくは物体に目が無かったんだ。


 ここでその姿を披露したら恐らく家屋の壁をぶち壊してしまう恐れがあるので適当に流して本題に入りましょう。



「それはまたの機会って事で。オホン……。手順は完璧に理解していましたので俺達は先ず自爆花と周囲を取り囲む環境の観察に数日間を費やしました。各花の特徴、特に俺達が発する音を感知しても振れ幅が小さな個体を見つけ出すのに苦労しましたよ」



 ふぅっと大きな息を漏らして話す。



「自爆花にこ、個体差があるというのですか!?」


 え?? そんなに驚く事なの??


「御存知なかったので??」


「勿論ですよ!! す、凄い……。これは新たなる発見ですよっ!!」


 鼻息を荒げると嬉しそうに喉をキュキュっと鳴らす。


「群生する中から特に反応が弱い個体を三つ見付けまして。一つ、二つの実を採取する事は出来たのですが。三つ目の採取作業に取り掛かった時、思わぬ邪魔が入りまして……」



 俺が思わぬ横槍が入った採取作業について説明し終えると。



「あ、あはは。それはついていなかったですね」


 ギュルズさんがはにかんだ笑みを浮かべてくれた。


「三つある内、二つは俺達が食しました。そして残る一つが……。これになります」



 革袋から自爆花の種子を取り出して机の上に置くと。



「ぉっ……。おおぉぉおおおお――――ッ!!!!」



 ギュルズさんが辛抱堪らんといった感じで椅子から立ち上がり、大きな尻尾を左右に勢い良くブンブンと振り始めてしまった。



「先程から良い匂いがしていましたが……。スンスンッ……。間近で嗅ぐともっと良い匂いがしますね!!!!」


「香りもいいですが味も絶品ですよ?? そうだろ?? 相棒」


 彼の右肩をトンっと叩いてやる。


「この世の甘さを全て詰め込んだ美味さだ。味も然ることながら味の変化にも驚かされたぞ」


「そうですか!! で、では……。早速……」



 ギュルズさんが口内にジャブジャブと溢れる生唾をゴックンと飲み込むと、自爆花の種子を恐る恐る摘まみ口の中へ迎え入れた。



「どうですか??」


「――――――。グスッ……。ほ、本当に。本当に美味しいですぅ……」



 縦に割れた怪しい瞳から大粒の涙がハラリと零れ落ち。私は今、世界最高の幸せを噛み締めていますよと恍惚な表情を浮かべた。


 大枚に目が眩んで請け負った仕事だけどさ。


 こうして喜んでくれるとこっちまで何だか幸せな気分になっちまうよ。



「ふふっ、それは良かったです。種子が消えるまで数時間掛かりますので決して噛み砕かないで下さいね??」


「勿論です!! あ、これは追加報酬とふぃてお受け取り下さい」



 彼が懐から金貨二枚を取り出すと机の上に置くので。



「有難う御座います。では、こちらに直筆の署名を頂けますか??」



 あの爆風の中でも何んとかギリギリ生存してくれた鞄の中から運良く生き残った依頼書を取り出して机の上に置いてあげた。



「ふぁい!!」



 彼が机の上に置かれている羽筆に墨を纏わせて己の名を書き記すと、それを受け取りボロボロの鞄の中に仕舞った。



「それでは俺達はシンフォニアに報告して来ますので失礼しますね」


「ふぉんとうにありふぁとう御座いました!!」



 いえいえ、どういたしまして。


 そんな意味を含ませた笑みを彼に送り、珍妙な物が置かれている家を後にした。



「ふぅ――……。後は報告だけだな」


 彼の家から出るとグゥンと背伸びしてそう話す。


「自爆花の葉は渡さなくても良かったのか??」


 あぁ、その事か。


「これはドナ達のお土産用にと思ってね。煎じて飲んだら凄く美味かっただろ?? 種子の味を教えてあげられない代わりに葉の美味さを感じて欲しくてさ」


「そうか……」



 ハンナが本当に、微かに口角を上げると大通りへと向かって歩み始めた。



「いつかドナ達の家に入った時にさ、御茶として出してくれればまた味わえるよな??」


 彼の背に続いてここまで喧噪が届く音を奏でている大通りへと目指す。


「貴様、まだ諦めていないのか??」


「あったりまえじゃん!! 近い内にぜぇぇ――ったいお邪魔してやるんだから!!」


「その下らない思考を真面な方向に伸ばせばもっと強くなれるのだがな」


「残念でしたぁ――!! そういう気は全くありませぇぇええ――ん」



 溜息を漏らして無感情で歩み続ける彼の背に抱き着いて叫んでやった。



 ん――……。ちょっと焦げた匂いが強いわね。


 まぁ無理も無い。爆発の余波を受け取ってから一日しか経っていないし、水浴びもしていないからね。



「止めろ!! 気色悪い!!」


「いっでぇなぁ!! こちとら怪我人なんだぞ!? もう少し労わる振りをみせやがれ!!」



 俺の体を引き剥がそうとする腕に必死に対抗して思いの丈を叫んでやる。


 そしてこの音が余程騒々しく聞こえたのだろう。喧しい音が奏でられる外を確認しようとして裏通りに建ち並ぶ家の窓がそっと開かれるが。


『あぁ、何だ。またあの人達か』


 脅威となり得ない俺達の戯れる姿を捉えるとそっと静かに窓が閉じた。


 そして俺達は表の大通りと何ら変わりない喧噪を撒き散らしつつ次の目的地へと進んで行った。


























 ◇




「はぁ――……」



 焦燥感とも憂鬱とも受け取れる吐息を吐いて宙を仰ぎ、天井の矮小な染みに視点を合わす。


 請負人達が活発に動き始める営業時間中なら決して取らないだらしない姿を見せるのには理由があるのですよ。


 そう、昨日この時間帯に轟いたあの重低音の所為だ。


 遠方から届いたお腹の奥にズゥンっと響く雷鳴によく似た音。


 最近、私の心をよく揺れ動かしてしまう男が向かった先にある森から発生したのは理解している。


 彼等の安否が未だに不明瞭だからこの気持ち悪い胸の中の渦が消えないのでしょうね。



 危険だから止めておけって言ったのにどうして向かっちゃったのかな――……


 目先の利益に囚われて死んじゃったら元も子もないじゃん。


 でも、強いハンナさんも居る事だし。余程の事が無ければ大丈夫だと思うけど……。



「どうしたの??」



 左隣。


 第一部の仕事を終えて随分と寛いだ姿のレストが私の方へ視線を送る。



「分かっているでしょ?? あの馬鹿達が心配なのよ」


「その結果はもう直ぐ分かるんじゃない?? ほら、ハンナさんは白頭鷲?? だっけ。その姿に変われるから直ぐに帰って来るって」



 ここまで爆音が届いたのだ。


 万が一、ハンナさんが庇いきれない程の強烈な熱波が発生したらどうなるのだろう??


 幾らダンの体が丈夫でもその威力に耐え切れず四肢が四方八方へと飛び散り、夥しい量の血液が爆心地に付着。


 残り微かなとなった彼の遺体は森の養分となり、彼は人知れずこの世と別れを告げるのだ。



「そうだといいんだけどねぇ……」



 適当に纏めてある書類の上に突っ伏し、己の心に浮かぶ言葉をそのまま吐く。



「今から休憩だし御飯を食べて気分を変えましょうか。彼等だけじゃないのよ?? 利用者は」


「分かってるよ」



 うっわ。


 今のくらぁい感じの声。何か嫌だな……。


 仲の良い友達に放ってはいけない声色が更に自分の気持ちを暗い気分にさせてしまう。



「不貞腐れても駄目だからね?? ミミュン、御飯は何にする??」


「ちょ、ちょっと待って!! この仕事を片付けてからじゃないと駄目だからっ!!」


「ふふっ、はいはい。それまでちゃんと待っているから……。あらっ??」



 扉が開かれる音が放たれるとレストが言葉を途中で切ってしまう。


 きっと利用者が時間帯を間違えて来ちゃったのでしょう。



「大変申し訳ありません。現在、受付は一時中断していますので」



 ほら、営業中の感じで話しているもん。


 顔を上げるのも面倒なので机に突っ伏したまま聞き耳を立てていた。


 ほら、さっさと帰れ。私達は疲れてんのよ……。


 昼ご飯を食べて昼からの業務に備えなきゃなぁ――……。




「――――――。こちとら死ぬ思いで帰って来たのに辛辣な言葉です事」


 こ、この声は!!!!


「ッ!!」



 私の鼓膜を震わせた嬉しい声色に反応して人生の中で一、二を争う勢いで顔を上げると思わず息を飲んでしまった。



「よっ。休憩中なのは分かるけどさ、あの二人を見習ってもう少し真面目に仕事に取り組んだら??」



 いつものやれやれといった感じのはにかんだ笑みは少しだけ疲労の色が見え、黒色の髪には煤汚れが目立つ。


 冒険者丸出しって感じの機能性に富んだ服装は所々破け、そこから覗く肌は若干赤らんでいる。


 煤の黒が目立つ顔、まるで戦地から帰って来たかのような服装だが彼の目は優しさに溢れていた。



「う、五月蠅いわね。ちゃんと仕事してたもん……」


 彼の優しい目からすっと視線を外す。


「怪しいものだな。ほら、依頼完了の署名を貰って来たぞ」


 背の高い受付所の向こう側から依頼書が下りて来るが。


「残念でしたぁ――。規則で時間外受付は御断りしているんですぅ――!!」



 思いっきり舌をベェっと覗かせて拒否してやった。



「一時間後にまた戻って来い」


「そんな事言ってもいいのかなぁ――?? ドナ達にお土産持って来てあげたのにぃ」


「早く出しなさいよ!!」



 お土産。


 その甘い誘惑に負けてしまい思わず席から立ち上がってしまう。



「ほら、自爆花の葉だよ」


 彼が腰にぶら下げている革袋から沢山の葉を受付所の上に置くと途端に心が陽性な感情に包まれてしまった。


「うっそ!! これ一枚で銀貨数枚する奴じゃん!!」



 市場や名の知れな老舗でたまぁに売りに出されると瞬く間に売れ切れてしまう逸品だ。


 それがこんなに沢山……。



「本当は種子を持ち帰って来たかったけどさ。依頼人がどうしても欲しいって言ってから……。その代わりじゃないけど」


「あ、有難う。貰ってあげるわ」



 彼等が文字通り死ぬ思いで勝ち取って来た戦利品を受け取ると静かに椅子に腰かけた。



「はい、じゃあ依頼の報酬を受け取りましょうかね!!」



 ダンがニッコニコの笑みで私を見下ろすが、その笑みが私のイケナイ何かを刺激してしまった。



「残念でした――。お土産は受け取るけど受付は出来ません――」


「ふ、ふざけんなよ!! だったら何でお土産を受け取ったんだよ!!」


「それはそれ、これはこれ。ちゃんと条件を提示しなかったダンが悪いのだっ」



 胸をムンっと張り、勝ち誇った笑みでそう言ってやる。



「はぁ……。じゃあ宿屋で休んでからもう一回来るよ」


「そうした方が賢明かなっ。酷いナリだから汚れを洗い落として着替えて来い」


「融通が利かない店だよなぁ。そうは思わないかい?? 相棒」



 ダンの隣でいつも通り静かに佇むハンナさんにそう問う。


 あはっ、ハンナさんもかなり汚れているな。ダンと一緒に危険な冒険をして来たから汚れちゃったのでしょうね。



「思わん。彼女達は規則に従っているのみだからな」


「うっわ、嘘くせぇ。絶対そう思っていないだろ」


「好きに考えろ。では失礼する」



 ハンナさんが中々帰ろうとしないダンの襟をギュっと掴み、そのまま出口へと向かう。



「放せ!! 自分一人の力で歩けるわ!!」


「あはは!! ダン――!! またね――!!」


 ミミュンがケラケラと笑って彼等の背に向かい手を振り。


「数時間後にまた会いましょうね」


 レストが静かに笑みを漏らして彼等を見送り。


「ダン!! 今日の夜は空けておいてよ!! あんたの報酬で馬鹿みたいに肉を食べるんだから!!」



 私はさり気なく食事の誘いの言葉を送って別れを告げてあげた。



「ふ、ふざけんな!! 俺達が死ぬ気で勝ち取った金をそう易々と……」


「失礼したな」


「待て!! 俺はまだまだ言い足りな……」



 ふふっ、去り際もダンらしいや。


 彼等が店内から立ち去ると先程までとは打って変わって陽性な感情が心にいぃっぱい広がる。


 私の心をここまでキャアキャア五月蠅くしてしまうとは、罪な奴よのぉ……。そんな罪深い奴にはそれ相応の罰を与えねばならん!!


 今日の夜は沢山食べて、沢山飲むぞっ!!!!



「良かったわね。二人共無事に帰って来てくれて」


 レストが彼等の後ろ姿を見送ると安堵の吐息を漏らす。


「ダンは兎も角、ハンナさんが居れば大丈夫だって思っていたしっ」


「あはは。強がりもそこまでいくと何だか可愛く見えてくるわね」



 こ、このっ!! 誰が強情っぱりだ!!



「さっきからチクチクと攻撃してきてぇ……。我慢強いドナちゃんでも限界があるんだぞ!!」



 椅子から堪らず立ち上がりレストの後方から襲い掛かってやった。



「きゃはは!! ちょっと!! 胸を掴まないで!!」



 す、すっごぉい。相変わらずの質量に思わず指先と手の平がビックリしちゃった。



「レストがごめんなさいって言うまで絶対離さないもん!!」


「分かった!! 私が悪かったから許して!!」



 静謐が漂う室内にうら若き乙女達の燥ぐ声がこだまする。


 女三人寄れば姦しいと言われている通り、もう一人の受付嬢もこの騒ぎに参戦するかと思いきや。



「はわぁ……。これが自爆花の葉かぁ。きっと天にも昇る美味しい御茶が飲めるんだよねぇ……」



 喧噪を放つ二人を他所に、彼から贈られた品を大切に手に持ち想像に耽っていた。


 幻の味に早くも口内には唾液が溢れ始め彼女はそれが零れぬ様に口を真一文字に閉じた。


 しかし、彼女の小さな口内では収まり切らない量の唾液が丸みを帯びた唇の端から一筋の線となって零れ落ちてしまった。



「こ、このぉ!! お返しだぁ!!!!」


「ちょっ!! キャハハ!! 何で脇腹を擽るのよぉ!!!!」


「う、う――ん……。一枚で何杯の御茶が飲めるんだろう?? 後で詳しく調べておかなきゃっ」



 喧噪と妄想が繰り広げられる室内は営業時間と何ら変わりない混沌と無秩序を生み出す。


 彼女達は時間が経つのも忘れ思い思いの時間を過ごしていたが……。



「やっばい!! 残り三十分しかないじゃん!!」


「急がないとお昼御飯が食べられなくっちゃう!!」


「ちょっと二人共!! 財布を忘れているわよ!!!!」



 休憩時間が残り僅かであると理解すると昼ご飯を求めて血相を変えて扉から飛び出て行く。


 そしてその様を見届けた大蜥蜴達がやれやれといった感じで溜息を漏らし、彼女達は文明が蔓延る巨大な街の歩道をけたたましい足音を奏でて目的地へと向かって駆けて行ったのだった。




お疲れ様でした。


この後、日常パートが始まりそれが終了して次の依頼が始まります。



先程、執筆しながら井上尚弥選手のスーパーバンダム級のタイトルマッチを拝見させて頂いたのですが……。


びっくりする程に強かったですね!!


井上選手も無敗、そして対戦相手も無敗。無敗同士のボクサーが戦う姿は胸に突き刺さるものがありました!!


階級を上げての初戦がタイトルマッチ。


階級の壁は思いの外高いと聞きますから一戦、二戦経験してからの方が良いかなぁっと思っていたのですが彼に階級の壁というのは存在しなかったみたいですね。


本当にいい試合を見せて貰いましたよ!!



そしてブックマークをして頂き有難う御座います!!


夏バテ気味の体に嬉しい知らせとなり、執筆活動の励みとなりました!!!!




それでは皆様、お休みなさいませ。

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