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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第四十四話 職業斡旋所 シンフォニア その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 我が相棒とこれからの大雑把な行動についての会話を続けつつ、何気なく周囲へ視線を送り続けていると漸く俺達の番が回って来た。



「はいっ!! 次!!」



 そこまで怒鳴らなくても聞こえていますよ――っと。そして可能であれば既に喧噪によって鼓膜が辟易しているのでもう少し優しく声を掛けて下さいまし。



「お待たせ、書いて来たよ」


 相も変わらず仕事に勤しむ受付嬢のドナへ二枚の新規申込書を手渡してあげる。


「確認するからちょっと待ってて。う――ん……。うんっ!? あんた達、アイリス大陸から渡って来たの??」



 出身欄の項目に目が留まると彼女のオレンジ色の瞳がきゅっと見開かれる。



「そっ。ながぁぁい旅路で本当に疲れたよ」


 頂いた帆船の難破、恐ろしい野生動物達との戦い、そして五つ首との死闘。


 ここに至るまで本当に色々あったのです。


「呆れた……。向こうと国交がない訳じゃないけど馬鹿みたいに長い航海までして渡って来るかね」


「冒険が大好きなのさ。そうだろ?? 相棒っ」



 ハンナの肩に己の拳をトンっと当てて言ってやる。



「止めろ、気色悪い」


「ふふっ、二人共同い年だし。仲が良いんだね。職業は……。ダンが……。どっち??」


「俺がダンで、こっちがハンナね」


「ダンが農業従事者、ハンナが警備職か。うんっ、まぁ良いでしょう。じゃあ入会金として一人銀貨三枚頂くよ」



 あはは、流石に無料で受け付ける訳ないよな。


 懐から現金を取り出して背の高い受付所に置いてあげた。



「はいっ、これで受付は完了しました。そしてこれが……。シンフォニアの請負人であるって証拠の銅板ね」



 ドナが手慣れた手付きで現金を受け取り、その返しで大人の手の平大の大きさの銅板を受付所に置く。



「これは??」


「あそこの掲示板に貼り付けてある仕事を請け負い、依頼人と会う時にその銅板を見せればシンフォニアから来た請負人だって分かるでしょ??」



 あぁ、そういう仕組みね。



「どんな仕事を請け負うのかはダン達が自由に決めていいよ。受付は基本的には朝の九時から午後一時までの四時間ね。仕事の報酬の受け取りは午後二時から六時までの間。依頼書に依頼人直筆の署名を貰う事を忘れずに。これまで何か質問は??」


「依頼によって報酬額が変わるんだよね??」



 一気に捲し立てる様にこの店の仕組みを話し終えた彼女の目を確と見つめて話す。



「その通りっ。簡単な仕事は安くて、難しい仕事は高い。中には命を落としてしまう様な危険な仕事もあるから注意する様に。それと……。最初はコツコツと依頼をこなしていって依頼人達との間に信頼関係を構築する事を勧めるわ」



「それは何故??」



「ある程度顔と知名度が広がるとあそこに掲載してある依頼じゃなくて、ダン達個人に依頼が舞い込む様になるの。個人を特定する依頼は割高でね?? その分報酬も上乗せするって仕組みなのよ」


 ほぅ、それは良い事を聞いた。


「了解。それじゃあ明日から真面目にコツコツと仕事をこなしていくとしますかね」


「それが賢明な判断かな。帰りに掲示板を見て行ったら??」



 朝一番で来てむさ苦しい大蜥蜴達に囲まれて嫌な汗を流しながら迷うより、今の内に仕事を決めておいた方が無難か。



「そうしようかね」


「色んな仕事があるから飽きはしないと思うよ。なんせうちの斡旋所はどこぞのインチキ斡旋所と違って大変真面な仕事しか扱ってしませんからっ!!」



 胸をムンっと張って誇らし気にそう話す。


 うふっ、可愛らしい標高の双丘がプルンっと揺れましたね?? 


 ゴツゴツした大蜥蜴ばかりの室内に突如として現れた目の保養に心が癒されましたよっと。



「それって……。ライツェ??」


 俺の口からこの単語が出て来るとは思わなかったのだろう。


「……っ」



 うっそ、何でコイツがそんな事を知っているのって顔を浮かべていますもの。



「詳細は言えないけどぉ、まぁそうかもね」


「あはは。この斡旋所にはこれからお世話になるし、そっちの店には足を運ばない様にしましょうかね」


「それが賢明だよ。何せ向こうは……」



 ドナと慎ましくも楽しい会話を続けていると……。



「おい、人間。邪魔だぞ」


 何故か俺の体が物理の法則に反してふわぁぁっと宙に浮かぶではありませんか!!


「あいだっ!!」



 一体の大蜥蜴が逞しい腕力で俺の体を持ち上げ、まるで不要な塵を投げ捨てるかの様に無造作に放ってしまう。


 いきなり持ち上げて何すんだよ……。俺は慎ましい会話を続けていただけだってのにっ。


 大変不機嫌なお尻ちゃんを労わりつつ静かに立ち上がると、不愛想な二人の大蜥蜴ちゃんが列に割り込みドナと相対している姿を捉えた。



「「「……ッ」」」


 割り込みに苛立ちを募らせた大蜥蜴ちゃん達が憤りの目を乱暴者の二人に向けるが。


「あ?? 何見てんだ」



 強面二人組のたった一度の睨みで黙ってしまう。


 んもう……。不良ちゃんってのはどの世界にも居るのよねぇ。



「おい、女。依頼をこなして来たぞ」


 黒ずんだ外蓑を被った大蜥蜴がドナに向かって依頼書を乱雑に投げ捨てる。


「依頼者直筆の署名を確認しますので少々お待ち下さい」


「ちっ、早くしろよ。ウスノロが……」



『ウスノロ』



「……ッ」



 その言葉を聞いた刹那にドナのこめかみにミチッと太い血管が浮かぶが、そこはやはり大人の対応を見せるべきだと判断したのでしょう。


 込み上げて来る怒りを必死に宥めて粛々と仕事を進めて行く。



「――――。あ――、お客様。大変申し訳ありませんが、報酬はお支払いできませんねぇ」


「「はぁっ!?」」



 思いがけない答えが帰って来て驚いたのだろう。


 二体の大蜥蜴の尻尾が勢い良く天井へ向かってピンッ!! と立ち。そして仲良く声を合わせて驚きの声を上げた。



「ふざけんなよ!? 俺達はちゃんと依頼された場所の掃除をしてきたんだから!!」


「あぁ、そうさ。このクソ暑い中滞りなく仕事を完遂したんだぞ!?」


「ではお客様。我々に依頼された依頼主の直筆の署名と、今し方受け取った依頼書に記載されている依頼主の直筆の署名の『筆跡』 を比べて下さい」



 あぁ、そういう事か。


 きっとアイツ等は仕事をするのが面倒で、自分達で依頼人の名を書いたのだろう。


 ちょっと考えれば直ぐバレるってのに……。



「そ、それがどうしたんだよ!! 俺達はちゃんと仕事をしたんだぞ!! 金を出せ!! 金を!!」


「渡せませんね。これは規則ですからっ」



 ハハ、先程までの怒りが愉快な感情に上書きされた様だ。


 ドナの顔がしてやったりって顔になっているし。



「テメェ……。ラタトスクの分際で俺達大蜥蜴に歯向かって只で済むと思ってんのか!? アァッ!?」



 ラタトスク??


 初めて聞く単語云々よりも一触即発の不穏な空気が高まって行く事に不安を覚え、直ぐに行動出来る様に体勢を整える。


 そして血気盛んな相棒も大好きな雰囲気を捉えると静かに右の拳を握り締めてその時に備えた。



 お、おいおい。お前さんが好き勝手に暴れたらこの大蜥蜴ちゃん達は向こうの世界に旅立っちゃうからね??


 頼むから抑えてくれよ??



「はぁ?? 私がラタトスクだからって何なのよ。少数の種族を虐げて何か楽しいの??」


「生意気な口を利きやがって……。ぶん殴らねぇとその口は閉じないのか!?」


「お呼びじゃないのよ。あんた達みたいなクソ雑魚蛆虫は」


「あぁっ!?!?」



 一体の大蜥蜴が激昂すると背の高い受付所の向こう側に居るドナの胸倉を掴み上げ、無理矢理椅子から立たせてしまった。



 こりゃいかん。か弱い女性を守る為にちょいとお節介をするとしますか……。



「おっと……。兄ちゃん達、そこまでだって。怒るのは分かるけどさ、規則は守らないと」


 ドナの胸倉を掴む腕にそっと右手を添えて制止してやる。


「うるせぇぞ!!!! 外野は引っ込んでろ!!」



 彼女から手を離すと鋭い爪が備わった右手が俺に向かって襲い掛かって来やがった!!



「おわっ!?!?」



 あっぶねぇ……。少し反応が遅れていたら爪で皮膚が切り裂かれていたぞ。



「なぁ、話を聞けって。お前さん達だけじゃなくてここは皆が利用する施設なんだ。一人の勝手が他の人の自由を奪うんだぞ?? それを先ず理解してだな」


「そんな事知るかよ!! 俺達は俺達のしたいようにするんだ!!」



 す、少しは人の話を聞きなさいよね!!!!


 傍若無人な拳が上空から襲い掛かり、それを半身の姿勢で躱すと再び距離を取った。



 さてと困った。


 怒り心頭の状態だと説き伏せるのには馬鹿みたいに時間が掛かるし。それに例えこちらが下手に出て話し出したとしても聞く耳を持ってくれないでしょう。


 有無を言わさずぶん殴ってもいいがここは他人様の縄張り。事を荒立てて良い事は全くないからなぁ……。


 相手から距離を取り、幾つもの選択肢の取捨選択に苛まれているとこの状況を静観していた相棒が静かに口を開いた。



「ふぅ――……。貴様等……。さっきから黙って見ていれば……」



 やっべぇ!!


 傲慢な二人の態度が横着な白頭鷲ちゃんの怒りの沸点を越えさせちゃった!!



「あぁ?? 何か用か」


「貴様等の様な屑に用はない。死にたく無ければ即刻この場から立ち去れ」


「「……ッ」」



 はい、大変不味いです!!


 この場所が血の海に変わる前に何とかしないと!!



「ドナさん!! 正当防衛としてこの二人を制止する許可を頂けますか!?」


「おうっ、ボッコボコのギッタンギタンにしてやれ」



 まぁっ!! 女の子が放つ台詞じゃあありませんよ!?


 だが、気に入った!!!!



「ハンナ!! 絶対殺すなよ!?」


 背負っていた背嚢を乱雑に地面の上に放ると今にも襲い掛かって来そうな大蜥蜴に対して臨戦態勢を整えた。


「ふんっ、加減が難しそうだな」


「うるせぇぞ!! チビが!!!!」



 おっしゃああ!! 楽しい喧嘩の始まり始まりぃ!!!!


 掛かって来なさい!! 無駄にデケェ大蜥蜴ちゃん!!



「おらぁっ!!!!」


「甘いっ!!」



 真正面から何の工夫も無く突撃して来た大蜥蜴の鋭い拳を左手の甲で往なし、相手の懐に容易く侵入して取り敢えず挨拶代わりの一撃を見舞ってやった。



「……」



 う、うん。ちょっとは効いているみたいだけど、然程効果は与えられていないようですね。



「人間如きが俺に勝てると思うなよ!?」



 俺から距離を取ると巨躯をクルっと回転させて逞しい筋力がみっちりと積載されている尻尾を薙ぎ払って来やがった。



「うおっ!?」



 上半身を逸らして野太い尻尾の薙ぎ払いを回避。


 空気が吹き飛ぶ生鈍い音がその威力を物語り、今の一撃を食らえばただでは済まないと教えてくれた。



 今の攻撃が最大の攻撃範囲、か。


 逞しい巨躯から繰り出される攻撃力は並以上、攻撃の間合いは俺よりも広い。そして先程ブッ叩いた拳の感触からしてそれなりの装甲を有している。


 普通の人間じゃあ逆立ちしても勝てない力を有しているが、こちとら相棒の大陸でおっそろしい先生達に鍛えられたんだ。


 ここで引き腰になっていたら先生達に怒られてしまいますよっと。


 単純な膂力や攻撃の間合いは劣るが、速さには俺に分がある。これを起点に活路を見出すか。



「良く避けたな?? チビ」



 幼い頃からゴロツキ共と共に育って来たんだ。啖呵を切る程度じゃビビらねぇよ。


 それに口喧嘩はこうするのさっ。



「うっせぇぞ、デカブツ。口から竹串をブッ刺して干物にして食っちまうぞ」



 さぁさぁどうだい?? ひ弱な人間に罵られると怒りが込み上げて来ますでしょう??


 怒り狂って襲い掛かって来なさいっ。



「ク、クソがぁぁああ!! 死ねぇぇええええ――――!!!!」



 はい、予想通りの行動ですね!!


 憤怒で燃え盛る瞳を浮かべ、怒りに身を任せて何の工夫も無しに突撃して来やがった。



「おらぁっ!!」


 木の壁程度なら容易く打ち抜くであろう右の拳が随分と高い位置から俺に向かって降り注ぎ。


「ぜぁぁああ!!!!」


 前蹴りに異様に固執する火食鳥のイロン先生から見れば。



『ぜ――んぜん駄目ですっ。もう一度基礎からやり直して来なさいっ』



 お叱り処か落第の声を頂いてしまう遅い蹴りが放たれ。



「ふんっ!!!!」


 俺の心に多大なるトラウマを与えてしまった雌の大鷲のシェファの半分以下の速度の昇拳が俺の顎を捉えようとせり上がって来る。



 その一つ一つを親切丁寧に躱し、乾坤一擲の時を待つ。



 はぁ――……。


 あの五つ首との死闘に比べればコイツ等との喧嘩は……。そうだな、五歳児を相手にしている様な児戯って所か。


 身の毛もよだつ殺気も感じ無ければ、数舜の判断の遅れが死に繋がる攻撃も見当たらない。


 無駄に戦いを長引かせても他のお客さん達の迷惑になるし……。そろそろ決めちゃいますかっ。



「死ねぇぇええ――!!」


 おっしゃ!! 頂きぃぃいい!!!!


「ふんっっ!!!!」



 右の拳を俺の体に当てようとして大きく振りかぶった隙を狙い。瞬き一つの間に接近すると渾身の力で右の脇腹に拳を当ててやる。



「ぐはっ!?」



 強固な鱗に覆われているがどうやら弱点は俺達人間と変わらない様だな。


 予想だにしなかった強烈な一撃を食らうと、随分と高い位置にあった頭が漸く雷撃をぶち込める高さまで降りて来やがった。



 さぁって……。これでぇ……。止めだ!!!!



「お客様――!! 当店はお客様の様な不躾な態度は御法度なのですぅぅうう!!!!」


「うぎぃぃあああああ――――!!!!」



 叩き込み易い位置まで降りて来た大蜥蜴の顎に渾身の力を籠めた右の拳を思いっきり捻じ込んでやった。



 く、くぅ!! 快感ぅ!!


 拳にジィイんと響くこの堪らない感触が最高だ!!



「ハンナ!! こっちは終わったぜ!!」



 完全完璧な勝利を収めて相棒の方へ振り返ると。



「あぁ、遅かったな」


「ぐ、ぐぇぇ……」



 タコ殴りなんて生温い。拷問よりも酷いお仕置きを与え終えた相棒の姿を捉えてしまった。


 ハンナが大蜥蜴の胸倉を掴んだまま一切の容赦なく顔面を殴り続けていたのか。彼の顔はブクブクと膨れ上がり、口からは大量の白い泡を吐きそして両目は裏返って真っ白になっていた。



 ひ、酷い……。何もそこまでしなくてもいいのに……。



「こ、殺していないよね??」


「む?? 安心しろ。丁度良い塩梅で痛めつけた程度だ」



 君の塩梅と俺の塩梅には相当な差があると今ハッキリしましたよ……。


 ハンナが気を失った大蜥蜴の胸倉を乱雑に放すと。



「「「ウォォオオオオ――――!!!!」」」


 室内に大歓声がこだました。


「兄ちゃん達!! 滅茶苦茶強いな!!!!」


「あぁ!! すげぇぞ!!」


「ど、どうも……」



 突如として浴びせられた歓声にどう応えたらいいのか分からず、取り敢えず周囲に小さく頭を下げておいた。



「テ、テメェ。よくもやりやがったな……。次会った時、どうなるか覚えていろよ??」


 痛そうに顎を抑えて立ち上がった大蜥蜴が憎悪に塗れた瞳で俺を見下ろす。


「あ?? 次会った時?? そんなの面倒くせぇから今やり返して来いよ」


 負け犬特有の台詞を吐く大蜥蜴を前にして堂々と言ってやる。


「こ、この野郎!! 余程痛い目に遭わないと理解出来ないらしいな!!」



 全く……。これだから田舎者は扱いに困るのですよ。



「うるせぇなぁ。いいか?? お前さんの置かれた立場を俺が優しぃく教えてやるから耳をかっぽじってよく聞け」



 呆れた溜息を長々と吐き、喧嘩で高まった熱をちょいと冷まして口を開いた。



「お前さんは俺達と同じくこの街出身じゃなくてよその街の出身だろ?? そのよそ者が我が物顔で街を練り歩き、更に地元で有名なお店で事を荒立ててしまった。大多数の反感を買ったよそ者が辿り着く末路はいつも同じ……。そう、村八分に遭っちまうのさ」



 この施設をよく利用する者、或いは地元の奴なら依頼人から依頼完了の直筆の署名を頂く事は周知の事実だ。


 まぁそれを知っていて敢えて面倒という理由だけで虚偽の名を記す地元の人は一定数存在するかも知れない。しかし、地元出身の奴なら周りに敵を作ろうとは思わないだろう。


 住み難くなるし、肩身の狭い思いをして過ごそうとは考えないからね。



「……」



 俺の言葉を受け取った無頼漢がゴックンと生唾を飲み込んで周囲を見渡す。



「「「……ッ」」」



 割り込みをされて苛立ちを募らせる者、自分達の縄張りで好き勝手に暴れ回られて憤りを隠せない者。



「え、え、えへへ。ミミュンちゃん、今日こそは俺とデートしようよっ」


「そ、それはちょっとぉ……」



 一部の変態ちゃんを除き。


 シンフォニアに居るほぼ全員が無頼漢共に対して大変宜しく無い感情を含めた瞳で睨みつけていた。



「きょ、今日は見逃してやる!! ほら!! 行くぞ!!」


「う、うぅん……」



 白頭鷲ちゃんにボッコボコにされて気を失っている大蜥蜴を抱えて負け犬が店を出て行くと。



「わはは!! 兄ちゃん達!! 良くやったぞ!!!!」


「あぁ!! 本当にびっくりしたぜ!!!!」


「いや――!! スッキリした!! 有難うよ!! いけ好かない奴をぶちのめしてくれて!!」



 室内が歓喜の声でワッと湧き、ちょいと饐えた匂いを放つ大蜥蜴ちゃん達に囲まれ好き勝手に撫でられてしまった。



「そ、そりゃどうも!! ってか!! 取り囲むんじゃねぇ!! 受付がまだ終わっていないの!!」



 俺の頭を良い様に撫でる無駄にデカイ手を払い除け、狭い隙間に懸命に体を捻じ込んで受付所へと舞い戻った。


 はぁ――……。暑苦しかった……。



「お待たせっ。いきなり暴れて申し訳ない」


 ニッコニコの笑みを浮かべているドナの顔を確と捉えて話す。


「有難うね、私の代わりにあのクソ野郎共をぶっ飛ばしてくれて」


 あらまぁ……。若い女の子が使う言葉じゃありませんよ??


「向こうが先に手を出して来たからね。正当防衛さ」


「物凄くスカッ!! としたわ。いやぁ――。ほら、私は一応この店の受付の仕事をしている訳じゃん?? 皆の手前、派手に暴れる訳にはいかなかったのよ」



 丸みを帯びた片方の瞳をパチンっと瞑る。



「えっと……。じゃあここじゃない他の場所だったら手を出した、と??」


「あったりまえじゃん。私を女だと嘗めて、しかも!! 種族差別する奴には一切の容赦はせん!!」



 お、おぉ。左様で御座いますか。


 イロン先生然り、シェファ然り。昨今の若い女性は物凄く腕に自信があるようで御座いますね。



「種族差別?? それってさっき言ってた……」


「雑談はここでお終い!! まだまだ仕事が残っているからそこを退きなさい」



 ドナの言葉を受けて何気なく後ろを振り向くと、随分と客足は遠退いたがそれでもまだ数十名を超える利用者さん達が列を成していた。



「了解。それじゃ……。この後時間あるかい??」



 ちょいと口角を上げて大変柔らかい口調でお誘いの言葉を放つ。



「受付嬢を口説くのは規則違反なのよ??」


 あらまっ、残念。簡単に振られちゃいましたね。


「そっか、じゃあ俺は……」



 今晩の宿を探しに踵を返そうとするが、ドナがちょいちょいと手招きをするので右耳を傾けてやる。



『受付嬢としての仕事をしている時は駄目だけど。仕事が終わったら別に遊んでもいいんだからね??』



 ははぁん。成程ぉ……。



「今晩の宿を探す為に街の中央で無意味な屈伸運動を続けていようかなぁっと!!」


「ハハ、馬鹿丸出しの声を出さなくてもいいって」



 呆れた笑みを浮かべる彼女に手を上げて一時の別れを告げてやる。


 さぁってと!! これらから楽しいお出掛けが待ち構えているのだ!!


 彼女と過ごす熱い一夜を想像すると俄然やる気が湧いて来ますよ!!


 入店時とほぼ同じ様な大変軽やかな歩法で喧嘩の熱気が未だ冷め止まぬシンフォニアを後にしたのだった。




お疲れ様でした。


さて、こっちの大陸の御話はこのシンフォニアを起点として御話が進んで行きます。中には使用しない話も出てきますが基本的には三人娘さん達から御話を頂き、それをこなして行くって感じですかね。




本日も暑かったですよね……。まだ夏が始まったばかりなのにもう寒い冬に恋焦がれています。


今日の夕食は、最近は冷たい物ばかり食べていたので黄色い看板が目印のカレー店へ赴きチキンカツカレーをがっつり食べて来ました!!


程よく汗を流して食すカレーは中々に美味しかったです。スタミナもついたので今日はもうちょっとプロット書いてから眠ろうかなと考えております。





沢山のいいねをして頂き。


そしてブックマーク並びに評価をして頂き有難う御座いました!!!!


皆様の期待に応えられる様、これからも頑張って連載を続けさせて頂きますね!!!!



それでは皆様、引き続きよい週末をお過ごし下さいませ。

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