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今日も今日とて、隣のコイツが腹を空かせて。皆を困らせています!!   作者: 土竜交趾
過去編 ~素敵な世界に一時の終止符を~
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第十六話 勇気の印

お疲れ様です。


本日の投稿なります。




 浴びる様に酒を飲んだ翌日、大変重たい風邪を罹患して目覚めた朝、前日の疲れが残ったまま夜中にふと起きて感じる気怠さ等々。


 今現在、この体には酷過ぎる大不調がこれでもかとすし詰め状態で詰め込まれており。人生で一、二を争う異常事態を一刻でも早く治そうとしてベッドの上で安静にしていた。


 体中の関節が熱を帯びて痛み、口を開けて大きく呼吸すれば脇腹ちゃんが。


『もう少し静かに呼吸をしてっ!!』 と。


 骨が軋む痛みを発生させ、体全体に重たい倦怠感が広がっていた。



 あの馬鹿げた力を持つ暴兎と対峙していたのだ、無理も無い。寧ろこの程度の怪我と疲労感で済めば御の字といった所でしょうね。



「ピッ??」

『大丈夫??』



 ちょいと硬いベッドの上で横たわり、あの激戦を思い出しながら何となく微妙に汚れた天井を眺めていたら視界の端からピョン太がヒョコっと現れて小さな鳴き声を上げた。



「里の人が治療してくれているし、御蔭さんで順調に回復しているよ。心配してくれて有難うな??」


 フワッフワの黄色い毛並で包まれた小さな頭を指で撫でてやる。


「ピピッ!!」

『別に心配した訳じゃないからな!!』



 鳴き声は辛辣だがどうやら撫で加減は気に入ってくれたようだ。


 俺の指を跳ね除ける事無く、静かに目を閉じて気持ち良さを享受していた。



「しっかし……。治療を受け続けるってのも暇だよなぁ……」



 暴兎を倒した後、森を出てあの阿保駝鳥に跨って帰って来ようと画策したが……。


 肝心要の大馬鹿駝鳥は己の任務を忘れて地平線の彼方へと向かって出掛けてしまった。


 途轍もない疲労感と痛みによって気を失い、目が覚めたらこの何の変哲もない平屋の室内であった。


 俺がどうやってここまで帰って来れたのか。その訳を軍鶏の里の長であるベルナルドさんに問うと。



『偶々、偶然、超偶発的に戦士ハンナが南の森の上空を飛んでいた所。ダン達を発見したのだ。傷付き倒れたお前を背に乗せこの里に運びそして治療を開始した。怪我が治るまで二、三日療養に励むといい』



 海面を激しく跳ねる飛び魚の様に視線を右往左往させつつど――頑張っても無理がある説明をしてくれた。



 あの横着な白頭鷲の魔物さんはぶっきらぼうな態度とは裏腹に俺達の心配をしていたのだろう。そうじゃなきゃ偶然俺達を発見出来る訳ないし。


 バレない様に俺達の跡をつけていた彼の姿を想像するとちょいと笑えちまうな。




『う、む……』



 相手は軍鶏の里の猛者を何人も屠って来た傑物。奴等には荷が重いのでは??


 強さは大人以上だが、まだまだケツの青い三歳児を引き連れているあの馬鹿の実力では討伐は無理であろう。


 いざとなったら俺が前に出て……。いやいや、これはあくまでも軍鶏の里の掟。


 俺が手を出すのはお門違いか??



『えぇい!! どうしたらいいのだ!!!!』



 手を貸したくても貸せないもどかしさで苦悩する相棒の苦悶する姿を頭の中で描いていると。



「ピピ――!!」


「ピッピッ!!」


「ムゥ……」



 大変可愛い我が子達が陽性な雰囲気を振り撒きながら若干埃っぽい空気が漂う室内に入って来た。



「お――。どうした?? 揃いも揃って」


「ピィ!!」

『もう少し撫でろよ!!』



 円らな瞳を頑張って尖らせて俺の指を食むピョン太から視線を外す。



「ピピ――!!」

『いいモノ持って来てあげたよ!!』



 ベッドの上に飛び乗ったピヨ美が小さな翼をはためかせて清らかな鳴き声を上げる。



「おっ、見舞いの品かい?? どれどれぇ、傷ついたお母さんの体を労わる品を大切に受け取りま……」


「ムゥッ……」



 形態変化を遂げているピー助が鋭い瞳を浮かべて俺に一つのモノを差し出してくれた。




 ブヨブヨの外皮は五日前の腐った牛乳の様に濁った白濁色に染まり、ぷっくりとした円筒状の体の下には幾つもの小さな足が生え生理的嫌悪感を抱かせてしまう動きを見せる。


 体表面には人間が視認出来る限界の範囲にギリギリ収まった矮小な毛が生え揃っている。


 彼の大きな手の平の上にモゾモゾと蠢く白濁の生物。


 そう、あのクソ不味い汎用虫を生きたまま俺に食えと言わんばかりにグイグイと差し出してきたのだ。



 い、いやいや!! お母さんの好き嫌いは知っているでしょう!?


 君達と稽古中の時も汎用虫は決して口に入れず、皆に均等になるように分け与えていたからね!!



「えっと……。皆、お腹が空いているでしょう?? お母さんは今食欲が無いから皆で分けてお食べ」



 今出来る精一杯の言い訳を放ち、ピー助の手をやんわりと押し退けるが。



「ムッ!!」

『食え!!』



 いつもは辛辣だってのに、こういう時だけ親身になる彼が俺の倍以上の力で押し返して来やがった。



「いや、だから。俺はお腹が減っていないって言っただろ?? この二日間、ずぅっとベッドの上で待機していたんだし」



「ピ――!! ピピピ!!」

『食べないと治るものも治らないんだよ!?』



 ピヨ美が小さな足で俺の体を蹴飛ばす。



「ほ、ほら。一時間前に朝食を終えたばかりじゃん?? だ、だから俺よりも皆が食べるべきだと思うな――……」



 お願いします!! それをこれ以上こっちに近付けないで!!


 片手から両手に変えてピー助の右手を懸命に押し返すが……。



「ウゥンッ!!」


「は?? ちょ、ちょっと!! 何すんだよ!!!!」



 十万年に一度の天才児があっと言う間の早業で俺の背後を取り、羽交い絞めの要領で抑え込んでしまった。



「ムゥ――……」

『さぁ、食え……』



 全く身動きが取れない俺の口に汎用虫が刻一刻と近付く。



「い、いやいや!! 止めて!! な、生は駄目!! 絶対ダメッ!!!!」



 首を激しく左右に振って拒絶の態度を表すが、ピー助は何の躊躇いもなく右手の手の平の上の生物を俺の口へと運ぶ。



「俺は怪我人なの!! だから無理強いは駄目だって!!」


「ピッピッ!!」

『美味いから食べなよ!!』


 食いしん坊のピコ坊が喜々とした円らな瞳で俺を見上げる。


「お前達にとっては御馳走かも知れんけども!! 俺には……。ヒィッ!?」



 人間の食欲と正気を容易に消失させる生物が俺の唇に間も無く密着しようとしたその時。



「ギニィ……」



 汎用虫が体の下半身部分をピー助の手の平の上に残し、残り半分の上半身をふわぁっと浮かせて俺の唇を小さな節足で掴んでしまった。



 動き、キッショ!!!! そして妙に生温かい感触が吐き気を呼び覚ましてしまいますね!!!!




「んっ……。ンゥ――!!!!」



 これ以上の異物の侵入は不味いと判断した体が自動防衛機能を発動。


 口をンッ!! と閉ざして鉄壁の構えを披露してやった。



 ははっ!! これなら俺の体内に入って来れぬだろう!?



「ムムゥ……」

『往生際が悪い奴め……』



「うぶっ!? ふぁ、ふぁにするんふぁ!!」



 そうはさせるか。


 そう言わんばかりにピー助が左手で俺の下顎を掴んで無理矢理城壁をこじ開けてしまうと。



「ウボェッ!?!?」


 右手を勢い良く俺の顔面にベシッ!! と密着させて汎用虫の体全部を口内に叩き込みやがった。


「ンッ!? ンン――――ッ!!」



 口の中で激しく暴れ回る汎用虫が生理的嫌悪感を与え、自然と両の目玉から悲しみの雨が流れてしまう。


 お、オェェッ!! ま、前歯の裏に節足を密着させるんじゃねぇ!!!!



「ピ――……」

『さぁ――……。仕上げといこうか』



 ピー助が左手でゆぅぅっくりと下顎を強制的に押し上げると。



「ボファッ!?!?」



 己自身の歯が汎用虫の体を断裂させ、その断面からとんでもねぇ粘度の高い液体が口内に溢れ出しやがった。


 ネッチャネチャのネバネバする液体が口内全体に行き渡ると、嗚咽感を引き出す強烈な生臭さが鼻から抜けて行く。


 そして、俺の歯はどうやら汎用虫の下部分を切り裂いた様で??



『ギッ……。ギギッ!!』



 口内に残る上半身は懸命に体を動かして脱出を企てていた。


 な、何?? この新手の拷問は……。これなら普通に殴られた方がマシだぞ……。



「ングムゥ――――!!!!」



 早くこの常軌を逸した拷問から逃れたいが為に暴れるも。



「ムゥンッ!!」



 横着な人擬きのヒヨコはそれを良しとせず、全てを飲み込むまで決して離さぬ構えを取りやがった!!



「ふぁった!! ふぉみこむふぁら!!」



 喉の奥から酸っぱい液体が込み上げて来るのを必死に堪え、喉力を最大限に引き出すものの。



『そ、それは受付不可ですっ』



 頭と体が俺の意思に反して生の汎用虫の受け取りを拒否しやがった。


 ち、畜生……。何でこんな酷い目に遭わなにゃならんのだ……。


 恐怖からかそれとも惨たらしい仕打ちの悲壮感からか。


 妙に細かく震える体を必死に御し、受付拒否をしている体の奥へ汎用虫を送り届けてあげた。



「――――。ぶはぁぁああっ!!!! ど、どうだ!? 食ってやったぞ!?」



 口の中を完全に空っぽにして、勢い良く叫んでやった。



「ピ――!!」


「ピピッ!!」


「ムンッ……」



 口内に異物が無いのを確認するとピー助達が陽性な鳴き声を上げてくれた。



 さ、さっさと怪我を治してベッドから立ち去ろう。これ以上生の汎用虫を食わされたら俺の正気度が狂っちまうよ……。


 腹の奥の奥でビッタン、ビッタンと。


 最後の生の生々しい足掻きを見せる汎用虫の矮小な振動を感知して気が狂いそうになるのを必死に堪えていると。



「何だか騒がしいな」


「ほぅ。元気になったようだな」



 ベルナルドさんとハンナが俺達の喧噪に少しだけ顔を顰めつつ部屋の扉を開けて現れた。



「ハ、ハンナぁぁああ――!! もう嫌だ!! 俺はここを出て行くぞ!!」



 彼の姿を捉えると堪らずベッドから飛び上がり、勢いそのまま。彼の百点満点の逞しい体にヒシと抱き着いてやった。



「止めろ!! 気色悪い!!」


「ハンナが連れて帰ってくれるまで絶対、ぜぇぇったい離さないからな!?」



 邪険に振り払おうとする彼の両手に対抗してやる。



「はは、既に動けるまでになったか。この者達からある程度の事は聞いたが……。ダン、暴兎との戦いを改めて聞かせてくれるか??」



 そう言えば……。ベルナルドさんは俺の怪我を考慮して戦いの事は聞いてこなかったっけ。



「あぁ、実はね……」


「い、いい加減離れろ……」



 困惑気味の表情を浮かべているハンナの体にしがみ付き、半分泣いたまま事の顛末を伝えて行く。



「――――。ってな訳で。気を失った暴兎にトドメを刺さず、このまま帰ろうとした時に奴等の大群に囲まれてさぁ。もう駄目かと思ったんだけど……。奴等は負傷した兎を抱えて森の奥へと消えて行ったんだよ」


「ふむ……。成程……」



 ベルナルドさんが合点がいった様な表情を浮かべて涙に濡れた俺の顔を見つめる。



「その内の妙に強そうな一体が去り際に……。おぉ、あったあった。これを渡してくれたんだ」


「はぁ……。漸く離れたか……」



 抵抗する事を諦めたハンナから離れ、部屋の隅で大人しく畳まれていた上着の内ポケットから暴兎から受け取った黒爪を取り出すと。


「むっ!?」



 ベルナルドさんが驚いた表情を浮かべてこの爪を眺めた。



「それは……。勇気の印ではないか!!」


「「勇気の印??」」



 ハンナと共に首を傾げて問う。



「この里から猛者共が暴兎の領域へ向かっているのは知っているな?? 奴等は己の縄張りに侵入した者に対してのみ戦いを挑む。そして、他の縄張りに居る者共はその戦いに決して手を出さない」



 成程……。アイツ等が襲って来なかったのはそういった習性があったからか。



「素晴らしい技や力を示してくれた者、暴兎に完璧な勝利を収めた者、そして勇気ある行動を示した者にのみその黒爪は与えられるのだ」


「ふぅん……。勇気の印ねぇ……」



 第三者から見ても俺は素晴らしい技や力を示していないし、ボロ雑巾みたいに痛めつけられたから完璧な勝利を収めた訳でも無い。


 当て嵌まるとしたら三つ目の。



『勇気ある行動を示した者』 だな。



「ダン、貴様は戦いの最中に何をしたのだ」


「別にこれといった活躍はしていないさ。ピー助と共闘してたもんな??」


「ムゥ……??」



 俺の足元で何かを深く考える仕草を取るヒヨコを見下ろす。



「ピ――……。ピッ!! ピ――ピッ!!」

『ん――……。そっか!! 多分あの所為だよ!!』



 ピヨ美がちょいと語尾を強めて鳴く。



「どうした?? ピヨ美」


「ピピッ!! ピピ――ピッ!!」

『ほら!! 最後の方でさ!!』



 何やら意味深な声色で鳴くので奴との戦いの一部始終を深く思い出していると。



「――――。あぁ、そうだ。奴にトドメを刺さなかったな」



 俺が思い当たる節は恐らくそれだろう。


 奴等は生殺与奪の権利が俺に与えられているのを知っていたが傍観を決めていた。


 それは奴等の習性である事を今知らされたが、歯痒い思いで仲間の生死の際を眺めていたのだろう。



 意識を失った暴兎の命を刈り取る為、一度は短剣を掲げたが……。



 無抵抗の者の命を奪うのは流石に憚れた。


 数十秒前まで自然の掟に則り命のやり取りを行っていたのに、それでは戦士と名乗る資格は無いと蔑まれようが俺の流儀に反したのでね。



「生殺与奪の権利はお前に与えられていた。生かすも殺すも貴様次第だからな」



 ハンナが部屋の隅で横たわっている俺の短剣へ視線を送る。



「あぁ、単純に生きる為に殺すのじゃなくて。ただ己の実力を誇示したいが為に命を奪うのはちょいと違うなぁって。多分、奴等は俺のその行動を見てこの黒爪をくれたんじゃないのかな」



 恐らく、というか多分そうでしょう。戦いでは余り役に立てなかったし。



「その黒爪を所持しているのは里の者でも極僅かだ。誇ってよいのだぞ??」


 ベルナルドさんが温かな瞳で俺の顔を見つめる。


「別に誇りはしないさ。それに……。よっと」


「ムゥッ!?」

『何をする!?』



 俺の足元で何だか微妙に元気の無さそうな表情を浮かべているピー助を右手の手の平に乗せてやる。



「これは俺と……。ピー助達皆で掴み取った勝利の印だ。軍鶏の里の一員じゃない俺が持っていても仕方が無いし、受け取ってくれるか??」



 左手に持つ黒爪をピー助の前へと差し出してやる。



「ンム……。ムゥ……」

『いや、しかし……』


「そう畏まらなくていいって。勇気の印と呼ばれているけどさ、俺とピー助の友情の印として受け取ってくれ」


「ム……。ムンッ!!!!」

『あぁ……。分かった!!』


「あはは!! 有難うな!! ピー助!!」



 小さな嘴で黒爪を受け取ってくれた彼の体に思いっきり頬ずりをしてあげた。


 うぉ!? こ、こんなにフワモコしているんだ!?


 あの馬鹿げた形態変化の時はもっとゴワゴワしていたのに。



「ムゥッ!!!!」

『触るな!!!!』



 ピー助が形態変化すると俺の頭を万力でギュムっと掴む。



「悪乗りして悪かったから頭を捻じ切らないでくれ!!」


「ふふ、どうやらかなり打ち解けたみたいだな??」



 息子達の下らない喧嘩を温かい瞳で見守る様にベルナルドさんが柔らかい吐息を漏らしつつ話す。



「そりゃあ長い間一緒に暮らしていたからさ」


「そうか。その者共は次の段階へと進むが……。ダンはどうする??」


「ん――……。ハンナの答え次第かな」



 この里に来たのは必要最低限の力を得る為であり、ハンナや軍鶏の里の皆の様に馬鹿げた力を得る為では無いのだから。



「なぁ、ハンナ。俺は自分で身を守れるくらいの力を付けたつもりだけどさ……。まだお前と一緒に行動しちゃ駄目なのか??」


「う、む……。それは……」



 難しい顔を浮かべて腕を組み、口元をへの字に曲げて悩む。


 ハンナがこれぞ正しく子供のおねだりに悩む父親の表情そのものを浮かべた。


 おっ?? この感じはぁ……。



「本当に一生懸命頑張ったよ――?? 来る日も来る日も走って、叩かれて、殴られて。それでも音を上げる事無くやり通したのになぁ――」



 左手を背に回し、俺に続けとピヨ美達に手で合図を出してやると。



「ピピッ!! ピ――!!」

『そうそう!! 毎日御飯の世話もしてくれたしっ!!』


「ピィピィ!! ピピピ!!」

『俺達が眠るまでちゃんと見ていてくれたもん!!』



 彼女達は清らかな鳴き声と共に俺の言葉に同意してくれた。



「あ――!! 分かった!! 共に行動するのは許すが、決して俺の邪魔をするなよ!? それが条件だ!!」


「も、勿論さ!! あははは!! やった!! やったぞ――!!!!」



 これで漸く相棒と共に危険な冒険が出来ると思うと馬鹿みたいにデカイ陽性な感情が湧いて来やがった!!


 浮かれた気分のまま強面白頭鷲の体にヒシと抱き着いてあげた。



「止めろ!! 気色悪い!!!!」


「んもぅ……。久し振りだから照れてるのねっ?? 私も久々だから、緊張してるんだゾ??」



 恥じらう乙女の様に両の瞳を潤ませ、醜い生き物を見る様な目で俺を見下ろしている彼の顔を上目遣いで見上げてやる。



「ピピピ――!!」


「ピャピャピャ!!」


「え、えぇい!! いつまでしがみ付いている!! これでは皆に示しがつかないではないか!!」


「そういうカチコチの台詞はだ――めっ。もっと砕けた言葉を言わないと絶対離さないもんっ」



 一人の男にしがみ付かれて困惑する男性。その姿を見た者共は皆一様に口を開けた笑いを放った。


 彼は……。そう、言わば空に浮かぶ太陽みたいな存在だ。


 何もせずただそこに居るだけで皆に陽性な感情を与えてしまうのだから。


 狭い室内にこだまする素敵な笑い声が家屋の壁を突き破り里の者達へ伝わると。


『あぁ、どうせ彼がまた横着をしたのだろう』 と。


 呆れにも似た吐息を吐き、一時中断した筋力鍛錬を再開させ素敵な筋肉を育み始めたのだった。



お疲れ様でした。


この御話をもちまして軍鶏の里とは暫しのお別れとなります。次に戻って来るのは第二部の予定ですね。


約三百年の時が経過していますので幼かったヒヨコちゃん達も立派な大人に成長しております。大きくなった彼等が現代編の主人公達とどう絡むのか。それを楽しんで頂ければ幸いかと。



本日で大型連休も終わりですね……。


色々出かけたのですがやはり心に強く残ったのは弾丸四国旅行でした。また機会があれば足を運び、腹がはち切れんばかりにうどんを食したいものです。



それでは皆様、お休みなさいませ。



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