表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
804/1227

第三百十八話 連戦連敗の龍 その二

お待たせしました。


後半部分の投稿になります。




「し、師匠!! 出来ればもう少し優しく引っ張って下さい!!」


「喧しい!! 弟子は師の言う事を聞いておけばいいのじゃよ!!!!」



 あ、あの野郎共……。隊長である私に救いの手を差し伸べる処か見捨てて行きやがったよ。


 後で全員に手厳しい罰を与えるべきね。


 私を見捨てた大馬鹿野郎共が見えなくなるのを見届けると母親クソババアがおっそろしい瞳を浮かべて徐に口を開いた。



「それで?? あなたはどうやって覚醒へ至ったのかしら??」


「ま、先ずは……。こ、この殺意に満ちた手を放せ……」


 今放てる最大限の声量で懇願を言い放つ。


「放せ??」



 どうしてあんたはそんなに怖い目を浮かべられるのだい??


 私は一応血の繋がった娘よ??



「は、は、放して下さいませ。優しいお、お母様」


 最凶の悪魔でさえも思わず身構えてしまう恐ろしい瞳へと向かって親切丁寧な口調でそう言ってやった。


「最初からそう言いなさい」


「いでっ!!」



 乱暴に放すものだから机の上にお尻を打ってしまった。


 大切なお尻を擦りつつさてどうやってこの場から逃亡してやろうかと画策していると。



「逃げたら死刑よ??」


 図る前から素晴らしい脱出計画をポッキリとへし折られてしまった。


「私は逃げん!! 最強の称号を得たんだからね!!」


「あっそ。――――。で??」



 椅子に座り早く話せといった雰囲気を醸し出して頬杖を付く。



「いや、うん……。ど――――――しても、話さなきゃ駄目??」



 ゼンザイに与えられた課題の答えを口に出して話すのは超絶怒涛に恥ずかしい。


 例えその相手が血を分けて貰った肉親だとしてもだ。あ、いや。肉親だからこそ恥ずかしいのかも知れないわね。



「聞きなさい、馬鹿娘」


 馬鹿、付ける必要あったのか??


「あなたは九祖の血を受け継いでこの世に生まれた。つまり、いつかはお父さんと肩を並べる覇王の座に就く事も有り得るのよ」


「え――。私、そういう覇権争いだっけ?? 全く興味が無いんだけど」



 確か……。覇王継承戦、だっけか。


 その戦いを勝ち抜き、四つの龍族の頂点に立つ者が覇王の称号を得られるのよね。



「今は興味が無くてもいつかは興味を持つかも知れないし。それに、あなたは覇王の言葉の意味を履き違えて理解しているわ」


「聞きましょう??」



 だらんと横になり、九十度に曲げた腕の先にある手の平で頭を支えつつ傾聴してやった。



「今現在、覇王は四つの龍族の頂点に立つ者としての称号として捉えられているけど。本来の意味は……。九つの種族、つまり九祖の頂点に立つ意味合いがあるの」


「お?? って事は。最強の称号って事じゃん」



 ちゅまり、第三代覇王って言っていたゼンザイは化け物犇めく古き時代で最強の称号を持っていたのか。


 現代で最強の私でさえも後ろ足加重にならざるを得ない圧を放つのだ。最強の称号に嘘偽りは無いわね。



「亜人と戦いを繰り広げていたのは知っているわよね?? 亜人を討ったのは私達の御先祖様である龍族と言い伝えられているわ」


「ほぉん。強敵を倒したから最強の名を手に入れたのか」


「それもあるけど、亜人に対抗していた者達を纏めていたって事もあるの。だから覇王の名は決して安くない。そして、龍族の名に恥じない行動を心掛けなさい」


 堅苦しい生き方は嫌いなんだけどなぁ。


「これは……。まぁ、建前ね」



 ん??


 どした?? カチコチの硬い口調から急に明るい口調になって。



「私の本音としては自分の好きな様に生きなさい、かしら。此処へ来てからさ、あなたの生活態度には目に余る物があったけど……。それを裏返して捉えるのなら心から気を許せる友人を見つけたって事なのよね」


 ふぅっと柔らかい息を漏らして私の顔を見つめる。


「母さんも堅苦しい生き方は嫌いでね?? それに反発する様に家出して……。イスハ達と出会ったんだ。その関係が今も続くなんて、ふふっ。本当に可笑しいわ」


「友人の有難さは身に染みているわ。ユウ達と知り合わなきゃこんなに強くなってないもん」



 身体的という意味合いもあるが……。心が満たされていると言うべきかしらね。


 子分共と何の遠慮も無しに交わす会話、舌と心が満たされる美味い料理、そしてアイツと共に過ごす時間。


 大陸を渡って間も無く一年が経つが、生まれ故郷のそれを比べるとビックリする位に時間が経つのが早く感じるもの。


 皆と出会えて本当に良かった。これが私の偽り無き本心ね。



「友を大切にする温かい心を持ってくれるだけで母さんは嬉しいわ。マイ、あなたは優しくて本当に良い子よ……」


 すっと右手を伸ばし、私の顎下を優しい手捌きで撫でる。


「止めろぃ。擽ってぇ」


 何よ、急に。


 今まで顎を跳ね上げていたくせに……。



「ふふ。さてっ!! 前置きが長くなったわね!!」



 ちっ!! 気が付きやがったか。



「与えられた課題の答えを教えて??」


「分かった。話すけど……。今から話すことはぜっっっっったい誰にも話さないでよ?? 言ったら母娘の縁を切るっ!!」


「うん。分かったわ」


 母さんが私の顎から指を離し、姿勢を正す。



「すぅぅぅ、ふぅっ。えっとね?? 私に与えられた課題は……」



 精神の世界で起こった出来事。


 つまり、認めてしまったあの温かい感情と。認めた事で気付いてしまった苦しい感情の葛藤をありのままに伝えてやった。



「――――。私は……、うん。やっぱり責任は取らなきゃいけないと思うのよ。アイツをこっちの世界に引き込んだのは私だし。そして……。人としての時間を奪ってしまったのも私の責任だから、さ」



 思い出すだけでも胸が痛い。


 でも。忘れてはいけない感情なんだ、これは。


 視線を机に落としつつ話し終えると。



「ふっ……。あはは!! ば、馬鹿じゃないの!?」



 クソ婆があろうことか、私を指差して笑いやがった。



「お、お――い?? 笑う所じゃあないぞ――??」


「あ、あぁ。ごめん。ふ――……。えっとね?? レイドさんと話し合いをして、問題解決は済んでいるのよね??」



 おうよ。


 肯定の意味合いを兼ね、腕を組んで大きく頷いてみせた。



「それなら別にいいじゃない。好きな時に告白すれば」


「だ、か、ら!! しねぇって言ってんの!!」


 ゼンザイといい、このクソ婆といい!! 耳腐ってんじゃねぇのか??


「それはあなたが臆病なだけよ」


「お、臆病??」


 この最強の私がお、お、臆病だと??


「そっ。彼の気持ちを聞く事が怖いからよ」


「違うし!! そんなのぜんっぜん怖くない!!!!」


「それは追々自分で気付く筈よ。それにしても、異性に好意を抱いている事に気付く事が課題なんて……。超簡単な課題だったのね」



 いやいや。


 天才的な頭脳を持つ数学者も解けない方程式みたいに超難題だったからね??



「好きな人が居る、そして好きな人が好きな世界を守る事があなたの夢。うんっ、素敵だな」


「へっ。何とでも言いやがれ」


「強情な娘。誰に似たのかしら??」


「大方父さんじゃない?? 私、母さんみたいに怖く無いもん」


「あっそ。何?? 首、二三本折られたいの??」



 龍族の首は一本ですので、それは無理かと……。


 己の首を庇いつつ、手刀を叩き込む姿勢の化け物から二歩下がった。



「何はともあれ、よく頑張ったわね?? マイ」


 恐怖の大魔王の顔から一転。実の娘に向けるべき柔和な顔を浮かべた。


「お、おぉ。どうも??」


「お父さんにいい土産話が出来たわぁ……。ふふっ。レイドさんの事、どうやって伝えたらいいのやら……」


 あ――。


 そっちかぁ。


「父さん、やたらアイツの事毛嫌いしているし。難しいわよね」



 滅茶苦茶鋭い視線でボケナス事睨んでいたし。アイツもアイツでその視線に耐えられなかったのか、父さんと目が合うとフイっと視線を逸らしていたもの。



「毛嫌い?? ううん。お父さんはレイドさんの事、結構気に入ってるわよ??」



 は――?? どこからどう見ても嫌ってんだろ。


 めっちゃくちゃ怖い顔で睨んでいたじゃん。



「嫌っている人を大好きな釣りに誘うと思う??」


「そう言われてみれば……。分からないでも無いけど」


「ね!? 今度帰って来た時にさ!!」



 はいっ、そのウキウキした顔。うっぜぇ!!



「お父さんに、レイドさんの事を彼氏だって改めて紹介しなさいよ!!」


「しないって言ってるでしょ!? いい加減しつこいわよ!!」


「お母さんはレイドさんの事気に入っているし。それに!! 料理も出来て、年上を立てる言い方も出来るし、礼儀も正しい。最高な物件じゃない」


「知らん。ユウ達が待っているから先に行くわよ」


 翼をはためかせ、浮き上がろうとするが……。


「だ――めっ。まだ素敵な馴れ初めの話を聞いてないもん」


「はぁっ!? ふっざけんな!! 誰が言うか!! そんな恥ずかしい事!!」



 横着婆に両足を掴まれて再び拘束されてしまった。



「言わないと放してあげない」


「上等だぁ!! クソ婆ぁ!!!! 大魔の力に目覚めた、私の真の力を思い知りやがれぇええええ!!」



 人の姿へと変わり刹那に距離を取ると、心の奥で燃え上がった豪熱を周囲へと解き放ち。熱き闘志を拳に籠めてやる。


 お、おぉっ!! すっげぇ!!


 超簡単に今まで以上の力を発現する事が出来んじゃん!!!!


 これが私の新たなる力、か。



「さぁ……。今日こそはその横っ面にとんでもねぇ一撃をぶち込んでやんよ!!!!」



 クククッ……。これなら化け物相手でも勝てる!!


 私は確信を更に越えた確固たる勝利を確信して足に力を籠めてその時に備えた。



「クスッ……。掛かっていらっしゃい。まだまだケツの青いガキちゃんっ」


「こ、こ、この中途半端に育って微妙な膨らみを持つクソババアが!! 私の新たなる力をその身を以て分からせてやらぁぁああああ――――ッ!!!!」



 最強最高の力を真正面で受けても私は超余裕ですよ――っと。


 滅茶苦茶鼻に付く態度を浮かべる化け物に向かって突貫を開始したのだった。



お疲れ様でした。


本日は日曜日のルーティンを済ませると買い物へ出掛け、その帰り道に黄色い看板が目印のカレー店へ足を運びました。


チキンカツカレー、御飯400グラム。辛さは普通。テンプレの注文をして程よくお腹を膨らませて帰宅しました。


400じゃちょっと物足りないので今度は500グラムにしようかなぁっと。本当にどうでもいい事でちょっと後悔している次第であります。




沢山のいいね、そしてブックマーク並びに評価をして頂き本当に有難う御座いました!!


間も無く連載開始二年を迎え、更に新しい章へと突入しますので本当に嬉しい執筆活動の励みとなります!!



それでは皆様、花粉に気を付けて休んで下さいね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ