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第三百六話 受け継がれし技と技術 その二

お疲れ様です。


本日の投稿になります。それでは御覧下さい。




 さぁってと、自主練習と洒落込んだのはいいが。蜘蛛の母ちゃんから何を学べば良いのやら。


 私の目下の目標は今も訓練場の淵で静かに目を閉じているあの蜘蛛を叩きのめす技術を会得する事なのだが……。


 それは一朝一夕で手に入る程容易い物では無い。限られた時間の中、目に見える形で使える物を会得するべきであろう。


 つまり即席で使えそうな物を学べばいいのだ。


 だけどなぁ――……。そんな簡単な技とか技術は強敵には通用しないし。一人でウジウジ、ムシムシ悩み続けているあのヘタレ蜘蛛は一応強敵の部類に属する。


 発情した雌の尻を追いかけ回している猿でも理解出来るお手軽な技を習得しても結局の所無意味なのよ。


 嫋やかに立つ蜘蛛の母ちゃんの前で腕を組み。さてどうしたものかと第一声に対して思考を捻り続けていると、右隣りのユウが口を開いた。



「フォレインさん。あたし達に使用したあの殺気。どうやってやればあぁも恐ろしい殺気を放てるのですか??」



 おぉ!! 考えたわね!!


 島へ来て初日に感じたあのドン引きする程強かった殺気が使用出来る様になれば戦闘も幾らか有利に進められるもの!!


 流石、我が親友だ。無駄にデカイ乳をぶら下げているだけじゃないわね。



「恐ろしい……。くすんっ。私、恐ろしく見えるのです??」


 袖口でワザとらしく口元を隠して話す。


「あ、いや。そういう事じゃなくてですね。その方法を知りたいのですよ」


「うふふ、承知しておりますわよ。私なりの冗談ですわ」



 何だろう、クソ蜘蛛の鬱陶しい冗談はこれでもかと腹がそそり立ってムカつくけども。


 蜘蛛の母ちゃんのソレはそこまで腹が立たないわね。



「は、はぁ」


「では、先ず殺気についての基本を御教え致しましょうか」


「「「宜しくお願いします!!」」」



 私とユウそしてリューヴが口を揃えて覇気の良い声で答えた。



「殺気。それは正しく相手を確実に殺すと決めた時に体外に滲み出る見えない空気、或いは他人に感知される気配の一種ですわ。武に通ずる者は等しくこれを察知する事に長けております。つまり、この島に存在する者全てに当て嵌まりますわ」



 だろうなぁ。あの感覚を受け取ると背筋の肌が一瞬でゾッワァァアアって泡立つものね。


 のうのうと過ごす有象無象の凡人には殺気云々と伝えてもあぁはいはい、と。取り敢えず頷く程度にしか理解できまいて。



「この殺気。使い手によっては一長一短の存在なのです」


「生かすも殺すも私達次第ってか」


 恐らくそういう事でしょう。


「その通りですわ。その例として……。マイさん、足元に転がっているその石を拾って頂けます??」



 石??


 蜘蛛の母ちゃんの視線を追って足元に視線を動かすと、投擲に程良い大きさの石が無表情で私を見上げていた。



「これ?? 拾ってどうするのよ」


「それを……。くすっ。あそこでアレコレと似合わない指導を行っているフィロへ投擲してみて下さい」



 今、何で笑った??


 まぁ深くは問いませんよ。大方、うちの母さんには指導が似合わないって意味だろうし。



「威力はどの程度??」


「それはお任せします。積もり積もった積年の恨みを晴らす勢いで投擲しても構いませんし。実の母親を思いやる勢いで投擲しても結構ですわ」



 ふぅむ、成程ぉ。


 取り敢えず派手にぶち込めって事ね!!


 この島に来てからというものの……。母さんには酷い仕打ちを受けて来た。



 言う事を聞かなければ瞼が開かなくなるまで殴られ。


 普段の生活態度を問われ、必死に口を横に閉じて黙秘を貫いていても頭蓋を叩き割る勢いで殴られて無理矢理口をこじ開けられ。


 開いた口から取り繕う様な嘘を吐いたら内臓が破裂する威力の拳が襲い掛かり幾度無く殺されかけた。



 数か月ぶりに会う家族としての温かな会話は極僅か、代わりに私の生活態度を叱責する酷い暴力を受け続ているのだよ。


『私は悪くない!!!!』


 そう叫んでも返事として返って来るのは母親の愛情溢れる言葉では無く妙に硬い棒きれか、殺意が籠った恐ろしくかてぇ拳。



 全世界が認める聖人君子の私でも我慢の限界は当然ある。



 清らかで純粋無垢な心は理不尽な暴力を受け続けた結果、漆黒の闇で染まってしまっているのさっ。



「そう、いいわよ。心の中が熱くなっても頭は冷静に。それはあなたの想いなの。撥ね退けないで肯定してあげなさい」



 鳥姉ちゃんに覚醒の助言を与え続けている糞婆の後頭部を視界が捉えると、沸々と悪戯心が湧いて来てしまった。



 おっしゃああ!!!! 絶好の状況じゃん!!


 あの化け物は今、完全無欠の無防備状態。どうぞ私のお馬鹿な頭に当てて下さいって言っているようなもんじゃんか!!


 いしし!! 幾度となく殺されかけた私のぉ、積もり積もった怨みぃ……。能天気な後頭部で受け止めろやぁあああ!!!!


 右手にこれでもかと力を籠め、実の母親の頭蓋を穿つ為。大きく振りかぶって化け物に向かって投擲してやった。



「うんっ!! そうそう!! そこから徐々に抑えていく感じよ!!」



 石が到達するまでもう間も無く!!


 私は込み上げて来る謎の高揚感から口元を歪に曲げて石の軌道を見守っていた。



「抑えつけても駄目なの。それを汲み取る……」


 着弾する!! そう確実に思った刹那。



「……」



 何を考えたのか、あの化け物は首をひょいと曲げて私が投擲した石を交わしやがった。


 は、はぁっ!? 何で避けられるの!?


 ここから結構距離があるから気配を察知するのは難しいし……。


 しかも、殺気では無くて真心さついを籠めて投擲したというの……。

















「――――――――。こぉらっ。お母さんに向けて石を投擲したら駄目じゃない」

「あんぎゃあああああああああ――――ッ!!!!!!」



 一秒……。


 いや、その半分の時間も無い間に突如として化け物が目の前に現れたら誰だって恐ろしい叫び声を上げようさ。


 体が、頭が私の心の声を素直に代弁してくれた。



「うるさっ。もう一度聞くわよ?? 馬鹿娘」


「うぐべっ!! は、放せ!! こ、こ、殺す気か!!」



 右手で首根っこを掴まれて強制的に宙に浮かされてしまう。


 この死に至る圧迫感ッ!! もう何度経験した事やら!!



「殺す気ならもうとっくに殺しているわよ。私が聞きたいのはどうして実の親に呆れた速度で石を投擲したかって事よ」


「は、話そうにもい、息がぁ!!」



 恐ろしい五本の指によって軌道がグイグイと圧迫されて徐々に視界が霞んで行く。


 無意味に足をばたつかせ、今出来る精一杯の抵抗を見せると。



「あっそ。はい、これならいいかしら??」


「ぎゃば!?」



 可愛いお尻と地面が仲良く密着して漸く地獄から解放された。


 いや、正確にはこれから地獄が始まるのですけれども……。



「……」


 そそくさと足を美しく折り畳むと太腿の上に手を置き。私は猛省していますという形を取って化け物を見上げた。


「え、えっとだな。蜘蛛の母ちゃんに殺気の使い方を学んでいたのよ」


「ふぅん。それで私に石を投げたの??」


「そう、そうなの!! だから私は悪くないの!!」



 何だ。意外とあっさりお許しを……。



「だからって加減をしないで投げるのは良くないなっ」


「ぱんっ!?」



 頂けなかった!!


 れっきとした殺意が籠められた爪先が私の顎を跳ね上げ、可愛いお目目ちゃんが鉛色の空を捉えてしまった。



「そ、そっちこそ加減しなさいよ!! 娘の可愛い顎を破壊する気なの!?」


「相変わらず良く動く口ねぇ?? 本当に破壊されたいのかしら……」



 ひぃぃっ!! またこの目だよ!!


 目元は柔和な三日月型に曲がっているけどそこから覗く目は生気が失われその奥から常軌を逸した殺気が此方の魂に向けられていた。


 あの目に捉われたら最後。


 悪魔もゾっとして武器を放棄して、尻尾捲って裸足で地平線の彼方まで逃げ出してしまう狂った瞳に肝をキンキンに凍らされてしまう。


 父さん、何であんたはこんな化け物を好きになったのよ……。もっとマシな女性はいなかったのかい??



「ははぁ……。大変申し訳ございませんでしたぁ……」



 このままでは本当に破壊し尽くされてしまう。


 そう感じ取った私の体は友の視線を一切気に留める事無く、これでもかと地面に額を擦り付けてしまった。


 殺されるよりかは一時の恥を取るわよ。



「分かれば宜しいっ!! じゃ、私は指導に戻るわねぇ――」


 おととい来やがれ、クソ婆。肩の力をホッと抜いて面を上げると。


「誰がクソ婆だ」

「ゴリバっ!!!!」



 私が投擲した石がただいま――!! っと。


 満面の笑みを浮かべて額のド真ん中に帰還。勢い余って地面に倒れてしまった。



「そんな事一言も言ってねぇだろうがぁあああ!!」


「あはは!! マイの場合、顔に書いてあんだよ!!」


「んだとぉ!?」



 痛む額を抑えつつ立ち上がり、己の憤りを誤魔化す為にユウの西瓜を叩きつつ叫んでやった。



「今のは良い例ですわね。あそこの微妙な大きさの胸を持つ女性は周知の通り、戦闘に関しては私達より頭一つ抜きん出ています。野生の勘でマイさんの殺気を読んだのか。又は類稀なる才能からか。それは本人しか確知出来ませんので我々は理解出来ませんが。相手の意思、行動を見抜く力はずば抜けている事を証明してくれましたわね」



 いやいや!!


 だったら石を投擲する役目は私じゃなくても良かったじゃん!!



「殺気の感知は理解出来ましたね?? では、お次は私が指向性の殺気という物を披露してみせましょうか」


「しこう?? は??」


 どういう意味だ?? 美味しい食べ物の趣味って事??


「指向性。つまり、全体的に広がるのではなく。一定方向に向けた物と言えば理解出来ます??」



 あぁ、はいはい。


 何となく理解出来たので大きく頷いて肯定を見せてあげた。



「ふぅ……。指向性の殺気は久々ですので上手く出来るかどうか」


 蜘蛛の母ちゃんが左脇に差している刀の鞘に手を置き。


「失敗しても笑わないで下さいまし」



 クソババアに向かって肩幅に足を開いて腰をすっと落とした。


 ほぉ。刀を抜刀する姿勢ね。


 今にもあの黒鞘から美しい刃面が覗かせそうな雰囲気を帯びると呼吸をする事も忘れて行く末を見守る。


 白き髪の合間から覗く目が刹那に光ると。



「二人共良い感じよ!! そのまま…………」



 指導中の化け物が口を閉じ、そして背中越しに最大級の警戒を放っていると此方に気付かせた。


 一切の身動きをせず、只々此方に全意識を向けている。そんな感じだ。



「はぁっ。うふふ、出来ましたわっ」


 刀の柄から右手を放すと。


「こらぁ!! いきなり驚かせないでよ!!」


 憤りを一切隠す事無くクソ婆が此方に向かって叫んだ。


「御免あそばせ」


「ん?? 今、何か感じた??」



 隣のユウの可愛いお腹をモニモニと揉みながら問う。



「いんや、ちょいと肌がゾクってした程度かな。リューヴは?? 後、勝手に触んな」


 私の横着な手を叩き落としてリューヴの方へ視線を向けた。


「私もユウと同じだ」


 ほぉん、皆同程度の違和感を覚えたって事ね。


「先程説明した通り、殺気とは目に見えぬ物ですわ。簡単に感じて頂けるのはやはり実戦。試しに……。マイさん、そこに立って下さいまし」


「へいへい」



 蜘蛛の母ちゃんが指定した場所へ特に警戒心を持たずに両の足を置く。


 私と彼女の間は凡そ十メートル程度。


 あそこからでも踏み込めば十二分に刃が届く距離だが、あの構えでは……。まぁ無理でしょう。


 何だか随分と楽な姿勢だし。



「では、行きますわよ」



 蜘蛛の母ちゃんの右手が柄に触れた刹那。



「ぉ゛っ!?!?」



 鞘から鋭い一閃が迸り、私の首と胴体がお別れを告げてしまった。


 地面に横たわった頭部のカッと見開かれた目が首から吹き上がる血飛沫を愕然として見上げ、その数秒後には指令部を失った胴体が力無く地面へと倒れて骸と化した。



「どわぁっ!?」



 な、何よ!? 今の!?


 慌てて首を抑えるが……。


 はぁ……、良かった。ちゃんと繋がっていた。御蔭様でこれからも美味しい御飯を食べられそうだ。



「何だよ、マイ。豆に往復ビンタブチかまされた鳩みたい顔して」


 どんな顔よ、それ。


 まぁそれだけ驚いた顔を浮かべていたのであろう。


「殺されたかと思ったわ。ユウとリューヴも一度受けて御覧なさいよ」



 これは確かに見るよりそして聞くよりも一度受けた方が理解し易いだろうし。



「百聞は一見に如かず、ね。フォレインさんあたしとリューヴにも放ってみせて下さい!!」


「あぁ、宜しく頼む!!」



「宜しいですわよ。では、御二人共そこを決して動かないで下さいまし。間違って手元が狂うかも知れませんので」



 此方から見て蜘蛛の母ちゃんの右手側にユウ、そして反対側にリューヴが立つ。



「……」


 先ずはお化け西瓜へ向けて体を向けると。


「ひゃあっ!?」



 私同様、驚愕の表情を浮かべて胸元を抑え。


 と、言いますか。何で胸元??


 続け様にリューヴへ体を向けた。



「うわっ!?」



 恐れ慄きその場から数歩後退し、そして呆気に取られた表情を浮かべて腹部を抑えた。



「理解頂けましたか?? これが指向性の殺気というものですわ」


「う、うん。こりゃ確かに恐ろしい技だな」


「でしょ?? 自分の体におっそろしい攻撃が当たったかと思ったもん」



 元の位置へと戻り、額に重たい汗を浮かべているユウの肩をポンっと叩いてやった。



「この殺気は多対一、一対一。様々な状況で利用出来ますわ。特に一対一の状況では絶大な効果が期待できます」


「と、言いますと??」


 多分、というか。幻の攻撃を相手に見せて隙を生みだすのであろう。


「相手に此方の幻影を見せ、刹那に生まれた千載一遇の時間を利用して攻撃を与えるのですわ」



 ほら当たった!!!!


 いやぁ、私も中々に頭が回る様になってきたわね。



「この殺気を生み出す為には真実の攻撃にも勝るとも劣らない気を放つ必要がありますわ」



 おっと。


 これは分かんねぇ。



「具体的にどうすればいいのよ??」


「先ずは相手を見る事を最優先して下さいまし。相手の一挙手一投足を見逃さず、体の奥に存在する幻の壁に向かって見えない攻撃を与える。感覚的には凡そそんな感じですわ」



 ふぅむ。相手をじっくりと観察か。


 そいでもって相手の行動を理解した後、殺意を籠めた攻撃を体の奥にかませば良い訳ね。



「では、マイさんとユウさん。そして、リューヴさんは私と組んで練習してみましょうか」


「了解!! ユウ、対峙するわよ!!」


「あいよ――」



 お互いに体の真正面を向け、五歩離れていた位置から一歩の位置に体を置くと取り敢えずユウの瞳を睨み上げてやった。



『あ?? 何見てんだコラ』


 私が喧嘩上等の眼光をユウの目に送ると。


『テメェこそ何ガン垂れんだよ』


 彼女は売られた喧嘩を買う様に鋭い目力で私に応えた。



 じょ、上等じゃん。私より先に覚醒したからって偉い訳じゃねぇからな??


 取り敢えず胸倉を掴んで横っ面を叩こうとしたら。



「こらこら。街中で喧嘩をする不良じゃないのですから」


 蜘蛛の母ちゃんに釘を差されてしまった。


「今は相手の姿を注視する事に力を注ぎなさい」



 へいへいっと。売買契約が成立した喧嘩は後で行うとして、今は真摯に蜘蛛の母ちゃんの指導を受けましょうかね。


 目の力をふっと抜き、友へ向けるべき瞳の色で再びユウのお目目ちゃんを見つめた。



「「……」」



 こ、こうしてまじまじと見つめるとユウってすっげぇ可愛いわよね。


 クリクリのお目目に、自然豊かな森に生える木々も嫉妬する深緑の髪。


 滑らかに卵型に湾曲するぽちゃぽちゃの頬は私が男だったら思わず頬擦りしたくなる柔らかさが醸し出されている。


 そして、そしてぇ!!!!


 ダセェ訓練着の中から誇大主張している超絶怒涛の巨大さを誇る双丘!!!!


 良いわよねぇ……。おっきいと。


 いや、別に??


 私も大人の姿になればこれ程までとは言わないけども、それ相応の大きさを誇っていた筈!! だから羨んでいる訳では無いの。


 一度だけ訳の分からん魔法でユウと体が入れ替わった時、酷く肩が凝ってしまったのを今でも覚えているからデカすぎるのはちょっと、ね。


 取り敢えずユウの前に立っているのでついでと言っちゃあなんだが。二つの西瓜を下から持ち上げてみた。



「ほぉっ……」



 う、うおぉぉ……。重てぇぇええ。


 そりゃあこんなもんぶら下げていたら肩も凝るわ。


 続け様に揉みしだきこれまたついでと言わんばかりに先端を人差し指で突いてやった。


 あ、そ――れっ。



「んっ……」



 ほほぅ?? ここがどうやら我が親友の弱点の様だ。


 頬がぽぅっと赤くなったのが良い証拠よ。


 可愛くて、胸も大きく、それに加えて性格も抜群に良い。



『貴女が人生の中で出会った一番の女性は??』



 と、聞かれたら私は迷うことなくユウの名を出すだろう。それだけ彼女は私の中で上位の位置に腰を据えているのだ。


 乳牛もちょっと引く大きさの胸のモチモチ、ポニポニの柔らかさを堪能していると。



「すぅ――……」



 不意にユウが私の顔を両手でぎゅっと掴み、端整な顎をクイっと天へ向けた。



 お?? 何?? 鼻の穴を見せたいのかしらね。それともさっきの喧嘩腰紛いの瞳の件について詫びるのかしら。


 ユウが妙に既視感を覚えてしまう姿勢を取ったその数秒後。


 私の考えとは百八十度違う答えが脳天から骨盤へと駆け抜けて行った。



「うんがっ!!!!」


「ダバラガス!?!?!?」



 天へと向けたユウの顔が一直線に私の脳天へと急降下。


 額の真ん中に生じた痛みが頭蓋の中を抜け、延髄へ。そして延髄から背骨を通り腰へと到達した。


 脳天は理解出来るが、腰はおかしいだろ!!!!



「ぐああぁあぁああ!!!! の、脳が!! 腰がああああ――ッ!!!!」


「好き勝手に人の胸を揉むのが悪いんだよ!! ば、馬鹿じゃないのか!?」


「さ、触り易い位置にあったし!! 揉めと言わんばかりに誇るあんたの胸が悪いのよ!!」



 地面の上を激しくのたうち回りながら叫ぶ。


 気色悪いと罵られようが決してこの動きは止めんぞ!! こうでもしないと痛さで頭がおかしくなりそうだからね!!



「今のは大変悪い例ですわ。相手を観察するのに直接触れては意味がありませんからね」


「マイ、口を閉じろ。喧しいぞ」


「やれるのならとっくにやってるわよ!!!! い、痛さで頭がおかしくなりそうなの!!」



 ズキズキと痛む頭蓋と腰、その両方を器用に左右の手で抑え。


 奇妙奇天烈な姿勢を取りながら地面を転がり続け、馬鹿げた痛みが消失するその時まで喉の奥から大気を震わせる声を放ち続けていたのだった。




最後まで御覧頂き有難う御座いました。


本日も鼻がグスグスしていまして……。集中力が続かない所為か、プロットの執筆が上手くいきません。


毎年この季節は本当に憂鬱な気持ちになってしまいます。文句ばっかり呟いていてもプロットが進む訳ではありませんので大人しく光る画面に文字を打ち続けましょうかね。


それでは皆様、お休みなさいませ。

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