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第三百五話 長い道のりも漸く後半戦へ突入 その一

お疲れ様です。


本日の前半部分の投稿になります。




 重く厚い鉛色の雲が空一面に広がり、天高い位置から大小様々の大きさの雨粒が降り注ぎ耳の奥を揺らす雨音が雨量の多さを如実に物語る。


 南国特有の蒸し暑さと突き抜ける爽快な青空は連続出勤で疲労困憊なのか本日は鳴りを潜め、暑さと陽射しの強さに顔を顰めていた肌に心地良い環境が周囲を包む。


「ふぅ……」


 その良好な環境の中で疲労を籠めた吐息を微かに漏らした。



 雨が降りしきる中行われた砂浜の上を馬鹿みたいに走らされる午前の訓練。


 そして人によってはそれよりも過酷であると感じられる昼食を終えると午後からの訓練に備え、各々が野営地の中でそれぞれの時間を過ごしていた。


 ここと訓練場の頭上には淫魔の女王様が天蓋状に張ってくれた薄い結界によって雨を凌げているのが幸いだ。


 余程雨が好きな者では無い限り濡れたまま動きたく無いだろうからね。


 長机に備えられている椅子に深く腰掛け、大きく息を吐き出しながら結界越しに映る鉛色の空を見上げた。



「はぁ……。疲れた」



 意図せずとも口から零れた言葉だ。俺の本心である事に間違いない。


 ここへ到着して十と六日、つまり日程的には後半戦へと突入した。


 体力には自信がある猛者共もそろそろ己の限界が朧に見えて来たのではないだろうか??


 体の芯に残る重苦しい疲労感と精神的摩耗によって食欲不振へと陥ってしまい。昼食を平らげる、ただそれだけの行為に辟易しているのが良い証拠さ。



「ふぁむっ!! んぐんぐ……。う――ん。美味しいのは美味しいんだけども。何かが足りない??」


 いや、訂正しよう。若干一名を除き皆等しく疲れていますね。


「良くそんなに食えるな」


 鉛色の空から深紅の髪へと視線を落として話す。


「ふぁ?? ふぁ――。あんふぁ達が残したふぉのをたいらふぇてあげてるのよ」


「俺は課せられた目標分は平らげたぞ」



 丼十杯。


 それが本日の昼食時に与えられた課題であった。と言うか、さっさと咀嚼中の物を飲み込みなさいよ。お行儀が悪いぞ。



「んんっ!! あんたは達成したかも知れないけどさ。ほれ、あそこでう――う――唸っている鳥姉ちゃんなんかギリギリ食べられなかったじゃん」



 マイの視線を追い、野営地の隅へと顔を動かす。



「グスッ。うぅぅぅ……。やっぱり来なきゃ良かったぁ……」



 そこには普段の美麗な姿とはかけ離れた姿でこんもりと盛り上がった腹を抑えて悶え打つ一人の女性が居た。


 訓練着は土で汚れ、肌理の細かい肌も煤と埃に塗れ、白く美しい色の皮膚の至る所には擦り傷が目立つ。


 あの姿を見て誰が種族を纏める女王だと言い切れるだろうか。


 パッと見は戦場で戦い疲れ故郷に恋焦がれる傷だらけの戦士って感じですよね。



「アレクシアちゃん。だから言ったじゃん、御飯を食べる方がキツイって」


 その姿を見かねてか将又疲労の色が濃く残る彼女を労わる為か。狼の姿のルーがアレクシアさんの顔を大きな前足でタフタフと叩く。


「ルーさんは卑怯ですよ。普段から食べ慣れている分、食事も楽なんですから」


 そして彼女はそれを少々邪険に払った。


 相当お疲れの御様子ですね。


「あ、ひっどいなぁ。折角、疲労ろん……」


「疲労困憊」


「カエデちゃんありがとう!! 疲労こんぱいな姿を心配してあげているのに――」


「今はそっとして置いて下さい。カエデさん、出来れば昼休憩に相応しい御話しを朗読して頂ければ幸いです」


 アレクシアさんの近くで今も本を読む藍色の髪の女性へと顔を向ける。



「良いですよ。では、コホン……。大雨に打たれて汚く濡れた髪の女性が男性の背後から静かに忍び寄る。彼女が右手に持つのは血の錆びで汚れた鎌。鋭い刃面がギラリと怪しく光り、その切っ先には新鮮な血が付着していた。他者の命を刈り取るのには十分過ぎる程の威力を持つ事を物言わずとも証明した道具を天高く掲げ、彼の無防備な首筋に狙いを定めた。そして彼女は激しく降りしきる雨音に紛れ、殺意の波動に塗れた瞳で……」


「や、止めて下さい!!」


「そうですか……。では続きを読みますね」


「結構ですぅ!!!!」



 あの本、まだ読んでいたんだ。


 この状況に随分と合った話なだけにアレクシアさんは声を荒げて精一杯の抵抗を見せた。



「そろそろ食い終われよ?? 午後からの訓練がもう間も無く始まるだろうし」



 地面の上でキャアキャアと可愛く騒ぐ女性から再びマイへ視線を戻して話す。



 休憩時間の終わり、それは新たなる地獄が始まる事を指す。


 午後の訓練はいつも通り師匠達を相手にすればいいのかな??


 どういう訳か師匠は肉体鍛錬の日はやたら楽しそうだし。彼女の気持ちが晴れ渡る空にも似た陽性な感情を抱くと、それと比例する様に訓練は日に日に過酷さを増して行く。


 今日の午前の訓練に例えると。


 皆で旗を奪い合う砂浜走行を本日も行ったのだが……。最後まで旗を取れなかった者に対する罰が酷かった。


 例えば……。



「ん……」



 マイの右隣りで己の右腕を枕代わりにして、机の上で気持ち良さそうにうたた寝を続けて居る深緑の髪の女性。


 彼女に課せられた罰は……。砂浜から凡そ百メートル離れた位置にある岩礁を触って帰って来いとの罰であった。


 泳ぎを得意とする者にとってそれは息をするよりも簡単であろう。だが、ユウの四肢には重さ数十キロを超えるあの光の輪が括り付けられていたのだ。


 溺死の危険性が否応なしに付き纏う罰に対し、怪力無双さんは俺達にどのような最適解を見せてくれるのかと考えて注視していると。



『へいへいっと。じゃあ行って来ま――す!!』



 にっと快活な笑みを浮かべて海へと進み出したのは良いが。


 何を考えたのかユウは海面を泳がず『陸』 を歩き始めて移動を開始した。


 いや、理屈は分かるよ?? 岩礁と島は地形的に繋がっているし、歩き続ければいずれ到着する事も。


 しかし……。生物は生き続ける為に呼吸を必要としている。それを怠れば向こう側に住む御先祖様達に対して親切丁寧な御挨拶を送らなければならなくなる。


 いつまでも浮上して来ない彼女の姿にヤキモキしながら固唾を飲んで見守っていると。



『――――っ!!』



 海面にぷか――っと深緑の髪が浮かび上がると彼女はそのまま岩礁の上によじ登り、此方へ向かって元気良く手を振って自分の頑丈さ及び素晴らしい肺活量を証明してくれた。



『いやいやいやいや……。そうじゃないから』



 俺を含め数名が手を横に振り、その解答は間違っていますよとユウへ仕草を送ってやった。


 そして、帰りも行きと同じ要領で帰って来ましたとさ。



「わ――ってるわよ。お?? ユウ、すんごい気持ち良さそうに眠っているわね」


「だな」


 楽しい夢を見ているのか。


 口角が僅かばかりに上がり、右の口角の端からは少しだけ粘度の高い透明の液体が零れ右手を濡らそうとしていた。


「んふふ――。ほれ、あ――ん」


 親友の心地良い眠りを見つめてこいつは何を考えたのか。


 一口大のお米さんを箸で掴むと半開きのユウの口へと運び始めた。


「おい。怒られるぞ」


「大丈夫だって。ユウもあんたと同じで必要最低量しか食べていなかったし。その報いを受けて貰うのよ」


 それなら、まぁ……。と納得しかけてしまったが。


「人の嫌がる事をするなと教わらなかったのか??」



 普遍的な倫理観を横着者に説いてやった。



「多分幼い頃に教わったけど、今は頭の端っこでビクビク怯えながら大人しく座っているわ」


 端に追いやったのは傲慢な態度ってか。


「その報い以上のとばっちりが飛んで来ても知らないからな」


 机の上に頬杖を付き、何とも無しにマイの手元を眺めていた。


「にしし。ほれ、あ――んっ」



 マイが御米を放り込むと。



「はむぅ……?? う、ぐん……」


 半開きの口が瞬時に閉じ、んぐんぐと咀嚼を始めてしまった。


「あはは!! 食べた!! 食べたわよ!?」



 悪戯が上手くいってご満悦なのか、本日は鉛色の空に隠れて見えない太陽が俺の前に現れた。



「しかし、美味そうに食うよなぁ」


「んぅ……。んぐむ……」



 白米の甘味を感じたのか、目尻がトロンっと下がり。


 心地良い眠りを享受する姿も相俟って腹は一切減っていないのに、此方が空腹であると勘違いさせてしまう程の笑みだ。


 疲れた体に一時の安らぎを与えてくれる心地良い笑み。


 可能であればずっと眺めていたいね。



「ユウの笑みをおかずにして……。はいっ!! 御馳走様でした!!」


 丼の中に残る米とお皿に寂しく残っていたおかずを速攻で片付けて食に礼を放った。


「御粗末様でした。お、ユウが起きるぞ」



 きゅむっ……、っと閉じていたユウの瞼がゆっくりと開き。



「んあ?? あ?? あぁっ!? ぺぺ!! んだよ、これ!!」


 口内に違和感を覚えたのか、ガバッと跳ね起きると同時に口の中の異物を手の中へと放出した。


「ははは!! ユウ――。食べ物を粗末にしちゃあいけないのよ??」


 両足をブンブンと振り、憤り全開の彼女の顔を指差して笑う。


「お前さんの仕業か……」


「勝手に決める……。んな!? 何すんのよ!?」



 ユウが逞しい左腕でマイの体をがっしりと拘束し、右手の中にある物体を彼女の口へと向かって輸送を開始した。


 ま、まさかね。



「ちょ、ちょっと!? 放しなさいよ!!」


「はぁん?? 聞こえませんな――」


「嘘を付け!! ってか、その右手で何する気よ」


「あぁ、これ?? 今、お前さんが仰った通り。あたしも食べ物を粗末にしちゃあ不味いと思うからなぁ……」


 悪い笑みをニィッと浮かべるユウの顔を見つけた刹那。


「ッ!?」



 マイの髪の毛が数本ピンっと垂直にそそり立つ。


 口から吐き出した物を無理矢理捻じ込むつもりですか……。善の心を持つ者ならばここでお止めなさいと救いの手を差し伸べるのだが。


 お生憎様。


 因果応報って言葉が似合う状況なので静観し続ける事に至った。



「ふ、ふざけんな!! 至高の種族である私の口にきったねぇ物を入れるつもりなの!?」


「はぁぁ?? 誰が至高――だってぇ――??」



 受付口まで後僅か。


 これ以上静観していると此方にもとばっちりが襲い掛かって来る可能性があった為、雨に濡れ続ける北側の出入口へと視線を向けた。



「や、止めて!! お願い!! 私が悪かったわ!!!!」


「謝るのが数分遅いなぁ。優しい、優しいユウちゃんもぉ。怒る時は怒るのさっ」


「い、いやぁああああ――ッ!!!! はぐむっ!?」



 はい、お疲れ様です。


 頭上に張られた結界から鳴り続ける雨音を掻き消すマイの悲鳴が天蓋下に鳴り響くと同時。


 ここから北側に位置する訓練場へ続く道から師匠達が現れた。



「ふぅ……。少し歩いただけでもずぶ濡れじゃ」


 師匠が首から掛けている手拭いで濡れた煌びやかな金の髪を拭うと。


「髪が濡れてしまいましたわ……」


 それに倣う様にフォレインさんが嫋やかな指使いで髪を拭く。



 此処から訓練場まで数分だってのにあの濡れ具合……。結構降っているんだな、雨。



「師匠、お疲れ様です」


 誰よりも速く師匠の下へと進み労いの声を掛ける。


「うむ。準備は整っておるか??」



 濡れた前髪の合間から覗く美しい向日葵が咲く瞳、そして心躍る笑みを俺へと向けて仰って頂けた。


 少女と大人の狭間に存在する幼い顔にしっとりと濡れた髪が掛かり、眼下で此方を見上げる師匠の御顔はいつものそれよりも可愛さを増していた。


 濡れた髪の師匠の姿が珍しいのかそれとも師匠の御顔そのものが魅力的なのか。


 恐らく後者であろう。


 卵型に丸みを帯びた輪郭の端整な顔に外側へと流れる弧を描く眉。


 万人がほっこりとする可愛らしい顔に見上げられれば誰だって刹那にでも思考が停止するもんさ。



「え、えぇ。お――い。皆、そろそろ行こうか!!」


 刹那に湧いた羞恥を誤魔化す為、師匠に背を向けて皆へ声を掛けた。


 申し訳ありません。直視出来ませんよっと。


「はいは—―い!! リュー、起きて――。行くよ――」


「アレクシアさん、お腹の中の子供が重たいのは理解出来ますが。起きて下さい」


「喧しい。起きている」


「カエデさん!! 私はまだそういう事していません!!!!」



 いや、そこまで話す必要はありませんよね??


 苦しそうにお腹を抑えて必死に立ち上がる彼女から視線を動かし、野営地の淵で一人静かに瞑想を続けるアオイの下へ向かって移動を開始した。



「アオイ、聞こえる??」


「――――。はい、レイド様」



 俺の声に反応して薄く瞼を開く。



「そろそろ午後の訓練が始まるから行こうか」


「えぇ、畏まりました」



 目の色の輝きは日に日に失せ、間も無く寿命を迎える人以上に頬が痩せこけ。覇気と呼べる物は微塵も感知出来ない。


 目の下には獰猛なクマさんが刻み込まれ指先一つでも触れたら倒れてしまうのではないか?? そう思わせる程に彼女の容体は芳しくなかった。


 これ以上の訓練は不味いな……。


 命を落とさない為の訓練で光り輝く命を消失させる訳にはいかん。



「師匠、フォレインさん。少々宜しいでしょうか」


 アオイから踵を返し、師匠達の下へと駆け寄った。


「何じゃ??」


「如何為されましたか??」


「アオイの様子を見る限り、これ以上の訓練は中止すべきかと考えます」


 危険過ぎる。それが率直な意見だ。


「それはならん。アオイ自身が諦めぬ限り、儂らは止めはせん」


「娘を想う心。それは親身に受け取りましょう。ですがイスハが仰った様に私達は彼女が諦めない限り今まで通りそして分け隔てなく指導を施します」



 そんな……。



「いつかシオンさんを傷付けてしまった時のように、恐ろしい力の暴走を許しても良いと仰るのですか??」


 御二人には申し訳ありませんが俺は強くなる事よりも友人の命を取る。


 立て続けに中止の是非を問うをすると。


「レイド様。私は大丈夫ですから」


 背後から今にも消えてしまいそうな弱々しい声が届いた。


「アオイ……」


「お母様、訓練は今まで通りで構いませんわ。私を信じてくれている友が居る限り私は屈しません」


「でも、その様子じゃ」


「レイド様、有難う御座います。進捗具合は芳しくありませんが、私は必ずや成し遂げてみせます。それでは先に向かいますわね」



 そう話すと俺とフォレインさんの合間を抜け、大粒の雨が降る道へ一人静かに進んで行ってしまった。



「娘は少々強情な性格がありますが、大丈夫だと申したのです。それを信ずるのが友ではありませんか??」


「そうじゃ。見守るのもまた一つの形じゃて」



 師匠達はそう仰るが、俺としては気が気じゃないんだよね。


 噴火寸前の火山口の様にいつあの力が暴発してもおかしく無い。そして、再び取り返しのつかない事態を引き起こす。


 それだけは阻止しなければならないのだ。



「別に良いんじゃない?? 蜘蛛がヤルって言ってんだし??」


 モゴモゴと口を動かしつつマイが俺の隣に並び、随分と小さくなったアオイの弱々しい後ろ姿を見つめながら話す。


「そうそう。いざとなったらあたし達が取り押えてやるからさ」


「おうよ!! 横っ面叩いて地面に叩きつけてやらぁ!!」



 ユウと手をパチンっと合わせ、気持ちの良い笑みを交わした。



「そう簡単に物事は上手く行くとは思えんぞ。ユウとカエデは見事に達成したけど、アオイの場合は分からないだろ??」


「ん――。大丈夫だと思うけどなぁ。あたしが出来たんだし??」


「それはユウの才能だろ」



 この中で誰よりも速く成し遂げた素晴らしい才能であり、俺の心の片隅に芽を咲かせてしまった嫉妬の種でもある。


 何気無く発言した言葉であるが悪い意味で捉えていないだろうか??


 横目でチラリと確認すると。



「へへ。あたし、褒めれられちゃった??」



 嬉し恥ずかしい笑みを浮かべ後頭部を掻いていた。


 良かった。良い意味で捉えてくれたようだ。



「しらね。それより、早く行くわよ!!」



 微笑みを浮かべるユウの臀部をぴしゃりと大袈裟に叩く。


 うむ、良い音だ。馬の尻に鞭を打つ音と似ていた。



「いってぇ!! 何すんだよ!! もう一回、口に米を捻じ込むぞ!!」


 あ、そう言えば……。


「マイ。あの御飯どうしたの??」


 先程の光景がふと脳裏を過り、咀嚼途中の物資を受け取った彼女へ問う。


「勿論食べたわよ」


 吐き出さずに食べたんだ。


「そっか。ち、因みに。味は??」


「んぅ――……。何んと言うか……。妙に甘かったかしらね。ユウの唾液の甘さと御米本来の味が……」


「止めろ!! 恥ずかしい事言うな!!!!」


「オブグッ!?」



 腕を組み、かの味を思い出そうとしているマイの後頭部へ痛恨の一撃を見舞う。


 こっちは随分と乾いた音だな。きっと頭の中身が空っぽだからそう聞こえたのでしょう。


 そして……。ユウの唾液はどうやら甘い味の様ですね。こうして要らぬ情報が頭の中に蓄積されていくのだ。



「いっでぇなぁ!! 目玉飛び出たらどうしてくれんだ!?」


「飛び出す勢いで叩いたんだよ!!」


「何ぃ!?」


「「ガルルルル!!!!」」



 ガッチリと額と額を合わせ、闘志剥き出しの牙を互いに見せ合う。


 野生の狼さん達の喧嘩もこんな感じかしらね??



「ユウちゃ――ん、マイちゃ――ん。遊んでいないで行くよ――」


「後でそのでっけぇ西瓜もぎ取ってやっからな!?」


「上等だチンチクリン!! そっちのちっせぇ尻、倍以上に腫れさせてやんよ!!」



 あ――もう、五月蠅いなぁ。偶には静かに移動を開始して欲しいものです。


 少々大きな溜息を吐いて肩の力を抜くと、雨でぬかるんだ訓練場へ続く道の上で今もギャアギャアと互いを罵り合う女性の背に続いて行った。



お疲れ様でした。


現在後半部分の編集作業中ですので、次の投稿まで今暫くお待ち下さいませ。

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