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第三百二話 覚醒に至る者共 その二

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 肌の奥を焦がす馬鹿げた熱量の熱波が真正面から襲い掛かり、体内に籠った熱を逃そうとして額から滝の様に夥しい量の汗が零れ落ちる。


 一々拭い去るのも面倒な量の汗が体を濡らし、肌を伝わって地面に到達すると弾ける音共に瞬時に蒸発。


 白く形容し難い靄の形状に変化して漆黒の雷雲が広がる空へと立ち昇って行った。



 この馬鹿げた暑さには多少なりとも慣れた。しかし、ここへ来てからというものの……。日常生活の中でもコイツの声が頭の中に響いてしまうのが難点だな。


 イスハ達が言っていた通り、本来であれば閉じていた筈の心の蓋がパカっと開いてその中から飛び出て来た雄叫びが聞こえちまうのだろうさ。


 御先祖様の有難い声ならば……。


 はい、そうですか。仰せのままにっ!! と頭を垂れて大人しく従うのだが。


 あたしの御先祖様の場合はちょいとばかし毛色が違う。



「むぅっ!? い、いかん。今日は下腿三頭筋の張り具合が悪いな……。後でみっちり鍛えておこう」


 霊験れいげんあらたか処か、おとといきやがれといった気色悪い台詞が聞こえてしまうのだ。


「気色悪くないっ!!」



 あぁ、ごめんよ。あたしにはそう聞こえるのさ。


 耳が辟易するまで気色悪い台詞を聞かされ続けたら誰だって狼狽しちまうよ。


 本日も筋肉達磨と共にグツグツと煮え滾る溶岩の間近で熱波と灼熱の空気がせめぎ合う地獄の環境下に身を置いて指導を受けていた。



 耳を疑う忠告や気色悪い恰好で施してくれる指導はまぁまぁ勉強になる。


 先日、マイにも褒められた様に魔力の使い方も上達しているのが良い証拠だ。


 だけど!!



「俺の指導は効果覿面だろ!? ユウ坊も早く俺と同じ舞台に上がって来い。そしてぇ……。うぅんっ!! この翼の様な前鋸筋を作り上げ共に大空へ向かって羽ばたこうじゃあないか!!」



 一々ヘンテコな筋力の塊を見せつける必要はあるのか!? あぁんっ!?



「変ではなぁいっ!! 華やぐ可憐な一輪の花、若しくは星の煌めきと言え!!」


「星と花はもっと綺麗なんだよ!! むさくるしいミノタウロスの筋肉なんてどう見たら綺麗に映るんだ!!」



 溶岩の中で今も変な格好を取る筋肉達磨へとつい叫んでしまった。


 いかん、叫んだ所為で集中力が切れちまったぞ。折角体の中に溜まり始めた大地の鼓動が霧散しちまった……。



「これが分からない内はユウ坊もまだまだお子様って事さっ」


「あっそう。んで?? 力の使い方はまぁまぁ上手くなって来たけどさ。次の指導は無いの??」



 尻の穴を広げろって言葉以外で説明を頼むよ。



「ふぅむ……。大地の鼓動を掴み取るのは既に習得出来たか」


 無駄にデカイ顎に指を当てて座禅を組むあたしの方をまじまじと見つめる。


「御蔭さんでね」



 最初は随分と手こずったけども。


 コツを掴んでしまえばどうって事は無かった。要はアレだ、アレ。土の魔法を身に纏う要領で母なる大地の奥底に眠る胎動を掴み取ればいいんだよ。


 今もこうして目を瞑ると……。



「ふぅ……」


 腹の奥にずんっと響くあったけぇ力があたしの下から込み上げて来るのを感じるよ。


「それが大地の鼓動だ。しかし驚いたな、俺でさえかなりの時間を要したのに」


「そりゃあ、指導方法が良いんじゃない?? 余計な……」


「はっはぁ――!! やはりそうかぁ!! 俺の僧帽筋の輝きに導かれたんだなっ!!」



 余計な恰好を除けばと言う前に、その恰好を取られてしまった。


 まっ、一応は感謝しておくさ。



「これで漸く……。あのクソ猫に勝てる算段が生まれたって訳だ」



 多分だけど、この大地の鼓動の力を身に纏って戦えって事だよな??


 あの猫野郎の軟弱な攻撃じゃあ分厚くなったあたしの装甲はぶち抜けないだろうし。



「残念でした――!! それだけじゃあ勝てません――!!」


「は?? どういう事??」


 この力を身に纏うだけじゃ勝てないって事??


「正解っ!! ユウ坊にはな?? 後一つ足りない物がある」


「はぁ?? そんな訳ないだろ。厚い岩盤を穿つ力を手に入れた訳だし」



 相手はマイと同程度の馬鹿げた速さの持ち主だ。


 速さに劣るあたしの攻撃を数百、数千回外そうが極限まで高めた力を一発当てればこっちの勝ちじゃん。



「当たる当てないの話ではない。ユウ坊、俺はこの足りない一つを認めない限り貴様に力を貸す訳にはいかんのだ」



 お、珍しく真面な口調で話すね。



「その足りない物って、何」


「百聞は一見に如かず。口で伝えるよりも実際に見た方が早いだろう。俺がユウ坊に求めるもの。それを見つめて貰おうか」



 筋肉達磨の目が突如として深紅に染まり、そしてその光を直視した刹那。


 目の前の光景が百八十度ガラリと変わった。



 うお!? 何だこりゃ!?


 今まで熱波と溶岩が入り乱れる火山の河口付近に居た筈なのにあたしの体は宙に浮かび、足元には見慣れた連中達がどういう訳か……。



 ミルフレアと死闘を繰り広げていた。



 な、何でこの光景を見せるんだ??


 確かにこの敗戦は苦い経験になった。だけどそれを糧にして今に至るんだ。



『ちぃっ!! この化け物が!!』


『だ、駄目ぇぇええええええ!!!!』



 彼女達が死闘を繰り広げているとあの忌々しい短剣がレイドの腹に突き刺さり、マイが馬鹿げた力を解放。


 そして大魔とたった一人で対峙した。


 常軌を逸した力と力が双方向から馬鹿げた速さで急接近。そして二人の体が重なると同時に強烈な光が迸り、次の光景へと変貌を遂げた。



 あ……。これはあんまり見たくないな。



『よぉう!! ボケナス!! 御飯まだ――!?』


『喧しい。誰の為に作っていると思っているんだ……』



 あたしの親友が馬鹿みたいに口を開けて親しき者にしか見せない笑みをレイドに向けていた。


 その笑みを見たレイドも満更でも無い笑みを返し、仕方が無い。そんな風に呆れた溜息を漏らす。



『ふふ、冗談ですよ』


『カエデの冗談は冗談に聞こえないよ』



 カエデが柔和な笑みを与えればそれを真摯に受け止めて温かい表情で返し。



『えへへ、レイド――。この服どうかな!?』


『もっと機能性に富んだ服を買いなさいと言ったでしょう??』


『主の言う通りだ。そんなヒラヒラした服は直ぐに破れてしまうぞ。我々は常日頃から戦闘を想定した服を着熟すべきであり……』


『あぁ、うん。リューヴ、得意気に話しているけどルーはもうあっちに行ったぞ??』



 ルーとリューヴの他愛の無い絡みもしっかりと真正面で受け止め。



『レ――イド様っ。本日のアオイの着物は如何で御座いますか??』


『あ、あぁ。もう少し胸元を閉じて欲しいのが本音ですかね』


『うふふっ。レイド様さえ宜しければ時間が許す限り見つめていても宜しいのですよ??』



 アオイの愛溢れる言葉を受けて若干狼狽えながらも真摯に耳を傾けていた。



 それに対してあたしと言えば……。



『あはは!! ボケナス――!! これ美味いっ!!』


『お代わりちょうだ――いっ!!』


『ありません。全部マイが食っちまったよ……』


『『あはは!!!!』』



『……っ』



 温かい光景から自ら遠ざかる様に暗闇へと身を落として、膝を抱え込み温かな光に照らされるのを拒絶していた。


 皆が楽しければそれでいい。あたしの気持ちは二の次でいいんだよ。それで物事が全部丸く収まるのなら……。



「情けないぞ」


 うるせぇ。自分一人が幸せになっちゃあいけないんだよ。


 頭の中に響く筋肉達磨の声に答えてやった。


「何故、幸せになってはいけないのだ??」



 見れば分かるだろ!?


 あ、あのあったけぇ光景をぶち壊したくないんだよ!! あたしは!!


 目を瞑り、膝を抱え込んで己の世界に逃げ込んでも頭の中には春の陽気にも似た温かい光景が浮かんでは消える。


 そして何も無い虚無の空間が心を満たすとあたしの心の中に黒くて厭らしい感情が湧いてしまう。



 レイド……。お願い……。あたし以外の女にそんな優しい顔を見せないで。



「辛いのか」



 あぁ、辛いさ。心が痛いんだよ。


 お前さんには分からないだろうけどな。



「分かるさ。俺の心はユウ坊の心と繋がっているんだ」



 だったら!! こんな胸糞悪い光景を見せるんじゃねぇ!!



「そうなのか?? では、あの光景はなんだ??」



 は?? あの光景??


 蹲っていた体に喝を入れて重々しい首を動かして正面を見るとそこには……。傷付き倒れたあたしの体をレイドが必死に抱いている光景が浮かんでいた。



 あの光景は……。崩落に巻き込まれた時か……。



『ユウ!! 頼む……。逝かないでくれ……』



 彼の目には大粒の涙が浮かび上がり、声にならない声を咆哮し、薄れ行くあたしの魂を放すまいとして温かい体で抱き留めてくれている。



 大丈夫だよ?? レイド。あたしは何処にも行かないよ??


 あたしがそう話すも彼は決して放す事は無く。それ処かより一層深くあたしの体を深く抱きしめてくれた。



 あぁ……。温かいよ、レイド。


 凍えて震えていたあたしの心が彼の温かさで溶かされているようだ。



「温かいだろう?? 嬉しいだろう??」


 あぁ、最高だね。


 このまま、ずぅっとこうしていたい。


「そうだ。それでいいんだ」


 それでいい?? 皆の事は??


「自分を優先してはいけない理由等、あるのか?? 人は等しく平等だ。それが愛なら尚更な」


 平等?? 愛??


 何を言っているのか分かんねぇよ。


「もう気付いているだろう?? お前の中の太陽に」



 太陽……??


 頭の中の声と目の前に浮かぶ彼の顔。


 自分でも何が何だか分からなくなり混乱の極みに達してしまっている。


 だけど……。


 頭の中の声に気付かされたと言うべきか。大粒の涙を零す彼の顔を見上げていると、本当に温かい感情が胸の中から込み上げて来た。



 温かい、じゃなくて。熱い……。


 どうしてあたしなんかの為にここまで悲しんでくれるんだろう。あたしは馬鹿で、ノロマで、たった一人の滅魔にも勝てない軟弱者なのに。


 ありがとう。あたしの為に泣いてくれて。


 ごめんね?? がっかりさせちゃって……。



 あぁ……。嬉しい。


 男の人に抱き締められるのって、こんなに温かいんだ。


 違う……。レイドだから温かいのかな。



「そうだ!! いいぞ!! 体の中で燃え滾る想いを放て!!!!」



 この温かい感情は誰にも侵されたくないあたしの真実の心だ。


 誰も邪魔は出来ない……。誰にも止められたくない!!!!



「来――――いっ!! ユウ坊!! 今こそ真の想いを掴み取るんだ!!!!」



 あぁそうさ!! あたしの想いを邪魔する奴は……。


 尻を蹴っ飛ばして地平線の彼方まで引き飛ばしてやらぁぁあああああ――――ッ!!!!



 彼が温かな感情を持ってあたしを抱いてくれた、そしてあたしは自分の想いに気付いた。


 あの時、傷ついたあたしは彼の温かな行為に応える事が出来なかった。


 だけど……。だけど!! 今は違うんだ!!!!


 あたしを優しく抱き締めてくれているレイドの体に必死にしがみ付き、熱い想いの丈を咆哮した。


















「レイド!! お願いだ!! あたしだけの者になってくれ!! 絶対、絶対に!! 他の誰にも渡したくないんだぁぁああ――――ッ!!!!」


「おっしゃぁぁああああ!! きたぁぁああああ―—――ッッ!!!!」



 あたしの絶叫と共に体内に篭る熱が急激に沸騰して破裂。周囲の光景を掻き消す程の強烈な発光が迸る。


 熱と衝撃で体がどうにかなっちまいそうだ。


 でも、この熱い想いを抱いた体は破裂せずに存在していた。


 彼の体が徐々に白む景色の中へと消失し、いつの間にかあたしは涼しい風が吹く美しい平原に一人で立っていた。



「――――。あ、あれ?? 何処だここは??」



 グツグツと煮え滾る溶岩の近くから、数えきれない光景の連続に、先程の頬が熱くなる情景。


 一体どうなっちまったんだ??



「ふ、ふはははは!! ユウ坊!! 遂に……。遂に認めてくれたな!?」


 清らかな風が吹く平原の後方から響いた馬鹿デカイ声に振り向くと。


「お?? 誰だ??」



 深緑の短髪、身に纏うちょいと格好悪い服から覗く逞しい腕と足。


 そして、ニコっと笑みを浮かべる姿はどこか心に陽性な感情を与えてくれる。


 イカツイ顔付き、ゴツゴツした肉体、そして威風堂々とした出で立ち。そこから推測するに二十代後半から三十代中頃の好青年って感じかね。


 急に現れた好青年に対して目をパチクリさせていると。



「俺だよ!! 俺っ!!」


 両腕をきゅっと曲げ、見たくも無い格好悪い姿を取ってしまった。


「お、おいおい。まさかと思うけど。あの筋肉達磨の御先祖様!?」


「そうだ!! これが人間の姿……、だっ!!」



 その変な格好をしなけりゃ中々格好いいのに。勿体ねぇ……。



「えっと。取り敢えず、あたしが置かれたこの訳の分からん状況を説明してくれる??」



 いきなりこんな綺麗な景色の中に移動したんだ。


 説明してもらわにゃ納得出来ん。



「ユウ坊。貴様は俺の想いに答えてくれた」


「は??」


「も――。気付かないなんて、おま――せ、さんっ!!」



 ゴツイ顔に似合わない声を出すとあたしの顔を人差し指で堂々と指す。


 はい、うっぜえ。



「あ――!! 御先祖様を蔑ろにしちゃあ駄目なんだぞ!!」


「知るか!! 早く説明してくれよ!!」


「まだ分からないのか?? さっき自分で言ったじゃん。レイドの事が……。んふっ」



 彼がそこまで話すと。



「ッ!?」


 自分でも笑える位に顔の熱が一気に上昇してしまった。


「ま、まぁ……。う、うん。やっぱり、あたしはレイドの事が大好きだよ。この気持ちは誰にも邪魔されたくない。嘘偽りない本当のあたしの心、だから」



 地面に横たわる小石を見つめてそう話す。


 とてもじゃあ無いけど真正面を向いて話す勇気はありませんね。



「因みに!! 馴れ初めは!?」


「え?? あ、あぁ。ほら、最初会った時。何の見返りも無くパンをくれたじゃん?? すっげぇ優しいなぁ――ってのが第一印象でさ。んで、共に行動を続けている内に……。ってぇ!! 何言わせてんだよ!!」


 恥ずかしくて頭がどうにかなっちまいそうだ!!


「もぅ、恥ずかしがり屋さんねぇ」


「うるせっ。今更って言い方はおかしいけど、ハッキリと自分の気持ちに気付いて。今は清々しい気持ちさ」



 そして、この想いはあたしだけの物なんだ。


 誰にも邪魔されたくない、確かな温かい想い……。誰かを本当に好きになるってこんなに温かくなるんだな。


 初めて知ったよ。



「そうだ、その気持だ。俺はユウ坊の優し過ぎる所が嫌いなんだ。幼い頃から何をするのにも相手を優先させ、必ず一歩下がってしまう。全く……。何んと情けないと何度思った事か!!」



 長所を嫌われちゃあ致し方ありませんなぁ。



「時にそれは相手にも失礼に映る。いいか?? ユウ坊。貴様は優しさを捨てる勇気を持ってくれたのだ。それを証明するかの様に、レイドの体をぎゅぅうううう!! っと抱き締めた!!」



 いや、真似しなくていいから。恥ずかしいから止めてくれ。



「誰もが赤面してしまう強き想い。誰かを好きだと叫ぶ強き心。そこに気付いてくれた事に俺は本当に感激したんだ」


「そりゃどうも。んで?? ここからあたしはどうすればいいんだ??」



 今からレイドに告白しろってのは勘弁してくれよ??



「それはユウ坊の好きな機会で良い。俺はニヤニヤしながら甘い時を待っているからな!!」


「だから!! 恥ずかしいからもう勘弁してくれ!!」


「ふはははは!! 愛に苦しみ悶える乙女だな!!」



 もう乙女でも、軟弱者でも好きな様に呼んでくれ!!



「ユウ坊、俺はお前を認めた。信に足る者としてな」


「どういたしまして」



 取り敢えずこの場に相応しいと思われる言葉を放つ。



「これからユウ坊に俺の力を貸し与える。外の世界では覚醒と呼ばれているな」


「どうすればいいんだよ。覚醒って言っても、まだ本格的に経験した事ないからさ」


「簡単な話だ。俺の拳とユウ坊の拳を合わせろ。それで全て上手く行く」



 本当かなぁ……。


 結構いい加減な人だし、それに体を乗っ取られたレイドの件もある。あたしの体を乗っ取って好き勝手に暴れ回られちゃあ困るんだよ。



「猜疑心を抱くのは分かる。だが、拳を合わせてみろ。世界が変わるぞ??」



 男らしい拳をあたしの前に誘う様に掲げる。


 仕方が無い……。


 ここでくっちゃべっていても物事は始まらないし。



「そうそう!! 男は度胸だ!!」


「あたしは女だ!!」



 ええい!! 為すがままだ!!


 あたしは自分の拳を男の拳へと合わせてやった。


 拳と拳が合わさり心地良い骨の音がコツンと響くと同時に、心臓が一つ大きく鳴った。



「うおっ!? 何だ、これ!?」


 体が燃える様に熱い!! この溢れ出る力の源は何だ??


「それがユウ坊の真の力だ。未だそれは拙く脆いが、波が岩を削る様に長き時により馴染むであろう」


「へぇ……。すっげぇ。今なら……。大地をひっくり返せそうだ!!!!」



 自分の力なのに自分の力とは到底信じられぬ力の鼓動が体の内側から溢れて来やがる!!


 今直ぐにでも体を動かさなさいと自分の力で体が破裂してしまいそうだ!!



「行ってこい!! そして、皆に見せてやれ!! 我等ミノタウロスの真の力を!!」


「おう!! ありがとうな!! えっと……」



 こういう時。筋肉達磨、じゃあ不味いし。


 何て呼ぼう。




「我が名はタイロス=ガルボデア!!!! 聳える神々を打ち砕く剛力と呼ばれた者だ!!!!」




「はは!! タイロス!! これからも宜しくなぁ!!」



 タイロスに礼を述べると体が宙にふわりと浮く。恐らく間も無く目覚めの時なのだろう。


 爽快に晴れ渡る大空へと昇って行きながらタイロスへと礼を述べた。



「おぉう!! ユウよ!! 早く子供の姿を見せてくれ!! ちゃんと男の子を授かるんだぞ!?」


 ごめん、それは諸々の問題が片付いてから!!


 ってか、最後の最後にちゃんと正しい名前を呼ぶあたり。意外と真摯な奴なのかもな。


「意外じゃあなぁぁああああい!! 俺は真摯だ!!」



 はいはい。そんなに叫ばなくても聞こえていますよ――っと。


 彼に爽快な笑みを送ると上空に光り輝く球体を本当に爽やかな気分で見上げた。



 待っていろよぉ、皆。


 一皮剥けたあたしの力、存分に披露してやるからなぁっ!!!!


 己の内側から今にも炸裂してしまいそうな力を必死に御し、頭上に光り輝く白き光の下へと突っ込んで行ったのだった。



お疲れ様でした。


さて、この御話でミノタウロスの娘さんの想いの丈を知れたと思います。


まぁ……。ここまで読んで下さっている読者様にとって彼女の心情は既に周知の事ですが彼女にとって自分を優先するのは大変勇気がいる事なんですよ。


因みに、彼女が自分の真の想いを伝えるのはもう少し後の話になりますのでご了承下さい。



そして、ブックマークをして頂き有難う御座います!!


これからも皆様のご期待に添えられるように切磋琢磨を続けますね!!



それでは皆様、お休みなさいませ。


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