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第二百九十六話 最古の悪魔の目覚め その一

お疲れ様です。


本日の前半部分の投稿になります。




 空の女王と古龍の血。


 古の時代から受け継がれし力が生み出した熱波が地上へ届くと現代に生きる生物共が皆一様に顔を顰めた。


 肌に生える産毛を焦がす熱量、腹の奥に響く魔力の圧は正しく傑物の部類に属すじゃろうて。


 大馬鹿者の勝利によって一応は事なきを得て、空中決戦の熱が冷める頃。儂は大きな溜息を吐き出した。


 他人からは一段落とも心労祟った疲労とも受け取れる大きさの塊を吐き出すと幾分か気持ちが楽になる。


 じゃがそれは直ぐに不安へと変わり儂の足は列の前を右往左往。忙しなく移動を続けていた。



 魔力は安定しておるし大丈夫じゃろうが如何せん、自分自身の事では無いので単純な不安だけが悪戯に募ってしまうわい。


 空は朱に染まりつつありもう間も無く訪れる闇に備え今日の訓練は強制終了すべきじゃろうか??



「ねぇ」


 強制終了しても良いが、現実に戻れば疲弊した心に体が参ってしまうやも知れぬ。


「ちょっとぉ」



 うぅむ……。どうしたものか。



「聞きなさいよ。そこの……。妻の出産を控え、居ても立っても居られず右往左往する夫!!」



「誰が夫じゃ!! 儂は女じゃぞ!!!!」


 戯け龍に向かい忙しなく動き回る足を止めて叫んでやった。


「あはは!! やっとこっち向いたわね」


「お主が要らぬ事を言うからであろう」


「イスハが気を揉んでも娘達には届かないわよ。私達が出来る事と言えば……」



 フィロが安らかに眠るアレクシアの頭を一つ撫で、此方へと視線を送る。



「見守る事だけよ。まっ、制御不能になったら叩き潰せば良い訳であって?? 見守るだけってのは少々語弊があるのかも」


「少々……。のぉ」



 お主が龍の姿へと変わり剰え古龍の力を解放させた。


 いや、解放せざるを得ない状況になったと言えばいいのか。この小娘が龍の力を引き出す実力を備えているとは外見だけでは判断出来まい。


 才能と端的に呼べば簡単じゃが、恐らく普段の鍛錬を怠らず日頃の積み重ねが実を結んだのじゃろう。



 全く、末恐ろしい才能じゃ。


 そしてそれに匹敵する才能の持ち主七名が今も苦しんでおる。全員が暴走したら流石の儂らでも対処出来ぬぞ……。



「エルザード。もし宜しければそろそろ訓練を終えませんか?? 間も無く日が落ちますので」


 フォレインが今も静かに座る脂肪の背へと声を掛ける。


『もうそんな時間か。あっと言う間ね』



「そうねぇ……。時間が足りないと言えばいいのかしら。でも、この訓練に臨んだ事は大きな糧になる筈ですわ。塞いでいた蓋が僅かばかりに開き、日常生活の中でも彼等の声が時折響くのだから」



 時折響く声の中には、当然聞きたくも無い声が含まれている。


 己が真に求める欲求や不平不満を解消しろと誘導する。そしてその相手に抱く感情によっては殺意がフツフツと煮え滾る。


 己でも制御出来ぬ負の感情をまざまざと見せつけられるのは正直堪えるじゃろう。



 じゃが。


 それを越えてこそ得られる物もあるのじゃ。それこそが今回の訓練の最終目標である。


 頼むぞ、お主達。儂らも越えて来た厚く高い壁に絶望してくれるなよ??


 何やら妙な高揚感に包まれている表情を浮かべる馬鹿弟子の前にちょこんとしゃがみ込み、額をちょいと突いてやった。


「ふふ……。気持ち良さそうな夢を見ている幸せな顔を浮かべおって。お主は一体どんな体験をしておるのじゃ??」


 きっと、己の内に存在する者と愉快な会話を繰り広げておるのじゃろうて。


 相手に飲まれる事無く己を強く保てよ、儂の大切な馬鹿弟子め。


























 馬鹿弟子の口が不意に開くと同時。


「――――――――。それはそれはもう……。素敵な体験だよ」


 聞き覚えの無い女の声が響いた。


「「「っ!?!?!?」」」



 馬鹿弟子から一瞬で距離を取り、儂と同じく臨戦態勢を整えた者達と肩を並べて最大級の警戒を続けた。


 な、何じゃ!? 禍々しい力は!?



「ふぅん。攻撃態勢に入るまでの時間は及第点といったところ、か。流石は女王様達だねぇ。あっ、一人は覇王のお嫁さんだったね!!」



 いつもの優しい黒き瞳は殺意に満ちた赤き瞳へと変容し。



「鬱陶しい結界だなぁ」



 漆黒の龍の甲殻を身に纏った右手の人差し指で脂肪が張った結界をまるで紙を裂くかの如く。容易い所作で切り裂いてしまった。



 い、一体何が起こったのじゃ……。



「あぁ!! 鬱陶しい淫魔だ!! お前ぇ、私に気色悪い魔力を当てたよねぇ??」


 脂肪の前に歩み寄り、一段低くなった声色を投げ掛ける。


「――――。それがどうしたの??」


「へぇ!! それだけの魔力を放出していても話せるんだぁ!! 凄い凄い!!」



 脂肪の声を受け取ると今度は軽快に頷く。


 刹那に変わる感情と表情。まるで感情の制御が効かぬ幼子みたいじゃな。



「私にぃ、鬱陶しい感情を抱かせるなって言えば分かるかな??」


「理解に苦しむわね。というかあんた……。私の男の体を好き勝手にして只で済むと思ってんの??」



 脂肪が目を開くと。



「おぉぉお!! 呆れた魔力だねぇ!!」



 大地が震えてしまう桁外れの魔力が放出されて周囲の木々が揺れ動いた。


 脂肪を中心として矮小な砂が宙へ浮き放出された魔力が小石を砕き、風は恐れをなして流れる事を諦める。


 天然自然が恐れる程の魔力。


 あ奴も儂らと同じく傑物の類に属する。じゃが強者足る圧と魔力を受け取っても動じぬ処か、嬉々とするのは恐らくあれと同程度の力と対峙した事があるからじゃろう。



「威嚇しても無駄だよ――。その程度の魔力には慣れっこだからさっ」


 儂の予想通りの台詞を吐くと更に彼女との距離を縮める。


「あっそ。ってかあんた。何の用があってこっちの世界に出て来たのよ」


「ん――。特に用は無いかな??」



 人差し指を口元に当て、考える仕草を取って話す。



「じゃあ帰れ。そして、二度と出て来るな」


「うわぁ、酷い事言うねぇ。あっ!! そうだ!! 酷いと言えばぁ……」



 口角を柔和に上げて警戒態勢を取る儂達を順次眺めて行く。



「君達もレイド君に酷い事しているよねぇ」


「何じゃと??」



「んふふっ。実はさぁ随分と前から彼の記憶を探ろうとしていたんだけどね?? 最初の方はお互いに信頼し合っていない所為か、本当にふかぁい位置に記憶の海があったから全然届かなかったんだけどぉ」



 もしや、こ奴……。



「最近になって漸くちょっとだけ覗き見る事が出来たんだっ!! どうしてレイド君が龍の契約の力に耐えきれたのか、何で孤児として寂しく育ったのか。それを探り当てたんだぁ」


「おい貴様、もしやと思うが……。その事実を伝えておらぬだろうな??」



 戦闘態勢を継続しながら問う。



「勿論だよぉ。私、レイド君に嫌われたく無いし。いいのかなぁ――?? 早く言わなくて」


「今は未だその時期では無い」


「早めに言っておいた方が良いよ??」


「お主に言われずとも分かっておるわ」



「ぷっ!! クスス……。あははぁ!!!!! あ――はっはっはぁああ!! あ――!! 情けないねぇ!! いい大人がたった一つの事実を伝えるのに億劫になっちゃってさぁ!!」



 こ、この……。人の気持ちを逆撫でしおってぇ!!!!


 狂気的な笑い声が儂の憤怒を呼び醒まし、この声の持ち主を叩きのめせと狂い叫んだ。



「落ち着きなさいよ、イスハ」


「分かっておるわ。あれは誘いじゃよ」



「は――。笑った。じゃあ…………」


 手の部分のみだった龍の甲殻が肘までに広がると同時。


「死んじゃおっか!!!!」



 恐ろしき移動速度で脂肪へと襲い掛かった!!


 指先に備わった鋭い爪を一気呵成に上空から振り下ろすが。



「しょぼい攻撃ねぇ。私の結界を裂こうと思うのならそれ相応の資格を持って出直して来なさい。クソダサイ女」



 脂肪の結界は傷一つ付かず今も分厚く硬い状態を維持していた。



「いたた……。硬いねぇ。私が生きた時代でもここまで硬い結界を張る魔物は早々居なかったよ」


「それはどうも。もうお終いなの?? ってか、気色悪い声出さないでくれる?? 吐きそうだから」



 馬鹿者!! それ以上挑発するな!!


 お主も理解しておるであろう、まだ底が見えぬ実力を隠しておると。



「う――ん。今のレイド君の体なら……。もうちょっとならイケそうかな??」


「何をする気じゃ」


「淫魔のお姉さんがさぁ、資格を持って来いって言うからね?? それ相応の力を解放しようかなぁって!!」



 歪に口元を曲げる様が得も言われぬ不安感を増長させる。



「止せ。儂らはお主に対して手を加えぬ。じゃからお主も危害を加えるでない」



 話し合いとまではいかぬであろうが。せめて、弟子の安全だけは確保しておきたい。


 あの馬鹿げた力の暴走果てに馬鹿弟子が五体満足で済む訳が無いからな。



「残念っ!! 久々の外だからぁ、パァっと遊びたいんだ!!」



 ちっ!! 話を聞かぬ愚か者め!!



「うぐぐぐっ!!」


 弟子擬きの体の中からドス黒い魔力が滲み出て清らかな空気が漂う空気を侵食し始めた。


「そうか……。では、その前に!! 片を付ける!!!!」


 戯けが!! させるか!!


「少々痛むかも知れませんが我慢して下さいね」



 儂とフォレインが真っ向から、そして最短距離を突き進み奴の意識を立とうと駆け出した。



「んんっ!!!! はぁぁぁあああ!! だあああああ!!!!」


「ぬおわっ!?」



 滲み出た黒き魔力が体内に吸収されると衝撃波が迸り、儂とフォレインの攻撃を跳ね返す。


 そして体内から滲み出たドス黒い魔力が霧を形成すると弟子の体を包み込んでしまう。



「魔力を刹那に解放しただけで私達の攻撃を弾くとは」


「それだけ馬鹿げた力を秘めておるのじゃよ。さぁ……。現れるぞ」



 ドス黒い霧が徐々に晴れるとそこから現れたのは……。儂の想像を超える生命体であった。



「フゥゥ……。フゥッ!!!!」



 弟子の右半身全てが龍の漆黒の甲殻で覆われ殺意と憎悪に満ちた瞳が朧に揺れ動く。


 口から吐き出された吐息は白み、己自身の激情に呼応するかの如く肩で呼吸を続けていた。



 な、何じゃ。こいつは。


 自我を失ったけだものか!?



「イスハ!! 仕掛けますわよ!!」


「お、おぉう!!」



 フォレインが素早く刀を抜刀すると右半身に急襲を仕掛け。儂は左半身へと襲い掛かった。


 左右同時攻撃にどう対応するのか。


 その反応を確かめて一から策を練り直す!!



「頂きましたわ!!」


「だりゃああ!!」



 空気を撫で斬る鋭い一閃が鞘走り岩を砕く激烈な拳が左右同時に襲い掛かった。


 どうじゃ!? 儂らの攻撃は!?



「温いよ?? お嬢さん達っ」


「なっ!?」



 儂の拳を左手で受け止め、フォレインの一閃は右腕の甲殻で受け止められてしまった。



「攻撃はこうするんだよ!!」


「ぐわっ!!!!」



 弟子の体が回転すると同時に旋風が沸き起こり一瞬で距離を取られてしまう。


 儂の抜き身の拳を素手で受け止めただと??


 しかもフォレインの刀も甲殻の装甲のみで防ぎ切った。共に肩を並べている彼女の手元を確認するが……。


 彼女が持つ刀の中央。鋭利な刃の一部が欠けていた。


 刀の刃を削ってもあの装甲には傷一つ付けられぬか……。全く、とんでもない化け物じゃな。



「凄いよねぇ。私の圧に怯える処か、向かって来るなんて」


「こんななまくらでは無くて愛刀を持ってくるべきでしたわね」


「物怖じしない性格なのじゃよ」


「んふふ。楽しめそうで良かった。直ぐ壊れちゃったらつまらないもん」


「お主は楽しめても、その体はいつまでもつのじゃ??」



 龍の甲殻に包まれが右腕は正常に見えるが……。人の肌を晒しておる左半身の皮膚には所々に裂傷が見られる。


 恐らく内側から迸る力に体が耐えきれずに裂けておるのじゃろう。



 人体を内側から食い破ろうとする獣相手にこのままでは勝てぬ、か。


 仕方があるまい。不本意じゃが、少々本気を出すとするかのぉ。



「さぁ?? でも、呆れる位に頑丈だからね。この体は」


 己の腕を上げては確かめる様に悪戯に動かす。


「それで?? あなたの本当の目的は何でしょうか?? 破壊の限りを尽くすのか、それとも気まぐれで出て来たのか。教えて頂けたら光栄ですわ」



 フォレインが刀を収めて問う。



「目的?? そうだねぇ。蜘蛛の御姉さんが話した通り、この世界を滅茶苦茶にするのも良いよね!! この体の本当の素晴らしさに気付いていないレイド君は可哀想だな」



「「可哀想??」」



 フォレインと声を合わせて言う。



「だってさぁ。その気になればここに居る全員を倒す事も出来るし、違う大陸に向かえば直ぐにでも征服出来るもん。勿体無いよねぇ」


「どうしてそれをしないのか、分からぬのか??」


「さぁ?? 私はレイド君じゃないもん。分かる訳ないよ」



 ふんっ、愚か者め。



「それはな……。儂の弟子はこの世界に生きる者に対して尊敬しておるからじゃよ。友を想い、愛しむ。誰よりも温かい心の持ち主じゃからじゃよ」



 今でもあの馬鹿げた体の中から感じるわい。


 あ奴の春の陽気にも似て温かくて心地良い心が。



「世界を愛し、人を好きになり、共に生きる。それが……。儂の弟子の心じゃよ」




「違います――!! レイド君の本心は真っ黒に焦げた殺意と憎しみだよ!! 他人である狐さんは感じた事が無いから分からないと思うけど彼の中に居る私から言わせたら、それはもう素晴らしく真っ黒に染まった心なんだ。家族を持つ者が憎い、静かな孤独が憎い、心を通わせられない他人が憎い、悪戯に向けられた殺意が憎い。自分でもどうしたらいいのか分からない負の感情を……。心地良いと感じている時もあるんだぁ」



 その鼻に付く笑みを止めろ。



「私が大好きな黒い心。それが心の中、一杯に広がっているから私がこうして外の世界に出て来る事が出来たんだ。私がここに居る。それがその証明なんだぁ」



 鬱陶しい口調を止めろ。



「狐さん?? もしも――し。聞いていますかぁ?? あっ!! そっかぁ!! 師匠なのに理解出来なかった事が悔しいんだ!! クスクス……。アハハ……。アハハアッ!!!! なっさけないねぇ!! たった一人の男の気持ちも汲んであげられないなんて!! 無様過ぎて笑えてきちゃったよぉ!!」



「口を閉ざせぇええええ!! 大馬鹿者がぁぁああ!!!!」


 体の奥底から沸き上がる激情が爆ぜ本来の姿に戻ると、膨れ上がった魔力と共に突貫を開始した。


「おわわっ!! 速いね!!」


 儂の急襲に驚き、目を丸くしたままこちらの放った右の拳を容易く回避。


「お次はぁ。蹴りだね!!」



 瞬時に冷静さを取り戻した冷酷な表情で儂の右上段蹴りを容易く見切る。



 ちぃっ!! 弟子の中から見ておる分、厄介じゃ!!


 儂の攻撃を手に取る様に避けるのがその証明じゃな。



「えっとぉ。体術?? それとも拳法って呼ぶんだっけ?? その戦闘方法は」


「良く口が動く奴じゃな!!」


「会話は好きな方だからね。それに私が生きた時代には無かった技だから興味津々でさぁ、レイド君の中から見ていて覚えたんだよ!!」


「ふんっ!! 付け焼刃で……。学べると思うな!!」



 刹那に開いた距離を生かし、今日一番の上段蹴りを放つ。



「それは……。どうかな!!」

「何っ!?」



 儂と同じ角度、威力の上段蹴りで相殺しおった!!



「おぉ……。人間の体で放つのは初めてだから緊張したけど。上手く出来たね!!」


「ちぃっ。ふぅぅ……」



 心を鎮めろ。


 荒れ狂った心では敵には勝てぬ。静まり返った水面に敵の姿を映せ。


 心は凪一つ無い静まり返った水面……。じゃが、拳は燃え盛る業火の如くっ!!!!


 大きく息を吐き、精神を研ぎ澄ませて激情を水面の奥底へと沈めてやった。



「ふふふ、楽しいねぇ。殺し合いは」


「馬鹿弟子!! 聞いておるかああああ――――ッ!!!!」



 腹の奥底から声を絞り出して雄叫びをあげる。



「うるさっ!!」


「貴様はこんな弱き心の持ち主には負けぬ!!!! 丹田に力を籠め、歯を食いしばれ!! 分かったかぁぁああ!!」



 さぁ、行くぞ!!


 貴様の体に極光無双流を叩き込んでやる!!!!



「五月蠅くて鼓膜が破れちゃうって。それでもレイド君は聞こえていませんよ――?? 残念でし……。ぐっうぅ!?」



 鬱陶しい台詞を最後まで聞き遂げる事は叶わなかった。


 右足で大地を蹴り相手との距離を消失させて熱き魂が籠った左の拳を腹部へと突き刺す。



「うっ!? あぐぁっ!?」



 左右の拳の連打の雨、弧を描いて空気を切り裂く烈脚。


 相手に思考させる時間を与えない素早い連続攻撃によって弟子の体が徐々に宙へと浮く。



「や、やめ……。この体、ぐぁっ!! レイド君……。のなんだよ!?」



 その戯言には付き合いきれん!!


 それに……。



「儂の弟子なら此れしきの攻撃で音を上げぬわっ!!」



 左足を軸に天へと向けて右足を叩き込んでやった。



「あがぁっ!!!!!」



 無防備に空へと舞い上がる体、それを視界が捉えると同時に宙へと舞った。



 勝機到来じゃ!!!!


 何物をも穿つ我が無双の一撃、受け止めてみろ!!!!



「食らえぇぇえええ!! 桜華穿風脚おうかせんぷうきゃく!!!!」



 大空へ向かって昇って行く体目掛け、剛脚で大地を蹴って追尾。


 瞬き一つの間に上昇しきって空に停止した体に追いつくと、体の芯を軸として地面と平行に回転を開始。


 そして己が迸る魔力と回転する力を集約させた右の踵を無防備な背へと突き刺してやった。



「ぎゃああああああ!?!?!?」



 地上から上空へそして天から地へ。


 重力と儂の一撃を合わせた合力により空気の壁を突き破りながら落下して行く。


 堅牢な大地に体が着弾すると美しい窪みが出現、立ち昇る大量の土煙が儂に勝利を確信させた。



「ふぅっ。これだけ痛めつけば大丈夫であろう」



 窪みの淵へと着地すると空気の中に漂う煙たい土煙を払って言葉を放つ。



『クソ狐!! やり過ぎだ!!』


「ふんっ。これしきの技で倒れる弟子では無い」



 どんなに強力な技でも心が凍る威力でもあ奴は必ず儂に応えてくれる。


 そして、いつもの笑みを浮かべこういうのじゃろう。


『参りました!! 師匠!!』 と。


 太陽よりも明るくそして幼子の笑みの温かさを持つ我が弟子の笑みを思い浮かべながら濃厚な土煙の中を注視していた。



お疲れ様でした。


現在後半部分の編集作業中ですので次の投稿まで今暫くお待ち下さいませ。

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