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第七十話 饗宴では無く、狂宴の開始

お疲れ様です!! 本日の投稿になります!!


本来であれば、食事は慎ましく進む予定で。そして、さらっと旅立つ予定でしたのだが……。


それでは味気ないとして、急遽追加させて頂きました。




 壁際に掛けられた燭台から放たれる柔らかい橙の明かりが大部屋を照らす。


 何処までも広がる闇も蝋の明かり、若しくは彼女達が放つ光に顔を顰めて接近出来ずにいた。


 初夏の夜に相応しい雰囲気に誰もが朗らかに表情を崩してしまうであろう空気の中。


 俺の気分は大変深く沈み、体中の肌を刺す痛みを誤魔化す為に腕。そして淫らな印が消失した左胸付近を手で擦っていた。



 はぁ……。


 起きた途端にこれだもの……。


 何で静かに寝かせてくれないのですかねぇ……。



 先程の件を思い出すとブルっ!! と体が一つ震えてしまいました。



「よぉ!! どうしたんだよ」



 縁側に近い畳。


 俺の右隣りでコロンと寝転がるユウが此方を見上げつつ問うた。



 随分と寛いだ姿勢と表情ですね?? 羨ましいですよ。



「痛むんだ」


「痛む?? あぁ、カエデから受けた攻撃で??」



 その通りです。


 肯定の意味を含ませて一つ頷いた。



 口に出して抗議をしようものなら、アレ以上の攻撃を加えられる恐れがありますのでね!!



 少し離れた畳の上。


 大変カッコいい訓練着に身を包み、膝をちょこんと抱えて座り。



「ふぅ……。やっと直りましたわ!! 全く。どういう仕組みなのですの?? この酷い寝癖は」


「分かりません。幼い頃からこうだったから」



 アオイの親切を受け続け、漸く通常の髪型へと戻った彼女へチラリと視線を送った。



「あんたが悪い」


「あのな。あれだけ傷付いて、体力を消耗したのなら誰だって熟睡するだろ?? そんな時に。はい、あなた達は布団に入ってはいけませんよ――って注意を促す事が出来る訳ないだろ」



 俺はいつでも対応出来る程完璧では無いのです。



 ユウのお腹の上。


 これから始まる素晴らしい食事をダランと弛緩した姿勢で待ち。彼女の了承も得ないで勝手気ままに片側の双丘を枕代わりに使用している太った雀にそう言ってやる。



「気を張っていれば出来る!!」



 出来るか!!



 くそう。


 強く叫んで言ってやりたい。俺は無実だと!!!!


 言えないのが歯痒いです!!



「あぁ……。もぅ……。早く来ないかなぁ……」



 腕を組み、徐に立ち上がると。ぎゅぅうっと眉を顰めてユウのお腹の上を右往左往。



「一日半も寝ていたって事はだよ?? 御飯を六食も損した計算なのに……」



 六食??


 えっと……。エルザードが来なければ、前日の昼、夜。そして翌日の朝と昼……。


 二食多いのは此処の食事が多いからって事でしょう。



「あぁ、もう!! お腹空いたっ!!」



 何処にも向けられない憤りを誤魔化す為。


 目の前に立ち塞がる巨大な肉の壁に小さな拳をムニュリと捻じ込んだ。



 うむっ。


 良い音だ。




「お――い。そこ、殴って良い場所じゃないぞ――」


「良いのよ!! 私の鬱憤を晴らす為にこの厭らしい胸は存在するんでしょ!?」



 ぎゅっと握った拳をクイっと顎の下へ上げ。



「ほっ。ふっ!! ふんっ!!」



 左、左、右!!


 っと。素晴らしい連携攻撃を肉の壁へと与え続け。



「とりゃぁっ!!」



 最後は後方に伸びる尻尾の回転攻撃を加え。



「ふむっ……。中々の流れだったわね」



 一連の攻撃に満足がいったのか。



 ふぅ……。よく頑張ったわ。


 そう言わんばかりに腕で額の汗を拭う所作を取った。



 しかし。


 その所作が肉の壁さんの怒りを買ってしまった様だ。



「お前さんは楽しいかも知れんけどな?? あたしは、痛みにちょっと我慢してんだよ!!」


「ひぃっ!!!!」



 恐ろしい殺気を感じた龍が踵を返して逃げ遂せようとしたものの。


 ユウに尻尾の先端を掴まれ、そのままズルズルと。



「い、いやぁ!! お願い!! そこだけはいや!!」



 敢えて、恐怖を味合わせる様にゆっくりと魔の谷間へと誘い始めた。



 こっわ、あの速さ。



「そこだけぇ?? じゃあ今日は片側で下敷きにしてやんよ」


「ほ?? ――――――――――――。はわわわわわっ!!!!」



 ユウが左手で片側のお肉をむんずっと掴み上げ。



「はぁい、よっこいしょっとぉ!!!!」



 パクンと、太った雀を肉の山が食らってしまった。



「ん――――!!!! 重くて前が見えない――――!!」


「今日の夕飯、何だと思う??」


「え!? あ、あぁ……。体が傷付いて、体力が枯渇しているからきっと今まで通りの量じゃない??」



 片側のお肉が上下左右有り得ない動きを見せ。


 動くな!! 


 そう言わんばかりに片手で仰々しく動く肉の塊を抑え付けながら笑う彼女へそう話す。



 え、えぇ……。


 どうなってんの?? アレ。


 何だかさ。ユウと初めて出会った時より大きくなっている気がしない様な、ある様な??




 お肉さんの激しい咀嚼を、大変な恐れを抱きながら眺めていると。



「皆!! 待たせたな!!」


「恐怖……。こほんっ。素晴らしい夕食の始まりですよ――っ」



 御世話焼きの御二人が遂に姿を現してしまった。


 

 モアさん?? 今、さり気なく恐怖って仰いましたよね?? 俺は聞き逃しませんよ??



「「わ、わぁぁい……」」



 メアさんとモアさんが運び始めてしまった馬鹿げた食材の山々。


 それに対し、正直な声色で俺とユウが迎えた。



「よいしょ!! ふぅ――……。重たいなっ」



 ドン!! っといつもの御櫃を大部屋の中央にメアさんが置き。



「川魚の塩焼きさんとぉ……。鶏肉の照り焼き、そしてお野菜の天ぷらですよ――っ!!」



 大皿を越えた大皿にこれでもかと盛った魅惑のおかず達をその脇に添えた。



 え、っと……。


 巨人達が宴会でもここでするのかしらね??


 俺達人間の大きさに見合った量じゃないですよ、ソレ。



 誰もがあのふざけた量に焦燥している中、一人の英雄が巨岩を持ち上げ。


 弱き我々を救う為に参上した。



「う、う、うぉぉぉぉおおおおっ!! だぁああああ!!」



 小さな手で大きな肉の山をグンっ!! と押し上げ。



「す、す、凄ぉい……。アレ、私が全部食べていいの??」



 大部屋の中央で待つ食材を目にすると途端にトロンっと目尻が下がった。



『食べられるものなら食べてみろ』



 俺達がそんな視線を送りながらも太った雀は一切脇目も振らずに御櫃の脇に到着。



「はわわわあぁ……。全部食べたいけどぉ……。雑魚共に少しは残しておかなきゃいけないしぃ……。悩むわぁ……」



 寧ろ全て食べて貰った方が此方としては喜ばしい結果が待ち構えている筈。


 生贄、じゃあないけど。アイツには頭の天辺まで食材を詰めて頂きましょうか。



 しゃもじを器用に扱い、どうやったらそんなに綺麗な御米の山が作れるのか。


 常々考えている疑問を解明する為に観察を続けていると。



「おぉ!! 丁度始まる所じゃったか!!」



 軽快な声と共に、薄い青の浴衣を着た師匠が畳の上に小さなあんよを乗せ。



「へぇ!! 美味しそうじゃない!!」



 師匠の直ぐ後ろ。


 俺が彼女の父親であったのなら。



『もっとちゃんとした服を着なさい!!』 と。


 頑固親父の定型文の台詞を放つであろう服を着こむエルザードが続き。



「隣、いい??」


「どうぞ」



 背筋がゾクっとする笑みを浮かべ、俺の左隣りにちょこんと座った。



「はぁ……。さっぱりしたっ。此処の温泉だけは最高よねぇ――。狐を何処かに送って、私が占領してやろうかしら」


「狐の里と淫魔の里の間で戦いが勃発するからお止めなさい」


「んふっ。冗談よっ」



 貴女がそう話すと冗談に聞こえませんよ。



 しかし……。すっげぇいい匂い……。


 風呂上りだからかな??



「ふぅ……」



 エルザードが髪の毛をふわっと耳に掛けると、その所作によって馨しい女の香が風に乗って鼻腔を擽る。



 食事前に如何わしい感情を抱いてはいけません。


 その所為で酷い目に遭ったのを忘れたのか??


 己を戒め、おかしな誘惑に乗るまいと心を強く持っていると。



「これ。足を広げろ」


「え?? あ、はい……」



 此方の了承を完璧に得る前に師匠が崩した俺の足を座布団代わりにして着席してしまった。



「ふぅむ……。やはり、弟子の座布団は最高じゃなぁ」


「そ、そうですか。出来れば……。っと。正しい師弟関係の距離で座って頂けると幸いです」



 三本の尻尾が目の前でフサフサと揺れ動くものだから大変話し辛いですよ。


 後、揺れ動く度に物凄くいい匂いがするから困ります……。これじゃあさっきの二の舞になってしまいますよ……。



「断る!!」



 左様で御座いますか。


 腕をむんっ!! と組み。不退転の姿勢を取ってしまった。



「お主達。飯を食う前に話す事がある」



 煌びやかに瞳を輝かせ、丼に白米を素敵な形で盛り終え。おかず一式を取り皿に乗せ。



 さぁ!! 今から食べよう!! 



 顎間接を最大可動させ、あ――んっと口を開いたマイを師匠が制した。



「何よ、今から御飯を食べるんだけど??」


「直ぐに終わるから安心せい」


「早くしてよね」



 全く、アイツは目上の人を敬う事を知らないのか??


 非常識ですよ、非常識。



「おほんっ。此度の件を説明しなかったのは、稽古を始める前にも説明した通り。お主達には危機感が欠如していたからじゃ。この世界にはお主達が想像する以上に強き者が存在する。その際たる例が儂じゃ」



 ふふんっと。


 ちょっとだけ自信ありげに鼻を鳴らす。



「鬱陶しいわね。早く話しを進めなさいよ。メア――、お酒――」


「は――い。只今お持ちしま――す」



 貴女も口調に気を付けましょうか。



「ぐぬぬぬぅ……」



 ほら、怒りで尻尾が六本に増えてしまいましたし……。


 同時に足に乗る質感も増えてしまい何とも言えない柔らかさが、ね??



「つまり、これから行動するに至って。今まで以上に気を引き締め、己の力と相手の力の差を見誤るな。そう教えたかったのですよね??」



 お行儀良く座るカエデが話す。



「その通りじゃ。誰にでも喧嘩を売る馬鹿げた行為に至るのでは無く。相手の力量を見定める事も時には必要なのじゃよ」



「それは承知しました。所……で、エルザードさん。少々宜しいでしょうか??」


「ん?? なぁに?? きゃあっ!! 来た来た!!」



 白の陶器製の徳利が目の前に置かれ、わぁっと目を輝かせたエルザードにアオイが問う。



「私達の里を襲ったあの淫魔の行方は掴めましたか??」


「それがさぁ。私の指導力がどこぞの近接戦闘特化馬鹿に比べて最高に良過ぎた所為でね?? 魔力を消失させて行方不明のままなのよ。あの子はその点に対して、誰よりも上手だったし」



「そう、ですか」



「でも捜索は継続中だから発見次第、首根っこ捕まえて里の牢獄に閉じ込めておくから」


「分かりましたわ」


 

 何だか釈然としないよな。


 アオイの里を襲った意図も、そしてその背後に居る人物も特定出来ていないのだから。



「はい、レイドさんっ」



 モアさんが透明な液体を注いだ御猪口を此方に差し出す。



「これは??」


「お酒ですよ。これから始まる宴、その乾杯用のお酒です」


「あ、いや。自分は酒類を控えていますので……」



 あの何処から湧いて来るのか理解出来ない高揚感。


 喉を刺す熱さと、鼻から抜ける酒類特有の香りが苦手なのです。


 同期の連中達はこぞって呑んでいたけど、酒のどこが美味いのか。今一理解に及ばないのです。



「これ、最初の一杯だけは付き合え」


「はい、分かりました。師匠」



 乾杯用の一杯なら酔う事も無いし、大丈夫でしょう。



 師匠の素晴らしい尻尾に零さぬ様、右手に御猪口を持った。



「明日、此処を発つのか??」



 師匠が横目でチラリと此方を窺いつつ仰る。



「そう、ですね。体力も回復しましたし、朝一番で発とうかと。何よりそれが当初の目的でしたので。エルザード、ファストベースの皆様はもう解放してあるよね??」



 左の方へ顔を動かし。



「ん?? 勿論よ。三日前に解放済み――」



 御猪口に魅惑的な唇を密着させ、今にも飲み出してしまいそうな彼女へ問うた。



「明日発つのなら、私が空間転移で送ってあげるから安心してね??」


「誰にも見つからない場所に送ってくれよ?? 普通の人間がアレを見たら腰を抜かしてしまうし」


「りょう――かいっ」



 何より、俺が化け物扱いされちまうからな。



「うむっ!! 決まったな!! では!! 皆の者!! 掲げろ!!」



 師匠が軽快な口調でそう仰り、御猪口を宙に掲げた。



「今回は控え目に鍛えてやったが次はこれを越える稽古を与える。じゃが今は、苦しい稽古を乗り越えた事に自信を持ち、傷ついた体と心を食で癒せ!! いいか!? 残さず食らうのじゃよ!? では…………」



 すぅぅっと師匠が空気を吸い込み、宴の始まりに相応しい言葉を放とうとすると。



「かんぱぁ――いっ!!!!」



 横着な淫魔の女王がそれを横取りしてしまった。



「腐れ脂肪がぁ!! 儂の台詞じゃぞ!?」


「前置きが長いのよ、あんたは。んっ…………。ぷはっ、おいしっ」



 コクンっと一口飲み終え、ふぅっと息を漏らしつつエルザードが話す。


 それに倣って酒を喉の奥に流し込むが……。



「うっ……。ふぅ――……」



 美味しくないよな??


 辛い液体、とでも呼べばいいのか。


 俺の舌がまだ未成熟ってのもあるかも知れないけど、やはり好きにはなれそうにない。



「所で、師匠とエルザードは古い付き合いなのですか??」



 御飯を取りに行きたいけども。



「ぷっは!! んまいっ!!」



 三本の尻尾に戻った師匠は一切動く気配は無いし。それに美味そうに酒を呑む師匠の行動を妨げるのも憚れる。


 どうせな動かぬのなら色々と聞いておこうと考え、口を開いた。



「儂とそこのブヨブヨの脂肪とか?? ん――……。かれこれ、三百年位の付き合いじゃな」


「さ、三百!?!?」



 人の人生の約四倍の長さの付き合いか。


 千年生きるとされた魔物にしてもそれはちょっと長い付き合いだよね??



「あんたとまるっきり三百年も過ごしたら獣臭くて死んじゃうわよ。安心してね?? ちょくちょく会っている感じだからさっ」


「そっか。所、で」


「ん??」


「左腕から離れなさい……」



 速攻で双丘から腕を引き抜き、きちんと己の太腿に手を添えて話してやった。



「あ――!! 折角私が女性の素晴らしさを教えてあげているのにっ!! 逃げるなんて男らしくないぞ!!」


「ちょ、ちょっと!! お止めなさい!!」



 絶対に放さない。


 そう言わんばかりに両腕で俺の左腕にしがみ付き。



「えへへ。ほらっ、ど――お??」



 里を治める者とは思えぬ軽快な笑みを浮かべて此方を見上げた。


 端整な顔にそれは異常に良く似合っていますよ??



「あのね?? もう酔っ払っています??」



 その笑みを直視出来ず。


 目の前でフルフルと震え出した師匠の尻尾の毛並を見つめながら話してやった。



「これ、馬鹿弟子」


「はいっ!! 何で御座いましょうか!?」


「早く、その鬱陶しい肉の塊を振り払え。さもないと……」


「っ!!!!」



 な、何んと!!


 尻尾が七本に!?



「た、只今!! エルザード!! 頼むから退いてくれっ!!」



 このままでは俺の命が危い。


 そう考え、必死になって横着な肉を退かそうと懸命になるのだが……。



「やっ!! 退かないもんっ!!」


「こ、このっ!!」



 力を籠めた右手が彼女の腕をすり抜け、むにゅっと。


 大変宜しく無い柔らかさを持つ双丘の頂上へと到達してしまった。



「やんっ!! も――…………。触りたいのならっ、言ってくれればいいのに」


「じ、じ、じ、事故です!!!! 師匠!! 事故ですからね!?」



 師匠!!


 お願いしますからそれ以上尻尾を震わせないでください!!



「んふっ。またまたぁ……。布団の中ではぁ、美味しそう――って私の谷間。見てたくせにっ」



「こらっ!!!!」


「ン゛――!!」



 衝撃的発言を放ったエルザードの口を咄嗟に手で塞いでやった。


 何をする!! 


 そんな目で此方を睨みつけるのだが。今はそれ処じゃないのでね。緊急措置とでも言いましょうか。



「――――。これ、レイドや」


「は、はい……」



 や、やっべぇ……。


 尻尾が怒りで蒸気を放ち始めたぞ……。



「今の言葉に嘘偽りは無いのか??」


「誤解です!! 自分は……。その……。何んと言いますか……。えっと。そう!! 寝起きでしたからね!! 視線が朧に揺れ動いていたからエルザードもそう見えたんだと思います!! そうだよな!? なっ!?」



 頼む!!


 肯定してくれ!!



 俺が意味深な視線を送ると。



「……」



 淫魔の女王様がコクコクと頷いてくれた。



 よぉし、それなら。


 塞いでいた手をぱっと外し、素晴らしい援護を期待した。



「ぷはっ、は――。苦しかった。安心しなさい、クソ狐。レイドは私の熟れて、零れ落ちてしまいそうな胸をむしゃぶり付くように眺めていたからっ」



 こ、この!!!!



 えへへ、ごめんね??


 片目をパチンと瞑り、そんな意味を送って来た彼女に攻撃を加えようとした刹那。



「こ、この…………。馬鹿弟子がぁああああああああああああ!!」


「ぎぃぃぃぃいいっやああああああああああああ!!」



 八本に増えた尻尾が俺の全身に絡みつき、宙へ浮かせ。


 何と!! 尻尾の中に閉じ込めてしまうではありませんか!!!!



「しふぉう!! ぐるじいでずぅ!!」



 一本の尻尾が気道をきゅっと締めて来るので、気を失わぬ様。一本の指を捻じ込ませて話す。



「喧しい!!!! お主はその中で猛省しておれ!! 戯けが!!」


「じんじゃいますってぇええええ!!」



 残りの尻尾が四肢を、そして胴体を千切ろうと体に絡みつく。


 師匠の怒りに反応して尻尾達も大変な威力を兼ね備えていますね!?



「あはっ。レイドはどこかなぁ――??」



 一本の細い腕が尻尾の中を掻き分けて入って来た。



「ん――……。ん?? あれ……。何か、丸い何かが??」



 お嬢さん、そこは駄目ですよ――っと。


 慌てて腰を引き、横着な腕から逃れられたものの。その先に待っていたのは地獄の炎でさえ生温いと感じてしまう恐ろしいお仕置きが待っていた。



「き、貴様ぁあああ!! 至高の尻尾に触れるなぁああああ!!」


「あがばっ!?」



 俺の非力な指では怒り心頭の師匠には対抗出来ず、気道を圧迫していた尻尾に根負けしてしまった。


 肺が悲鳴を上げ、病み上がりの体がもう勘弁してくれと懇願し始める。




 しまった。


 どうせなら少しでも食べてから気を失えば良かったな……。



 馨しい花の香りが充満する暗闇の中。


 四方八方から襲い、締め、巻き付いて来る閉鎖空間の中でそんな下らない事を考えながら夢の世界へと旅立って行った。




最後まで御覧頂き、有難う御座いました!!


出発の御話は明後日の投稿になる予定で、第二章開始は寄り道をしてからの予定になります。


今週中には開始されますのでお待ち頂けると幸いです。



そして、ブックマークをして頂き有難う御座いました!!


二章執筆の励みになります!!

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