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第二百六十八話 魔と武のせめぎ合い その二

お疲れ様です。


後半部分の投稿になります。




 仰ぎ見る空は青く美しく地平線の彼方まで広がり、そして大らかな笑みを浮かべて俺を見下ろしていた。


 大変お美しい姿で御座いますね。先ず思い浮かんだ言葉はこれかな。


 生まれ故郷の空よりちょっとだけ青が強い気がするのはここが南の島だからなのだろうか。


 波に漂いながら空を見上げるのもまた乙なものさ。



「――――。よし、何んとか動けそうだ」



 己に発破を掛け仰向けの姿勢から俯せの状態へと変わり、ちょいと離れた位置に居る島へ向かって平泳ぎで移動開始した。



 ユウの魔法を真面に食らうとこうなるのね……。


 咄嗟の判断で後方に飛んだのが功を奏したのか。上空に吹き飛ばされ、森から遠く離れた海に叩きつけられても大事には至らなかった。


 勿論?? 四肢が思い通りに動かせるようになるまでに数分以上は要したけどね。


 頑丈だと自負しても直撃は流石にねぇ……。俺にも限界はあるのだよ。



「レイドさ――ん!! こっちですよぉ――!!」



 おぉ!! アレクシアさんだ!!


 白き砂浜に桜色が現れ、こちらに向かい仰々しく腕を振ってくれた。


 態々迎えに来て頂きありがとうございます。波の流れを利用し、意外と早く砂浜に到着して大きく息を吸い込んだ。



「ふぅ――。申し訳ありません。お手数かけましたね」


 顔に残る海水を手で拭い、洗い立ての犬が水を撥ね飛ばす様に顔全部を横に振る。


「ふふ……。その姿、犬みたいですよ」


「そうですか?? よしっ!! 行動を再開しましょう!!」



 粗方水を吹き飛ばしていざ歩こうとするが。



「何処へ向かうのですか??」


 その一歩目をアレクシアさんの綺麗な声が阻んだ。


「っと。ん――……。予定を決めないで移動するのは危険ですよね」


「お互いの行動を把握しておいた方がはぐれた時に役に立ちますよ??」



 でしょうね。



「では、ここから森の中を通って南西へと移動しましょう。エルザードが今現在何処に居るのか不透明ですので常に周囲へ警戒を怠らない様に」


「了解しましたっ!!」



 ぴょんっと手を上げる様が可愛らしい事で。


 女王様に対して発して良い言葉では無いので胸の内に秘めておきます。


 本日二度目の森への侵入を果たし、砂とは踏み心地が異なる大地の上を進み出した。



「さっきの技、凄かったですね!!」


「エルザードを地上に落とした技ですか??」



 多分、そうだと思うけど。



「そうです!! クルクルと回って目が回らないのですか??」


「多少は回りますけど、もう慣れちゃいました」



 右隣りで並んで進む彼女へ答える。



 技を教えて貰った当初は回転して生まれる力によって体の軸が定まらなかったが、日々の鍛錬のお陰か。それとも何度も放った経験からか。


 確実に目標へ向かって叩き込む事が出来る様になった。


 そして先の様に常軌を逸した回転数となっても問題無く打てる程に成長したのだ。


 俺が技を成功させた時の師匠の御顔は……。


 ふふっ、自分の事の様に嬉しそうだった。


 これからもあの御顔を拝む為に精進するとしましょう!!



「ふぅん。慣れ、ですか」


 自分も試してみようと考えたのか。


「よいしょ!!」



 軽やかに地面を蹴り、空中でふわっと一回転。そして華麗に着地を決めた。



「どうですか!!」


 いや、どうですかと問われましても……。


「無駄の無い一回転でしたね」



 これが最大限の賛辞ですね。



「へへ、やった」



 何がそこまで彼女を高揚させるのか伺い知れないが、陽性な笑みを浮かべて前を向いて進み出した。



 アレクシアさんがここに来てからというものの、ずっと笑顔なのは気の所為かな。



 恐らく女王という立場から解放された事が影響しているのでしょう。又は溜まりに溜まった仕事をしなくても良いという安心感から来る笑みか……。


 むすっとした顔は似合いませんし、願わくばその素敵な笑みをいつまでも浮かべていて下さい。



 陽性な雰囲気を醸し出す彼女の直ぐ後ろを歩いていると、何やら騒々しい足音が二つ聞こえて来た。



「わっ。誰か走って来ますよ……」


「警戒しましょう」



 足を止め周囲の森と同化する様に気配を殺し、警戒態勢を整えて音の方へと体を向けた。



「――――――――。やっと……。ぜぇ、ぜぇ……。撒いたぞ」


「あ、あぁ……。何て粘着質な追跡なのだ。体力が通常の倍以上も削ぎ落とされてしまったぞ……」


「どうするよ。もうちょい移動するか??」


「そうだな。今の内に距離を稼ぐのも悪くない案だ」



 草むらと木々の合間から出現したのは見慣れた顔の二人であった。


 深緑の髪の女性は仰々しく木にもたれ。灰色の髪の女性は膝に手を付いて乱れた呼吸を整えようとしていた。



「ユウ!! リューヴ!!」


「レイド!?」


「主!!」



 久方ぶりの再開に共の組が寄り添い束の間の休息へと至った。



「どうしたんだよ、二人共。らしくないじゃないか」



 俺達の組を見た安堵感からか、力無く地面に座ったユウへ尋ねた。



「らしくない?? レイドはフォレインさんの恐ろしさを知らないからそんな事が言えるんだよ」


「全くその通りだ。想像以上の圧を放たれ続け、それを浴びる身にもなってみろ」



 強者の部類に属す二人がそこまで言うのか。


 俺が想定する倍以上の殺気を放ち、それを相手に浴びせながら執拗な追跡をしているようだな。


 そう仮定しないと、この二人がここまで疲弊する事は考えられないからね。



「ってか。何でそんなにびちゃびちゃなの??」


 ユウが俺の濡れた髪を見つめて問う。


「あぁ、これ?? 実は……」



 先程の軽い戦闘を端的に説明し、その終盤で襲い掛かって来た岩の波に直撃したお陰で海まで気持ちよ――く吹き飛ばされた事を話してやった。


 御二人から冷たい視線を受ける可能性があった為、淫魔の女王様の横着な絡みは省いておりますのであしからず。



「――――。と、言う訳で。ユウが何も考えないでぶっ放した魔法が俺に直撃して、海までポ――んっと撥ね飛ばされたんだよ」



 魔法を詠唱した当の本人の顔を直視して話す。



「いやいや、あれはフォレインさんの追撃を躱す為に撃ったんだって」



 へぇ、そうなんだ。


 まだまだ呼吸が荒い彼女から聞けば。


 いずれかの組と合流をしようとして南下していると、突如としてフォレインさんが森の中から出現。


 リューヴの稲光、そしてユウが大地烈斬アースクェイクを放ち。彼女達が有利に戦える場所を求めて疾走を開始したのだが……。


 後ろから迫りくる圧は刻一刻と増し、戦う意思さえも起こさせぬ程の強烈な殺気へと成長。


 ユウ達は正面から対峙する事を諦めて島中を駆け回っている最中だったそうな。



「成程ねぇ……。フォレインさん相手に正面から向かうのはちょっと手厳しいかもね」


「手厳しい処の騒ぎじゃないって。ってか、レイド達はどこへ向かっているんだ??」



 額に浮かぶ冷たい汗を拭いながらユウが話す。



「俺達は南西の方へ向かおうと考えて砂浜から向かって来たんだ」



 後方に位置する海の方角へと指を指す。



「ユウ達も一緒にどうだ?? 俺達と行動していれば気も紛れるだろ??」


「そりゃ名案だ。リューヴ、レイド達の組と行動しようか」


「共同戦線というやつだな。フォレイン殿の牙が向けられたら、この四名で向かえば一太刀浴びせられるだろう」



 それはどうだろう。


 師匠達と肩を並べる御方だ。一太刀処か、掠る事さえ怪しいよ。



「じゃ、暫くの間厄介になるな!!」


 ユウがこちらに向かい手を差し伸べる。


「おう!! こちらこそ宜しく!!」



 彼女の手を取り、勢い良く立たせてやった。



「それで?? レイド達の組はどうなの。さっきの戦闘内容をもうちょっと詳しく聞かせてよ」



 四名で南西の方角へと向かいつつユウが問う。



「聞いて下さいよ!! レイドさんとイスハさんがですね……」



 こちらの後方。


 リューヴと並んで歩く彼女が得意気に先程のじゃれ合いを話す。


 そこまで仰々しく説明しなくても……。何だか恥ずかしくなってきたぞ。



「――――。そして、イスハさんとレイドさんの攻撃がエルザードさんの結界を壊しちゃったんですよ!!」


「へぇ!! 体術だけでぶっ壊すなんてやるじゃないか!!」


「見事だ。流石、主だな」



 話を聞き終えた二人が煌びやかな瞳を浮かべてこちらを見つめた。


 ほら、こうなる。



「大体は師匠の御蔭だって。俺の力なんて、おにぎりに添えられた漬物みたいなものだよ」



 小恥ずかしさを誤魔化す為に後頭部をガシガシとぶっきらぼうに掻く。



「おいおい。漬物を馬鹿にするなよ?? それがあるから主役であるおにぎりが栄えるから……。あり?? それだとイスハが主役になっちまうな」


「それでいいんだよ。俺は脇を固める役が分相応なのさ」



 脇役でも死ぬ思いで立ち向かわないと主役級の人達にあっと言う間に倒されちゃうからなぁ……。


 主役と脇役との間に格差があり過ぎると思うです。



「ん?? 何か、いい匂いしないか??」


 ユウが可愛い鼻をクンクンと動かす。


「おにぎりの話していたからじゃないのか??」


「あたしをどこぞの食いしん坊と一緒にしないでくれ」



 むすっと眉を顰めてこちらを睨む。


 端整な顔が台無しだぞ。



「いや、ユウの言う通りだ。近くから食物の香りがするぞ」


 今度は鼻が効く狼さんからの発言だ。


「と、言う事は。近くにあたし達が寝泊まりするであろうあの寝所があるって訳か??」



 土地勘が無いのは痛手だな。


 匂いで己の場所を察している様じゃ直ぐに見つかっちまうよ。



「多分そうだろうね。そう言えばもう直ぐ正午か……」


 木々の枝から覗く空の太陽を仰ぎ見て口を開く。


「確か、食事は自由……。だったよな??」



「「「……」」」



 ユウの言葉を受けて皆がその場に留まり決断に戸惑っていると。


 天然自然の中では余り聞き慣れないきゅるりんっと、可愛い腹の音が静かな森の中で鳴り響いた。



「や、やだっ!!」



 アレクシアさんでしたか。


 咄嗟に己のお腹を抑え、風邪でも引いたのでは?? 他人から見ればそう思われる程に顔が真っ赤に染まっていた。



「あはは!! 決定だな!!」


 ユウが快活な笑みを浮かべて彼女肩をポンっと叩き。


「了承した」


 リューヴが若干呆れた笑みを浮かべて肯定。


「ち、違うんです!! これは間違いなんですぅ!!」


「注意を払いつつ進もうか」


「ん――。了解――」



 可愛い女王の抗議の声が合図となり、俺達はアレクシアさんを置いて匂いが漂って来る方向へと進み出した。


 何が間違いなのかと問いたくなるが、アレクシアさんも一人の女性。羞恥心を煽る真似は流石に出来ないです。



「わ、私じゃないんですよ!? ほ、ほら!! 野生動物さんのお腹の音だったんです!!」



 親鳥達にぴぃぴぃと可愛い抗議を続ける一羽の雛鳥……基。一人の麗しい女性を最後尾に置き。危険を顧みない四名の愚者達が食料の確保へと向けて出発した。



お疲れ様でした。


各組の場面転換が多い為、少々見辛くなってしまって申し訳ありません。出来るだけ繋げて投稿するように努力しますので御了承下さいませ。



体力の低下を懸念して本日の夕食は黄色い看板が目立つカレー屋さんへ足を運びました!!


いつも通りチキンカツカレーの400グラムを注文し、更に!! その帰り道にコンビニへと立ち寄り栄養ドリンクを購入。


先程グイっと飲み干してこれから小一時間程プロット執筆に取り組みます。プロットの段階でちょっと難しい場面に突入するので気合を入れないといけないからです!!


彼等の特訓はまだまだ序盤、これからどんどん厳しくなっていくので温かな目で見守って頂ければ幸いです。



これは来週の告知、なのですが……。


来週は少々忙しくなる為、投稿頻度が少し落ちます。予めご了承下さいませ。



それでは皆様、お休みなさいませ。



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