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第二百六十七話 予期せぬ会敵 

お疲れ様です。


本日の投稿になります。




 南国特有の湿気を含むうだるような暑さは木々の影によって幾分かマシになった。けれども、その暑さより辟易してしまう存在がずぅうっと私の前を歩いている。


 何が楽しくてアイツの背中を追わなきゃいけないのよ……。


 今現在は化け物退治にお誂え向きの場所を探しているので戦術に関して少なくとも私より優れている蜘蛛に一任した方が、僅かばかりに勝率が上がると思う訳よ。


 ここは我慢よ、我慢。


 私は賢くて優しい大人だからね!! 寛大な心を持って従ってあげるわ!!


 だが、何処へ向かっているのか。せめて凡その位置位は知っておきたい。


 そう考えた立派な大人である私はうぜぇ背中へと声を掛けた。



「ねぇ、何処に向かっているのよ」

「……」



 はいっ、無視――!!


 うっざ!! すべからくうっざぁぁああ!!!!


 隊長である私へ向かって振り向く仕草すら見せず、只々ほっせぇ足を動かして森の中を移動し続けていた。



「おい、話を聞けや」


「答える義務はありませんので、あしらず」



 クソが!!


 胸倉掴んで地面に叩きつけてやろうかぁ!? あぁん!!


 心の奥底で厳重に封じ込めていた憤怒が目を覚まして沸々と闘志を煮え滾らせてしまう。


 あのほっせぇ首に豪脚を叩き込みてぇ……。


 強烈な勢いで拳を握って怒りを誤魔化していると、ちょいと開いた空間が見えて来た。



 おう??


 良いじゃない!!


 ここなら身を隠す場所も無いし、正々堂々と戦えそうだ。




 ――――。


 いやいや、違うでしょ?? 私。


 こちらに有利な場所を探しているのだ。開けた場所じゃあ、どうぞご自由に何の遠慮も無く張り倒して下さいと言っているものじゃない。



 蜘蛛も私と同じ考えに至ったのか、その空間をじぃっと見つめた後。


「……」


 避ける様に方向を転換した。



 でもぉ、敢えてここで迎撃するのってさ。物凄く格好良くない??


 円の中央で堂々と立ち相手が現れるのを待つ。


 そう!!


 王者足る風格を備えた者にのみ許された戦法って奴よ。


 世界最強を目指す私はセコイ蜘蛛みたいにみみっちぃ戦法は向いていないの、か??



 蜘蛛の背と開いた空間を交互に見つめ、さてどうしたものかと考えていると。



「ん――……。この辺りの筈なんだけどなぁ」



 正真正銘の化け物が開けた空間に現れやがった!!!!



 うげぇっ!! もう追いついたの!?


 森の中から開いた空間に堂々とぴょんっと現れ、まるでお買い物に行くような感覚で日の下を歩いている。


 私達を倒すのはお散歩のついでってかぁ??


 化け物の出現に慌てた私達は茂みの中へ咄嗟に屈み、向こうの出方を窺い始めた。



『ちょっと!! いきなり化け物が出たじゃない!!』


 出来るだけ小さな魔力を放出して念話を送る。


『退却しますわよ。私に付いて来なさい』


『あぁ!? てめぇがこっちに来いや!!』



 あんたの背中はもう見飽きたのよ!!


 それに、無駄な音を立てたくないの!!


 あの化け物の感覚は常軌を逸している。鼻息さえも殺したい気分なのに!!



『好きにしなさい。私はこちらに行きます』


『あっそう!! 好きにしろ!!』



 んでもって残酷に、そして無慈悲にボコられて負けろや。


 単独行動の方が清々するわよ!!


 蜘蛛の丸っこい尻に決別の言葉を投げかけ、物音を立てずにゆぅぅっくりと慎重に方向転換した。


 そして、その数秒後……。


 私は目を疑う驚愕の事象に遭遇してしまい、驚きの余り五臓六腑が口から飛び出てしまった。













































「――――――――。やっほ、マイちゃん」

「ぎぃぃぃぃぃぃいいいいやぁぁぁぁあああああ――――ッ!!!!!!!!」



 歯茎から全歯が前に飛び出し、舌がついでと言わんばかりに歯に便乗して口から飛び出す。


 普段、キチンと眼球が収まっているのにも関わらず驚きの余り二つの目玉が横着を働いて広い空間へと躍り出てしまう。


 更に更に、驚きを表現したがりの私の毛髪ちゃん達は針の様に鋭く尖がって天へ伸び。


 最終的には頭蓋がぱっくりと開き、中身を盛大に披露してしまった。


 巷で良く聞く噂にこういった与太話がある。



 人は余りにも衝撃的な事実に遭遇すると、その衝動で心臓が止まって死んでしまうらしい。



 何を馬鹿な、所詮は与太話よと高を括っていたが。自分がこうして衝撃的な光景を目の当たりにして初めてそれは事実であると実感した。


 私が開けた空間から森の奥へ振り向くまで、僅か一秒足らず。


 その僅かな時間にあれだけ離れていた距離を移動し尚且つ私の視線にも入らなかった。



 ニコニコと笑みを浮かべ、私の目の前にちょこんとしゃがむ化け物が自分の母親だとは思えない。


 寧ろ、異形の存在だと私の体は直感的に捉えてしまった様ね。



「大袈裟な子ねぇ。そんなに驚かなくてもいいじゃない」


「だ、だ、誰だって驚くに決まっているでしょ!!!!」



 しずか――に振り向いたらそこに居ない筈の化け物が居る。


 うむ、九割九分の人間が恐れ戦く事象であろうさ。



「大体!! どうやって私に気付かれないで移動したのよ!!」


「え?? 風を纏ってひょいひょいって……」


「ひょいひょいを詳しく語れ!!!!」



 手でクネクネと自分の動きを表現しているが、例え肉親であろうがたったそれだけの方法では到底理解には及ばなかった。



「語れ?? まぁまぁ、この子ったら。口が悪いわねぇ。反省が足りないのかしら??」



 出たよ!! この目!!


 母さんが放つ圧がピーチクパーチク歌っていた小鳥達の歌声を強制終了させ、彼等は。



『お取り込み中。すいませんでした!!』



 等とヘコヘコ頭を下げて何処かへと飛び発ってしまった。


 い、いいなぁ!! 私も飛び発ちたいなぁ!!



「まっ!! いっか!! これからまた厳しい指導が始まるんだし??」


「はぁ?? そんなのまっぴら御免よ。私は……。とんずらこかせて貰うわ!!!!」



 龍の姿へと変わり、刹那に風を纏い。さぁ貴女の安全地帯は此処よ?? と。両腕を広げて私の到着を待つ上空へと目指すが。



「待てっ」


「うんぬぅ!?!?」



 風より速い怪物級の手が私の尻尾を掴み。



「ここは狭いしあっちに行きましょうか」


「は、放せぇええ――――!!」



 釣りたてホヤホヤの魚の尾を持つ様に、先程発見した広い空間へと引きずりだされてしまった。



「うんっ。ここなら楽しめそうね!!」


 乱雑にポイっと私の体を地面へと放る。


「いでっ」


「ほら、人の姿に変わりなさい。そうじゃないとお仕置きよ??」


「はいはい」



 こうなったらもう自棄だ!!


 生涯全敗を喫している王者相手に一泡吹かせてやらぁ!!


 人の姿へと変わり早速戦闘態勢を整えた。



「返事は一回でしょ??」


「は、はいぃ……」



 整える迄は良かった。


 両腕をしっかりと組んで私の前に立ち、たった一睨みで私の気合を根こそぎ落とされてしまう。


 良く父さんは母さんと結婚しようと思ったわね。


 私が男だったらこ、こんな化け物は絶対選ばないわよ。もっと思慮深くて、聖母も嫉妬する優しさを持ち、大変料理上手な女を選ぶもん。




「さてと!! 楽しい楽しい指導の始まりね!!」


 怖い怖い拷問の間違いじゃない??


「優しいお母さんは……」


 恐ろしい化け物の間違いね。


「一から戦闘についての指南を授けてあげるわ!!」



 死に至るおっそろしい苦行についての方法を叩き込んであげるってか。



「こら。頭の中で私の言葉を変な言葉に変換したでしょ??」

「ぐぇっ!!」



 私の首を掴みぐぃぃっと上空へと掲げる。


 こ、この常軌を逸した圧迫感ッ!! あ、相変わらずの馬鹿力ね。



「じ、じでいまぜんっ!!」


「そっ。気の所為だったみたい」


「げほっ!! おうぅぇっ!! 憶測で娘の首を折ろうとするな!!」



 今のは本気マジで不味かったわ。


 もう少しで意識が消失しちゃいそうだったし。



「折るんだったらとっくに折っているわよ」


 手刀で何かをぽきっと折る仕草を取る。


「はぁ……。んで?? 私はどうやってここから逃げればいいのよ」


「話、聞いていた?? マイちゃんはここで、私に、無慈悲に、只々殴られ続ければいいの」


「そっちこそ話が違うじゃねぇか!! 指導って言葉はどこ行った!?」



 も――いやッ!!


 折角親の目から離れて自由を謳歌していたのにぃ!! 何で再会した当日にボコボコにされなきゃいけないのよ!!!!



「あれ?? まぁいいっか!! えっと……。手頃な枝は……」



 後ろで手を組み、買い物中の婆みたいな恰好で円の外周をぐるりと回り出す。


 そして、掴みやすい枝を見つけ。



「これでいいかな。木さん、ごめんね?? 枝を一本お借りします」



 手刀で枝を裁断してこちらへと戻って来た。



「うんっ!! 良い感じ!!」



 太い枝から生える無駄な枝を剥ぎ取り、一度二度振って強度を確かめる。


 きっと、あの仕草は私の頭を叩く為に行ったのだろう。あぁ恐ろしや恐ろしや……。



「さ、始めましょうか。私はこの棒で戦うわ。マイちゃんは魔法を使用するなり、継承召喚なり好きな戦法で向かって来なさい」



 お、おいおい。


 流石にそれは嘗め過ぎじゃない??



「あ――。今、嘗め過ぎって思ったでしょ??」


「正解よ。そんな棒きれで私の槍に勝てる訳ないじゃない」


「そう?? 意外とイケルかも?? そんな事よりも能書き垂れていないでさっさと向かって来なさい。素人に本物の強者の戦い方を教えてあげるからさ」



 あ――に――!?


 誰が素人だぁ!!



「どうなっても知らないからね!! 風よ!! 我と共に吹き荒べ!!!! 覇龍滅槍!! ヴァルゼルク!!」


 右手に魔力を籠め、すんばらしい黄金の槍を召喚。


「はっは――!! 今日も絶好調ね!!!!」



 万物を穿つ穂先を振るい、残留魔力を払って中段で構えてやった。



「へぇ……。ちゃんと鍛えているみたいね??」


「当り前よ。私の周りには強い人しかいないからね。その中で揉まれ続けたら嫌でも強くなるわよ」



 肩に槍をポンっと乗せて話す。



「その強さの尺度は私から見たら可愛いものだけどね。いい?? 良く聞きなさい。周りの強さを見て満足しない。周囲の強さで自分の尺度を決める事は成長の阻害に繋がるの。それを先ず証明して……」



 やっべぇ!! 来るっ!!!!



「みせましょうか!!」



 咄嗟に構えた槍の切っ先で襲い来る棒を叩き落とそうとするが、目の前に迫り来た棒きれが突如として姿を消失。



「戦闘態勢に入るのが遅い!!」


「ぐべらっ!?」



 忽然と姿を消した棒きれが私の横顔に現れ、予想通り横っ面を気持ち良く叩いてくれた。



「いったい!! 本気で叩いたわね!?」


「当然よ、これは指導なんだから」



 そっちがその気ならこっちも本気を出してやらぁ!!



「すぅ――……。ふぅぅ……」



 集中力を高め、相手との間合いを図る。


 今の踏み込みの速度、そして相手の得物の攻撃範囲。


 ふぅむ……。大方の間合いはこれ位かしら??



 ざっと見繕った結果。


 今立っているぽっかりと開いた円、その全てが母さんの間合いであった。


 あ、あはは。どうしよう。攻撃範囲の桁が違い過ぎる……。



「自分が置かれた立場、理解出来た??」


「……」



 固唾をゴックンと飲み込み、コクリと頷く。



「理解出来ただけでも偉いものよ。そして……。さっきからずぅっとアオイちゃんが私を狙っているの気が付いている??」


「はぁ?? 蜘蛛が??」



 泣き面浮かべて逃げたんじゃねぇのか??


 背中へ向かって気を放つと…………。


 おぉ、いやがった。


 後方の木の影から僅かに圧を感じるわね。



「彼女は優秀よ。今の攻撃を見て私の間合いを把握されちゃったし。こっちから向かわない限りあの子は絶対私の間合い入って来ないもん」


「ビビリなのよ。アイツは」



 私がそう話すと臀部に鋭い痛みが生じた。



「いってぇ!! おらぁ!! 人の尻に何ぶつけてんだ、ごらぁ!!」


 私の可愛いお尻ちゃんにブッ刺さったクナイを投げ捨て背後に向かって叫んでやる。


「こらっ。戦闘中は余所見しない」


「ごぶっ!?」



 今度は頭頂部に衝撃が走る。


 尻も痛けりゃ頭も痛い……。何で私だけがこんな目に遭わなきゃならんのだ。



「いい?? 先ず敵を良く見る事が大事なの。相手の間合い、呼吸の回数、視線の置き場。目に映る物全てが情報源よ。その全てを体に取り込んで情報を整理しなさい」



「それ、昔聞いたんだけど??」



 確か、家の中庭で聞かされた記憶がある。


 その時は……。



『こらこらぁ。何度言えば理解出来るのかしら??』


『か、母さんが速過ぎるんだよぉ!!!!』



 あぁ、殴られ過ぎて泣きべそかいてったけ。



「覚えているのなら実践に移りなさい。あなたは敵を軽視する傾向があるのよ」


「へいへい。以後気を付け……」



 嫌々ながら同意を口に出そうとすると東の森の方角から牛と狼が半べそかいて走って来た。



「ぜぇ……。ぜぇ!! お、追いつかれるぅ――っ!!」


「ユ、ユウ――――ッ!!!! どうしたのよ!!」



 親友の登場に疲弊していた心が思わずキュンっと可愛い音を立てて嬉しがってしまう。



「く、くそう!! 逃げても逃げても撒けないぞ!! 一体どうなっているんだ!?」



 あの強面狼がここまで慌てふためくなんて。蜘蛛の母ちゃんってそんなに強いのかしら??


 物は試し。そう考えて、二人の後方に居るであろう彼女へ意識を向けた。




『…………ッ』

「ぎぃやっ!!!!」



 や、止めれば良かった!!


 とんでもねぇ化け物が口を開いて追っかけて来る姿が頭の中に浮かび。


 あ、これは駄目だ。と、立ち向かう気さえ起こさせない圧を放っていた。



「なっ!? やべぇだろ!?」


「あ、う、うん。あんた達が泣きながら逃げるのも理解出来たわ」



 ご愁傷様。


 そう言わんばかりに汗だくのユウの肩へと手を置いてやった。



「フィロさん!! アオイの母さんの弱点ってありますか!?」


 荒い呼吸のままユウが尋ねる。


「弱点?? 無いわよ」



 だろうなぁ。


 あの圧を放つ化け物に弱点なんかあるまい。



「えぇ!? ならどうすればいいんだよ!!」


「あ!! 一つだけあるわ!!」


「教えて下さい!!」



 泣きそう、じゃあない。


 ほぼ泣いているユウが母さんの肩を掴む。



「フォレインは私達と比べて体力が少ないの。ほら、体細いでしょ??」



「「「あ――……」」」



 一匹の蜘蛛を除く私達が声を揃えて言った。


 この声の意味は。



『いや、そういう事を聞きたいんじゃなくて』



 と、いう意味なのです。



「そこを主軸にして戦うのがお勧めよ」


「戦うなんて無理無理!! 逃げれば逃げる程恐ろしくなっていくし!!」


「ユウ!! 移動するぞ!!」



 リューヴが颯爽と砂浜の方へと向かって行く。



「助言ありがとうございました!! マイ!! じゃあな!!」


「おう!! そっちも頑張れ!!」



 快活な笑みを浮かべ去っていく親友へと拳を掲げてやった。


 しっかりと逃げなさいよ??


 私はしっかりと掴まちゃってとんでもねぇ目に遭っているからね。



「後アオイ!! そこだと多分攻撃当たんないぞ!!」


「御黙りなさい!!」



 ははっ、あぁやって蜘蛛にも声を掛けていく所がユウらしいや。



「――――。フィロ、困りますわねぇ。私の情報を教えるなんて」



 でたぁ!!


 二匹目の化け物の登場だぁい!!


 汗一つかかず、しかも足音一つ立てないで綺麗な青の着物を着崩さずに蜘蛛の母ちゃんが森の中から馳せ参じた。



「まぁまぁいいじゃない。多分あの子達も薄々気付いているだろうし??」


「はぁ……。所で、アオイ?? そんな所で隠れていないで姿を現して戦いなさい」



 蜘蛛の母ちゃんが、蜘蛛が隠れている木へと視線を移して話す。



「――――。分かりましたわ」


「安心しなさい。クスっ。この方は隙が多いです。四方八方から機会を窺うのは余りも不憫ですので敢えて相手の間合いで戦うのも一興ですよ??」



 あっ、し――らねっ。


 うちの母さんを指差してクスリと笑っちゃった。



「――――。今、何て言った??」



 ほ、ほらっ!! 素が出た!!


 うちの母さんは柔和そうな上っ面を被っているが、本性は大変気性の荒い化け物なのです。


 羊の皮を被った狼……、じゃあないな。狼の皮を被った異形の化け物か。


 猛獣以上の存在と出会った事が無いから比喩しにくいので、化け物という言葉がぴったりと当て嵌まるのですよっと。



「さぁ?? では、私は追跡に戻りますのでぇ」



 若々しい笑みを浮かべ、狼さん達の足跡を追って姿を消してしまった。


 そして、いつの間にやら蜘蛛も姿を消していた。


 は?? 姿を現して戦うんじゃないのか??



「全く……。あの子はいっつもそうなのよ。昔から一々私の言う事にいちゃもんつけてきてさ」


「まぁまぁ、類は友を呼ぶって言うし。別にいいんじゃない??」


「似てないもん!!」



 木の棒きれを手に持ち、私でさえ見失う速度で互いの距離を消失。


 母さんの速さに呆気に取られると同時に私は、家族との久方ぶりの再開を祝す様に熱い抱擁を地面と交わした。



「んぐぶぅ!! て、手を出すよりまず言葉で述べろ!!」



 これ以上殴られ続けたら体がもたん!!



「それ、あなたにも当て嵌まるんじゃない??」


「無きにしも非ず、かしらね。やい、蜘蛛!!!! 私が母さんの気を引く!! あんたは隙を窺って母さんの鉢巻きを奪い取れ!!!!」



 撲殺される前に一泡吹かせてやんよ!!


 前衛と後衛。役割分担をした方が上手くいきそうだ。


 だが、ここである一つの懸念が浮かぶ。



「あ、そういう作戦?? いいんじゃない。お互い得意そうな場所で戦うんだし。でもぉ……。私の折檻に耐えられるかなぁ??」



 そうそう、問題はその一点に限られる。


 棒で殴られ続けて意識を保つ事が出来るかどうかが問題なのだ。



「余裕よ、余裕。こちとらユウの馬鹿力にいつも対抗……。ぶぃっ!?」


 私の可愛いお腹ちゃんに棒が突き刺さって前のめりになり。


「はい、お代わりどうぞ」


「びぃがぁ!!」



 屈んだ顎へと棒が襲い掛かり、私の体は綺麗な直線を描いて天へと上昇した。



「地上に到着したら頭蓋を叩き割って――。隙だらけのあばら骨を粉砕――っと」


「ングブゥッ!?!?!?」



 だ、だ、誰か……。


 楽しそうに娘をいたぶる傍若無人で、横暴で、果ては虐殺に転じようとするこの化け物をどうにかしてくれ!!


 私は対応策が全く浮かばぬまま、風光明媚な景色の中で一方的に理不尽な暴力を受け続けていたのだった。



お疲れ様でした。


さて、各組の追跡者達が楽しい指導を開始しました。


彼等がどのようにして危険に抗うのか。それを楽しんで頂ければ幸いです。



昨日の疲れが未だ尾を引いている感じですね……。今日はこの後、ゆるりと御風呂に入って深夜のプロット執筆はせずに眠ります……。


読者様達も体調管理には気を付けて下さいね??



それでは皆様、お休みなさいませ。



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