第二百六十四話 常夏の島 その一
お疲れ様です。
本日の前半部分の投稿になります。
適度に膨れ上がった背嚢を見下ろして満足気に一つ大きく頷き、伊草の香りに包まれた空間の中で額に浮かぶ小さな汗を拭う。
「ふぅっ」
忘れ物は無いよな?? 背嚢の入り口を開けて最終確認を始める。
着替え、生活必需品、短剣に砥石。
うん、必要な物は揃っている。
抗魔の弓はどうしようかな?? 部屋の片隅で寂し気に俺を見上げている弓へ視線を送った。
「なぁ、抗魔の弓って必要かな??」
足元で忙しなく動き続けている深紅の龍へと話す。
「持っていけばいいじゃない。く、くそう!! 御菓子が全部入らん!!!!」
「ん――……。でも必要な機会が訪れそうに無いし。今回はお留守番かな」
時間を捻出すれば弓の腕を上げる機会が訪れるかも知れないが、此度の訓練の目的は体と精神の鍛練。
特に精神面に重きを置いて鍛えて下さるようなのでその時間は無さそうだ。
ごめんよ?? ちょっとの間だけお留守番をしていて下さいね。
経年劣化してくすんだ灰色の弓から畳へと視線を移す。
「あっれ?? 私の着替えは……。あぁ!! そうそう!! ユウの荷物の中だったわね!!」
何故君は今頃になって荷物を纏めているんだい??
昨晩、纏めておきなさいと聞いたでしょうに。
早朝の走り込みを終え適度に腹を減らした彼女と俺達はご機嫌な朝食を摂り、出発の準備を終えて今に至る。
仲間の殆どは既に荷物を纏めて来たるべき時に備え外で待機しているのだが……。
「こ、このぉ!! 聞き分けの無い木箱めぇ!!」
深紅の龍は己の背嚢の中に、菓子が詰まった木箱を強引に捻じ込もうと躍起になっていた。
背嚢の胃袋はもう限界なのか。
『うっぷっ……。さ、流石にこれ以上はっ……』
これ以上詰め込むと盛大に吐き出すぞと警告していた。
「無理に捻じ込むと破れるぞ」
「そうですよ。宜しければ、私の荷物の中に入れましょうか??」
鶯も思わずうっとりしてしまう透き通った声が右隣りから漏れる。
「いいの!? へへっ。いやぁ、悪いね!! 鳥姉ちゃん!!」
ニヤニヤと口角を歪に曲げて一つの木箱をアレクシアさんに渡した。
「どういたしまして。後、私の名前は鳥姉ちゃんでは無くてアレクシアですよ??」
「わ――ってるって!! よいっしょっとぉ!! さぁって出発だぁい!!」
人の姿に変わると己と変わらぬ大きさに膨れ上がった背嚢を背負い。美しい日差しが漏れる外へと向かって行った。
「すいませんね。口が悪い奴で」
こちらも奴に倣い荷物を背負い、背嚢に入りきらない荷物は両の手に持ち後に続いた。
「もう慣れちゃいましたから。でも、名前をちゃんと呼んで欲しいのが本音ですかね。まだ友達としてみてくれないのかなぁ」
「あぁ……。その事なんですけど。アイツは親しい仲の人には渾名で呼ぶ癖があるんですよ。つまり……」
お分かりですよね??
そんな意味を含めた視線を送る。
「へ、へぇ!! 良かったぁ。名前を呼んで貰えないから見えない壁でも作っているかと思いましたよ」
「アイツにそんな器用な事は出来ません。見ていて分かりますよね?? 嫌いな者と好いている者との態度の差が大き過ぎますよ」
戸を潜り、出発に相応しい空の下へと躍り出た。
うん!! 絶好の陽射しじゃないか!!
旅の始まりはこうして清々しい天気じゃないとね。
「嫌いな者……。アオイさんですよね??」
「皆までは言いませんけど。まぁ、そうですね。犬猿の仲なんですよ」
どちらから歩み寄ればいいのに、寄ろうともしない。
互いに互いが壁を構築して相手の侵入を阻む。
出会った頃からそんな感じだもんね。
「初めて会った時からそうなんですか??」
「そう、ですね。確かそうだった筈……」
マイとアオイが会敵……。じゃあないな。初めて出会った時はアオイが負傷していて、俺が手当を施した。
そこから彼女の里へと向かう道中。マイは口を開こうとしないアオイに憤りを感じていた。
そこから険悪な仲は今に続く。
マイが五月蠅く騒げばアオイが小言で苦言を呈し、それを捉えた龍が蜘蛛に襲い掛かる。
もう何百と見た光景はこれから先も不変であろう。
「二人共お強いのに。力を合わせればもっと高みへと登れるのに……。勿体無いですねぇ」
「それを本人達に言ってやって下さいよ」
俺が言おうものなら問答無用で鉄拳を顎にぶち込まれちまうし。
「えぇ……。私が、ですか??」
アレクシアさんが訓練場へと続くなだらかな階段を下りながら億劫な表情を見せる。
「俺が言っても聞きませんし。己より立場が上の者から言われれば二人共も考えを改めるかも知れませんよ??」
「私とあの御二人は年齢も近いですので聞かないと思いますよ」
「マイが二十、アオイが二十一。アレクシアさんはアオイと同い年ですからねぇ。友人感覚で接しているのも考え物です」
アオイはちゃんと節度を保って会話をしているが、あの龍のいい加減な態度。
とても女王と接する態度とは思えん。
現に名前を呼ぶ処か渾名で呼んでいるし。一度叱るべきだな。
「レイド――!! こっち――!!」
乾いた砂の土に足を着けると、訓練場の中央からこちらに向かって器用に前足を振っている狼さん達の下へと歩み出す。
「私の年齢、御存知だったのですか??」
おっとぉ、しまった。女性の年齢を軽々しく述べたらいけないんだったな。
「えっと……。ほら!! 以前アレクシアさんが床に臥せた時にランドルトさんとピナさんから伺ったんですよ!!」
自分でも情けないと感じてしまう上擦った声で取り繕う。
「それでもぉ。女性の年齢を口に出したら不味いですよ??」
可愛く眉を顰めて俺を見上げる。
「以後気を付けます……」
「あ――あぁ!! 私、傷ついちゃったなぁ――」
その声色は怒っていないように思えますが??
「参っちゃったなぁ。今日から訓練なのに、これは由々しき事態ですよ――」
「どうすればいいと??」
恐らく、彼女は俺に謝罪を求めていると考えられるのだが。
互いの見解の相違は仲違いを生む恐れがある。
結局の所、男と女の考えは百八十度違うのだ。極論で結論付けると。
『聞いた方が早い』
この結論に辿り着くのです。
「じゃあ私の名前を呼び捨てで呼んで下さい」
「無理です」
おっと、即答してしまった。
そりゃあそうだろう。一族を纏める者を呼び捨てなんか出来ませんよ。
「えぇ!? 何でですかぁ!?」
「む、無理に決まっているじゃないですか!! アレクシアさんは女王なんですよ!?」
俺の服をぎゅうっと掴み、何かを請う瞳で見上げて来る彼女へ言い放つ。
「この際、立場の事は忘れて下さい!! ほら……。さん、はいっ??」
言って御覧なさいと言わんばかりに耳を傾ける。
「忘れる事は出来ませんのであしからず。ほら、皆待っていますよ」
これは俺だけの問題じゃないのです。
女王の機嫌を損ねれば人間達との関係にも亀裂が生じて最悪の関係に至る恐れもある。
おいそれとは言えぬのです。
未だ耳を傾けている彼女を残し、軽い足取りで訓練場の中央へ向かい始めた。
「ちょっと!! 置いて行かないで下さい!!」
「あいたっ」
背中に軽い衝撃が走り前のめりになってしまう。
そして行き場の無いもどかしさを誤魔化しながら頭を掻きつつ喧しい仲間と合流を果たした。
「レイド――!! どうしたの?? アレクシアちゃんに背中を叩かれちゃってさ」
「ほらぁ!! ルーさんだって私の事、ちゃあんと名前で呼んでくれるじゃないですかぁ!!」
人の顔に指を差さない。あ、いや。狼の顔か。
「え?? だって友達だもん」
「そうそう!! そうですよね――!!」
お惚け狼の両前足を楽し気に取り、ブンブンと上下に振る。
「足取れちゃうから放して??」
「まぁ、ふふ。ごめんなさいね」
機嫌が直ったので良しとしますか。
「まだ来ないのか――?? 待ち草臥れて眠っちまいそうだよ」
地面に置いた背嚢へと背を預け、欠伸混じりにユウが声を出す。
「集合時間は八時です。そして現在の時刻は八時半前。先生の性格を加味すれば許容範囲です」
「流石生徒ねぇ。ドスケベ姉ちゃんの性格を良く知っているじゃない」
「先生はこの数日間、本当に忙しかった様ですので多少の遅れは目を瞑りましょう。私は寛大なのですよ」
ユウと背中合わせで座るマイへと話す。
「「寛大ねぇ……」」
隣り合わせで座る二人が同時にやれやれといった感じで声を漏らしてしまった。
し――らないっと。
「いいですか?? 二人共。言葉とは本来、己の内にある考えを他者に伝える為の手段なのです。悪戯に空気を震わせる為に存在してはおらず、二人は少々言葉に対して意味を履き違えている傾向が見られます。想いを端的、且滞りなく伝達するのには……」
ほら、始まっちゃった。
感情が読み取れない表情を浮かべ、大変つめたぁい瞳で二人を見下ろしつつ御高説が始まる。
二人の顔は。
『やっべ。また始まった』
そんな何とも言えない顔でカエデの口から放たれている言葉を受け流していた。
海竜の説教が冷たい風を切り裂き二人の鼓膜へ攻撃を続けていると、それと相対する惚けた声が訓練場に小さくのんびりと響いた。
「おっはよ――。ふあぁ……。ちょっと寝坊しちゃった」
寝起きなのか。
ちょっと寝癖が目立つ桜色の髪を揺らし、この寒空の下には似合わない軽装で此方へと歩み来る。
「おいおい。随分と薄着だな??」
紺のズボンに白のシャツ、荷物を持っていないのは恐らく既に向こうへ送付済みなのでしょう。
服装荷物云々よりも……。その、何んと言いますか。胸元の乱れが気になる。
勿論?? 服装的な意味合いであって、そこから覗く神秘の双丘が気になっている訳ではありません。
胸元が大きく開いてしまっている箇所には視線を送らず、彼女の大きな目を捉えていた。
「そりゃあそうよ。向こうはあっついもん」
「暑い?? どの程度だ??」
リューヴが腰を上げて問う。
「ここの気温はぁ……、ん――。五度位か。さむぅいっ。レイドぉ。ほら、私寒いんだよ??」
何故あなたは一々そうやってちょっかいを掛けてくるのかね。
女性の象徴足る一部を腕に当てながら話した。
「リューヴの質問に答えなさい」
颯爽と腕を引き抜く。
「あんっ。ちょっと――。さきっぽは弱いんだゾ??」
知りません。
「向こうの気温は結構暑いかなぁ。三十度位で一年中常夏って感じよ」
「寒いのは苦手ですので有難いですわね。そうで御座いましょう?? レイド様っ」
「アオイは寒いのが苦手だからね。――――。ちょっと毛が痛いから離れて」
「まぁっ。うふふ……。ごめんあそばせ」
首筋にチクチクとした痛みを与えて来る蜘蛛の体を指で押し返して口を開く。
「この格好で雑談交わしていたら風邪引いちゃうし。早速出発するわよ――。忘れ物は無いわね――??」
「「はぁ――いっ!!!!」」
遠足に向かうんじゃないんだから、もうちょっと覇気のある声で答えなさい。
マイとルーが挙手する姿にちょいと肩の力が抜けてしまった。
「じゃあ、行きましょう……」
エルザードの体中から紅の魔力の波動が漏れると同時に、地上に巨大な魔法陣が浮かぶ。
うぉぉ……。何て圧だ。
普段はだらしなくお茶らけているのに、いざこうして本物の力を見せつけられると感心してしまう。
太古の神々の血を受け継し大魔の力。
いつかマイ達も彼女と遜色無い力を発揮するのだろうか??
チラリとマイの方へ横目を送る。
「おっひょ――。すんげぇ……」
あの姿を見る限りでは暫くの間は無理であろう。
地面に浮かぶ魔法陣を踵で悪戯に蹴りつける姿が残念な感情を湧かせてしまった。
「さぁ……。出発よ!!」
地上から瞼、眼球の奥を焼いてしまうのではと勘違いさせる光量が放たれ思わず目を強く瞑る。
眩しい処か、網膜が焼けちまうよ!! もう少し光量を抑えて欲しいものだ。
襲い掛かる光から眼球を保護する為、堅牢に瞼を閉じ。腹の奥に響く魔力の力に圧倒されない様、丹田に力を籠めその時を待った。
――――。
その数十秒後。
瞼の裏にでも届く光量に降参しかけていると、鼻腔に山の緑溢れる空気とは正反対である塩気の強い風がぬるりと侵入した。
冷涼な空気は何処かへと飛び立ち、代わりに湿気をたっぷりと含んだ風が頬を撫でる。
う、ん?? 到着した??
光に疲弊した瞼に喝を入れ、恐る恐る瞼を開けると。
「――――。おぉ!!」
俺の体は白い砂浜にしっかりと二本の足で立ち、瞼は何処まででも続く大海原を捉え、鼻はしょっぱい海風を掴んでは放さなかった。
ここが……。その昔師匠達が切磋琢磨した島か。
澄み渡った青の空が俺達を歓迎してくれているようだ。燦々と降り注ぐ太陽に満足気に顔を向け、仰ぎ見た。
いやぁ、本当に良い天気だなぁ……。
照り付ける太陽が悪戯に体温を上昇させ空を横切って行く鴎の飛び姿が青を装飾……。
「「「「あっつぅ!!!!」」」」
俺と同じ思いを抱いたのか。
数名がほぼ同時に声を出し、颯爽と上着を脱ぎ捨てた。
「あはは!! だから言ったじゃない。暑いって」
「暑いで済まされないわよ!! 寒暖差が激し過ぎて体が発狂してるし!!」
脱ぎ捨てた上着を腰に巻いたマイが話す。
発狂までとは言わないが俺の肌も大層驚いてしまっている。
何もせずとも皮膚に汗がじわりと滲み、毛髪の合間から生温い汗が永遠と湧く。
ここにずっと立っていたらカラカラになって干からびちまうよ。
「安心して?? 森の中はびっくりする位涼しいから」
「森ぃ??」
前方の青海に目を惹かれてしまっていた為、後方は御留守になっていた様だな。マイが訝し気な声を上げると同時に全員が振り返った。
「おぉっ!! でっかいわね!!」
マイが端的且数言で前方に広がる森の様子を叫ぶ。
緑生い茂る光景が横一杯に広がり視界が捉えられる限界、即ち島の端まで続いている。
一本の木の高さは二階建ての家屋程だろうか?? 遠目で見る限りでもかなりの高さであると窺い知れる。
海風を受けた南国の木々の葉が揺らぎ、太陽の陽射しが届かぬ地上では柔らかな緑が生え揃い視覚的にも涼し気な様子が伺える。
エルザードが話した通り、少なくともここよりかはあの影の下は快適に過ごせそうであった。
しかし。
俺は自然豊かな緑や冷涼さを感じさせる影よりも、こちらに向かって来る輝かしい金に目を奪われていた。
「なはは!! 予想通り、暑さに四苦八苦しているようじゃなぁ??」
「師匠!!!!」
誰よりも先に駆け出し、敬服している彼女を出迎えた。
「到着が遅れてしまいました。申し訳ありません」
「よいよい。どうせ、くっさい脂肪が寝坊した所為じゃろ」
大当たりですと言えないのは何故でしょうか。
それはこの後の騒ぎを自ずと理解しているからであろう。
「は?? それ、私に言ってんの??」
背筋の肌が一斉に泡立つ感触を捉える。
ほらね?? やっぱりこうなる。
「さぁのぉ?? お――い!! 阿保みたいに騒いでないで、出発するぞ――!!」
「「「はいはぁ――い!!」」」
波打ち際で遊ぶ深紅と灰色と深緑に声を掛けて下さった。
マイ達め。目的を履き違えるなよ……。俺達は休暇じゃなくて体を鍛えに来たんだから。
「出発じゃ。ほれ、ついて来い」
楽しそうに揺れ動く三本の尻尾を追い、大変踏み心地の良い砂浜から足を進める。
「師匠、今から何処へ向かうのですか??」
「暫くの間、この島で過ごすじゃろ?? 先ずは寝食を過ごす場所へと案内してやろう」
ほう。
詰まる所、拠点。若しくは野営地って所ですね。森の中にあるのか将又立派な建物があるのか。
冒険心を胸に抱いた少年じゃないけど好奇心が多大に刺激されたのは事実だ。
「これだけの人数が過ごせる程の広さなのですか?? その場所は」
白い砂浜と森の狭間からいよいよ森の影へと踏み入る。
おぉっ!! 本当に涼しいや。
肌を刺す光から逃れると体がほっと一息ついたのか、湧き出る汗が収まり頬を撫で行く風が非常に心地良い。
まだ到着して数分だけど、ここは本当に素晴らしい場所だと体は既に判断してしまっていった。
「勿論じゃ。数十人が集まっても余裕で過ごせるわい」
見上げんばかりの高さの木々から生え伸びる枝で翼を休めている鳥達の歌声の隙間を縫って師匠が仰られる。
「待機場所にもなるのですよね」
「そうじゃ。訓練を始める前に説明しておいた方が後々楽じゃからなぁ」
楽??
「疲れ果てて動けぬ様になってからでは説明も理解出来ぬじゃろ??」
あ、そういう事ですか。
俺の視線の意味を汲み取り、にっと口角を上げてこちらを見た。
「了解しました。頭の中に位置を叩き込んでおきます」
「そこまで複雑な……。まぁ、狭そうに見えてこの島は広いからの。凡その位置を覚えておいても損はなかろう」
「広いのですか。直径はどれ位あるのです??」
「ん――む。約二キロって所じゃなぁ」
二キロ、か。
円の中心から外円までかなり距離があるな。狭い処か、かなりの広さじゃないか。これ程の大きさの島を俺達が独占して使用出来るんだ。
無駄に使おうものなら罰が当たるぞ。
木と木の間に出来た畦道を進み、師匠へ訓練の内容を聞こうと考え口を開こうとすると前方に開けた空間が見えて来た。
「あそこが、儂らが過ごす場所じゃよ」
師匠が通い慣れた道を歩く様に軽い足取りで進み。
「到着じゃ!! よく来たな小童共!! 今日からここがお主達の家じゃ!!」
「「「おぉ――!!」」」
野営地に到着した一行からルーの声を主にした感嘆の声が漏れた。
広い空間の中に適度に生え伸びた木が良い塩梅で上空から降り注ぐ強力な陽射しを遮り、左に大きな天幕が張られ、右奥には料理人も思わず見惚れてしまう立派な窯や調理台が置かれている。
木々の枝から漏れる陽射しが大地の茶を美しく装飾し、中央寄りに並べられている木製の長い机と椅子がこの雰囲気に酷く似合っていた。
ルー達が感嘆の声を放ったのは果たしてどちらに対してなのだろう??
恐らくこの雰囲気に対しての声だとは思うのだが……。俺は違う意味で驚愕の声を上げてしまった。
お疲れ様でした。
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