第六十五話 心に映すは水の鏡、されど体に宿すは烈火の闘志
お疲れ様です!!
大変遅い時間の投稿になってしまい、申し訳ありませんでした。
それでは御覧下さい。
口の中がカラカラに乾いている。それはまるで、乾いた砂を口内へ一杯に入れられたみたいに。
これまで蓄積された疲労からなのか、それとも私が出す指示によって勝敗が決してしまう緊張感からなのか。
いずれにせよ。指令役である私が緊張感、及び疲弊した姿を晒せばそれが皆さんに伝播して勝てるものも勝てませんからね。
至極冷静な姿を保つことに務めましょう。
先程のマイとの一件は猛省しなければならない。
まだまだ子供ですね、私も。以前はあんな下らない事で喧嘩なんてするとは思わなかったけど。
あの二人にどうしても勝利したいと願った想いがそうさせたのかな??
自分でも良く分かりません。
でも……。
あぁして喧嘩出来るって事は良い事なんだよね??
最良の結果へと辿り着く為には紆余曲折を経る必要がありますので。
ふふ……。
レイド達と出会わなかったらこうして誰かと喧嘩をする事もなかったから、不思議な感覚ですよ。
嬉しいとも、怒るとも違う。
しかし、不思議と嫌いじゃない感情ですね。
『ユウ!! 今です!!』
「どぉっせいっ!!!!」
マイと激しい攻防を繰り広げていたメアさんの隙を見出し。
ユウの豪拳がメアさんの腕を捉えた。
「ちっ!! この馬鹿力め!!」
後方へと咄嗟に飛び退くも、彼女の素晴らしい威力は相殺出来ず。
私が思い描いた距離よりも数倍以上の距離を叩き出してくれた。
そして、飛翔した先に待ち構えているのは。
「いらっしゃい。狐さん。私の相手を務めて下さいまし……」
私が指示を与えなくとも、既にその位置で待ち構えていたアオイだ。
女性も嫉妬する白き髪を嫋やかに耳に掛け、到着したメアさんと静かに対峙する。
「げぇっ!! アオイかよ!! お前、ひょいひょい避けるから苦手なんだよ!!」
「まぁっ、うふふ。辛辣ですわねぇ……」
アオイは本当に頼りになります。
私が想像した通りの行動を伝える前から実戦してくれていますので。
私と同じく俯瞰して戦況を捉えられる能力を持っている。
痒い所に手が届く。
言い換えればそんな感じかな。
イスハさんが仰っていた。
『器用貧乏』
マイは悪い捉え方をしたけど、私は彼女の様な存在がなくてはならないと考えています。
一つの事しか出来ない、しかしその一つが強烈。
何でも出来るけど、そのどれもが一流には一歩及ばない。これが世間一般で捉えられている単語の意です。
しかし。
器用に全てを熟すのはそれだけでも十分な才能です。現に私はアオイの様な身のこなしは出来ませんし、彼女の様な凛然たる姿も持っていない。
後者は蛇足ですけど、私もいつかアオイみたいに綺麗な女性になりたいと本心から願っているのですよ。
皆さんには内緒ですけどね。
『アオイ!! そこでメアさんの足止めをお願いします!!』
『分かっていますわ!!』
メアさんの攻撃を躱しつつも。
「此処から先へは行かせませんわよ??」
「くそっ!! 邪魔だ!!」
レイド達の方向へは行かせまいと進路を防いでくれた。
うんっ!!
いい感じです!!
これでモアさんからメアさんを引き剥がせた。
後はモアさんに向かい、全戦力をぶつけるまで。
「おっしゃあ!! 行くぞ!! マイ!! レイド!!」
「おおう!!」
「お、おぉ……」
いつもならマイが一番で向って行くんだけど……。
どういう訳か。
彼女は動きに精彩欠いていた。
「あらあらぁ。三人掛かりですかぁ?? 私、困っちゃいますよぉ……」
「絶対そんな事思っていませんよね!? はぁっ!!」
レイドが素晴らしい速度で彼女の間合いへと侵入し、右の拳を真っ直ぐに突き出す。
此処から予想されるのは回避と、防御。
彼の攻撃力から察するに恐らく。彼女は前者を選択する筈。
『ユウ!! モアさんが避けますよ!? 避けた先に急襲を仕掛けて下さい!!』
『言わずもがな!!』
ユウが私の念話に反応し、彼女の後方へと身を置く。
良いですね!!
私の思考と、皆さんの思考がピッタリと嵌ると此処まで心地良いとは。
ユウとレイドは動きが凄く良くなりました。
元から優秀な二人ですからね。
私の指示に従ってくれれば正に鬼に金棒ですよ。
「だぁぁああっ!!」
「威力は凄まじいですけど……。当たらなければ意味がありませんよ??」
レイドから向かって右方向へと軽く弾む様に回避。
着地と同時に攻撃を仕掛ける気ですが……。
「どっせぇい!!!!」
その着地した先には猛牛さんが待ち構えているのですよ??
ユウが両手を広げ、相手を拘束しようと深く腰を落として突撃を開始した。
恐らく、ユウの攻撃は躱されてしまいます。
しかし!!
一の矢、二の矢で仕留められ無くても。三の矢で仕留めれば良いのです!!
三の矢は強烈で、獰猛で、とても速いですからね!!
さぁ!! これで私達の勝利です!!
『マイ!! 用意しろ!!』
むっ!!
レイドが私よりも先に指示を出しちゃった。
最後は私が綺麗に決めたかったのですけど……。
彼には後でお仕置きですね。
「あ、え?? お、おぉ!!」
やはり、というか。
あの姿を見て私の漠然とした想いが確固たる物へと変化してしまった。
どちらへ向かって良いのか悩みに悩み。
今はそれ処じゃないのに、周囲へと視線を送って人が居ないかの確認を行っていますので。
多分、あれは自分の直感に頼ろうとするんじゃなくて。私の指示に従おうとしてくれている姿なのですが……。
此処から見るとまるで素人が初めて剣を持った時の様な頼りなさ全開の姿ですね。
此処まで負け続けた結果。
モアさんは七割近くの確率で左手後方へと躱しています。
そして、マイは彼女の丁度真後ろの絶好の位置に身を置いて居る。
私は彼女目線で指示を出した。
『マイ!! 左へ向かって襲い掛かって下さい!!』
「分かったわ!! でやぁっ!!!!」
「「違――――――――うっ!!!!」」
レイドとユウが同時に叫んでしまった。
「あら?? マイさん。そんな所で何をされているのですか??」
モアさんの右手側。
街中で迷子になってしまい。どうしたらいいのか分からないまま立ち尽くしている子供の様にポツンっと単独で寂しく立つ彼女に話す。
「へ?? あ、あぁ――。良い石が落ちていたからさ。取ろうかなぁって。アハハ……」
もう!!
また初めからやり直しじゃないですか!!!!
「馬鹿野郎!! お前から見て左側なんだよ!!」
ユウがマイの後頭部をパチン!! と叩く。
中身が詰まっていない様な乾いた良い音ですね。
「そんなにキツク言わなくてもいいじゃん!! カエデから見て左側かと思ったんだし!!」
どうしよう……。
マイが私の指示に従おうとしてくれるのは喜ばしい事なのですが……。正直、今の動き又は精彩を欠く動きを見せるのなら前の方が幾分かマシですね。
『カエデ、作戦変更だ』
レイドだ。
『作戦変更ですか??』
『マイは直感に頼っていつも行動している。いきなり実戦で戦況を俯瞰してみろと言われても無理だ。それに、俺達も戦い辛い』
『戦い辛い??』
どういう事だろう??
『同感。無理に頭使って戦われるとこっちが逆に気を使っちまうんだよ』
『私は何も考えない猪か!!!!』
当たっています、それ。
『マイが頭を使ってあたし達に合わせて戦うよりも、あたし達がマイに合わせて戦った方がやり易いんだ』
成程、そういう事ですか。
『皆さん、作戦を変更します。マイを主軸にして戦闘を継続させます。私が適宜指示を出しますので、咄嗟の判断以外は指示に従って下さい』
『了解!!』
レイドの覇気ある声が嬉しいですね。
『はぁ……。全く……。猪頭が一人でも居るとこうも人の足を引っ張るのですわねぇ』
『聞こえてんぞぉ!! クソ蜘蛛がぁ!!』
でも、マイの戦闘力はこの隊にとってなくてはならない物ですからね。
頭一つ抜けた戦闘力と短気な性格は一長一短ですが、私の指示で建て直してみせます!!
メアさんがモアさんと合流を果たし、再びあの息の合った攻撃が開始される中。
誰にも解けない難問に挑戦する高揚感にも似た感情を胸に抱き、皆さんへ指示を与え続けた。
◇
体内から止め処無く溢れ出る水分が動きを鈍らせ、空っぽになった肺が降参宣言を告げもう楽になれと頭に伝えるが。
体はそれを完全に拒絶。
真正面から向かい来るこの常軌を逸した凄惨な攻撃を馬鹿正直に躱し続けていた。
皆が勝利を是が非でも収めたいと望んだ一戦だ。
鉢巻きを奪われ、戦場から即刻退散するのは情けないからな!!!!
「あらあらぁ……。段々と動きが良くなって来ましたねぇ」
「お陰様で……。わっ!? 随分と慣れて来ましたよ!!」
勿論これは嘘です。
自分を奮い立たせる為に嘘の一つや二つを口に出さないとね!!
女性らしい細い腕から放たれる攻撃を半身の姿勢で躱し。
「ふっ!!」
「くっ!!」
浴衣の裾から覗く肌理の細かい肌の烈脚を死に物狂いで躱した。
よぉし。
いいぞ、大分掴めて来たぞ。
師匠から御教授頂いた、極光無双流の心。
それは相手の攻撃に揺らぐ事の無い澄み切った精神力を保ち、相手の姿を映せる程に美しく澄み渡った水面を心に持つ。
理解は出来るが、いざ実戦で水面。つまり心を揺らすなと言われたら困難であろう。
感情の欠片は誰にでも持ち得る物だから。
師匠は頭に血を昇らせるなと伝えたかったのかも知れない。
「食らええええやぁあああああ!!」
そうそう。
俺の真正面。
今から殺気全開の攻撃を行う彼女がその最たる例ですね。
「分かり易くて助かりますっ」
「いでぇっ!!!!」
背後からの攻撃をいとも容易く躱し、その避け様。マイの背中へと尻尾の一撃を加え此方に向かって送り出した。
「よっ、随分と簡単に躱されたな??」
汗に塗れた顔へとそう話す。
「ふんっ!! いい感じに体が温まって来たのよ。本番はこれからよ!!」
嘘仰い。
何処からどう見ても下半身が笑っていますよ??
頑丈なコイツでも限界はある。
現に。
「ふぅ……。ふぅ……」
小さく細かい呼吸を口から放ち。
「ふぅ――……。あっつ――……」
滝の様な汗を素晴らしい訓練着の裾で拭い。
「おっしゃ。もう一丁!!!!」
一呼吸置いてからまたもや突撃を開始してしまいましたとさ。
元気一杯だな。強ち、嘘じゃなかったのかもね。
心を鎮ませろ。
凪の無い澄み渡った水面を心に形成しろ。
「すぅぅ……。ふぅぅ……」
深く息を吸い込み、荒い呼吸を落ち着かせ。
「どりゃあああ!!」
「外れ!! ユウ!! 胸、開けそうだぞ!?」
「うっせぇ!! 後で直すから良いんだよ!!!!」
今から直しなさい!!
――――――――。
いかんぞ、精神を研ぎ澄ませるんだ。
目を瞑り視界を閉ざし、余計な雑音を遮断し、大地と同化する様に佇む。
すると、周囲で膨れ上がる幾つもの馬鹿げた圧を掴み取れてしまった。
「避けんなぁ!!」
この燃え盛る炎の様に熱い圧を放つのはマイだな。
「このっ!! いい加減観念しやがれっ!!」
温かくて大きな圧はユウだ。
「ユウ!! そこっ!! 邪魔ですわよ!?」
優しくて柔らかい圧はアオイ。
そして。
『皆さん!! もうひと踏ん張りですからね!! 此処で倒れたら後で説教ですから!!』
もっとも離れた位置で俺達に発破をかけて下さる清涼な圧を放つのはカエデだ。
説教は勘弁して下さいね。
心に波打つ闘志、されどそれを制し。鏡の様に澄み切った水面。
うん。
何となく、理解出来て来たぞ。
心を鎮めると、周囲の景色が手に取る様に理解出来てしまう。
初戦とは段違いの視野の広さ……。いいや。違うな。
矮小な生物が放つ呼吸さえも掴み取れてしまいそうに、感覚が何処までも広がっているとでも言えば良いのか。
ほら、後方から鳥達が此方に向かってやって来るぞ。
その数……。
「四っ!!!!」
当たったかな!?
クルリと振り返り、その数を確認するが。
残念。
五羽でした……。
まだまだ集中しきれていない証拠ですね。
「なぁにが四だっ!!!! てめぇも参戦しろい!!」
分かっていますって。
でも、後少しで絶好の位置が構築されるので。
あなたはそこで奮戦していて下さい。
後方でユウとアオイが魂を削りながらメアさんと対峙している。
そして、もう間も無く。
その時が訪れるのだ。
多分……。もうちょっと右かな??
呼吸を、そして気配を殺してその位置へと移動を開始。
『レイド!! そこです!!』
うん。
俺も考えてた所。
カエデの念話が響くと同時に。
「遅いぞ!! ユウ!!」
「くっそがぉおおおおお!!!!」
苦悶で歪んだユウの声が訓練場に響き渡った。
そして、その刹那……。
体に烈火の如く豪炎を灯した。
勝機は此処だ!!!!
今、この瞬間に全てを出し尽くす!!!!
此方の真後ろから飛翔するユウの体を屈んで躱し。
「きゃっ!?」
突如として飛来したユウの体をモアさんが、俺の予想通りに左手後方に飛んで躱す。
それを捉えた体が一気苛烈に燃え上がった。
「はぁぁああああっ!!!!」
両足に全神経を集中させ、疲弊した筋力に喝を入れ、燃え盛る闘志を注入させて突撃を開始した!!
頼むっ!!!!
届いてくれぇえええええ!!!!
「…………」
俺が突撃を開始した刹那。
モアさんの恐ろしい瞳とバッチリ目が合ってしまった。
や、やべぇ!!
間に合うか!?
でも、飛び出した体は止められない!!!! 愚直だと罵られようが構わない!!
このまま真っ直ぐ突っ込む!!!!
「――――――――――――――。はっはぁ――!! 読み通りぃいいいいい!!」
彼女の後方。
茂みの中から獲物へ襲い掛かる野獣の如く、素晴らしい速度でモアさんへとマイが突撃を開始。
「っ!?」
俺に意識を取られてしまっていたモアさんの反応が僅かに遅れた!!
マイ!!
お前って奴は本当に凄いよ!!
あれが直感なんだから、全く……。鋭すぎる感覚って奴ですね!!
「……っ!!」
「あがべっ!?」
マイがモアさんの無言で強烈な反撃を受け、地面に叩きつけられると同時。
彼女の間合いに踏み込んで地上から上空へ向かって、右手を振り上げた。
頼むっ!!
指先でも良いから鉢巻きに届けっ!!
藁にもすがる想いで筋力が捻じ切れてもおかしくない速度で右手を振り上げ、そして打ち抜いた。
「――――――――。あはっ。取られちゃいましたね」
え!?
嘘!?
モアさんの声を受け右手を目の前に置くと。
そこには確かに、くすんだ白の鉢巻きが龍の爪に引っ掛かり風に揺られていた。
「は、はは。やった……。やったぞ!!!! やったぁああああああ!!」
たかが一枚の鉢巻きを握り締めて、大の大人が何をやっているのだと言われようが。
この一枚の鉢巻きを奪う為に半日を費やしたのだ。
これでもかと鉢巻きをぎゅっと握り締めた後。空へと掲げ、俺達の勝利を堂々と宣言した。
「良くやったわね!! 褒めて遣わす!!!!」
「何様だよ」
マイが俺の肩をポンっと叩き。
「レイド!! やったなぁ!!」
「あ、あぁ。そうだね」
ユウの強力な力で肩を叩かれて目を白黒させれば。
「レイド様ぁ!! やはり、私との愛の力で勝利を掴み取ったのですわね!?」
「違いますからぁ!!」
御主人様の帰りを待ち侘びた甘えん坊の飼い犬の如く。
此方に向かって何の遠慮なく飛び掛かり、首に甘く両手を絡めて来たアオイの体をやんわりと押し返すものの。
疲弊した体では彼女の突撃を押し返す事は叶わず、そのまま地面へと倒れ込んでしまった。
「あぁ……。レイド様の胸元の感覚……。この為に私は研鑽してきたのですわねぇ」
汗でしっとりと濡れた白く美しき髪を胸元へと擦り付け。
「すんすんっ……。あっ、はぁっ……。汗の香りが私を駄目な子にしてしまいますの……」
嫌々と顔を振りつつ、更に奥へと顔を沈めてしまいました。
「わ、分かったから退いて下さい!!」
俺の命が消えてしまうので!!
「うむっ!! 見事じゃ!! 此れにて、本日の稽古は終了する!! 休んで良し!!」
師匠の覇気ある声が一際強く朱色に染まった空へと昇って行く。
この空に良く似合う声なのですが、それとは真逆の声が響くと俺の心をきゅっと窄めてしまった。
「お――お――。随分と楽しそうじゃねぇか。あぁ??」
「だなぁ――。うっし、マイ!! 右手を持て!! あたしは左手を持つから!!」
「あぁ、両側から引っ張って体の中央で引き裂くのか。楽しそうね!!!!」
面白い訳ないだろ!!
「アオイ!! お願いだから退いて!!」
彼女の肩付近に手を伸ばしたのが不味かった。
「レイド様が御所望されるのであれば……。さぁ、女の武器を堪能して下さいまし……」
此方の手を掴み、ふっと浮かした上体から柔らかく零れ落ちる双丘へと誘うではありませんか!!
その光景を捉えてしまった刹那。
恐ろしい二人から御届け物ですと言わんばかりに、背筋が途轍もなく凍ってしまう雷撃が上空から降り注いでしまいました。
「「くらえぇええええええええええええええええ!!!!」」
「止めてぇええ!! ばぬぐっ!?」
素晴らしい身のこなしでアオイが二人の攻撃を躱し。
行く当てを失った攻撃が腹部に着弾。
腰付近から大変乾いた音が響き口から何かが飛び出てしまった。
「そこでくたばってろ!! ボケナスが!!」
「反省だよ、反省――」
私、何か悪い事をしました!?
でも言いませんよ!?
反論でもしようものなら猛撃が始まりますので!!!!
「私が思い描いた通りの勝利とその後です。状況終了、お疲れ様でした」
カエデがちょこんと横に座り、俺を労う様にツンツンと体を突く。
「あ、有難う……」
予想していたのならもう少し早く止めて欲しかったですね……。
「おっしゃ!! 温泉入って!! 御飯だ!!」
「そっかぁ……。飯がある事忘れていたよ……」
「ユウ!! レイド様に馬鹿力で攻撃を加えたら駄目だと、あれだけ申したではありませんか!!」
「そうだっけ?? 忘れちゃった――」
「まぁ!! 貴女と言う人は……」
あなた達は何処にそんな体力があるのですかと問いたくなる後ろを姿を、今にも何かが飛び出して来そうな口を閉じて眺め。
痛む腹を抑えつつゴロリと寝返り打ち、巨大な空へと向かい。これでもかと疲労を籠めた溜息を吐き出してやった。
何はともあれ、勝ったんだよな??
後は、エルザードさんに何処まで通用するか……。師匠が仰っていた、一難去ってまた一難。
それってこの状況を見越しての発言だったんじゃないのかな??
流れゆく千切れ雲。
そして、微動だにせずちょこんと膝を抱えて座った姿のまま。
じぃっと此方を見下ろし続けて来る藍色の髪の女性を交互に眺めつつそんな事を考えていた。
最後まで御覧頂き、有難う御座いました!!
帰宅時間が遅れてしまった所為で投稿時間が遅れてしまいました。
大変申し訳ありません……。




